この記事で分かること
- リース負債の測定方法(リース料・借手のリース期間・割引率)
- 5年リースの設例で、計上額・利息・元本返済の推移を計算
- EBITDA・ネットデット・EV/EBITDAにリース負債をどう揃えるか
- 日本の新リース会計基準(企業会計基準第34号)の適用時期と簡便的な取扱い
30秒で分かる定義
リース負債(りーすふさい、Lease Liabilities)とは、借手がリース期間中に支払うリース料のうち未払の部分を、利息相当額を除いた現在価値で負債に計上したものです。日本の企業会計基準第34号は、リース開始日にリース負債を計上し、その額は未払の借手のリース料から利息相当額の合理的な見積額を控除した現在価値で算定するとしています[1]。同じ額に付随費用などを加減したものが使用権資産になります。リース会計の全体像はリース会計のページで扱い、本ページは負債側の測定と評価実務での扱いに絞ります。
なぜ実務で重要なのか
店舗・物流施設・航空機などを借りて事業をする会社では、リース負債が有利子負債に匹敵する規模になることがあります。IB・PEはEVブリッジでリース負債を控除するかを決め、融資担当はコベナンツのレバレッジ比率にリース負債を含めるかを契約で定めます。経営企画は新基準の適用で総資産・負債比率がどう変わるかを事前に試算します。LBOモデルへの影響はリース会計をLBOモデルに組み込む方法で詳しく扱っています。
計算式(ま たは仕組み)
期末残高 = 期首残高 + 利息(期首残高 × 割引率) − 支払リース料
3つの要素はそれぞれ基準で定義されています。
- 借手のリース料:固定リース料、指数またはレートに応じて決まる変動リース料、残価保証に係る支払見込額、行使が合理的に確実な購入オプションの行使価額、解約違約金(解約オプションの行使を反映する場合)[1]。
- 借手のリース期間:解約不能期間に、行使が合理的に確実な延長オプションの期間と、行使しないことが合理的に確実な解約オプションの期間を加えた期間[1]。
- 割引率:貸手の計算利子率を知り得る場合はその利率、知り得ない場合は借手の追加借入に適用されると合理的に見積られる利率[2]。
利息相当額は原則として利息法で各期に配分します[1]。
整数設例で確認する
設例(架空数値)。単位は百万円。年100を毎年末に5年間支払う店舗リース、延長オプションなし、割引率4%(追加借入利子率)、使用権資産はリース期間で定額償却とします。
- 当初のリース負債 = 100 ÷ 1.04 + 100 ÷ 1.04² + … + 100 ÷ 1.04⁵ ≒ 445.2
- 1年目の利息 = 445.2 × 4% ≒ 17.8、元本返済 = 100 − 17.8 = 82.2、期末残高 ≒ 363.0
- 2年目の利息 ≒ 14.5、期末残高 ≒ 277.5。以後3年目188.6、4年目96.2、5年目0
- 使用権資産の償却 = 445.2 ÷ 5 ≒ 89.0/年。1年目の費用合計 = 89.0 + 17.8 ≒ 106.8(従来の賃借料なら100)
この会社のリース前のEBITDAが1,000、ネットデット(借入−現預金)が2,000とします。リース料100は営業費用から消え、償却費と利息に置き換わるため、EBITDAは 1,100 に増えます。ネットデットにリース負債を含めると 2,000 + 445.2 ≒ 2,445.2、ネットデット/EBITDAは 2.0倍 → 約2.22倍です。EV/EBITDA 8倍で評価する場合、EBITDA 1,100 × 8 = 8,800 からリース負債込みのネットデット2,445.2を引くと株式価値は約6,354.8です。リース負債を引かずに 8,800 − 2,000 = 6,800 とすると、リース料を除いて膨らんだEBITDAだけを使い、対応する負債を控除しない分だけ株式価値を高く見せてしまいます。
PL・BS・CFへの影響
BSでは使用権資産とリース負債が両建てで増え、リース負債は貸借対照表日後1年以内に支払期限が来る部分を流動負債、それ以外を固定負債に区分します[1]。PLでは賃借料の代わりに減価償却費と利息費用が計上され、日本の財務諸表等規則では「リース負債に係る利息費用」が営業外費用の科目として例示されています[3]。このため営業利益とEBITDAは増え、経常利益は期間の前半ほど減る傾向があります。現金の支払総額は変わりません。新基準の導入準備は新リース会計基準の導入準備で解説しています。
財務モデル・Excelでの使い方
- リーススケジュール:期首残高・利息(
=期首残高×割引率)・支払・期末残高の4行を年次で組みます。当初残高は=PV(割引率,期間,-年額)で検算できます。 - EVブリッジとの整合:「リース負債をネットデットに含める」スイッチを1セルに置き、ONならEBITDAはリース料控除前、OFFならリース料控除後を使うように連動させます。
- FCFの扱い:リース負債を負債として控除する場合、DCFのFCFからリース料(元本相当)を差し引くと二重計上になります。どちらか一方に寄せます。
この用語をExcelで
リース負債をネットデットに入れるかどうかで、EBITDA・FCF・株式価値が連動して変わるEVブリッジを組めるようになる。
実務家が確認するポイントとよくある誤解
誤解1:「リース負債は契約書の残りのリース料合計」→ 正しくは、現在価値です。設例では支払総額500に対し、負債は約445.2です。差額は今後の利息相当額です。
誤解2:「リース期間は契約期間と同じ」→ 正しくは、延長・解約オプションの行使可能性で変わります。店舗の自動更新のように、行使が合理的に確実なら期間に含めるため、負債が契約書の印象より大きくなることがあります。
誤解3:「どのリースも必ず計上」→ 正しくは、簡便的な取扱いがあります。借手のリース期間が12か月以内で購入オプションを含まない短期リースや、少額リースは、使用権資産とリース負債を計上せず費用処理することができます[2]。
確認ポイント:Compsでは、比較企業すべてでリース負債の扱いを揃えます。基準の適用時期が違う会社が混在する期間は特に注意します。
日本実務での扱い
(2026年11月時点)日本の企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」は2024年9月13日に公表され、2027年4月1日以後開始する連結会計年度・事業年度の期首から適用されます。2025年4月1日以後開始する年度の期首からの早期適用も認められています[1]。IFRS第16号は2019年1月1日以後開始する事業年度から適用されており、12か月超のリースについて原則として使用権資産とリース負債の計上を求めています(原資産が少額の場合を除く)[4]。日本基準の会社とIFRSの会社を比べる期間では、適用の有無を確認してから比率を計算します。買収価格の交渉でリース負債をデット類似項目として扱うかはDebt-like Items完全ガイドを参照してください。
面接・モデルテストで問われるポイント
Q:IFRS第16号を適用した会社のEV/EBITDAを、旧基準の会社と比べる際の注意点は。
「新基準の会社はリース料がEBITDAの外に出るのでEBITDAが大きく、その代わりEVにリース負債が加わります。分子と分母の片方だけ調整すると倍率がずれるので、両社ともリース込み(EBITDAはリース料控除前、EVにリース負債を加算)か、両社ともリース抜き(EBITDAからリース料を差し引き、EVにリース負債を入れない)のどちらかに揃えます。」
深掘りでは「割引率を上げると負債はどう変わるか(小さくなる)」「変動リース料のうち売上連動分は負債に入るか」が問われます。
よくある質問(F AQ)
Q. 売上に連動する変動賃料もリース負債に含めますか?
A. 日本の新基準で借手のリース料に含めるのは、指数またはレートに応じて決まる変動リース料です[1]。売上高の一定割合で決まる賃料や使用量に連動する賃料は、原則としてリース負債の計上額に含めないこととされています[1]。ただし、形式上は変動し得ても実質的に支払が不可避なものや、変動可能性が解消されて支払額が固定化したものは、固定リース料と同様に含めます[1]。
Q. 割引率が分からない場合はどうしますか?
A. 貸手の計算利子率を知り得ない場合は、借手が同様の条件で追加借入をすると仮定した利率を合理的に見積もって使います[2]。
出典・参考(2 026-11確認)
- 企業会計基準委員会 企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」(2024年9月13日公表、2026年10月改正)第15項・第31項・第33項〜第36項・第50項・第58項・BC41〜BC43. https://www.asb-j.jp/jp/wp-content/uploads/sites/4/ecl20261016_15.pdf(2026年11月参照)
- 企業会計基準委員会 企業会計基準適用指針第33号「リースに関する会計基準の適用指針」第4項(2)・第20項・第22項・第37項. https://www.asb-j.jp/jp/wp-content/uploads/sites/4/ecl20261016_23.pdf(2026年11月参照)
- e-Gov法令検索「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則」第93条. https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=338M50000040059(2026年11月参照)
- IFRS Foundation「IFRS 16 Leases」. https://www.ifrs.org/issued-standards/list-of-standards/ifrs-16-leases/(2026年11月参照)
※本記事は教育目的の一般的な解説であり、法務・税務・投資助言ではありません。設例は理解のための架空数値です。