この記事で分かること
- 米国の上場会社の売却604件で、売り手が接触した買い手候補の数がどう分布し、7社以下の案件で対象会社の株価リターン・取り分・対案の頻度がどう違ったか
- 「入札者が多いほど高く売れる」という通念と結果が食い違う理由を、買い手の評価の似かよい方(相関)で説明する理論と、その証拠の強さ・限界
- 日本の売り手・FA(M&Aアドバイザー)が入札者リストの社数を決めるときに確かめる項目と、招待数の根拠を数値で説明する設例
想定読者:売り手側のFA・投資銀行・M&A仲介の実務家、売却を検討する企業の経営企画・特別委員会の関係者、PEファンドの売却担当
前提知識:入札(オークション)型の売却プロセスの流れ(専門用語は本文で説明します)
売却の準備でロングリストに50社が並んだとする。何社に声をかけ、秘密保持契約を結んで情報を渡すか。競争を厚くすれば価格は上がる、というのが教科書の直感である。一方で、声をかける先が増えるほど情報が広がり、経営陣の時間も削られる。
米国の研究者5人がこの問いを理論と実データで扱った。上場会社の売却を一件ずつ読むと、売り手が接触した買い手候補の数は2社から20社超までばらつき、接触が少ない案件ほど対象会社の株主が得た価値は大きかった。本稿は、これを「少なく招けば高く売れる」と読んではいけない理由も含めて整理し、日本の売却実務で確かめる点を考える。
この記事が主に参照する研究
Bruce I. Carlin, Tingting Liu, Micah S. Officer, Agathe Pernoud, Danni Tu(2026)「Bidder Pools in Mergers and Acquisitions」NBER Working Paper No. 34846
- 公表:確認できた最初の版は2026年1月23日付の学会(M&A Research Centre Conference)掲載稿。NBERのワーキングペーパーは2026年2月。参照した版:2026年1月23日付の掲載稿。NBER版の本文と、SSRN 上のより新しい改訂の有無は未確認。査読:未査読(ワーキングペーパー)1
- データ:米国S&P 1500構成の上場会社を対象とする合併のうち、売却過程で2社以上の買い手候補と接触した604件(2005〜2019年公表・完了)。接触数は開示資料の売却の経緯から手作業で収集2
- 方法:売り手が招く数を選ぶ理論モデルと、回帰分析による検証。相関の分析で、因果の識別はしていない
- 位置づけ:「オークションか相対交渉か」という従来の二分法の内側にある差(招く数)に注目した新しい理論と、手作業で集めたデータによる検証
「入 札者が多いほど高く売れる」は、何を前提にした話か
オークション理論の古典的な結論の一つに、交渉の工夫を凝らすより入札者を1社増やすほうが売り手の期待収入は高い、というものがある(Bulow and Klemperer, 1996)。ただし入札者の数が売り手の選択と無関係に与えられている(外生的である)なら、その通りだ。しかし米国では1989年のParamount対Time判決以降、売却過程は対象会社の取締役会が主導する色合いが強まり、誰を招くかも売り手が決める3。招く数が売り手の判断の結果なら、「招いた数が少ない案件は不利だった」とは限らない。
言葉を三つ押さえる。一つ目は入札者プール(bidder pool)で、売り手が売却過程で接触した買い手候補の集まりを指す。二つ目は買い手の評価の相関である。論文のモデルでは、各買い手が対象会社につける価値を、全員に共通する部分(市場環境や対象会社そのものの収益力など)と、買い手ごとに違う部分(その買い手だけが得るシナジーなど)の加重和で表す。共通部分の比重が大きいほど、買い手の評価は似かよう。同業の事業会社ばかりが並ぶ案件は、相関が高い典型として論文が挙げる例だ4。三つ目は対案(カウンターオファー)で、入札の後に売り手が最高入札者へ「この価格なら売る」と示し、受けるか断るかを迫る提示である。
競り上げ型や、最高入札者が2番目の入札額を払う方式(二位価格)では、売り手の収入は2番目に高い評価額の期待値になり、最高評価と2番目の評価の差が勝者に残る「取り分」になる。
理論の予測:買い手が似ているほど、招く数は少なくてよい
モデルでは、売り手は1社招くごとに費用を負う。情報開示で機密の価値が下がることや、協議の手間を表す。売り手はこの費用と、招く数を増やして得られる期待収入の上積みを比べて数を決める5。
買い手の評価が似かよっていれば、2番目の評価は最高の評価に近くなる。少ない社数でも競争圧力が十分にかかり、さらに1社増やして得られる上積みは小さい。論文の命題1は、最適な招待数が相関の高さとともに減り、費用の高さとともにも減ることを示す。命題2は、相関が高いほど売り手の期待収入が高いことを示すが、相関が高まっても取引全体の価値(総余剰)が大きく減らないという仮定を置いている6。
ここから、データで見分けられる二つの説明が出てくる。招く数の差が主に費用の違いで生まれているなら、招く数が少ない案件ほど競争が弱く、売り手の取り分は小さいはずだ。逆に相関の違いで生まれているなら、招く数が少ない案件ほど売り手の取り分は大きいはずだ。論文はさらに、入札後に最高入札者へ対案を出せる仕組みが売り手の収入を最大にすること、相関が一定の範囲にあるとき参加者が少ないほど対案を出す確率が高いことも示した7。
研究が示した結果:接触が7社以下の案件で、対象会社の取り分は大きかった
まず、招く数のばらつきは大きい。604件のうち、接触した買い手候補が2〜4社の案件は194件(32%)で最も多く、5〜7社が113件(19%)と続く。中央値は7社で、7社以下が全体の約半数を占める。一方で21社以上に接触した案件も125件(21%)あった(図1)。年ごとの平均は9.2〜27.6社、中央値は3〜11社で、著者らは金融危機の2008〜2009年に少なかったと述べている8。
次に、相関と招く数の関係である。論文は買い手の相関を直接は観察できないため、対象会社と同じ業種で時価総額が対象会社より大きい企業同士の、取引開始前1年の日次株価リターンの平均相関で代用した。業種の分け方を3通り使い、平均は0.338〜0.351だった。接触が中央値以下の案件では相関が高く(2桁SIC基準で0.374対0.327)、差は1%水準で有意だった9。接触数の対数を被説明変数にした回帰でも、相関の係数は−0.771〜−1.482と負で有意である。著者らは、相関(テキストで定義した業種基準)が1標準偏差高いと、接触数がおよそ19.82%少ないと計算している。ただし掲載表の係数と標準偏差から編集部が計算し直すと約16.5%で、一致しない10。
支払手段との関係も出ている。現金と株式の混合払いを基準にすると、現金のみの案件は接触数が多く、株式のみの案件は少なかった。株式などの条件付きの対価を使えるときは少数相手の交渉が有利になりうる、という先行理論と整合する結果だと著者らは位置づける11。
中心となる結果は図2にまとめた。接触が中央値(7社)以下の案件を1とする変数の係数を、成果の指標ごとに並べている。
対象会社の株価リターン(公表105取引日前から完了までの、市場全体を差し引いた累積の異常収益率)は、接触が7社以下の案件で6.7〜7.5%ポイント高く、6通りの推計のすべてで1%水準で有意だった。業種の相関や固定効果、支払手段、公開買付けか、企業規模などを統制した後の値である12。買い手の株価リターン(公表前後11取引日)は逆に2.2〜2.5%ポイント低く、5%水準で有意だった。こちらは買い手が上場している301〜305件に限られる13。
では、接触が少ない案件はもともと価値の大きい取引だったのか。両社の時価総額で加重した合計の株価反応(シナジーの代理指標)については、係数が0.005〜0.009と小さく、統計的に有意な関係は確認されなかった。他方、対象会社の超過リターン金額から買い手の超過リターン金額を引き、両社の時価総額の合計で割った「相対的な取り分」は、接触が7社以下の案件で3.3〜4.1%ポイント高く、1%水準で有意だった14。さらに、接触が7社以下の案件では、対象会社が売却過程で対案を出した確率が16.2〜17.3%ポイント高かった。標本全体で対案を出した対象会社は41%である15。
著者らは、招く数を絞った対象会社は良い案件に恵まれたのではなく、良い条件を引き出したと解釈する。データは費用の説明ではなく相関の説明と整合し、相関が高い買い手が並ぶ案件では多くを招く必要がないから招く数が少ない、という読み方である16。
研究の対象・方法と限界:「少 なく招けば高く売れる」とは読めない
最大の留保は、因果関係を示していないことだ。著者ら自身、招く数は対象会社が選んだ結果で、外生的な変動や操作変数が見つからなかったと明記し、因果の効果として読まないよう求めている17。
標本にも限りがある。対象は米国のS&P 1500に入る上場会社で、取引が完了した案件だけだ。売却過程を始めたものの成立しなかった案件は含まれない。少数に絞って失敗した案件が標本から落ちていれば、少数の案件の成績は良く見えやすい。この選択の偏りについて、本稿が読んだ版では著者らは正面から論じていない(編集部の指摘)。相関の指標も業種内の大企業同士の株価の連動で、実際に招かれた買い手の評価が似ていたかを測ったものではない18。
頑健性の検証では、金融危機期(2007年12月〜2009年6月)を除くと、対象会社のリターンの差は4.5〜4.7%ポイントに縮み、有意水準も5%になった。接触数を四分位で表した推計でも、接触が多いほど対象会社のリターンと相対的な取り分が低いという向きは保たれた19。研究段階はワーキングペーパーで査読前であり、2026年2月のNBER版では要旨の表現が一部変わっている。数値が改訂されている可能性は残る20。
先行研究では、1990年代の米国で売却過程の非公開の段階まで調べたBoone and Mulherin(2007)が、対象会社の約半数が複数の買い手によるオークションで、残りは1社との交渉で売られ、対象会社株主の富の効果は両者で同程度だったと報告した21。Aktas, de Bodt and Roll(2010)は、相対交渉でも潜在的な競争相手の存在がプレミアムを押し上げ、オークションの運営費用はプレミアムを下げると報告している22。本研究は、こうした比較で同じ箱に入れられてきた2社以上の案件の内側に差があると主張する点で新しい。著者らは、予備的な入札ラウンドの役割や、売り手が売却の仕組みを選ぶ余地を今後の課題に挙げている23。
大手町プレップの考察:招待数は「結 果」であり、根拠を言語化すべき判断である
以下は編集部の推論である。持ち帰れるのは「何社が正解か」ではなく、招待数を決める論理の立て方だと考える。追加の1社が価格を押し上げる力は、既存の候補と違う評価の源泉を持つかで変わる。同業のストラテジックバイヤーが似たシナジーを見込んで並んでいるなら、さらに同じ型の買い手を加えても2番目の評価はあまり動かない。逆に、販路や技術の組み合わせが違う買い手、資本構成の考え方が違うPEファンドは、評価の分布を広げる。ロングリストの社数を数えるより、評価の源泉がいくつあるかを数えるほうが、研究の論理に近い。
もう一つは、少数で進めるなら価格を引き出す手順も考えておくべきだという点だ。論文の理論は、招待数の結果(命題1・2)とは別に、入札後に最高入札者へ対案を出せる仕組みが売り手の収入を最大にすることを示し、データでも少数の案件ほど対象会社は対案を出していた。日本の入札でのBAFO(最良最終提案)の要請や条件の逆提示は実務上の類似点と考えられるが、モデルの対案は敗れた入札者の入札額に応じて提示額を決め、その決め方を売り手が事前に約束できる前提に立つ点で、同じ仕組みではない。
反対に、この研究を「多く招くのは無駄」の根拠に使うのも誤りだと考える。自社の案件の相関が高いかは別に見積もる必要があり、評価の源泉が多様な案件で社数を絞れば、競争の不足で価格を失いうる。
日本の実務への応用:入札者リストの社数をどう説明するか
日本に当てはめる際の違いを先に挙げる(いずれも編集部の見方で、日本のデータで検証されたものではない)。第一に、研究の対象は米国のS&P 1500に入る上場会社だ。非上場の中堅・中小企業の売却のように買い手候補の母集団が小さい案件であれば、同じ「7社」でも意味が違いうる。第二に、米国の標本では現金のみの案件が64%、株式のみが7%で、株式を含む対価が一定の比重を占める24。第三に、上場会社の非公開化や支配株主による買収で他の買い手候補への打診(マーケット・チェック)の範囲が論点になる場合、日本の制度上の扱いは本稿では確認していないため、法務の助言者に確かめてほしい。研究の論理は、打診先の数より、なぜその範囲にしたかを説明する材料になりうる。
実務の場面に落とすと、売り手側のFAが取締役会や特別委員会に入札者リストを示す際、「何社に声をかけるか」とあわせて「その社数で競争が足りると判断した理由」を書くことが考えられる。理由の柱は、研究のモデルが挙げる二つ、すなわち候補の評価がどれだけ似ているか(相関)と、1社増やすごとの負担(情報の広がり、ディールリークの危険、経営陣の時間)である。候補の型ごとに整理すれば、絞る判断にも広げる判断にも根拠が残る。絞り込みの手順は
学習用の設例:招待数の根拠を数字で示す
学習用の設例(架空)
- 売却する会社の価値を上回って買い手がつける評価=相関×共通部分+(1−相関)×買い手ごとの部分。買い手ごとの部分は0〜100億円の一様分布で、買い手どうし独立
- 売却方式は二位価格(または競り上げ)。売り手は1社招くごとに費用を負う(基本ケース1億円)
- モデルの形はR1から借り、分布と数値は編集部の仮定。日本企業の実績値ではない
この仮定のもとでは、招く数を1社増やしたときの期待収入の上積みは、(1−相関)×100億円×2÷{(現在の社数+1)×(現在の社数+2)}で計算できる。勝者に残る取り分の期待値は、(1−相関)×100億円÷(社数+1)だ25。たとえば5社から6社に増やす上積みは、相関0なら4.76億円、相関0.8なら0.95億円にとどまる。上積みが1社あたりの費用を下回る手前で招くのをやめれば、最適な招待数が決まる。
表1 学習用の設例(架空):最適な招待数と落札者の期待の取り分
表は横にスクロールできます →
| 条件 | 最適な招待数 | 最後の1社の上積み | 次の1社の上積み | 落札者の期待の取り分 |
|---|---|---|---|---|
| 相関 0.0・費用 1億円 | 13社 | 1.10億円 | 0.95億円 | 7.14億円 |
| 相関 0.3・費用 1億円 | 11社 | 1.06億円 | 0.90億円 | 5.83億円 |
| 相関 0.6・費用 1億円 | 8社 | 1.11億円 | 0.89億円 | 4.44億円 |
| 相関 0.8・費用 1億円 | 5社 | 1.33億円 | 0.95億円 | 3.33億円 |
| 相関 0.3・費用 0.5億円 | 16社 | 0.51億円 | 0.46億円 | 4.12億円 |
| 相関 0.3・費用 1.0億円 | 11社 | 1.06億円 | 0.90億円 | 5.83億円 |
| 相関 0.3・費用 2.0億円 | 7社 | 2.50億円 | 1.94億円 | 8.75億円 |
| 相関 0.3・費用 4.0億円 | 5社 | 4.67億円 | 3.33億円 | 11.67億円 |
表1の上の4行は、費用を1億円に固定して相関を変えた場合だ。相関が0なら13社まで招くのが最適だが、相関0.8では5社で足りる。そして勝者に残る期待の取り分は7.14億円から3.33億円へ小さくなる。ただし売り手の期待収入は共通部分の期待値にも左右され、この設例では共通部分を仮定していないため、相関が違う案件どうしの売り手の収入の高低は確かめていない。下の4行は、相関を0.3に固定して費用を変えた場合で、費用が4億円に上がると招待数は5社に減り、勝者の取り分は11.67億円に増える。相関が同じなので、こちらは招く数が少ないほど売り手の期待収入(招待の費用を引く前)が低い。
図3は、同じ「招待数が少ない」という結果が、背後の理由によって逆の意味を持つことを示す。研究のデータは相関の線に近かったというのが著者らの主張で、自社の案件がどちらの線に乗るかを見極めるのが売り手とFAの仕事になる。費用が理由で社数を絞る案件では、競争の不足を対案や条件の設計で補う工夫が考えられる。
明日から使える確認項目
以下は編集部が研究の論理から組み立てた項目で、研究が検証した手順ではない。社数の閾値は置いていない。
- 評価の源泉で候補を分類する:ロングリストの各社に「この会社が高い評価をつける理由」を1行で書き、同じ理由の会社をまとめる。グループの数が、競争の実質的な厚みの目安になる。チェック項目は「上位10社のうち、同じシナジーを見込む会社が何社あるか」
- 追加の1社の効果を問う:招待先を1社増やす提案が出たら、「その会社は既存の候補と違う評価の源泉を持つか」「2番目に高い入札を押し上げる見込みがあるか」を確認する。答えが否なら、情報開示の負担と比べて見送る理由になる
- 1社あたりの負担を見積もる:競合への情報流出の影響、経営陣の面談時間、段階的な情報開示で抑えられる部分を列挙し、判断材料として記録する
- 少数で進めるなら価格を引き出す手順を先に決める:最終入札の後に最高入札者へ対案を出すか、誰がその権限を持つか、プロセスレターでどこまで予告するかを、入札開始前に取締役会・特別委員会と合意しておく
- 対価の形と候補の範囲を照らす:現金で買える買い手に絞る案件と、株式や条件付きの対価が交渉の論点になる案件では、適切な候補の範囲が違いうる(研究では現金のみの案件で接触数が多かった)
- 案件後に記録を残す:接触した社数、秘密保持契約の締結数、一次・最終の入札社数、最終価格と2番目の価格の差を残し、自社の案件群で社数と価格の関係を後から検証できるようにする
よくある質問
この研究に従えば、声をかける買い手候補は7社以下にすべきですか。
いいえ。7社は標本の中央値で、推奨値ではありません。研究が示したのは相関で、因果関係ではありません。社数は候補の似かよい方と1社あたりの負担から案件ごとに判断する必要があります。
買い手の立場では、この研究をどう読めばよいですか。
研究の標本では、接触数が少ない案件で買い手の株価リターンが低い傾向がありました
まとめ
米国の上場会社の売却604件では、売り手が接触した買い手候補は2社から20社超までばらつき、7社以下の案件で対象会社の株価リターンと取り分が高く、対案も多かった。合計の価値創造との間には統計的に有意な関係は確認されず、取り分の配分が違ったというのが著者らの読み方である。ただし結果は相関であり、成立した案件だけを見ている。日本の売り手とFAにとっての教訓は、社数の正解ではなく、評価の源泉と1社あたりの負担から招待数の根拠を説明し、少数で進めるなら価格を引き出す手順まで設計することにある。
脚注
- R1(学会掲載稿, 2026年1月23日付)p.1の日付表示。R2(NBERの論文ページ)は Working Paper 34846・Issue Date February 2026。共著者の一人(Tingting Liu)の履歴書(R6)では本稿の発表先は 9th Annual Mergers & Acquisitions Research Centre Conference(2026)のみで、それ以前の版・旧題は確認できませんでした(2026年10月25日確認。著者個人ページの過去の保存版は未確認)。NBER版のPDFは本稿の確認時に閲覧できず、本文は未確認です。↩
- R1(学会掲載稿)p.13〜14(4.1節・4.2.1節)。SDCの公表・完了した合併のうち、対象会社が上場(S&P 1500構成)、取引額100万ドル以上、買い手が50%以上を取得し、EDGARで合併の開示資料を確認できるもの。著者らは開示資料を読み、売却過程に関わった買い手候補の数を数えています。↩
- R1(学会掲載稿)p.2(1節。Brown, Liu and Mulherin, 2022を引用)、p.4〜5(入札者数の外生性の指摘)、p.5(2節。Bulow and Klemperer, 1996の要約)。↩
- R1(学会掲載稿)p.8(3節)。買い手 i の評価を vi = αω + (1−α)εi(ωは共通成分、εiは買い手ごとの成分、αが相関の度合い)と置き、同業の会社が並ぶ場合を α が高い例として挙げています。↩
- R1(学会掲載稿)p.8(3節)。費用は、相手方との協議にかかる時間や、DDで外部に情報が渡るほど機密情報の価値が下がることを表すと説明されています。↩
- R1(学会掲載稿)p.9(命題1)、p.10(命題2。期待総余剰が相関とともに大きく減らないための仮定 E(ω) ≥ E(ε(2:N)) を置く)。↩
- R1(学会掲載稿)p.10(命題2の後の段落。費用による説明と相関による説明の対立仮説)、p.11〜13(命題3・命題4)。命題4は相関がある値以下の範囲で成り立ち、対案の効果は相関に対して単調ではないと著者らは述べています(p.13)。↩
- R1(学会掲載稿)p.16〜17(4.3.1節)・p.29(図1の件数)、p.16と表1パネルA(p.31)の年別の平均・中央値(平均は表の値9.2〜27.6社を示した。本文p.16は9〜27社と記載)。2〜4社の割合は本文では31%と記載されていますが、件数(194÷604)から計算すると約32.1%のため、本稿は件数から計算した値を示しました。著者らは、真剣な買い手は7社程度までしか扱えないという実務家の発言も紹介しています(p.17 脚注10、Subramanian, 2020からの引用)。↩
- R1(学会掲載稿)p.14〜15(4.2.1節)、表2パネルA(p.33)・パネルB(p.34)。業種は2桁SIC、Fama-French 48業種、テキスト分析に基づく業種(TNIC2)の3通り。↩
- R1(学会掲載稿)p.18〜20(5.1節)、表3(p.35〜36)。係数は接触数の自然対数に対するもの。1標準偏差あたり19.82%は著者の計算(p.20、表3の列6)です。編集部が表3の係数(−1.482、p.35)と表2の標準偏差(0.122、p.33)から検算すると、対数で約18.1%、変化率に直すと約16.5%の減少で、著者の数値とは一致しません(回帰に使った標本の標準偏差の違いなどが考えられますが、未確認)。↩
- R1(学会掲載稿)p.18〜19(5.1節)、表3(p.35)。接触数の対数に対する係数は、現金のみが+0.227〜+0.261、株式のみが−0.348〜−0.497(基準は混合払い)。先行理論は R5(Hoffmann and Vladimirov, 2025)。↩
- R1(学会掲載稿)p.20〜21(5.2節)、表4(p.37〜38)。表の係数は比率表示で0.067〜0.075(本文では%ポイントに換算)。業種固定効果を入れた列と入れない列の計6通り。↩
- R1(学会掲載稿)p.21〜22(5.2節)、表5(p.39〜40)。係数は−0.022〜−0.025、観測数は301〜305件。↩
- R1(学会掲載稿)p.22〜23(5.3節)、表6(p.41)・表7(p.43)。相対的な取り分の係数は表7では0.033〜0.041ですが、本文(p.23)は「0.035〜0.041、約4%ポイント」と記しています。本稿は表の値を使いました。シナジーの代理指標は公表前後11取引日の両社の累積超過リターンを時価総額で加重したもの、相対的な取り分は Ahern(2012)の方法によるものです。↩
- R1(学会掲載稿)p.24(5.4節)、表8(p.45)。対案を1回以上出した割合41%は表1パネルB(p.32)。↩
- R1(学会掲載稿)p.4(1節)、p.21(5.2節)、p.23(5.3節)。↩
- R1(学会掲載稿)p.5(1節)、p.10(3節)、p.21(5.2節)。↩
- R1(学会掲載稿)p.13〜14(4.1節。完了した案件に限定、S&P 1500に限定)、p.14〜15(相関の指標の定義)。↩
- R1(学会掲載稿)付表6(p.56。金融危機期を除いた推計)、付表7(p.57。接触数の四分位を使った推計。対象会社のリターンと相対的な取り分の係数は負で1%有意、シナジーは有意でない)。↩
- R2(NBERの論文ページ)の要旨は、R1の要旨に「より同質な(評価の相関が高い)買い手」という言い換えが加わっていますが、結論の内容は同じです。NBER版の本文と数値は未確認です。↩
- R3(Boone and Mulherin, 2007)の要旨による。本文は未確認です。↩
- R4(Aktas, de Bodt and Roll, 2010)。本稿はR1 p.6〜7(2節)の要約に基づき、R4の本文は未確認です。↩
- R1(学会掲載稿)p.25(6節)。↩
- R1(学会掲載稿)表1パネルB(p.32)。残りは現金と株式の混合払い。↩
- 編集部の計算。R1 p.9が示すとおり、二位価格などの標準的な方式では売り手の期待収入は2番目に高い評価の期待値になります。共通成分は全員に同じなので順位に影響せず、買い手ごとの成分が0〜S の一様分布なら、n社の中で2番目に高い値の期待値は S(n−1)/(n+1)、最高値の期待値は S·n/(n+1) です。この差から上積みと勝者の取り分の式が出ます。共通成分の分布には依存しません。↩
参考文献(2 026年10月確認)
- R1 Carlin, B. I., T. Liu, M. S. Officer, A. Pernoud and D. Tu (2026), “Bidder Pools in Mergers and Acquisitions,” 9th Annual Mergers & Acquisitions Research Centre Conference 掲載稿(2026年1月23日付). 参照した版:同掲載稿(Bayes Business School 公開PDF、63ページ)。査読:未査読(WP)。 bayes.citystgeorges.ac.uk (参照箇所:本稿が根拠にした版。脚注1〜19・22〜25の根拠(ファイル名は Negotiauctions だが中身は本論文)。閲覧日:2026年10月)
- R2 Carlin, B. I., T. Liu, M. S. Officer, A. Pernoud and D. Tu (2026), “Bidder Pools in Mergers and Acquisitions,” NBER Working Paper No. 34846. DOI: 10.3386/w34846. 参照した版:NBERの論文ページ(要旨・書誌、2026年2月)。本文は未確認。査読:未査読(WP)。 nber.org (参照箇所:書誌・公表日・要旨の照合。脚注1・20の根拠。閲覧日:2026年10月)
- R3 Boone, A. L. and J. H. Mulherin (2007), “How Are Firms Sold?,” The Journal of Finance 62(2), 847-875. DOI: 10.1111/j.1540-6261.2007.01225.x. 参照した版:要旨(Crossref)。査読:済。 doi.org (参照箇所:先行研究の要旨。脚注21の根拠。閲覧日:2026年10月)
- R4 Aktas, N., E. de Bodt and R. Roll (2010), “Negotiations under the threat of an auction,” Journal of Financial Economics 98(2), 241-255. DOI: 10.1016/j.jfineco.2010.06.002. 参照した版:書誌(Crossref)とR1 p.6〜7の要約。査読:済。 doi.org (参照箇所:先行研究。脚注22の根拠。閲覧日:2026年10月)
- R5 Hoffmann, F. and V. Vladimirov (2025), “Auctions versus Negotiations: The Role of the Payment Structure,” The Journal of Finance 80(3), 1769-1813. DOI: 10.1111/jofi.13446. 参照した版:要旨(Crossref)とR1 p.5・p.17〜18の要約。査読:済。 doi.org (参照箇所:支払手段と売却方式の理論。脚注11の根拠。閲覧日:2026年10月)
- R6 Tingting Liu, Curriculum Vitae(2026年版), Haslam College of Business, University of Tennessee. haslam.utk.edu (参照箇所:本論文の発表歴(初出の確認)。脚注1の根拠。閲覧日:2026年10月)
※本記事は教育目的の一般的な解説であり、投資助言・法務・税務の助言ではありません。研究結果は各論文の対象・期間・方法の範囲で得られたもので、日本の個別企業・案件にそのまま当てはまるとは限りません。設例は学習用の架空の数値です。アイキャッチ画像は生成AIによるイメージです。