この記事で分かること
結論:地方債と財投機関債は別の制度、証券会社の役割も異なる
パブリックファイナンス業務とは、証券会社・金融機関が地方公共団体や独立行政法人等の公的セクターの資金調達を支援する業務です。その代表的な調達手段が「地方債」と「財投機関債」ですが、この2つは制度としては別物です。地方債は都道府県・市区町村自身が発行する債務であるのに対し、財投機関債は財政投融資を活用する独立行政法人等(財投機関)が発行する債務であり、発行主体も、元利償還の原資も、証券会社が引受で果たす役割も異なります。両者に共通するのは、国が元本の支払いを法的に保証する「政府保証債」ではないという点ですが、地方債には地方交付税制度による国全体での財源保障の枠組みがあるのに対し、財投機関債は発行体自身の信用力に依拠するという違いがあります。
この記事では、地方債・財投機関債の制度的な違い、証券会社によるシ団引受・主幹事方式という起債支援実務、そして地方公共団体金融機構(JFM)が果たす独自の役割を、総務省・財務省・JFMの一次情報に基づいて整理します。企業が発行する普通社債の一般的な発行・引受実務(ブックビルディング方式によるDCM業務)はDCM
地方債とは何か:協議制度と地方財政計画上の位置づけ
総務省は地方債を「地方公共団体が1会計年度を超えて行う借入れ」と定義しています。地方公共団体の歳入・歳出の中で、地方債は原則として投資的経費、つまり道路・学校・上下水道といった建設事業関係の経費の一定部分に充当される仕組みです。地方債を発行するには、都道府県・指定都市は総務大臣と、それ以外の市区町村は都道府県知事と、あらかじめ協議を行う必要があります。この協議制度は平成18年度(2006年度)から導入されたもので、それ以前は許可がなければ地方債を発行できない許可制度が採られていました。地方分権改革の一環として、国と地方の役割分担を明確にしつつ地方公共団体自身の判断と責任で資金調達を行えるようにする狙いから、原則自由化の方向で協議制度へ移行した、と地方債協会は説明しています。ただし、実質公債費比率が18%以上の地方公共団体や、実質赤字を抱える地方公共団体については、早期是正措置として起債が制限される許可制度が今も残っています。
地方債計画は、地方公共団体全体の1年間の地方債発行予定額を示すもので、総務省が毎年度策定・公表しています。総務省の説明によれば、地方債計画は地方公共団体の歳入・歳出全体を示す地方財政計画、そして国の予算の一部である財政投融資計画と相互に関連する形で策定されています。
地方債の発行形態:市場公募地方債・共同発行債・銀行等引受地方債
地方債には、発行方法によっていくつかの種類があります。総務省の分類によれば、まず「市場公募地方債」は広く投資家に購入を募る方法で発行される地方債で、証券会社・金融機関等の引受機関(募集取扱い機関)を通じて個人投資家も購入できます。総務省が公表している資料によれば、令和3年度時点で全国型市場公募地方債の発行団体(発行予定を含む)は都道府県39団体・政令指定都市20団体の合計59団体とされています(この数値は総務省ウェブサイトに掲載されている時点のものであり、その後の団体数の増減は別途確認が必要です)。
この市場公募地方債のうち、複数の地方公共団体が共同で発行する「共同発行市場公募地方債」という仕組みがあります。総務省の説明では、この共同発行地方債は前述の59団体のうち37の地方公共団体が平成15年4月から毎月発行しているもので、参加する各団体は毎月、発行額全額について連帯債務を負う点が特徴です。財務省の広報誌によれば、共同発行債は毎年1兆円程度、毎月の10年債だけで1,000億円程度発行される地方債市場最大規模の商品で、単独では発行ロットが小さく知名度も低い中小規模の団体でも、連帯することで大規模で流動性の高い債券として供給できる点が狙いです。
このほか、地方公共団体が指定金融機関等から引受け又は借入れの方法により発行する「銀行等引受地方債」(証券発行と証書借入の2形態)や、住民の個人消化を目的とした「住民参加型市場公募地方債」(平成14年3月実施開始)もあります。
| 種類 | 発行団体数の目安 | 特徴 | 個人投資家の購入 |
|---|---|---|---|
| 全国型市場公募地方債(個別債) | 59団体(令和3年度・総務省サイト記載) | 団体が単独でシ団引受・主幹事・入札等の方式により発行 | 引受機関経由で購入可 |
| 共同発行市場公募地方債 | 37団体(59団体の内数) | 平成15年4月から毎月発行、参加団体は発行額全額について連帯債務を負う | 引受機関経由で購入可 |
| 銀行等引受地方債 | 団体ごとに個別 | 指定金融機関等からの引受け・借入れ(証券発行または証書借入) | 証券発行形式は購入できる場合あり |
| 住民参加型市場公募地方債 | 団体ごとに個別 | 平成14年3月から実施、地方債の個人消化・公募化が目的 | 主に発行団体の住民向け |
証券会社の起債支援実務:シ団引受方式と主幹事方式
証券会社が地方債の起債支援で果たす役割を理解するには、企業の社債発行(DCM入門参照)とは異なる「シ団(シンジケート団)引受方式」という慣行を押さえる必要があります。財務省の広報誌に掲載された解説によれば、シ団引受方式は銀行団と証券団の2つの団で構成され、それぞれの引受割合があらかじめ固定されている点が特徴です。発行体である地方公共団体は、この銀行団・証券団それぞれの代表者と相対で交渉を行い、発行条件(表面利率等)を決定します。銀行と証券会社では交渉における立場が異なり、銀行は自ら債券を保有する最終投資家として自身の購入希望利回りが交渉の目線になるのに対し、証券会社は媒介機能を担うため、引受後に販売する投資家の購入希望利回りが交渉の目線になる、という違いがあります。
共同発行市場公募地方債の発行条件は、総務省の地方債課と、銀行・証券会社で構成されるシ団との相対交渉によって決定されます。同誌の解説によれば、毎月の条件決定は、月初に実施される10年国債入札の2営業日後というタイミングで行われます。一方、東京都のように単独で大規模に起債する団体では、やや異なる実務が採られています。東京都は10年債をシ団引受方式で毎月発行しており、年間の発行額は2,200億円程度とされていますが、リスク・フリー・レートを決定する際に、他の団体で一般的な「前営業日のBB(気配値)引け値」ではなく「条件決定日当日の午前9時30分時点の市場実勢」を参照するなど、より市場実勢に近いプライシングを行っている点が特徴です。同誌によれば、東京都は2024年度から、シ団方式と主幹事方式を組み合わせた「融合方式」から、単独の主幹事証券が発行条件の決定と販売を主導する「主幹事方式」へと移行しており、市場志向を強めた起債運営へと転換しています。
証券会社のパブリックファイナンス部門・地方債引受担当者にとって、こうしたシ団慣行や地方公共団体側の担当課(財政課・出納室等)との継続的な関係構築、発行条件の相対交渉が、企業向けDCM業務のブックビルディングとは異なる実務スキルとして求められます。銀行団・証券団による主幹事証券と引受シンジケート団という構成自体は一般的な企業の起債でも見られますが、発行体が地方公共団体である点、条件決定に総務省が関与する点が異なります。
地方公共団体金融機構(JFM)の役割
地方債の資金調達を語るうえで欠かせないのが、地方公共団体金融機構(JFM)という組織です。JFMは、地方公共団体自身が個々に資本市場から調達する資金を補完するために設立された組織で、JFM自身の説明によれば「地方公共団体による資本市場からの資金調達を効率的かつ効果的に補完する」ことを目的としています。
JFMの主な業務は4つに整理できます。第一に、地方公共団体に対してその地方債について長期・低利の資金を融通する「貸付業務」。第二に、財政の健全性確保や資金調達支援など財政運営全般を支える「地方支援業務」(調査研究・人材育成・実務支援・情報発信)。第三に、自ら資本市場で「地方公共団体金融機構債(機構債)」を発行して資金を調達する「債券発行業務」。第四に、前身の公営企業金融公庫から承継した債権を管理する「公庫債権管理業務」です。
JFMが発行する機構債は、政府保証のない債券ですが、地方公共団体金融機構法により一般担保が付与されており、他の一般債務に優先して弁済を受けられる仕組みになっています。JFM自身の説明によれば、この一般担保に加え、地方公共団体という安定した貸付先への長期・低利資金供給という事業構造が評価され、機構債は国内で高い水準の信用格付けを得ています。地方公共団体からみれば、単独で資本市場から調達するよりも、JFMを介して資金を調達する方が、調達コストや事務負担の面で有利になる場合がある、という位置づけです。証券会社にとっても、JFM債は地方債・国債と並ぶ公共セクター債として、公共債引受チームが継続的に取り扱う商品の一つになっています。
財投機関債とは何か:財政投融資改革と発行体の自己信用力
ここまで見てきた地方債・JFM債は、いずれも「地方公共団体」という主体、またはそれを支援する組織が発行するものでした。これに対し「財投機関債」は、財政投融資を活用する独立行政法人・特殊法人等(財投機関)が発行する債券で、発行主体も制度上の位置づけも異なります。
財務省の説明によれば、財政投融資とは、税負担によらず国債の一種である財投債の発行等により調達した資金を財源として、政策的な必要性があるものの民間では対応が困難な長期・低利の資金供給や、大規模・超長期プロジェクトの実施を可能にする投融資活動です。この財政投融資改革の一環として平成13年度に導入されたのが財投機関債で、財務省のFAQによれば「財投機関が民間の金融市場において発行する債券のうち、政府が元本や利子の支払いを保証していない公募債券」と定義されています。発行体自身の信用力に依拠する普通社債(ストレート・ボンド)と、担保となる資産の信用力に依拠する資産担保証券(ABS)の2種類に大別されます。
財投機関債を発行している主体には、住宅金融支援機構、日本政策投資銀行、日本政策金融公庫、日本高速道路保有・債務返済機構、都市再生機構、鉄道建設・運輸施設整備支援機構、日本学生支援機構などがあります(いずれも各機関の公表情報で確認できる代表的な発行体の一部です)。これらの機関は住宅ローン証券化支援・政策金融・高速道路債務の返済・都市再生・インフラ整備・奨学金貸付といった固有の政策目的のために財政投融資を活用しており、財投機関債はその資金調達手段の一つです。政府保証が付いていないため、投資家は各発行体自身の事業内容・財務状況・信用格付けを個別に評価する必要があり、地方債が国全体の財源保障の枠組みを背景に持つのとは対照的です。
地方債・JFM債・財投機関債の信用力の違いと数値設例
地方債・JFM債・財投機関債は、いずれも「政府保証債」ではないという共通点を持ちながら、元利償還の原資の性質は大きく異なります。総務省の説明によれば、地方債の元利償還は、地方公共団体自らの課税権に基づく地方税収入に加え、地方財政計画の歳出に公債費(地方債の元利償還金)を計上したうえで、公債費を含めた歳出総額と歳入総額が均衡するよう地方交付税の総額を確保し、さらに地方交付税の算定における標準的な財政需要額(基準財政需要額)に地方債の元利償還金の一部を算入するという、国全体での財源保障の仕組みによって支えられています。この仕組みを背景に、BIS規制の標準的手法において、地方債のリスクウェイトは0%とされています(自己資本比率規制の基本的な考え方は自己資本比率(銀行・BIS規制/CET1)を参照してください)。
これに対し、JFM債は機構法上の一般担保と、貸付先である地方公共団体からの返済という構造で支えられており、財投機関債は各発行体自身の事業収益・信用力によって支えられています。つまり3つの債券は、いずれも狭い意味での「国が元本を保証する債券(政府保証債。政府保証債参照)」ではないものの、地方債は国全体の制度設計による財源保障、JFM債は一般担保付きの共同調達組織、財投機関債は個別発行体の信用力、という異なるレイヤーで信用が支えられていることになります。
以下は説明用の仮設例です。ある地方公共団体が共同発行市場公募地方債で10年債・発行額100億円を調達し、表面利率(クーポン)が0.90%で決定されたとします。
式
年間利払い額 = 発行額 × 表面利率
数値代入:100億円 × 0.90% = 9,000万円
10年間の利払い累計額 = 9,000万円 × 10年 = 9億円
この地方公共団体は、毎年9,000万円の利払いを10年間続け、満期時に元本100億円を一括で償還(ブレット償還)することになります。この毎年の利払い9,000万円と将来の元本償還額は、いずれもこの地方公共団体の「公債費」として地方財政計画・当該団体の予算に計上され、前述のとおりその一部が地方交付税の基準財政需要額の算定に反映される仕組みです。個別の債券の実際のクーポン水準は、発行時点の国債利回り水準や発行体の信用状況によって変わるため、上記の0.90%はあくまで計算方法を示すための仮設値であり、実勢の利回りを示すものではありません。債券の利回り(YTM)の求め方自体は債券利回りの基礎とYTMで解説しています。
米国のMunicipal Bondとの違い
「地方債」という言葉は英語のmunicipal bondの訳語としても使われますが、日本の地方債制度と米国のmunicipal bond制度は、成り立ちも仕組みもかなり異なります。総務省が所管する日本の地方債は、どの発行団体であっても基本的に「地方税+地方交付税による国全体の財源保障」という共通の枠組みの上に乗っている点が特徴でした。一方、自治体国際化協会が公表しているレポート「米国地方債の概要とその活用事例」によれば、米国のmunicipal bondは発行体の返済原資に応じて「一般財源保証債(general obligation bond)」と「レベニュー債(revenue bond)」に大きく分類されます。
一般財源保証債は、発行体である州・地方団体が、その全信用力(full faith and credit)によって元利の支払いを保証する債券で、道路・学校といった発行体内の全住民が受益する事業の資金調達に使われます。同レポートによれば、一般財源保証債の発行には多くの場合、議会の承認に加えて住民投票による有権者の承認が必要とされます。これに対しレベニュー債は、発行体の全信用力ではなく、有料道路や水道料金といった特定の利用料・歳入のみを償還財源とする債券で、高速道路・空港・水道下水道施設・医療施設・住宅事業等で広く使われています。同レポートは、レベニュー債の発行では通常住民投票が不要である点が発行体にとっての利点である一方、一般財源保証債に比べて通常より高い利率になりやすい点を課題として挙げています。
制度を支える関係者の構成も異なります。同レポートによれば、米国の地方債発行では、起債の適法性や免税債券としての資格を確認する「地方債法律顧問(bond counsel)」、発行体を支援し資金調達条件の助言や債券構造の設計を担う「ファイナンシャル・アドバイザー」、そして債券を購入し投資家へ再販売する「引き受け企業(underwriter)」という、独立した専門家がそれぞれ役割を分担する構造になっています。地方債の販売方法も、引受企業同士が入札で条件を競う「競争入札方式(competitive sale)」と、発行体が特定の引受企業(団)と条件を協議して決める「協議方式(negotiated sale)」の2つがあり、同レポートが引用する統計では協議方式による新規発行額が競争入札方式を大きく上回っています。協議方式は、発行体が銀行団・証券団と相対交渉で条件を決める日本のシ団引受方式と機能的に近い面がありますが、法律顧問・ファイナンシャル・アドバイザーという独立した第三者が間に入る点、州・地方団体ごとに起債の法制度(住民投票要件等)が大きく異なる点は対照的です。米国の一括償還債(term bond)で発行体が満期償還資金を積み立てる減債基金条項(シンキングファンド)とはの仕組みも、日本の地方債にはあまり見られない実務です。
日本の地方債制度も平成18年度に許可制度から協議制度へと移行し、地方公共団体自身の判断と責任による資金調達を促す方向に進んできましたが、国全体としての財源保障の枠組み(地方交付税)や、総務大臣・都道府県知事との事前協議という国の関与が残っている点は、米国の州・地方団体ごとの起債制限や住民投票制度とは異なる、日本独自の設計といえます。
| 区分 | 発行主体 | 政府保証 | 元利償還の主な原資 | 代表的な引受方式 |
|---|---|---|---|---|
| 地方債(市場公募等) | 都道府県・市区町村 | なし | 地方税+地方交付税による国全体の財源保障の枠組み | シ団引受方式・主幹事方式・入札方式 |
| JFM債(地方公共団体金融機構債) | 地方公共団体金融機構 | なし(機構法上の一般担保付き) | 貸付先である地方公共団体からの返済 | 主幹事方式等 |
| 財投機関債 | 各財投機関(住宅金融支援機構等) | なし | 発行体自身の事業収入・信用力 | 発行体により異なる(主幹事方式・入札方式等) |
| (参考)米国のgeneral obligation bond | 州・カウンティ・市町村等 | 連邦政府保証なし | 発行体(州・地方団体)自身の全信用力(税収) | 競争入札方式・協議方式 |
証券会社のパブリックファイナンス部門で行われる実務
証券会社のパブリックファイナンス部門(公共債引受部門)が担う実務は、企業のDCM部門(DCM入門参照)とは、対象となる発行体・意思決定プロセスが大きく異なります。企業の社債発行では、発行体企業の財務部門・IR部門が主なカウンターパートとなり、格付取得・ブックビルディングを経て条件が決まりますが、地方債・JFM債・財投機関債の起債支援では、地方公共団体の財政課・出納室・会計管理者、あるいはJFM・各財投機関の財務・IR担当部門がカウンターパートになります。共同発行市場公募地方債のように、総務省の地方債課が条件決定プロセスに関与する点も、企業の社債発行にはない特徴です。
担当者の日常業務には、発行予定団体・財投機関への提案活動(起債のタイミング・年限・商品設計の助言)、シ団または主幹事としての条件交渉、機関投資家(銀行・生命保険会社・年金基金等)への販売活動、起債後のIR支援が含まれます。地方公共団体・財投機関はいずれも信用格付を取得しているケースが多く、格付会社対応の支援も実務の一部で、国内格付会社の評価手法は格付とクレジット指標の基礎で扱っています。パブリックファイナンス部門の位置づけは、投資銀行IBDとは何をする部門かで解説する一般的なプロダクト分類(カバレッジ・M&A・ECM・DCM)のうち、DCMを公共セクターに特化させた領域と理解すると実態に近く、国債市場全体はフィックスドインカム(債券)業務ガイド、株式による資金調達はECM
なお、空港コンセッションやPFI/PPPの入札実務を扱うインフラ
よくある質問(FAQ)
地方債は「元 本保証」された債券なのですか。
いいえ、国が法的に元本を保証する
財投機関債と地方債はどちらが安全ですか。
一律に優劣を判断できるものではありません。地方債は国全体の地方財政制度による財源保障の枠組みを背景に持つのに対し、財投機関債は各発行体自身の事業内容・財務状況・信用力に依拠する点が制度上の大きな違いで、発行体ごとに信用格付けの水準も異なるため個別の評価が必要になります。
証券会社のパブリックファイナンス部門は、一般のDCM部門と何が違うのですか。
対象となる発行体が企業ではなく地方公共団体・JFM・財投機関である点、共同発行市場公募地方債のように総務省の地方債課が条件決定プロセスに関与する点、シ団引受方式という独自の慣行がある点が主な違いです。企業の社債発行を扱う一般的なDCM実務はDCM入門で解説しています。
米国のmunicipal bondにも、日本の地方交付税のような国の財源保障がありますか。
米国の一般財源保証債(GO債)は発行体である州・地方団体自身の全信用力
個人投資家は共同発行市場公募地方債を購入できますか。
総務省の説明によれば、新たに発行される市場公募地方債(共同発行債を含む)は、その引受機関(募集取扱い機関)である証券会社・金融機関等を通じて購入できるとされています。既に発行された地方債についても、購入を希望する場合は証券会社・金融機関に問い合わせることが案内されています。
まとめ
パブリックファイナンス業務の中心にある地方債・財投機関債は、いずれも国が法的に元本を保証する「政府保証債」ではないという共通点を持ちながら、地方債は地方交付税を含む国全体の財源保障の枠組みに支えられ、財投機関債は各発行体自身の信用力に支えられるという、異なる制度設計の上に成り立っています。証券会社は、共同発行市場公募地方債のシ団引受方式や、東京都のような単独発行団体への主幹事対応を通じて、企業のDCM業務とは異なる起債支援実務を担い、地方公共団体金融機構(JFM)は、機構債の発行と地方公共団体への貸付という両面から資金調達を補完しています。
米国のmunicipal bondと比較すると、一般財源保証債・レベニュー債という返済原資による分類、法律顧問・ファイナンシャル・アドバイザー・引き受け企業という独立した専門家の役割分担、州・地方団体ごとに大きく異なる起債制限や住民投票制度など、制度の骨格そのものが日本とは異なります。パブリックファイナンス業務に関わる場合は、地方財政制度・財政投融資制度という制度知識と、企業向けDCM実務で培われるプライシング・引受のスキルの両方が土台になります。
出典・参考(2026年8月確認)
- 総務省「地方債とは」(地方債の定義、地方財政計画上の位置づけ)https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/c-zaisei/chihosai/chihosai_a.html (WebFetchで到達・内容確認済み)
- 総務省「地方債の商品性」(市場公募・共同発行・銀行等引受地方債の定義、令和3年度時点の発行団体数)https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/c-zaisei/chihosai/chihosai_b.html (WebFetchで到達・内容確認済み。数値は令和3年度時点のものと本文中に明記)
- 総務省「地方債の安全性」(地方交付税による財源保障、基準財政需要額への算入、BIS規制リスクウェイト0%、起債制限、財政健全化法)https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/c-zaisei/chihosai/chihosai_c.html (WebFetchで到達・内容確認済み)
- 総務省「地方債計画等」(地方債計画と地方財政計画・財政投融資計画との関連)https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/c-zaisei/chihosai/keikaku.html (WebFetchで到達確認済み)
- 一般財団法人地方債協会「許可制から協議制へ」(平成18年度の協議制度移行の経緯)https://www.chihousai.or.jp/07/01_03.html (WebFetchで到達・内容確認済み)
- 一般財団法人地方債協会「債券の種類及び概要」https://www.chihousai.or.jp/02/05.php (WebFetchで到達・内容確認済み)
- 財務省「地方債制度の概要」https://www.mof.go.jp/policy/filp/summary/filp_local/tihousaiseidonogaiyou.htm (WebFetchで到達確認済み)
- 財務省「財投機関債とは何ですか」(定義、政府保証の有無、平成13年度導入、普通社債とABSの区分)https://www.mof.go.jp/faq/filp/05ab.htm (WebFetchで到達・内容確認済み)
- 財務省「財政投融資」(財政投融資の仕組み全体、財投債による資金調達)https://www.mof.go.jp/policy/filp/index.html (WebFetchで到達・内容確認済み)
- 財務省広報誌ファイナンス「シ団引受方式入門-共同発行債と東京都債を事例に-」(シ団構造、共同発行債の規模・条件決定プロセス、東京都債のプライシングと主幹事方式移行)https://www.mof.go.jp/public_relations/finance/202408/202408i.html (WebFetchで到達・内容確認済み)
- 地方公共団体金融機構「機構の役割と仕事」(目的、貸付・地方支援・債券発行・公庫債権管理の4業務)https://www.jfm.go.jp/about/overview/mission/index.html (WebFetchで到達・内容確認済み)
- 地方公共団体金融機構「債券のご案内」https://www.jfm.go.jp/ir/bond/index.html (WebFetchで到達・内容確認済み)
- 地方公共団体金融機構「地方金融機構債(国内債)」(政府保証なし、機構法上の一般担保、優先弁済)https://www.jfm.go.jp/ir/bond/nongov/index.html (WebFetchで到達・内容確認済み)
- 財団法人自治体国際化協会(ニューヨーク事務所)「米国地方債の概要とその活用事例」CLAIR REPORT NUMBER 287(2006年8月31日)(一般財源保証債とレベニュー債の区分、法律顧問・ファイナンシャル・アドバイザー・引受企業の役割分担、競争入札方式と協議方式、住民投票要件)https://www.clair.or.jp/j/forum/pub/docs/287.pdf (WebFetchでPDF本文を直接確認済み。2006年発表のレポートであり、米国の地方債制度の基本的な骨格・関係者構成の説明として参照。個別州・団体の統計数値は本文に引用していない)
※本記事は教育目的の一般的な解説であり、法務・税務・投資助言ではありません。設例は理解のための仮設例です。