この​記事で​分かる​こと

  • 原価企画=販売価格から目標利益を引いて許容原価を先に決め、設計段階でその原価に収める手法であること
  • 「原価計算してから値付けする」のではなく「値付けしてから原価を作り込む」逆転の発想
  • 整数設例で確認する、許容原価と見積原価のギャップをVA/VE活動でどう埋めるか
  • 日本発の管理会計手法としての位置付けと海外での評価

30秒で​分かる​定義

原価企画(Target Costing、読み方:げんかきかく)とは、新製品の販売価格から目標利益を差し引いて「許容原価」を先に決め、製品の設計・開発段階でその許容原価に収まるようコストを作り込んでいく管理会計手法です。ターゲットコスティング・目標原価管理とも呼ばれます。従来の原価計算は「かかったコストを積み上げて、そこに利益を乗せて価格を決める」順序でしたが、原価企画は逆に「市場が受け入れる価格と必要な利益から、許容できる原価の上限を先に決める」という逆算の発想に立ちます。日本の製造業、特に自動車・電機産業で1960年代以降発展し、海外の管理会計研究でも “Genka Kikaku” として広く紹介されている手法です。

なぜ実務で​重要なのか

製造業のFP&A・原価企画部門にとって、原価企画は新製品の採算性を量産開始前に確保するための最重要プロセスです。量産が始まってから原価を下げようとしても、部品構成や生産工程の多くはすでに設計段階で固定されており、削減できる余地は限られます。設計・開発部門にとっては、単に機能や品質だけでなく、コスト目標を満たすことも設計要件の一部として組み込まれる点が特徴です。経営企画にとっては、新製品の投入判断(稟議)の前提として、量産後の採算性が確保できる見通しかどうかを判断する材料になります。

計算式​(または仕組み)

許容原価(目標原価)= 予定販売価格 - 目標利益

ここで決まる「許容原価」と、実際に設計・調達を進めた結果として見積もられる「見積原価」の間には、通常ギャップが生じます。このギャップを埋めるために、部品の共通化・材料の見直し・工程の簡素化などの原価低減活動(VA/VE​活動)を設計段階で繰り返し実施し、量産開始までに見積原価を許容原価以下に収めることを目指します。

整数設例で​確認する

設例(架空数値)。ある新製品の想定販売価格は10,000円、目標利益率は20%(目標利益2,000円)とします。

許容原価 = 10,000円 - 2,000円 = 8,000円

設計初期段階での見積原価は9,200円で、許容原価との間に1,200円のギャップがありました。VA/VE活動により、主要3部品でそれぞれコストを見直します。

部品当初見積原価削減額見直し後原価
部品A(筐体)3,000円-400円2,600円
部品B(基板)4,000円-500円3,500円
部品C(その他)2,200円-300円1,900円
合計9,200円-1,200円8,000円

3部品合計で1,200円(400+500+300)の削減により、見積原価は9,200円からちょうど許容原価の8,000円に一致しました。これで想定販売価格10,000円・目標利益率20%を量産開始時点で確保できる見通しが立ちます。

投資判断への​影響

原価企画は個別の会計取引ではなく、新製品の量産化を決める投資判断そのものに直結します。稟議において、許容原価に見積原価が収まる見通しが立たない新製品は、原則として量産移行の承認を得られません。この「許容原価に収まるかどうか」が、新製品開発の投資判断における実質的なゲートとして機能します。

財務​モデル・​Excelでの​使い方

製品の部品構成表(BOM)に、部品ごとのコストと削減余地を紐づけた原価企画シートを作ります。

  • 許容原価・見積原価・ギャップを製品全体で自動計算する行を作る
  • 部品ごとの削減施策と削減額を一覧化し、合計削減額がギャップを埋められているかをチェックする行を設ける
  • コスト構造と​マージン予測で扱う変動費・固定費の分解と接続し、量産後の損益シミュレーションにそのまま使えるようにする

この​用語を​Excelで​「組める」​状態に​する

部品構成表に​許容原価と​見積原価を​紐づけ、​削減施策の​積み上げで​ギャップが​埋まっているかを​自動判定できるようになる。

財務分析教材で​実装する →

実務家が​確認する​ポイントと​よく​ある​誤解

誤解1:「原価企画は量産開始後のコスト削減活動」→ 原価企画の本質は、コストの大部分が実質的に固定される設計段階での作り込みです。量産開始後の原価低減はVA/VE活動としてなお継続されますが、削減できる余地は設計段階よりはるかに小さくなります。

誤解2:「許容原価に収まらなければ品質を落とせばよい」→ 品質・機能を犠牲にした原価低減は市場での競争力を損ないます。原価企画では、機能を維持したまま原価を下げる方法(部品共通化、工程簡素化)を優先します。

確認ポイント:削減施策が量産段階でも本当に実現可能か(設計上は削減できても量産の歩留まりが悪化しないか)を、生産技術部門と連携して確認します。

日本実務での​扱い​(2026年7月時点)

原価企画は日本の自動車・電機産業を中心に発展してきた管理会計手法であり、海外の管理会計研究でも日本語の呼称のまま “Genka Kikaku” として紹介されるなど、国際的にも認知された日本発の実務です。稟議プロセスにおいて、新製品の量産移行判断には許容原価と見積原価のギャップ解消状況の報告が求められることが一般的です。中期経営計画で掲げる利益率目標の達成手段としても、原価企画による新製品の収益性確保が重要な要素として位置付けられます。

面接・​モデルテストで​問われる​ポイント

Q:原価企画と通常の原価計算は、コストと価格の関係の捉え方でどう違いますか?
「通常の原価計算はコストを積み上げてから利益を乗せて価格を決めますが、原価企画は逆に、市場が受け入れる販売価格と必要な目標利益から許容原価を先に決め、設計段階でその許容原価に収まるようコストを作り込みます。コストの大部分は設計段階で実質的に固定されるため、量産開始前にコストを作り込むことが利益確保の鍵になります。」

深掘りでは「許容原価に見積原価が収まらない場合の意思決定」「VA/VEとの役割分担」が定番です。

よく​ある​質問​(FAQ)

Q. 許容原価に見積原価が収まらない場合はどうしますか?
A. まずVA/VE活動でさらなる削減余地を探ります。それでも埋まらない場合は、販売価格の見直し、目標利益率の見直し、あるいは製品化自体の再検討が選択肢になります。

Q. 原価企画とVA/VE活動はどう違いますか?
A. 原価企画は許容原価を決めて設計に落とし込む一連のプロセス全体を指し、VA/VE活動はその中でコスト削減の具体策を探る手法の1つという位置付けです。VA/VEは量産開始後の既存製品にも適用されます。

出典・参考​(2026-07-25確認)

※本記事は教育目的の一般的な解説であり、法務・税務・投資助言ではありません。設例は理解のための架空数値です。

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