この記事で分かること

  • 有償ストックオプション・信託型ストックオプションの定義と、税制適格SOとの違い
  • 2023年5月の国税庁見解が信託型SOに与えた影響
  • 整数設例で有償SOの権利者負担を確認する
  • 実務での設計判断のポイント

30秒で分かる定義

有償ストックオプション(有償SO、読み方:ゆうしょうストックオプション)とは、権利者が発行時に権利行使価格相当額(時価相当額)を会社に払い込んで取得する新株予約権です。信託型ストックオプション(信託型SO、読み方:しんたくがたストックオプション)とは、発行会社が信託を設定し、信託がストックオプションを保有した上で、将来入社する役職員を含めた対象者に、貢献度に応じたポイントに基づき事後的に配分する仕組みです。いずれも、税制適格ストックオプション(租税特別措置法上の要件を満たすSO)の要件を満たさない場合に採用される代替的な設計として実務上使われてきました。

なぜ実務で重要なのか

税制適格ストックオプションには付与対象者・行使価格・保有期間などの要件があり、これを満たさない設計(社外協力者への付与、将来入社予定者への事前の枠取り等)では給与所得課税(税率が高くなりやすい)を受けるリスクがあります。有償SOは、権利者が時価相当の対価を払い込むことでキャピタルゲイン課税(譲渡所得)として扱われることを企図した設計です。信託型SOは、将来入社する人材にもあらかじめ確保した株式インセンティブを柔軟に配分できる設計として、上場準備期のスタートアップを中心に利用が広がった経緯があります。

仕組み:2つの設計の違い

有償SOは、権利者が発行時点の株式価値をもとに算定された発行価額(オプション料)を実際に金銭で払い込む点が特徴です。信託型SOは、発行会社が設定した信託がストックオプションを(有償で)取得し、対象者に付与するポイント制度に基づき、実際に役職員が入社・貢献した段階で個々人に割り当てられる仕組みです。この「先に枠を確保し、後から配分先を決められる」柔軟性が魅力とされてきました。

整数設例で確認する

設例(架空数値)。ある会社が有償SOを発行し、1個あたりのオプション料を10,000円、行使価格を1株1,000円、付与数量を1,000個としたとします。権利者は発行時に10,000,000円(10,000円×1,000個)を会社に払い込む必要があります。

この会社の株価が将来1株5,000円まで上昇し権利行使したとすると、行使時の払込額は1,000,000円(1,000円×1,000個)で、取得株式の時価は5,000,000円(5,000円×1,000株)です。権利者はオプション料10,000,000円と行使時の払込1,000,000円、合計11,000,000円を投じて時価5,000,000円の株式を得ることになり、税制適格SOと異なり相応の資金負担を伴います(実際のオプション料算定はオプション評価モデルに基づきます)。

リスク配分への影響

2023年5月、国税庁は信託型SOについて、権利行使時の経済的利益が給与所得(総合課税、最大約55%になりうる)として課税される可能性があるとの見解を明確化し、業界に大きな影響を与えました。それまで信託型SOはキャピタルゲイン課税を前提に設計・利用されてきたケースが多く、想定していた税務上のメリットが得られない可能性が生じたためです。以降、信託型SOの新規設計は実務上大きく減少したとされています。有償SOについても過去に課税関係を巡って国税庁の見解が示された経緯があり、いずれの設計も慎重な検討が必要です。

財務モデル・Excelでの使い方

オプションプール管理シートでは、税制適格SO・有償SO・信託型SOを区分し、付与時期・行使価格・想定課税区分を記録しておくことが重要です。

  • 各制度の付与残高・行使済み残高を別行で管理し、キャップテーブルの完全希薄化ベースの株式数に正確に反映する
  • 権利者ごとの想定手取り額を、行使価格・オプション料・想定税率を踏まえて試算する

この用語をExcelで「組める」状態にする

税制適格SO・有償SO・信託型SOを区分してオプションプールを管理し、キャップテーブルに正確に反映できるようになる。

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実務家が確認するポイントとよくある誤解

誤解:「有償SO・信託型SOなら税制適格SOより有利」→ 正しくは、税務当局の見解次第で想定していた課税上のメリットが得られないリスクがあります。2023年5月の国税庁の見解は、この誤解を象徴する出来事でした。設計時点での前提が、後の税務当局の判断で覆るリスクは常に存在します。

実務家はさらに、①既発行の信託型SOの税務上の対応方針、②新規発行時は税制適格SOでの設計を優先できないかを確認します。

日本実務での扱い

(2026年7月時点)日本のスタートアップの株式インセンティブ設計では、税制適格SOが基本の選択肢とされる一方、要件を満たせない場合の代替として有償SO・信託型SOが検討されてきました。2023年5月の国税庁の見解表明以降、信託型SOの新規採用は実務上大きく減少したとされ、既存の信託型SOを設計していた企業では、税務上の取り扱いについて専門家(税理士・弁護士)への確認が必要な状況が続いています。

面接・モデルテストで問われるポイント

Q:2023年の国税庁の見解表明は、信託型SOにどのような影響を与えましたか。
「信託型SOは、権利行使時の経済的利益がキャピタルゲイン課税(譲渡所得)として扱われることを前提に設計・利用されてきましたが、国税庁が給与所得として課税される可能性を示したことで、想定していた税務上のメリットが得られないリスクが明確になりました。これにより業界内で大きな混乱が生じ、以降、信託型SOの新規設計は実務上大きく減少したとされています。」

深掘りでは「有償SOと信託型SOのどちらがより実務で使われ続けているか」(信託型SOへの懸念が強まった分、税制適格SOや有償SOの見直しに関心が向かう傾向)が問われます。

よくある質問(FAQ)

Q. 有償SOは信託型SOと同じリスクを抱えていますか?
A. 課税関係を巡って国税庁の見解が示された経緯は有償SOにもありますが、論点や影響の度合いは信託型SOとは異なります。個別の設計内容によって税務上のリスクの評価は変わるため、発行時点で専門家に確認することが重要です。

Q. 税制適格SOを使えば、こうした課税リスクは避けられますか?
A. 税制適格SOは租税特別措置法上の要件を満たせば、権利行使時に課税が生じず、株式売却時に譲渡所得として課税される扱いが法律上明確に定められています。要件を満たせる場合は、有償SO・信託型SOより予見可能性が高い選択肢とされます。

出典・参考(2026-07-21確認)

※本記事は教育目的の一般的な解説であり、法務・税務・投資助言ではありません。制度の詳細・個別事案への当てはめは専門家への確認が必要です。設例は理解のための架空数値です。