この記事で分かること

  • 投資銀行の資料でグラフが従う共通規律——「数字が主役、線は脇役」
  • Excel標準グラフを提出品質へ変える10の手順(チェックリスト形式)
  • チャート種類別の定石(推移・構成・ブリッジ・レンジ)と、円グラフを使わない理由

思想:装飾を足すのではなく、ノイズを引く

プロの資料のグラフが美しく見えるのは、装飾が多いからではなく情報を持たない要素が徹底的に削られているからです。グリッド線・凡例・目盛・影・立体効果——デフォルトのExcelグラフはノイズの塊です。仕上げとは引き算のことだと覚えてください。

提出品質への10手順

表1:仕上げチェックリスト
#手順
1グラフタイトルは図の外(セル側)に「図◯:メッセージ」で置き、グラフ内タイトルは削除
2単位を右上に明記(単位:百万円)——本サイトの図表と同じ作法
3横グリッド線を削除(または極薄に)。縦グリッドは原則削除
4データラベルを系列に直置きし、凡例を削除(系列が多い時のみ凡例を残す)
5Y軸を削除または最小限(ラベルが数字を持つなら軸は不要)
6色はコーポレートパレット(紺系)で統一し、強調は1色だけ(金・濃紺)。彩度の高い既定色は全滅させる
7フォントを資料本文と統一し、サイズは8-10pt級に整える
8軸の範囲・目盛間隔を手動固定(自動のままだと更新で見た目が動く)
9系列の並び・色を「凡例なしでも読める」順序に(時系列は左→右、比較は大→小)
10グラフのサイズ・位置をセルに合わせ(Altドラッグ)、複数グラフの寸法を統一

チャート種類別の定石

  • 推移(時系列):棒(実績)+線(率)の複合が定番。期間は奇数年で「起点→現在」を語る。
  • 構成:円グラフは使わない(面積の比較は人間の目に不向き・IB資料ではほぼ禁じ手が通例)。100%積み上げ棒か横棒で代替。
  • ブリッジ:ウォーターフォール(透明下駄の構築手順)。増減の因数分解はこれ一択。
  • レンジ:フットボールチャート(積み上げ横棒方式)。評価サマリーの標準。
  • 相関:散布図+回帰線(例:ROE×P/B、金融機関Comps)。外れ値にラベルを。

速度の技術

  • テンプレート化:仕上げた1個を「テンプレートとして保存」し、次回から右クリック→グラフの種類の変更で適用。10手順を毎回やらないのが本当の実務です。
  • データ側で制御:強調したい系列だけ別列に分ける・表示用に丸めた補助行を作る——グラフ側でこねくり回すより、ソースの設計(下駄の計算表の発想)で解決する方が再現性があります。
  • 色の管理:RGB値をチームで共有(本サイトなら紺#14355F系)。「だいたい同じ青」が資料全体の素人感を作ります。

Q. なぜ円グラフは嫌われるのですか?

A. 角度・面積の比較は棒の長さの比較より人間の知覚精度が低く、構成比の僅差が読めないからです。さらに項目が多いと崩壊します。100%積み上げ棒なら同じ情報をより正確に、時系列比較まで拡張して見せられます。

Q. 3Dグラフやグラデーションは使ってよいですか?

A. 提出資料では避けるのが無難です。3Dは値の読み取りを歪め、装飾は情報を持ちません。「その要素を消したら伝わらなくなるか?」で判定し、答えがNoなら消す——これが引き算の基準です。

まとめ

  • 仕上げは引き算:グリッド・凡例・軸・装飾を削り、ラベル直置きで数字を主役に。
  • 種類の定石:推移は棒+線、構成は100%積み上げ(円は使わない)、増減はブリッジ、評価はレンジ。
  • テンプレート化と色のRGB管理で速度と統一感を両立する。

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本記事について

本文中の数値例はすべて理解のための設例であり、実在の企業・案件とは関係ありません。制度・実務慣行に触れる箇所は一般的傾向の整理です。個別案件への適用時は必ずその時点の一次情報・専門家にご確認ください。