この​記事で​分かる​こと

  • 損金算入・損金不算入の意味と、法人税法第22条の「別段の定め」の位置付け
  • 交際費・寄附金・役員給与・罰金・法人税本税・支払利子など主な不算入項目の一覧
  • 会計上の税引前利益から課税所得を出す流れを設例で計算
  • 不算入項目が実効税率(税負担率)を押し上げる仕組み

30秒で​分かる​定義

損金算入(そんきんさんにゅう、Tax Deductibility)とは、会計上の費用や損失を、法人税の所得の計算で「損金の額」として益金から差し引くことです。差し引けないものを損金不算入といいます。法人税法第22条は、売上原価、販売費・一般管理費その他の費用(償却費以外は期末までに債務が確定したもの)、資本等取引以外の損失を、別段の定めがあるものを除き損金の額とすると定めています[1]。会計で費用にしたものの多くはそのまま損金になりますが、寄附金や交際費など「別段の定め」で限度額や不算入が決められている項目があり、会計と税務の差が生じます。申告書の別表での調整手順は法人​税申告調整​(別表四・別表五)で扱います。

なぜ実務で​重要なのか

損金不算入の項目が多いほど、会計上の利益に対する税金の割合(税負担率)が上がり、手元に残るキャッシュが減ります。PE・FASはLBOで支払利息がどこまで損金になるか(過大支払利子税制)を確認し、タックスシールドの価値を見積もります。経営企画・経理は接待飲食費や寄附金の予算を税務上の限度額と合わせて管理し、エクイティリサーチは実効税率が法定税率から乖離する理由を注記で読み解きます。会計利益から課税所得への組み立ては会計利益から​課税所得を​組むで扱っています。

計算式​(または仕組み)

所得の金額 = 益金の額 − 損金の額
実務上:所得 = 税引前当期純利益 + 加算(損金不算入額など) − 減算(益金不算入額など)
主な項目取扱い(概要)
交際費等原則として損金不算入。期末資本金100億円以下の法人は接待飲食費の50%まで損金算入、期末資本金1億円以下の法人(大法人の100%子法人等を除く)は年800万円の定額控除限度額との選択も可[2][3]
寄附金一般の寄附金は損金算入限度額を超える部分が不算入。国・地方公共団体への寄附金や指定寄附金は原則全額算入、法人による完全支配関係がある内国法人への寄附金(受贈益に対応するもの)は全額不算入[1][4]
役員給与定期同額給与・事前確定届出給与・業績連動給与のいずれにも該当しないものは不算入(退職給与などは別の扱い)[1]
法人税・住民税の本税損金不算入[1]
罰金・科料・過料、課徴金損金不算入[1]
支払利子(過大支払利子税制)対象純支払利子等の額が調整所得金額の20%を超える部分は不算入。対象純支払利子等の額が2,000万円以下の場合などは適用されない[2]

整数設例で​確認する

設例(架空数値)。単位は百万円。期末資本金5,000・資本準備金11,000(合計16,000)の会社で、事業年度は12か月、税引前当期純利益は1,450です。PLの費用には、交際費等120(うち接待飲食費80)、罰金20、一般の寄附金50が含まれています。税率は単純化して30%とします。

  • 交際費等:資本金100億円以下なので接待飲食費の50%が損金算入 → 80 × 50% = 40。不算入 = 120 − 40 = 80
  • 罰金:全額不算入 → 20
  • 仮計 = 1,450 + 80 + 20 = 1,550。寄附金を損金に算入する前の所得 = 1,550 + 50 = 1,600
  • 寄附金の損金算入限度額 = (16,000 × 12/12 × 2.5/1,000 + 1,600 × 2.5/100)× 1/4 = (40 + 40)÷ 4 = 20。不算入 = 50 − 20 = 30
  • 所得 = 1,550 + 30 = 1,580、税額 = 1,580 × 30% = 474
  • 税負担率 = 474 ÷ 1,450 ≒ 32.7%。不算入額の合計130 × 30% = 39 だけ、法定税率どおりの税額435(=1,450 × 30%)より多くなります

限度額の計算は国税庁の解説の算式(普通法人の一般の寄附金)に沿っています[4]。限度額計算上の所得は、その事業年度に支出した寄附金の全額を損金に算入しないものとして計算するため、仮計に寄附金50を足し戻しています[5]。実際の申告では地方税や他の加減算もあるため、ここでの率は説明用の単純化です。

PL・​BS・​CFへの​影響

交際費等・寄附金・罰金などの損金不算入は、会計と税務の差が将来も解消しない「永久差異」で、税効果会計の対象にならず、そのまま税負担率を押し上げます。一方、減価償却の限度超過額のように将来の期間で解消する差異は一時差異として繰延税金資産・負債の対象になります。課税所得が正で、欠損金の控除や税額控除などの影響がなければ、キャッシュフローでは不算入額 × 税率の分だけ法人税の支払が増えます。LBOモデルの税金計算はLBO​タックススケジュールの​作り方で詳しく扱います。

財務​モデル・​Excelでの​使い方

  • 加算・減算のブロック:税引前利益の下に「交際費不算入」「寄附金不算入」「罰金等」「過大支払利子」の行を置き、課税所得を計算します。
  • 寄附金限度額のセル:=(資本金と資本準備金の合計×月数/12×2.5/1000+寄附金算入前所得×2.5/100)/4 を独立のセルにし、所得の行と循環しないよう「算入前所得」を別に持ちます。
  • 支払利息の上限:LBOでは対象純支払利子等の額と調整所得金額の20%を比べるチェック行を置き、適用除外(対象純支払利子等の額が2,000万円以下の場合など)に該当しない場合に超過額を不算入にします(調整所得金額の正確な計算は政令の定めによるため、モデルでは近似であることを明記します)。

この​用語を​Excelで​「組める」​状態に​する

税引前利益に​損金不算入額を​加減して​課税所得と​税負担率を​出す​税金​スケジュールを​Excelで​組めるようになる。

財務会計の​教材で​税務調整を​練習する →

実務家が​確認する​ポイントと​よく​ある​誤解

誤解1:「会計で費用にすれば税金も減る」→ 正しくは、別段の定めがある項目は損金になりません。交際費や役員給与のように、会計上は費用でも損金不算入になるものがあります。

誤解2:「飲食費は1人1万円以下なら交際費にならない」→ 正しくは、条件があります。2024年4月1日以後に支出する飲食費で1人当たり10,000円以下のもの(それ以前は5,000円以下)は交際費等から除かれますが、役員・従業員とその親族だけの飲食は対象外で、参加者・人数などを記載した書類の保存が必要です[3]。

誤解3:「寄附金は支出時に未払計上すれば損金」→ 正しくは、寄附金は現実に支払ったときに支出したものと認識します。未払寄附金は寄附金に含まれず、仮払寄附金は含まれます[4]。

日本実務での​扱い

(2026年11月時点)交際費等の損金不算入は租税特別措置法第61条の4の規定で、2014年4月1日から2027年3月31日までの間に開始する事業年度が対象とされています[2]。期末資本金100億円超の法人は交際費等の全額が不算入です[3]。寄附金の損金算入限度額の基礎は「資本金の額及び資本準備金の額の合計額(または出資金の額)」と所得の金額です[1][4]。有価証券報告書では、税効果会計の注記にある「法定実効税率と税効果会計適用後の法人税等の負担率との差異の原因」で、交際費等の永久差異が税率を何ポイント押し上げているかを確認できます。株主ローンの利息の損金性など、LBOでの論点はShareholder Loan​(株主ローン)とはも参照してください。

面接・​モデルテストで​問われる​ポイント

Q:ある会社の税負担率が法定実効税率より高い理由として、何が考えられますか。
「まず交際費や寄附金、罰金のような損金不算入の永久差異です。次に、繰延税金資産の回収可能性を見直して評価性引当額が増えた場合や、税率の低い国の子会社が少なく税率の高い国の利益が多い場合も考えられます。注記の税率差異の内訳で、どの要因が何ポイントかを確認します。」

深掘りでは「LBOで支払利息が全額損金にならないケース」「役員賞与を損金にするための手続(事前確定届出給与)」が問われます。

よく​ある​質問​(FAQ)

Q. 損金算入と損金経理は同じですか?
A. 違います。損金経理は、確定した決算で費用または損失として経理することをいい、減価償却費のように損金経理が損金算入の条件になっている項目があります[1]。損金算入は税務上の結果を指す言葉です。

Q. 法人税そのものは損金になりますか?
A. 法人税・地方法人税の本税や、道府県民税・市町村民税(住民税)は損金不算入です[1]。延滞税や加算税も損金不算入とされています[1]。

出典・参考​(2026-11確認)

  1. e-Gov法令検索「法人税法」第2条第25号・第22条・第31条・第34条・第37条・第38条・第55条第4項・第5項. https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=340AC0000000034(2026年11月参照)
  2. e-Gov法令検索「租税特別措置法」第61条の4・第66条の5の2. https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=332AC0000000026(2026年11月参照)
  3. 国税庁 タックスアンサー No.5265「交際費等の範囲と損金不算入額の計算」(令和8年4月1日現在法令等). https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5265.htm(2026年11月参照)
  4. 国税庁 タックスアンサー No.5281「寄附金の範囲と損金不算入額の計算」(令和8年4月1日現在法令等). https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5281.htm(2026年11月参照)
  5. e-Gov法令検索「法人税法施行令」第73条第1項第1号・第3項. https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=340CO0000000097(2026年11月参照)

※本記事は教育目的の一般的な解説であり、法務・税務・投資助言ではありません。設例は理解のための架空数値です。

共有: