この​記事で​分かる​こと

  • エクイティ配当率(EDR)の定義と、キャップレートとの違い
  • 借入金利とキャップレートの差がリターンに与える影響(正・負のレバレッジ)
  • 整数設例によるEDRの検算方法
  • 日本の不動産私募ファンド実務での使われ方(2026年8月時点)

30秒で​分かる​定義

エクイティ配当率(Equity Dividend Rate、略称EDR)とは、投資家が投じた自己資金(エクイティ)に対する、年間の税引前キャッシュフロー(借入の元利金返済後)の割合を示す指標です。「キャッシュオンキャッシュ・​リターン​(Cash-on-Cash Return)」と呼ばれることも多く、実質的に同じ概念です。物件全体の収益力を無借入ベースで示すキャップレートに対し、EDRは借入を活用した後の自己資金ベースの利回りを示す点が異なります。キャップレートを求める代表的な手法は直接還元法で解説しています。

なぜ実務で​重要なのか

不動産私募ファンドの運用担当者・アセットマネージャーは、レバレッジをかけた後の投資家向けリターンを説明する際、キャップレートではなくEDRを提示します。個人投資家・不動産投資教育の文脈でも、自己資金に対する年間利回りとして最も直感的に理解しやすい指標です。レンダーは、借入条件(金利・LTV)を変更した場合にEDRがどう変化するかを、借り手の返済余力の目安として参照します。

計算式​(または仕組み)

EDR = 税引前キャッシュフロー(BTCF、元利金返済後) ÷ 投下自己資金

BTCF(Before-Tax Cash Flow)は、NOIから借入の元利金返済額(利息+元本返済がある場合はその分も含む)を控除した金額です。元金返済を含めるか(Amortizing)、含めないか(Interest Only)で計算結果が変わるため、レポートでどちらの前提を使っているかを明示しなければ、数値の比較を誤りかねません。

整数設例で​確認する

設例(架空数値)。物件F(取得価格1,000百万円)を例にします。

  • NOI=60百万円 → キャップレート=60÷1,000=6.0%
  • 借入(LTV60%)=600百万円、金利2.0%(元本据置・利息のみ支払いと仮定)
  • 年間支払利息=600×2.0%=12百万円 / 自己資金(エクイティ)=1,000−600=400百万円
  • BTCF=NOI60−支払利息12=48百万円

EDR=48÷400=12.0%。キャップレート6.0%に対しEDRは12.0%と、借入金利(2.0%)がキャップレート(6.0%)を下回っているため、レバレッジが自己資金の利回りを押し上げています(正のレバレッジ)。仮に金利が7.0%(キャップレートを上回る水準)だった場合、支払利息=600×7.0%=42、BTCF=60−42=18、EDR=18÷400=4.5%となり、キャップレート6.0%を下回ります(負のレバレッジ)。金利がキャップレートを上回るか下回るかが、レバレッジが利回りにプラスに働くかマイナスに働くかの分岐点になります。

投資判断への​影響

EDRの水準だけでなく、その水準がどの程度のレバレッジ(LTV)と金利水準の組み合わせで作られているかを分解して見る必要があります。低金利環境で高いLTVを使えば表面上のEDRは高くなりますが、金利上昇局面ではEDRが急速に悪化するリスクがあります。投資判断では、金利変動シナリオごとにEDRを再計算し、正のレバレッジが負のレバレッジに転じる金利水準(この設例では6.0%)を把握しておくと、金利上昇局面でのリスク管理に役立つ材料です。

財務​モデル・​Excelでの​使い方

物件モデルでは、無借入ベースのNOI・キャップレートの行と、借入後のBTCF・EDRの行を分けて設計します。

  • 元利金返済の前提を明示:Interest OnlyかAmortizingかを切替可能なスイッチにし、EDRの数値がどちらの前提かをラベルで明示します。
  • LTV感応度テーブル:LTVを40%〜70%等で振ったときのEDRの変化を一覧化し、正・負のレバレッジの境界を可視化します。
  • 金利感応度テーブル:借入金利を変数化し、キャップレートとの大小関係でEDRがどう動くかを確かめられる設計です。

この​用語を​Excelで​「組める」​状態に​する

​キャップレートと​EDRを​分離し、​LTV・​金利の​感応度​分析まで​組み込んだ​不動産投資​モデルを​作れるようになる。

​不動産​ファイナンス​教材で​実装手順を​見る →

実務家が​確認する​ポイントと​よく​ある​誤解

  • 誤解1「EDRとキャップレートは同じもの」→ 正しくは、キャップレートは無借入ベース(物件全体)の利回り、EDRは借入後の自己資金ベースの利回りで、レバレッジ次第で大きく乖離します。
  • 誤解2「レバレッジをかければ必ず利回りが上がる」→ 正しくは、借入金利がキャップレートを上回る場合(負のレバレッジ)、レバレッジはむしろ自己資金利回りを押し下げます。
  • 確認ポイント:①BTCFの算定でInterest OnlyかAmortizingかを明示しているか、②EDRは税引前指標であり実際の税引後の手取りとは異なる点、③変動金利の場合の金利上昇リスク。

日本実務での​扱い

(2026年8月時点)日本の不動産私募ファンド実務でも、EDRと同じ概念が「キャッシュオンキャッシュ・リターン」あるいは「自己資金配当率」という呼称で広く使われています。EDRという呼び方自体は米国の不動産投資教材・実務でよく使われる用語で、日本ではキャッシュオンキャッシュ・リターンとIRR(内部収益率)を併用して投資採算を検討するのが一般的です。ノンリコースローンを用いる私募ファンドのスキームでは、元利均等返済かインタレストオンリーかによって自己資金配当率が大きく変わるため、いずれの前提かをレポート上で明示することが望ましいとされています。

面接・​モデルテストで​問われる​ポイント

Q:キャップレートとEDR(キャッシュオンキャッシュ・リターン)の違いを、レバレッジの効果と併せて説明してください。
「キャップレートは無借入ベースでNOIを取得価格で割った、物件全体の収益力を示す指標です。EDRは借入後の税引前キャッシュフローを自己資金で割った、投資家の自己資金ベースの利回りです。借入金利がキャップレートを下回れば、レバレッジによってEDRはキャップレートより高くなります(正のレバレッジ)。逆に金利がキャップレートを上回れば、EDRはキャップレートより低くなります(負のレバレッジ)。」

深掘りでは「金利上昇局面でEDRがどう変化するか」が問われます。

よく​ある​質問​(FAQ)

Q. EDRとキャッシュオンキャッシュ・リターンは違う指標ですか?
A. 実質的に同じ概念を指す別名です。不動産鑑定・機関投資家向けの資料ではEDR、投資家向けの実務資料ではキャッシュオンキャッシュ・リターンという呼称が使われる傾向がありますが、計算式は基本的に共通です。

Q. EDRが高ければ良い投資対象といえますか?
A. 一概には言えません。高いEDRが高いLTV(過大な借入)によって作られている場合、金利上昇時のリスクも同時に大きくなっているため、EDRの水準だけでなくその内訳(LTV・金利)まで確認する必要があります。

出典・参考​(2026-08確認)

※本記事は教育目的の一般的な解説であり、法務・税務・投資助言ではありません。設例は理解のための架空数値です。

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