この記事で分かること
- 販管費の定義と、営業利益との関係(財務諸表等規則第84条・第89条)
- 販売費と一般管理費の典型的な費目と、主要な費目の注記ルール(百分の十)
- 運賃の分類で売上総利益率が38.0%と35.0%に分かれる整数設例
- 研究開発費・貸倒引当金繰入額の扱いと、IFRS第18号との関係(2026年11月時点)
30秒で分かる定義
販売費及び一般管理費(はんばいひおよびいっぱんかんりひ、Selling, General and Administrative Expenses、SG&A、販管費)とは、商品の販売活動や企業全体の管理活動に要した費用で、売上総利益から差し引いて営業利益を求める費用です。財務諸表等規則は、会社の販売及び一般管理業務に関して発生したすべての費用を販管費に当たるとし[1]、売上総利益金額から販管費の合計額を控除した金額を営業利益金額と定めています[1]。本ページは損益計算書の科目としての範囲と、売上原価との区分(業種差)を扱います。コスト管理は
なぜ実務で重要なのか
営業利益の水準は、売上総利益と販管費のバランスで決まります。経営企画・FP&Aは、予算管理で販管費の費目別の増減を追い、利益の増減要因は営業利益の増減要因分析
計算式(ま たは仕組み)
販管費率 = 販管費 ÷ 売上高
販管費は、適当と認められる費目に分類し、費用を示す名称を付した科目で掲記します。販売費の科目、一般管理費の科目、または販管費の科目にまとめて掲記し、主要な費目と金額を注記することもできます[1]。この主要な費目とは、減価償却費及び引当金繰入額(金額が少額であるものを除く)と、これら以外の費目でその金額が販管費の合計額の百分の十を超える費目をいいます[1]。
| 区分 | 典型的な費目の例(一般的な例示) | 売上原価との境界の考え方 |
|---|---|---|
| 販売費 | 広告宣伝費、販売手数料、出荷運賃、営業担当者の給与 | 製造や仕入にかかる原価(製造間接費を含む)は製造原価・仕入原価となり、そのうち販売した分が売上原価 |
| 一般管理費 | 役員報酬、管理部門の人件費、本社の賃借料 | 製造や役務の提供に直接かからない管理活動の費用 |
| 業種による差 | 製造業は工場の費用が製造原価、小売・サービス業は店舗の人件費が販管費となる例が多い | 売上原価には役務原価も含まれる[1] |
通常の取引に基づいて発生した債権に対する貸倒引当金繰入額・貸倒損失は、異常なものを除き販売費として掲記します[1]。研究開発費は、一般管理費及び当期製造費用に含まれているものの総額を注記します[1]。
整数設例で確認する
設例(架空数値・単位は百万円)。売上高10,000、売上原価(出荷運賃を除く)6,200、出荷運賃300、その他の販管費2,000とします。出荷運賃をどちらに分類するかで、表示がどう変わるかを見ます。
- 運賃を販管費とする場合:売上総利益 = 10,000 − 6,200 = 3,800(38.0%)、販管費 = 2,000 + 300 = 2,300(23.0%)、営業利益 = 3,800 − 2,300 = 1,500(15.0%)
- 運賃を売上原価とする場合:売上総利益 = 10,000 − (6,200 + 300)= 3,500(35.0%)、販管費 = 2,000(20.0%)、営業利益 = 3,500 − 2,000 = 1,500(15.0%)
- 主要な費目の注記:販管費2,300の百分の十は 2,300 × 10% = 230。給料手当900や広告宣伝費400は230を超えるため、注記の対象になり得ます
営業利益は1,500で同じでも、売上総利益率は38.0%と35.0%、販管費率は23.0%と20.0%に分かれます。会社間で売上総利益率や販管費率を比べるときは、費用の区分基準をそろえる必要があります。
PL・BS・CFへの影響
販管費は営業利益、さらに当期純利益を通じて利益剰余金に反映されます。貸借対照表では、未払費用、前払費用、貸倒引当金などの科目と対応します。減価償却費のように現金支出のない費用は、販管費に含まれていても営業キャッシュフローで加算して調整します(営業キャッシュフローを参照)。
財務モデル・Excelでの使い方
- 勘定科目マッピング:試算表の勘定科目に「売上原価/販管費」の区分列を付けて集計します。作り方は月次試算表から財務モデルのHistoricalsを作る方法を参照してください。
- 費用の分解:人件費は
=人数*平均単価、広告宣伝費は=売上高*比率、賃借料は固定額で置き、固定費と変動費を分けて予測します。 - 検算:
=売上総利益-販管費-営業利益がゼロになることを確認し、区分の変更は過去期にも同じ基準で適用します。 - 注記の閾値:
=販管費合計*10%を超える費目にフラグを付け、主要な費目の抽出に使います。
この用語をExcelで
試算表から売上原価と販管費を区分して損益計算書を組み、販管費を固定費・変動費に分けて予測できるようになる。
実務家が確認するポイントとよくある誤解
誤解1:「販管費はすべて固定費」→ 広告宣伝費や販売手数料のように、売上に連動する費目もあります。予測では費目ごとに固定か変動かを分けます。
誤解2:「研究開発費は必ず販管費に入る」→ 一般管理費に含まれる場合と、当期製造費用に含まれる場合があります。財務諸表等規則は両者に含まれる研究開発費の総額の注記を求めています[1]。
誤解3:「販管費率が低い会社は効率的」→ 売上原価との区分基準が違うだけの場合があります。設例のように、運賃の分類で販管費率は3ポイント変わります。
確認ポイント:売上原価と販管費の区分方針(運賃・物流費・人件費など)が、比較対象と同じかを会計方針の注記で確認します。
日本実務での扱い
(2026年11月時点)日本基準の損益計算書は、財務諸表等規則に基づき、売上高、売上原価、販売費及び一般管理費、営業外収益などの区分で表示します[1]。連結財務諸表を作成している会社は、単体で研究開発費の総額の注記を省略できる規定があります[1]。IFRS会計基準第18号は、2027年1月1日以後開始する事業年度から適用され、営業損益の小計を要求します[2]。IFRS適用会社の費用の表示は一般に機能別または性質別で、日本基準の「販管費」という区分名がそのまま対応するわけではありません。費用の内訳開示の研究は売上原価の内訳開示は投資家の分析を変えるかで紹介しています。
面接・モデルテストで問われるポイント
Q:売上原価と販管費の違いは何ですか。区分が変わると何が変わりますか。
「売上原価は販売した商品や製品に対応する原価(製造業なら製造間接費を含む)で、販管費は販売や管理の活動にかかる費用です。区分を変えても営業利益は変わりませんが、売上総利益率と販管費率が変わるため、他社と比べるときは区分の基準をそろえる必要があります。」
深掘りの観点:業種による差(製造業と小売業)、研究開発費の分類。
よくある質問(F AQ)
Q. 減価償却費は売上原価と販管費のどちらに入りますか。
A. 対象の資産の用途で分かれます。製造に使う設備の減価償却費は製造原価に(販売した製品に対応する分が売上原価となり、未販売の分は棚卸資産に残ります)、本社や営業部門で使う資産の減価償却費は販管費に含まれるのが一般的です。会社ごとの方針を注記で確認します。
Q. 販管費に含まれる主な費目は何ですか。
A. 給料手当、広告宣伝費、販売手数料、減価償却費、賃借料、貸倒引当金繰入額などがあります。主要な費目と金額が注記される場合は、有価証券報告書の損益計算書関係の注記で確認できます。
出典・参考(2 026-11確認)
- e-Gov法令検索「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則」第70条、第75条、第84条、第85条、第86条、第87条、第89条. https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=338M50000040059(2026年11月参照)
- IFRS Foundation「IFRS 18 Presentation and Disclosure in Financial Statements」. https://www.ifrs.org/issued-standards/list-of-standards/ifrs-18-presentation-and-disclosure-in-financial-statements/(2026年11月参照)
※本記事は教育目的の一般的な解説であり、法務・税務・投資助言ではありません。設例は理解のための架空数値です。