この記事で分かること

  • 外国人投資家が日本の不動産に投資する際に使われる直接保有・TMK・GK-TK・不動産保有法人株式という4つの取得ストラクチャーの違い
  • 賃料収入・匿名組合分配・配当への源泉徴収(20.42%)、土地等の譲渡対価への源泉徴収(10.21%)という、国税庁が公表する具体的な税率と例外条件
  • 租税条約が不動産所得・不動産の譲渡益についてはあまり軽減効果を持たない理由
  • 外為法に基づく不動産取得の事後報告(取得後20日以内)と、重要土地等調査法に基づく特別注視区域内の事前届出という、税務とは別の規制手続き

結論:どのストラクチャーでも日本の課税権は基本的に維持される

外国人投資家が日本の不動産に投資する場合、実務で使われるストラクチャーは大きく4つに整理できます。個人や外国法人が不動産そのものを直接保有する方法、資産流動化法に基づくTMK(特定目的会社)を使う方法、合同会社(GK)と匿名組合(TK)を組み合わせたGK-TKスキームを使う方法、そして不動産を保有する既存の日本法人の株式を取得する方法です。どのストラクチャーを選んでも変わらない大原則は、賃料収入・不動産の譲渡益・そこから生じる分配や配当のいずれについても、不動産の所在地国である日本が課税権を維持するという点です。国税庁の公表資料によれば、非居住者や外国法人に国内不動産の賃借料を支払う際は20.42パーセント、非居住者等から国内の土地等を購入した際の譲渡対価には10.21パーセントの税率で源泉徴収を行う義務があり、TMKの配当やGK-TKの匿名組合分配についても同じく20.42パーセントの源泉徴収が適用されます。租税条約を締結している相手国であっても、不動産所得や不動産の譲渡益については所在地国に課税権が残る構成になっているのが一般的で、大きな税率の軽減は期待しにくいというのが実務上の前提です。加えて、税務とは別に、外為法に基づく取得後20日以内の事後報告と、対象地が重要土地等調査法の特別注視区域に該当する場合の事前届出という、規制上の手続きも押さえる必要があります。以下では、この4つのストラクチャーの課税関係の概観、租税条約の考慮、外為法・重要土地等調査法の手続き、そしてストラクチャー選択の実務判断軸を順に整理します。なお、本記事で示す税務上の整理は一般的な内容にとどまり、投資家の国籍・居住形態・適用される租税条約によって結論が変わり得るため、実際の投資に際しては税理士・弁護士等の専門家への確認が必須である点をあらかじめお断りしておきます。

4つの取得ストラクチャーの全体像

直接保有は、非居住者個人や外国法人が日本国内の土地・建物を自らの名義で取得する、もっとも単純なストラクチャーです。仲介や登記の手続きは国内の取引と大きくは変わりませんが、課税関係は非居住者向けの特別な取り扱いが適用されます。TMKは、資産の流動化に関する法律に基づいて設立される株式会社型の器で、特定社債や優先出資により資金を調達し、租税特別措置法上の導管性要件を満たすことで支払配当を損金に算入し、法人段階と投資家段階の二重課税を実質的に回避する仕組みです。GK-TKは、会社法上の合同会社(GK)が事業主体(匿名組合の営業者)となり、複数の投資家が匿名組合契約(TK契約)に基づいて出資する形態で、TMKと同様に匿名組合分配の損金算入により導管性を確保します。不動産保有法人株式の取得は、対象不動産をすでに保有している通常の日本法人(株式会社)の株式そのものを買収する方法で、TMKやGK-TKのような特別な導管性要件は適用されず、法人段階では通常の法人税課税を受けます。TMKとGK-TKそれぞれの法的な仕組み・整数設例・リスク配分の詳細はTMK・GK-TKスキームの実務に委ね、本記事ではクロスボーダー投資家にとっての税務・規制面の違いに絞って整理します。

ストラクチャー保有主体典型的な資金調達導管性(二重課税排除)
直接保有投資家本人(個人・外国法人)自己資金・海外での借入等法人段階の課税が発生しない(該当なし)
TMK特定目的会社(内国法人)特定社債・優先出資・ノンリコースローン配当可能利益の90%超配当等の要件を満たせば損金算入
GK-TK合同会社(匿名組合の営業者)匿名組合出資・ノンリコースローン匿名組合分配は原則として営業者の損金に算入
不動産保有法人株式既存の日本法人(株式会社)株式譲渡対価・法人による通常の借入導管性要件の適用なし(通常の法人課税)
表1:外国人投資家が使う4つの取得ストラクチャーの基本的な特徴。TMK・GK-TKの導管性要件の詳細な計算例はGK-TKスキーム・TMKの用語ページを参照。

保有中の所得に対する源泉徴収:賃料・匿名組合分配・配当

直接保有の場合、賃借人(テナント)が非居住者や外国法人である賃貸人に賃料を支払う際、賃借人は原則としてその支払額の20.42パーセントを源泉徴収し、翌月10日(国外払いで支払者が国内に住所等を有する場合は翌月末日)までに納付する義務を負います。この義務は賃借人が個人であっても法人であっても生じますが、土地・家屋等を自己またはその親族の居住の用に供するために借り受けた個人が支払う賃料は対象外です。源泉徴収された税額は最終的な納税額そのものではなく、非居住者は日本国内に納税管理人を選任したうえで確定申告を行うことで、源泉徴収税額の精算や還付を受けられる場合があります。

TMKやGK-TKを使う場合、賃料そのものはテナントからTMK(内国法人)やGK(内国法人)に直接支払われるため、直接保有のような非居住者向け源泉徴収は生じません。課税関係が発生するのは、TMK・GKの段階で得た収益を投資家に分配する局面です。TMKが投資家に支払う配当は、上場株式等以外の配当として20.42パーセントの源泉徴収の対象となり、GK-TKにおいて営業者であるGKが匿名組合員(TK投資家)に支払う利益の分配も、匿名組合契約等に基づく利益の分配として同じく20.42パーセントの源泉徴収の対象になります。不動産保有法人株式のストラクチャーでも構造は同様で、賃料は保有法人の益金となり通常の法人税課税を受けたうえで、非居住者株主への配当は非上場株式の配当として20.42パーセントの源泉徴収が適用されます(発行済株式の3パーセント以上を保有する非居住者が受ける上場株式配当は15.315パーセントですが、非上場の不動産保有法人株式では通常この上場株式向けの税率は適用されません)。いずれのストラクチャーでも、保有段階の所得が最終的に非居住者投資家の手元に届くタイミングで20.42パーセントの源泉徴収という共通のハードルが存在する、という点が実務上の整理の起点になります。

売却時の譲渡益課税:資産譲渡と株式譲渡の違い

直接保有の不動産を売却する場合、買主が非居住者等に譲渡対価を支払う際は10.21パーセントの税率で源泉徴収を行う義務があります。この義務は法人・個人を問わず生じますが、個人の買主が自己またはその親族の居住の用に供するために土地等を購入し、かつその譲渡対価が1億円以下である場合は、源泉徴収は不要とされています。源泉徴収された税額はあくまで前払い的な性格を持ち、非居住者は譲渡所得について申告分離課税で確定申告を行う必要があります。土地・建物の譲渡所得税率は、譲渡した年の1月1日時点での所有期間が5年以下の短期譲渡所得であれば所得税30パーセント(復興特別所得税を含めた実質税率は30.63パーセント)と住民税9パーセント、5年を超える長期譲渡所得であれば所得税15パーセント(実質15.315パーセント)と住民税5パーセントが基本の税率です。これは非居住者に限らず適用される一般的な税率区分であり、住民税は居住関係に応じた別途の取り扱いがあるため、本記事では主に国税である所得税・復興特別所得税を中心に整理しています。

TMKやGK-TKが保有する不動産そのものを第三者に売却する場合も、支払先はTMK・GKという内国法人であるため、直接保有のような非居住者向け10.21パーセントの源泉徴収は生じません。課税関係の焦点は、TMKの優先出資やGK-TKの匿名組合持分そのものを非居住者投資家が第三者やスポンサーに譲渡するケースに移りますが、この場合の課税関係は通常の株式譲渡とは異なる論点を含むため、個別の確認が必要です。

不動産保有法人株式のストラクチャーでは、対象法人の株式そのものを売買するため、譲渡対価は源泉徴収の対象科目として国税庁の源泉徴収税率一覧には掲げられておらず、買主側に源泉徴収義務が生じないのが実務上の一般的な整理です。ただし、対象法人が「不動産関連法人」に該当する場合は事情が異なります。所得税法施行令の定義では、株式譲渡の日から起算して365日前の日から譲渡の直前までのいずれかの時点で、その法人の資産価額の総額のうち国内にある土地等の価額の合計額が占める割合が50パーセント以上である法人を不動産関連法人とし、この法人の株式を、非上場株式では2パーセント超、上場株式では5パーセント超保有する株主(特殊関係者を含む)が譲渡した場合、その譲渡益は国内源泉所得として日本での課税対象になります。つまり、不動産を直接売る代わりに保有法人の株式を売るという構成にしても、少数株主に該当しない限り、日本の課税権から離れられるわけではないというのが実務上の重要な整理点です。この場合も買主側に源泉徴収義務は生じないため、非居住者である売主自身が納税管理人を選任し確定申告により納税する形になります。

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賃料や分配金に対する源泉徴収額の計算そのものは単純な掛け算ですが、複数のストラクチャー・複数のキャッシュフローが絡む投資モデルの中で正しく組み込むには、セル参照や単位の取り扱いに慣れておく必要があります。無料のExcelスターターパックでは、こうした基本的な数式運用を一から練習できます。

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TK分配金の源泉徴収額を計算する:設例

以下は説明用の仮設例です。非居住者の個人投資家が、GK-TKスキームに匿名組合出資として1億円を拠出し、ある年度に800万円の利益分配(税引前)を受け取ったとします。分配時にGK(営業者)が源泉徴収する金額は、匿名組合契約等に基づく利益の分配の税率20.42パーセントを適用して計算します。

式:TK分配金に対する源泉徴収額
源泉徴収額=TK分配金(税引前)×20.42%/投資家の手取り額=TK分配金-源泉徴収額

項目計算基準金額
TK分配金(税引前・仮設例)8,000,000円
源泉徴収額(税率20.42%・国税庁公表の実在税率)800万円×20.42%1,633,600円
投資家の手取り額800万円-163万3,600円6,366,400円
表2:TK分配金に対する源泉徴収額の試算(仮設例)。税率20.42%は国税庁が公表する匿名組合契約等の利益の分配に対する源泉徴収税率、分配金800万円は理解のための仮の数値。検算:800万円×0.2042=163万3,600円、800万円-163万3,600円=636万6,400円。

この設例から分かるとおり、額面の分配金に対して2割強が源泉徴収で差し引かれるため、投資家が実際に受け取る現金は分配金の約8割弱にとどまります。非居住者の個人投資家であれば、この源泉徴収税額を前払いとして、日本国内で確定申告を行い精算する余地がありますが、申告の要否や還付の可否は投資家の属性・所得の性質によって異なるため、個別の確認が必要です。

図:取得ストラクチャー別の資金フローと源泉徴収の発生点 ①直接保有 ②TMK ③GK-TK ④保有法人株式 海外投資家 (非居住者等) 海外投資家 (非居住者等) 海外投資家 (非居住者等) 海外投資家 (非居住者等) 直接保有 (法人を介さない) 社債・優先出資 TMK (特定目的会社) 配当損金算入 (導管性要件充足) 賃料等 匿名組合出資 GK(合同会社) =匿名組合営業者 +TK出資者 (複数投資家可) 賃料等 株式取得 不動産保有法人 (内国法人) 通常の法人課税 (導管性なし) 賃料等 国内不動産 国内不動産 国内不動産 国内不動産 賃料:源泉20.42% 譲渡:源泉10.21% (例外条件あり) 配当:源泉20.42% (非上場株式の配当) TK分配:源泉20.42% (匿名組合契約等) 配当:源泉20.42% 株式譲渡は要件次第で 国内源泉所得に該当 賃料・分配・配当の税率20.42%はいずれも国税庁公表の実在税率。譲渡対価の10.21%も同様。
図:4つのストラクチャーの資金・所得フローと、源泉徴収が発生するポイントの比較。各ストラクチャーの法的な仕組みの詳細はTMK・GK-TKスキームの実務を参照。

租税条約の考慮:不動産所得・不動産の譲渡益は軽減されにくい

財務省が公表する資料によれば、日本は2026年8月1日時点で91の条約等を通じて157の国・地域と租税条約ネットワークを構築しており、二重課税の除去と脱税・租税回避への対応を通じた投資交流の促進を目的としています。もっとも、租税条約が締結されているからといって、不動産に関する所得や譲渡益が自動的に軽減されるわけではありません。OECDモデル租税条約に沿った構成を採る条約が多く、不動産から生じる所得や不動産の譲渡から生じる収益については、不動産の所在地国が課税権を持つという内容になっているのが一般的です。日本が締結する租税条約でも同様の考え方が採られていることが多く、利子・配当・使用料のような他の投資所得と異なり、不動産所得・不動産の譲渡益については条約による源泉地国課税の軽減が働きにくい点が実務上の前提になります。一方、TMKや不動産保有法人からの配当は「配当」として租税条約上の限度税率の適用を受けられる可能性があり、相手国との条約次第では源泉徴収税率が軽減される余地もありますが、条約の適用には受益者の要件や特典制限規定の確認が必要であり、条約ごとの具体的な条文・適用条件は個別に確認する必要があります。この点も含め、実際にどの程度の軽減が受けられるかは投資家の居住地国・保有形態によって大きく異なるため、一般論としての整理にとどめ、個別の判断は専門家に委ねるべき領域です。

外為法の事後報告:不動産取得後20日以内の報告義務

税務とは別に、外国為替及び外国貿易法(外為法)に基づく規制上の手続きも押さえておく必要があります。財務省が公表する制度概要によれば、非居住者が本邦にある不動産またはこれに関する権利(抵当権・賃借権等を含みます)を取得した場合、その非居住者は「本邦にある不動産又はこれに関する権利の取得に関する報告書」を、取得後20日以内に日本銀行を経由して財務大臣に提出する必要があります。これは取引の前に許可や届出を要する事前規制ではなく、取得後に一定期間内で内容を報告する事後報告型の制度である点が特徴です。報告書の提出は非居住者本人だけでなく、不動産仲介業者等の代理人が行うことも認められています。なお、対内直接投資に関する外為法の規制には、上場会社株式の取得や指定業種への投資について事前届出を原則としつつ一定の条件を満たせば事後報告で足りるとする別の制度もありますが、こちらは外為法の事前届出免除という株式取得を対象にした仕組みで、本記事で扱う不動産取得の事後報告制度とは対象・根拠が異なる別の手続きです。TMKやGK-TKを介した取得であっても、取得の主体がTMK・GKという内国法人である場合は、この非居住者向けの不動産取得報告義務そのものは生じませんが、投資家自身がTMKの優先出資やGK-TKの匿名組合持分を通じて実質的に不動産に投資しているという構造上の違いを理解しておくことは、規制の適用範囲を判断するうえで重要です。

重要土地等調査法による規制:特別注視区域内の事前届出

もう一つ確認しておくべき規制が、重要施設周辺及び国境離島等における土地等の利用状況の調査及び利用の規制等に関する法律、いわゆる重要土地等調査法です。内閣府の公表資料によれば、この法律は令和3年6月23日に公布され、令和4年9月20日に全面施行されました。防衛関係施設等の重要施設の周囲おおむね1,000メートルの区域内、および国境離島等の区域内で、その機能を阻害する行為を特に防止する必要がある区域を「注視区域」として指定し、重要施設や国境離島等の機能が特に重要である場合、またはその機能を阻害することが容易で他の施設による機能の代替が困難な場合は、より規制の強い「特別注視区域」として指定することとされています。特別注視区域内にある土地・建物のうち、面積(建物であれば各階の床面積の合計)が200平方メートル以上のものについて、所有権またはその取得を目的とする権利の移転・設定をする契約を締結する場合には、契約の当事者、つまり売主と買主の双方が、契約締結前にあらかじめ内閣総理大臣へ届け出る義務を負います。この規制は外国人投資家に限らず内外無差別に適用される一般的な安全保障上の規制であり、税務上の扱いとは直接の関係はありません。しかし、クロスボーダーの不動産投資では、投資対象物件が注視区域・特別注視区域のいずれかに該当するかどうかを取引の初期段階で確認しておかないと、契約締結の直前になって事前届出の対応が必要になり、スケジュールに影響が生じかねない点に注意が必要です。

ストラクチャー選択の実務判断軸

4つのストラクチャーのどれを選ぶかは、税務上の源泉徴収の有無だけで決まるものではなく、複数の実務的な判断軸を総合して決めることになります。第一に、投資規模と投資家の人数です。複数の海外機関投資家が共同で出資する場合、匿名組合契約という形で出資口を柔軟に分割できるGK-TKや、優先出資・特定社債を組み合わせられるTMKは、単独の直接保有よりも資金調達の設計自由度が高くなります。第二に、レンダー(貸し手)からのノンリコースローンの組成のしやすさです。TMKやGK-TKは、資産流動化を前提としたビークルとして金融機関のノンリコースローン組成の実務に組み込まれてきた経緯があり、直接保有や不動産保有法人株式の取得と比べて金融機関側の審査プロセスが確立している場合があります。第三に、エグジットの方法です。保有期間の終了時に不動産そのものを売却するのか、TMKの優先出資やGK-TKの持分、あるいは不動産保有法人の株式を譲渡するのかによって、買主候補の広さや移転コストの構造が変わります。不動産取得税・登録免許税のような資産の移転そのものにかかるコストの水準は不動産取得税・登録免許税の用語ページで整理しているとおりで、資産譲渡と持分譲渡のどちらを選ぶかは税務上のコスト差にも直結します。第四に、対象法人が不動産関連法人に該当するかどうかという論点です。不動産保有法人株式を取得・保有する場合、将来その株式を売却する投資家自身が少数株主の基準を超えて保有していれば、株式の譲渡益が国内源泉所得として課税対象になり得るため、出口の設計段階からこの点を織り込んでおく必要があります。REPE(不動産プライベートエクイティ)がソーシングからエグジットまでの投資プロセス全体でどのようにストラクチャーを選定しているかはREPEの投資実務で扱っており、本記事で整理した税務・規制面の論点と合わせて確認すると、実務での意思決定の全体像がつかみやすくなります。

よくある質問(FAQ)

Q. 外国人投資家が日本の不動産に投資する場合、必ずTMKやGK-TKを使う必要がありますか。
A. 必須ではありません。単純に不動産を直接保有する投資家も存在します。TMK・GK-TKは、複数投資家による共同出資やノンリコースローンの組成、法人段階の二重課税排除といった実務上のメリットがあるために選ばれることが多いストラクチャーですが、投資規模や投資家の数によっては直接保有の方がシンプルで適している場合もあります。

Q. TK分配金の20.42%源泉徴収は、必ず最終的な負担額になりますか。
A. 源泉徴収された税額は前払い的な性格を持ち、非居住者は納税管理人を選任したうえで確定申告を行うことで精算や還付を受けられる場合があります。ただし申告の要否や還付の可否は投資家の属性・所得の性質によって異なるため、個別の確認が必要です。

Q. 不動産保有法人の株式を買収すれば、日本の不動産譲渡益課税を避けられますか。
A. 一律には避けられません。対象法人が資産の50%以上を国内不動産等で構成する「不動産関連法人」に該当し、譲渡する株主(特殊関係者を含む)の保有割合が非上場株式で2%超、上場株式で5%超であれば、株式の譲渡益は国内源泉所得として日本での課税対象になります。少数株主に該当する場合を除き、株式譲渡という形式を使っても不動産所在地国の課税権から離れられるとは限りません。

Q. 租税条約を結んでいる国の投資家であれば、源泉徴収税率は下がりますか。
A. 不動産所得や不動産の譲渡益については、多くの租税条約で不動産所在地国(日本)に課税権が残る構成になっており、大きな軽減は期待しにくいのが実務上の前提です。一方、TMKや不動産保有法人からの配当は、条約の配当条項による限度税率の適用を受けられる可能性があり、相手国との条約内容次第で結論が変わります。

Q. 外為法の事後報告と重要土地等調査法の届出は、両方とも必要になりますか。
A. 対象となる要件を満たせば、どちらも独立して必要になり得ます。外為法の事後報告は非居住者による不動産取得全般を対象に取得後20日以内の報告を求める制度であるのに対し、重要土地等調査法の届出は特別注視区域内にある一定面積以上の土地・建物の取引に限って、契約締結前の事前届出を求める制度です。対象や手続きのタイミングが異なるため、両方の該当性を個別に確認する必要があります。

まとめ

外国人投資家が日本の不動産に投資する際のストラクチャーは、直接保有・TMK・GK-TK・不動産保有法人株式の取得という4つに大別され、それぞれ資金調達の柔軟性や導管性の有無が異なります。しかし課税の大原則は共通しており、賃料収入には20.42パーセント、土地等の譲渡対価には10.21パーセント、TMKの配当やGK-TKの匿名組合分配にも20.42パーセントという、国税庁が公表する源泉徴収税率が投資家の手取りに直接影響します。租税条約を結んでいる国の投資家であっても、不動産所得・不動産の譲渡益については所在地国課税が維持される構成が一般的で、税率の大きな軽減は期待しにくい点も踏まえておく必要があります。加えて、外為法に基づく取得後20日以内の事後報告と、重要土地等調査法に基づく特別注視区域内の事前届出という、税務とは別の規制手続きも実務上の確認事項です。ストラクチャーの選択は、こうした課税関係の違いに加えて、資金調達のしやすさやエグジットの設計、不動産関連法人株式の該当リスクまで含めて総合的に判断する必要があり、個別の投資判断は必ず税理士・弁護士等の専門家に確認したうえで進めるべき領域です。

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出典・参考(2026年8月確認)

  • 国税庁「No.2880 非居住者等に不動産の賃借料を支払ったとき」(不動産賃貸料への源泉徴収税率20.42%と例外)(nta.go.jp
  • 国税庁「No.2879 非居住者等から土地等を購入したとき」(土地等の譲渡対価への源泉徴収税率10.21%と例外)(nta.go.jp
  • 国税庁「No.2884 非居住者等に対する源泉徴収・源泉徴収の税率」(匿名組合契約等の利益の分配・配当等の源泉徴収税率一覧)(nta.go.jp
  • 国税庁「No.2878 国内源泉所得の範囲」(国内源泉所得の種類)(nta.go.jp
  • 国税庁「No.1926 海外勤務中に不動産所得などがある場合」(非居住者の確定申告・納税管理人・源泉徴収税額の精算)(nta.go.jp
  • 国税庁「No.3208 長期譲渡所得の税額の計算」(長期譲渡所得の税率:所得税15.315%・住民税5%)(nta.go.jp
  • 国税庁「No.3211 短期譲渡所得の税額の計算」(短期譲渡所得の税率:所得税30.63%・住民税9%)(nta.go.jp
  • 財務省「外為法に基づく『本邦にある不動産又はこれに関する権利の取得に関する報告書』の提出 制度の概要」(非居住者の不動産取得後20日以内の報告義務・日本銀行経由で財務大臣へ提出)(mof.go.jp
  • 財務省「租税条約に関する資料」(2026年8月1日時点で91条約等・157か国・地域との租税条約ネットワーク)(mof.go.jp
  • 内閣府「重要土地等調査法」(制度の目的・注視区域と特別注視区域の指定基準・施行日)(cao.go.jp
  • 内閣府「届出について」(重要土地等調査法に基づく特別注視区域内の届出要件・面積基準200平方メートル・事前届出)(cao.go.jp
  • 税務研究会 法令データベース「所得税法施行令第281条」(不動産関連法人の定義・株式譲渡が国内源泉所得となる保有割合要件の条文)(zeiken.co.jp

※本記事は教育目的の一般的な解説であり、法務・税務・投資助言ではありません。設例は理解のための仮設例です。税率・制度は今後の改正により変更される可能性があるため、実際の投資判断に際しては税理士・弁護士等の専門家にご確認ください。