この記事で分かること
- EGI(有効総収入)の定義と、PGI・NOIとの位置関係
- 空室・貸倒損失、その他収入を反映した計算式
- 整数設例によるPGIからEGI・NOIまでの計算と検算
- 財務モデルの不動産プロフォーマでのEGIの組み方
30秒で分かる定義
EGI(有効総収入、Effective Gross Income)とは、満室・全区画が契約賃料どおりに入居している状態を想定した潜在総収入(PGI:Potential Gross Income)から、空室損失・貸倒損失を差し引き、駐車場収入等のその他収入を加えた金額です。「実効総収入」とも呼ばれます。不動産プロフォーマ(収支計画)を作るときの中間ステップであり、EGIから運営費用(オペレーティングエクスペンス)を控除するとNOI(純営業収益)に至ります。
なぜ実務で重要なのか
- アクイジション担当・アセットマネジャー:レントロールから積み上げたPGIを、空室率や滞納実績を反映した現実的な収入水準(EGI)に落とし込む工程で必ず使います。
- REITアナリスト・鑑定士:不動産の収益還元評価では、PGIをそのまま使うと収益性を過大評価します。EGI・NOIへの積み下げ過程を確認することが評価の妥当性検証の第一歩です(NOI自体の計算方法はNOIとはで解説しています)。
- レンダー:融資審査でのキャッシュフロー予測は、楽観的なPGIではなく、保守的なEGI・NOI水準を基準に行われます。
計算式(または仕組み)
NOI = EGI − 運営費用(管理費・修繕費・保険料・PM費用等)
PGIは「全区画が市場賃料または契約賃料で満室稼働した場合」の理論上の収入です。実際には入退去のタイムラグ(フリクショナル・ボイド)や滞納が発生するため、その分を空室損失・貸倒損失として控除し、現実的な収入水準に調整したものがEGIです。EGIはNOIそのものではなく、運営費用を控除する前の段階である点に注意が必要です。
整数設例で確認する
設例(架空数値・単位:百万円)。賃貸マンション1棟のPGI(全戸満室想定の年間賃料)を200とします。
- PGI:200
- 空室損失(空室率5%相当):200×5%=10
- 貸倒損失(賃料の0.5%相当):200×0.5%=1
- その他収入(駐車場・自販機収入):5
EGI = 200 − 10 − 1 + 5 = 194。さらに運営費用を80とすると、NOI = 194 − 80 = 114。検算:200−10=190、190−1=189、189+5=194、194−80=114、いずれも整合します。この物件を利回り5.7%で取得したとすると、取得価格=114÷5.7%=2,000(検算:2,000×5.7%=114)となります。
投資判断への影響
投資検討時にPGIだけを見ると、収益性を過大評価するリスクがあります。特に、売主が提示するプロフォーマのPGIが市場実勢よりも高い賃料前提で組まれていないか、空室損失率が過去実績より楽観的でないかは、買収デューデリジェンスでの定番の確認事項です。EGIの水準は、その後のNOI・キャップレート・取得価格の妥当性判断すべての出発点になるため、PGIからEGIへの調整過程(空室率・貸倒率の前提根拠)を必ず検証します。
財務モデル・Excelでの使い方
- プロフォーマの最上段に置く:レントロールから積み上げたPGI行の下に、空室損失率・貸倒損失率をパーセント入力セルとして持ち、EGI行を数式で計算します。
- 感応度分析の起点にする:空室率の前提を3%・5%・8%と変えたときにEGI・NOI・取得可能価格がどう動くかを一覧化すると、投資委員会での議論が具体的になります。
- その他収入は別行で管理:駐車場・広告看板等の収入は賃料と変動要因が異なるため、合算せず別行に置き、前提の根拠を残します。
この用語をExcelで「組める」状態にする
PGIからEGI・NOIまでの積み下げをプロフォーマ上に組み、空室率の感応度分析ができるようになる。
実務家が確認するポイントとよくある誤解
- 誤解「EGI=NOI」→ 運営費用控除前の段階。EGIはあくまで収入サイドの調整値であり、運営費用を引く前です。両者を混同すると、キャップレート計算の分子を誤ります。
- 誤解「空室損失率=空室率」→ 物理的空室率と経済的空室率は別。フリーレント期間中は物理的には稼働していても賃料収入が発生しないため、経済的な空室損失は物理的な空室率だけでは捉えきれません。
- 確認ポイント:その他収入の持続性。一時的な収入(解約違約金等)を経常的なその他収入に含めていないかを確認します。
日本実務での扱い
(2026年8月時点)日本の不動産鑑定評価やJ-REITの開示では、PGI・EGIという用語がそのまま使われることは少なく、「総収入」「空室等損失」といった呼称で同様の積み下げ計算が行われます。不動産鑑定評価では収益還元法(直接還元法・DCF法)の適用にあたり、総収入から空室等損失相当額や運営費用を控除して純収益を求める考え方が用いられており、構造としてはPGI→EGI→NOIの積み下げと同じです。投資法人の資産運用にあたる開示・監督の枠組みは金融庁が所管しています。
面接・モデルテストで問われるポイント
Q:EGIとNOIの違いを説明してください。
「EGIはPGI(満室想定の理論上の収入)から空室損失・貸倒損失を控除し、その他収入を加えた実質的な収入水準です。NOIはさらにそこから管理費・修繕費等の運営費用を控除した純収益です。EGIは収入サイドの調整、NOIは費用控除後の収益という違いがあります。」(30秒回答例)
深掘りでは「空室損失率の前提はどう検証するか」(過去実績・市場調査データとの比較)が問われます。
よくある質問(FAQ)
Q. PGIとEGIの差が大きい物件はどう評価すべきですか?
A. 差が大きい(空室・貸倒損失率が高い)ことは、テナント属性や物件競争力に課題がある可能性を示します。差の原因が構造的なものか一時的なものかを個別に確認する必要があります。
Q. 駐車場収入はEGIに含めますか?
A. 含めます。ただし賃料収入とは変動要因が異なるため、モデル上は別行で管理し、稼働率や外部貸出の前提を分けて置くのが実務的です。
出典・参考(2026-08確認)
- 金融庁(投資法人の資産運用・開示制度に関する情報)(https://www.fsa.go.jp/)
- 日本取引所グループ(J-REITの開示制度関連情報)(https://www.jpx.co.jp/)
※本記事は教育目的の一般的な解説であり、法務・税務・投資助言ではありません。設例は理解のための架空数値です。