この​記事で​分かる​こと

  • 法人税法上の同族会社の定義(上位3株主グループ・50%超・同族関係者の範囲)
  • 同族会社に適用される主な規定:行為計算の否認(第132条)と特定同族会社の留保金課税(第67条)
  • 相続税の株式評価でいう「同族株主」(30%基準)との違い
  • 中小企業M&A・PEによる買収後に判定がどう変わるか

30秒で​分かる​定義

同族会社(どうぞくがいしゃ、Family Company)とは、会社の株主等の3人以下と、これらと特殊の関係のある個人・法人が、その会社の発行済株式または出資(自己株式を除く)の総数・総額の50%を超える株式を有する場合などの会社をいいます。[1]「3人以下」とは株主グループを3つまで合算するという意味で、各グループには株主の親族などの個人や、その株主が支配する会社が含まれます[2]。株式数のほか、一定の議決権の50%超を有する場合にも同族会社になります[2]。

なぜ実務で​重要なのか

日本の中小企業の多くはオーナー一族が株式の大半を持ち、同族会社に当たるのが一般的です。同族会社であることを前提に、取引の税務否認や内部留保への追加課税が定められているため、税理士・FASは事業承継や組織再編の設計で判定を最初に確認します。M&A仲介・PEは、買収後の持株構成で特定同族会社の留保金課税が新たにかかるかを、資本金や親会社の規模とあわせて検討します。相続税の株式評価(配当還元方式を使えるか)とは判定基準が別である点も、資産承継の相談で混同されやすい論点です(資産承継の​金融実務)。

仕組み:判定の​手順

手順内容根拠
①株主をグループ化株主ごとに、親族・事実婚の相手・使用人・生計を維持されている者などの特殊関係個人と、その株主が支配する会社(50%超保有等)をまとめる。議決権の判定では、その株主の意思と同一の内容の議決権を行使することに同意している者の議決権も、その株主が有するものとみなす法人税法施行令第4条第1項〜第4項・第6項
②上位3グループを合計持株数の多い順に3グループまで合計する法人税法第2条第10号
③50%超か判定発行済株式等(自己株式を除く)の50%超、または事業譲渡・合併等、役員選任、役員報酬、剰余金配当のいずれかの議決権の50%超(議決権を行使できない株主分を除く)で判定。合名会社・合資会社・合同会社では、社員(業務を執行する社員を定めた場合はその社員)の総数の半数超を占める場合も該当第2条第10号、施行令第4条第5項
④特定同族会社か1グループで50%超を持つ被支配会社のうち、判定の基礎となった株主に被支配会社でない法人があればその法人を除いても被支配会社となるもの。資本金1億円以下の会社は大法人の100%子会社等に限り対象。清算中は除く第67条第1項・第2項

同族会社に適用される主な規定は次の2つです。行為計算の否認:税務署長は、同族会社の行為・計算で、容認すると法人税の負担を不当に減少させる結果となるものがあるとき、それにかかわらず課税標準等を計算できます[1]。特定同族会社の留保金課税:留保金額が留保控除額を超える場合、超える部分に年3,000万円以下10%、3,000万円超1億円以下15%、1億円超20%の特別税率を上乗せします。留保控除額は、所得等の金額の40%、年2,000万円、利益積立金額が資本金の25%に満たない部分のうち最も多い額です[1]。

同族会社の判定:上位3株主グループの持株数 ÷ 発行済株式等(自己株式を除く) > 50%
留保金課税の対象額 = 留保金額 − 留保控除額(所得等の金額×40%、年2,000万円、利益積立金の不足額のうち最大)

整数設例で​確認する

設例(架空数値)。発行済株式1,000株(自己株式なし・議決権は1株1個)。A家(創業者・配偶者・長男)300株、B氏と同氏が全株を持つ会社150株、C氏80株、残り470株は互いに関係のない少数株主です。

①同族会社の判定:上位3グループ = 300 + 150 + 80 = 530株、530 ÷ 1,000 = 53% > 50% で同族会社です。最大グループのA家は30%で50%を超えないため、被支配会社(1グループで50%超)には当たらず、特定同族会社の留保金課税は受けません。

②留保金課税の計算:別の会社で、資本金3億円、1グループが70%を保有する特定同族会社とします。所得等の金額300百万円、法人税等を控除した後の留保金額200百万円、利益積立金額は資本金の25%以上と置きます。留保控除額 = max(300 × 40% = 120、20、0)= 120百万円。対象額 = 200 − 120 = 80百万円。特別税率による税額 = 30 × 10% +(80 − 30)× 15% = 3 + 7.5 = 10.5百万円です。所得等の金額が500百万円なら控除額は200百万円となり、課税は生じません。

投資判断への​影響

留保金課税は、利益を配当せず社内に留める特定同族会社の税負担を増やすため、配当政策や資本金の水準の決め方に影響します。資本金1億円以下の会社は原則として対象外ですが、資本金5億円以上の法人などによる完全支配関係がある普通法人は、中小企業向け特例の不適用と同様に留保金課税の対象となり得ます[3]。買い手がPEファンドのSPCや事業会社1社であれば、買収後も1株主で50%超を持つため同族会社・被支配会社のままです。ただし特定同族会社に当たるかは、判定の基礎となった株主が被支配会社でない法人(株主が分散した上場会社など)の場合にその法人を除いて判定し直すため、親会社の株主構成によって結論が変わります[1]。買収後の資本構成(増資で資本金1億円超になるか、親会社が大法人か、親会社自身が被支配会社か)によって追加の税負担が生じないかを、ストラクチャー検討の段階で確認します。完全支配関係の判定は支配関係・​完全支配関係​(法人税法)で扱います。

財務​モデル・​Excelでの​使い方

株主名簿を「株主名・グループID・株式数・議決権数」の表にし、グループIDごとにSUMIFで合計、LARGE関数で上位3グループを取り出して発行済株式等(自己株式控除後)で割ります。議決権基準でも同じ表で判定します。名簿上の株式数・議決権数だけでなく、同一内容の議決権行使に同意している者の議決権を該当する株主のグループに帰属させてから集計します(施行令第4条第6項)。持分会社では社員数(業務執行社員を定めた場合はその社員数)の基準も加え、いずれかの基準で50%超(社員数は半数超)なら同族会社とフラグを立てます。事業計画モデルで特定同族会社に当たる場合は、税金計算シートに留保金額・留保控除額(3つの候補のMAX)・区分税率の行を追加し、配当額を変えると税額が動くようにしておくと、配当政策のシミュレーションに使えます。判定は事業年度終了時の現況で行う点(第67条第8項)も前提欄に書きます[1]。

この​用語を​実務で​「使える」​状態に​する

株主名簿から​同族会社・​特定同族会社を​判定し、​買収後の​資本構成で​留保金課税が​生じるかを​確認できるようになる。

M&Aの​教材で​税務​ストラクチャーの​確認手順を​学ぶ →

実務家が​確認する​ポイントと​よく​ある​誤解

誤解1:「同族会社=家族経営の会社」→ 正しくは、法人税法の形式基準で判定します。家族と無関係な3社が合計50%超を持つ会社も同族会社です。逆に創業家の会社でも上位3グループが50%以下なら該当しません。

誤解2:「同族会社なら必ず留保金課税がかかる」→ 正しくは、対象は特定同族会社(1グループ50%超の被支配会社で、被支配会社でない法人株主を除いても被支配会社となるもの)で、資本金1億円以下の会社は大法人の完全子会社等を除き対象外です。[1]

誤解3:「相続税評価の同族株主も50%超で判定する」→ 正しくは、財産評価基本通達の同族株主は、株主1人と同族関係者の議決権合計が30%以上(最大グループが50%超の会社では50%超)のグループです。[4]同じ「同族」でも目的と基準が異なります。

日本実務での​扱い

(2026年11月時点)定義は法人税法第2条第10号、同族関係者の範囲と議決権基準は法人税法施行令第4条、行為計算の否認は第132条、特定同族会社の特別税率は第67条に定められています[1][2]。行為計算の否認の判定は行為・計算の事実があった時の現況、留保金課税の判定は事業年度終了時の現況によります[1]。法人税申告書には同族会社等の判定に関する明細書を添付する実務が一般的で、M&Aの税務DDでは過去の申告書でこの判定と留保金課税の有無を確認します。相続税・贈与税の株式評価では、財産評価基本通達188の同族株主の定義が別に用いられ、法人税法施行令第4条の同族関係者の範囲を参照しています[4]。

面接・​モデルテストで​問われる​ポイント

Q:PEファンドがオーナー企業を100%買収した後、その会社は同族会社に当たりますか。
「当たります。法人税法の同族会社は上位3株主グループで50%超を持つかで判定するため、買収SPCが1社で全株を持てば同族会社で、1グループ50%超の被支配会社にも当たります。ただし留保金課税の対象となる特定同族会社に当たるかは、親会社が被支配会社でない法人ならその親会社を除いて判定し直すこと、資本金が1億円以下なら資本金5億円以上の法人などとの完全支配関係があるかで変わるので、買収SPCより上の株主構成と資本金を確認します。」

深掘りでは、相続税評価の同族株主との違いや、議決権基準での判定を問われます。

よく​ある​質問​(FAQ)

Q. 自己株式は判定でどう扱いますか?
A. 分母の発行済株式等から会社が有する自己株式を除き、会社自身も判定上の株主等から除きます[1]。

Q. 議決権のない株式が多い会社は?
A. 株式数基準のほか、事業譲渡・合併、役員選任、役員報酬、剰余金配当に関する議決権のいずれかについて、行使できない株主の議決権を除いた総数の50%超を持つ場合も同族会社になります[2]。

出典・参考​(2026-11確認)

  1. e-Gov法令検索「法人税法」(昭和四十年法律第三十四号)第2条第10号、第67条第1項〜第5項・第8項、第132条. https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=340AC0000000034(2026年11月参照)
  2. e-Gov法令検索「法人税法施行令」(昭和四十年政令第九十七号)第4条. https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=340CO0000000097(2026年11月参照)
  3. 国税庁「No.5800 一定の大法人等の100%子法人等における中小企業向け特例措置の不適用について」(令和8年4月1日現在法令等). https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5800.htm(2026年11月参照)
  4. 国税庁「財産評価基本通達」第8章第2節 188(同族株主以外の株主等が取得した株式). https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/sisan/hyoka_new/08/04.htm(2026年11月参照)

※本記事は教育目的の一般的な解説であり、法務・税務・投資助言ではありません。設例は理解のための架空数値です。

共有: