この​記事で​分かる​こと

  • 法人税法の支配関係(50%超)と完全支配関係(100%)の定義と、「一の者」の範囲
  • 間接保有の判定方法(掛け算ではなく、支配している法人を通じた合算)
  • 完全支配関係の判定で除かれる従業員持株会・ストックオプション行使株式(5%未満)
  • 適格組織再編、グループ法人税制、欠損金の引継ぎ制限でどう使われるか

30秒で​分かる​定義

支配関係(しはいかんけい)とは、一の者が法人の発行済株式等(自己株式を除く)の総数の50%を超える株式を直接または間接に保有する関係、または一の者との間にその関係がある法人相互の関係をいいます。完全支配関係(かんぜんしはいかんけい)とは、一の者が法人の発行済株式等の全部を直接または間接に保有する関係、またはその関係がある法人相互の関係をいいます。[1]「一の者」が個人の場合は、その個人と親族など特殊の関係のある個人を合わせて判定します[2]。英語では Control Relationship / Full Control Relationship と訳されます。会社法の親子会社や会計上の連結の範囲とは別の、税務上の概念です。

なぜ実務で​重要なのか

組織再編税制とグループ法人税制の多くの規定は、当事者間に支配関係・完全支配関係があるかを入口にしています。M&A・FAS・税理士は、合併や会社分割が適格になるか、繰越欠損金を引き継げるかを判定するとき、まず両社の関係と、その関係がいつから続いているかを確認します。PEは、買収SPCと対象会社の合併(いわゆるデット・プッシュダウン)や、カーブアウト後のグループ内再編で、完全支配関係の成立時期と継続見込みを設計します(LBO・​カーブアウトの​ストラクチャー​税務入門)。

仕組み:判定の​方法

論点支配関係(50%超)完全支配関係(100%)
分母発行済株式等(自己株式を除く)同左。さらに従業員持株会(民法上の組合)が取得した株式と、会社法第238条第2項等の決議により役員・使用人(元役員・元使用人とその相続人を含む)に付与された新株予約権の行使で取得され、その役員等が現に保有している株式の合計が5%未満ならその株式も除く(第三者に譲渡された株式は除外されない)
間接保有一の者と、一の者が直接支配する法人が合わせて50%超を持つ法人は、一の者が50%超を持つとみなす一の者と、一の者が直接完全支配する法人が合わせて全部を持つ法人は、一の者が全部を持つとみなす
主な用途適格合併・分割等の要件(支配関係型)、欠損金の引継ぎ・使用制限グループ法人税制、受取配当の完全子法人株式等、適格要件(完全支配関係型)

間接保有は、持株比率を掛け合わせるのではなく、一の者が直接支配(または直接完全支配)している法人の保有分を合算して判定します[2]。このみなし保有は階層ごとに順次当てはめるため、P→A→B→Cがいずれも60%なら、PとCの間にも支配関係があります(完全支配関係も同様です)。完全支配関係の判定で除かれる従業員持株会は、使用人だけが組合員で、その法人の株式の取得を主たる目的とする民法上の組合に限られます[2]。

支配関係:(一の者+その者が直接支配する法人)の保有株式 ÷ 発行済株式等(自己株式除く) > 50%
完全支配関係:同じ合算で全部(持株会・SO行使株式が合計5%未満ならその分を分母から除く)

整数設例で​確認する

設例(架空数値)。

①間接保有:P社はA社株式の60%を保有し、A社はB社株式の60%を保有、P社自身はB社株式を持っていません。掛け算では 60% × 60% = 36% ですが、法人税法ではP社がA社を直接支配しているため、A社の保有分60%をP社の保有とみなし、P社とB社の間に支配関係があります。

②完全支配関係:C社の発行済株式10,000株のうち自己株式500株、親会社S社9,200株、従業員持株会(使用人のみの民法上の組合)300株。分母 = 10,000 − 500 = 9,500株、持株会の割合 = 300 ÷ 9,500 ≒ 3.2% < 5% なので持株会の300株を除き、分母は 9,500 − 300 = 9,200株。S社の保有 9,200 ÷ 9,200 = 100% で完全支配関係があります。持株会が人格のない社団として運営されている場合や、合計が5%以上の場合は除かれず、完全支配関係になりません。

案件​プロセス​上の​位置付け

支配関係・完全支配関係は、組織再編の税務上の結論を大きく変えます。適格要件:合併では、完全支配関係がある場合(継続見込みなど政令の要件あり)は対価要件を満たせば適格、支配関係がある場合は対価要件に加えて従業者のおおむね80%以上の引継ぎと主要事業の継続見込みを満たせば適格になります[1]。欠損金:支配関係がある法人間の適格合併等で、支配関係が合併事業年度開始の日の5年前の日、両社の設立日のうち最も遅い日から継続していない場合、共同事業の要件を満たさないと、被合併法人から引き継ぐ未処理欠損金額(第57条第3項)や合併法人自身の欠損金額(同条第4項)の一部がないものとされます[1]。グループ法人税制:完全支配関係がある内国法人間の譲渡損益調整資産の譲渡損益の繰延べ、法人による完全支配関係がある法人間の寄附金の損金不算入と受贈益の益金不算入、完全子法人株式等の配当の全額益金不算入などが適用されます[1]。詳細は適格組織再編成要件とグループ​法人税制で扱います。

財務​モデル・​Excelでの​使い方

グループの資本関係を「保有者・被保有者・株式数・取得日」の表で持ち、被保有会社ごとに発行済株式数・自己株式数・持株会株式数・SO行使株式数を並べます。直接支配の判定(保有比率>50%)をフラグにし、親会社と直接支配子会社の保有を合算する列で間接保有を判定します。みなし保有で支配関係が認められた法人の保有分も次の階層で合算に加え、判定結果が変わらなくなるまで階層ごとに繰り返します(孫会社・ひ孫会社まで判定)。欠損金の制限の検討では、支配関係が成立した日(取得日)と「5年前の日」をDATE関数で比較し、継続保有期間の要件を満たすかを表示します。課税所得への影響は会計利益から​課税所得を​組むの別表四の考え方と組み合わせます。

この​用語を​実務で​「使える」​状態に​する

資本関係​表から​支配関係・​完全支配関係と​その​成立日を​判定し、​再編の​適格性と​欠損金の​制限を​検討できるようになる。

M&Aの​教材で​組織再編と​税務の​確認手順を​学ぶ →

実務家が​確認する​ポイントと​よく​ある​誤解

誤解1:「孫会社への間接保有は持株比率を掛けて判定する」→ 正しくは、直接支配している法人の保有分を合算して判定します。[2]設例①のように掛け算で36%でも支配関係が成立します。

誤解2:「従業員持株会があれば完全支配関係はない」→ 正しくは、使用人だけが組合員の民法上の組合で、ストックオプション行使株式と合わせて5%未満なら、その株式を除いて判定します。[2]

誤解3:「完全支配関係があれば、いつでも欠損金を引き継げる」→ 正しくは、関係の継続期間(5年前の日などから継続しているか)や共同事業要件を確認する必要があります。[1]

日本実務での​扱い

(2026年11月時点)支配関係は法人税法第2条第12号の7の5、完全支配関係は第12号の7の6で定義され、判定方法は法人税法施行令第4条の2に定められています[1][2]。完全支配関係は、資本金1億円以下の法人が大法人(資本金5億円以上の法人など)の100%子法人等に当たるかの判定にも使われ、該当すると中小企業向けの特例が適用されなくなります[3]。地方税でも、外形標準課税の対象となる大規模法人の子会社の判定に、法人税法の完全支配関係の定義が用いられています[4]。M&Aでは、株式の取得日、持株会の法的性格、新株予約権の残存状況をDDで確認し、再編のスケジュールを決めます。

面接・​モデルテストで​問われる​ポイント

Q:買収した会社をすぐに買収SPCと合併すると、対象会社の繰越欠損金はどうなりますか。
「SPCと対象会社の間には買収時に支配関係が成立しますが、合併事業年度開始の日の5年前の日や両社の設立日のうち最も遅い日から支配関係が継続していない場合は、共同事業要件を満たさない限り欠損金の引継ぎや使用が制限されます。買収で新たに支配関係ができたケースでは、この制限に当たるかを最初に確認します。」

深掘りでは、SPCの設立日が最も遅い日に当たる場合の扱いや、みなし共同事業要件を問われます。

よく​ある​質問​(FAQ)

Q. 個人株主が兄弟で100%を持つ2社の間に完全支配関係はありますか?
A. 「一の者」が個人の場合はその個人と特殊の関係のある個人(親族など)を合わせて判定するため、同じ一の者に全部を保有される法人相互の関係として、完全支配関係があり得ます[2]。

Q. 議決権ではなく株式数で判定しますか?
A. 支配関係・完全支配関係は発行済株式等の数(出資は金額)で判定します[1]。議決権でも判定する同族会社の判定とは異なります。

出典・参考​(2026-11確認)

  1. e-Gov法令検索「法人税法」(昭和四十年法律第三十四号)第2条第12号の7の5・第12号の7の6・第12号の8、第23条第1項・第5項、第25条の2第1項、第37条第2項、第57条第3項・第4項、第61条の11第1項. https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=340AC0000000034(2026年11月参照)
  2. e-Gov法令検索「法人税法施行令」(昭和四十年政令第九十七号)第4条第1項、第4条の2. https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=340CO0000000097(2026年11月参照)
  3. 国税庁「No.5800 一定の大法人等の100%子法人等における中小企業向け特例措置の不適用について」(令和8年4月1日現在法令等). https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5800.htm(2026年11月参照)
  4. e-Gov法令検索「地方税法」(昭和二十五年法律第二百二十六号)第72条の2第1項第1号ロ. https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=325AC0000000226(2026年11月参照)

※本記事は教育目的の一般的な解説であり、法務・税務・投資助言ではありません。設例は理解のための架空数値です。

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