この記事で分かること

  • 先買権(ROFR)の定義と、タグアロング・ドラッグアロングとの機能の違い
  • 会社法上の譲渡承認手続きと契約上のROFRの関係(図解)
  • 整数設例でROFRが発動する場面を確認する
  • 日本の非公開会社での実務上の扱い

30秒で分かる定義

先買権(Right of First Refusal、略称ROFR、読み方:せんばいけん)とは、既存株主が保有株式を第三者に譲渡しようとする際、会社や他の既存株主が、その第三者と同一の条件で優先的に買い取ることができる契約上の権利です。株主間契約で定められる譲渡制限条項の一つで、投資家が望まない第三者(競合他社など)が株主として入ってくることを防ぐ目的で設計されます。

なぜ実務で重要なのか

非公開会社の株主構成は、投資家にとって重要な関心事です。既存株主(創業者・従業員・他の投資家)が保有株式を自由に第三者へ売却できてしまうと、望まない相手が株主として参入するリスクや、キャップテーブルが不透明になるリスクが生じます。ROFRは、こうした譲渡を完全に禁止するのではなく、「まず既存の株主や会社に優先的に買い取る機会を与える」という穏当な形で株主構成をコントロールする手段として、VC投資契約の標準的な条項になっています。

仕組み:タグアロング・ドラッグアロングとの違い

譲渡制限条項3種の機能の違い ROFR(先買権) 「自分が優先的に 買う」権利 第三者への譲渡を 阻止・代替できる タグアロング 「自分も一緒に 売る」権利 他の株主の売却に 相乗りできる ドラッグアロング 「売却を強制 する」権利 多数株主が少数株主に 売却参加を強制できる
図:ROFR・タグアロング・ドラッグアロングの機能比較

ROFRは「自分が買う権利」、タグアロングは「一緒に売る権利」、ドラッグアロングは「売却を強制する権利」であり、3つは目的も発動条件も異なります。実務では譲渡が発生する際、まずROFRが行使されるかどうかが確認され、ROFRが行使されなかった場合に初めてタグアロングの適用が検討されるという順序で設計されることが多く見られます。

整数設例で確認する

設例(架空数値)。既存の従業員株主Xが保有する株式10,000株を、1株あたり2,000円(合計20,000,000円)で第三者Yに譲渡しようとしたとします。株主間契約でROFRが定められている場合、次の手順を踏みます。

  1. 従業員Xが会社・優先株主に対し「Y社に1株2,000円で10,000株を売却する意向」を通知
  2. 会社・優先株主は一定期間(例:30日)以内に、同一条件(1株2,000円)でこの株式を買い取るか判断
  3. 会社または優先株主が買い取る場合、20,000,000円を対価にXから株式を取得し、Yへの譲渡は行われない
  4. 誰も買い取らない場合、Xは当初提示どおりYに譲渡できる

重要なのは、ROFRを行使する側もYが提示したのと同一条件(価格・数量)で買い取らなければならない点です。会社側が「安く買いたい」という理由だけでROFRを使うことはできません。

契約条項への影響

ROFRの設計では、①行使できる主体の順序(まず会社、次に既存株主という優先順位を設けることが多い)、②行使期間、③対象となる譲渡の範囲(相続や組織再編による移転は対象外とすることが多い)、④行使しなかった場合の効果、が交渉のポイントになります。ROFRが強すぎると株式の流動性が損なわれ、従業員のストックオプション行使後の株式売却にも影響するため、対象範囲を適切に絞る設計が重要です。

財務モデル・Excelでの使い方

キャップテーブル管理シートでは、株主ごとに適用される譲渡制限条項(ROFR・タグアロング・ドラッグアロングの有無)を別列で管理し、譲渡イベントが発生した際にどの手続きが必要かを判定できるようにします。

  • 譲渡予定の株主・株式数・提示価格を入力すると、ROFR対象かどうか、行使期限までの日数を自動表示する設計にする
  • セカンダリー取引のシナリオごとに、ROFR行使後のキャップテーブルの変化を試算する

この用語をExcelで「組める」状態にする

株主間契約上の譲渡制限条項をキャップテーブルと連動させ、譲渡イベント発生時の株主構成の変化を試算できるようになる。

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実務家が確認するポイントとよくある誤解

誤解:「ROFRとタグアロングは同じもの」→ 正しくは、ROFRは「買う」権利、タグアロングは「一緒に売る」権利で機能がまったく異なります。両方が同じ株主間契約に併存することも多く、譲渡が発生した際にどちらが先に適用されるかを条項の文言で正確に確認する必要があります。

実務家はさらに、①ROFRの行使期間が実務上機動的に対応できる長さか、②相続・組織再編等の適用除外が明確に定められているかを確認します。

日本実務での扱い

(2026年7月時点)日本の非公開会社(定款で株式の譲渡に取締役会等の承認を要すると定める会社)では、会社法136条以下の譲渡承認手続きが別途存在します。ROFRはこれとは別のレイヤーで、株主間契約に基づく契約上の権利として設計されます。会社法上の譲渡承認手続きでは、会社が譲渡を承認しない場合に会社または指定買取人が株式を買い取る制度(会社法140条ほか)がありますが、これはROFRと類似する機能を持ちつつも、発動条件や手続きは異なる別制度である点に注意が必要です。

面接・モデルテストで問われるポイント

Q:ROFRとタグアロング・ドラッグアロングの違いを説明してください。
「ROFRは、既存株主が株式を売却しようとする際に、会社や他の株主が同一条件で優先的に買い取れる権利です。タグアロングは、他の株主の売却に自分も一緒に参加できる権利、ドラッグアロングは多数株主が少数株主に売却参加を強制できる権利です。ROFRは『買う』権利、タグアロングは『一緒に売る』権利、ドラッグアロングは『売却を強制する』権利という点で機能が異なります。」

深掘りでは「ROFRが強すぎることのデメリット」(株式の流動性低下、従業員のセカンダリー売却への支障)が問われます。

よくある質問(FAQ)

Q. ROFRは誰が持つ権利ですか?
A. 契約設計次第ですが、一般的には会社が最優先で行使でき、会社が行使しない場合に既存の優先株主が持分比率に応じて行使できる、という順序で設計されることが多いです。

Q. ROFRがあると、株式を売りたい株主は不利になりますか?
A. 譲渡先の選択肢が制約されるという意味では不利な面もありますが、提示された条件と同一の条件でしか買い取られないため、価格面で不利益を受けるわけではありません。会社の株主構成をコントロールする代償として、一定の流動性の制約を受け入れる仕組みです。

出典・参考(2026-07-21確認)

※本記事は教育目的の一般的な解説であり、法務・税務・投資助言ではありません。設例は理解のための架空数値です。