この​記事で​分かる​こと

  • プロジェクトIRR(PIRR)とエクイティIRR(EIRR)の定義と、キャッシュフローの切り分け(借入前/元利返済後)
  • 借入を使うとEIRRがPIRRより高くなる理由(レバレッジ効果)と、逆転する条件
  • 投資1,000・借入700の整数設例で、PIRR・EIRR・DSCRを計算
  • PFモデルでの組み方(配当制限・ロックアップを反映する際の注意)

30秒で​分かる​定義

プロジェクトIRR(PIRR)は、借入の有無にかかわらず事業全体が生むキャッシュフローから求める内部収益率で、エクイティIRR(EIRR)は、出資者に帰属する(借入の元利返済後の)キャッシュフローから求める内部収益率です。読みは「ぷろじぇくとあいあーるあーる」「えくいてぃあいあーるあーる」。PIRRは事業そのものの採算性、EIRRは出資者から見た採算性を測ります。内閣府の資料では、PIRRを「事業期間を通じた事業自体の収益性・投資利回り」、EIRRを「出資金に対する収益性・投資利回り(PIRRと異なり金融機関からの借入に相当する額は含まれない)」と説明しています[1]。IRR一般の定義は内部収益率のページで扱い、本ページはプロジェクトファイナンス(PF)でのキャッシュフローの切り分けに絞ります。

なぜ実務で​重要なのか

PF・インフラ・再エネ・不動産の投資担当は、PIRRで事業の収益性を、EIRRで自分たちの出資リターンを確かめます。融資担当(レンダー)は、元利返済の安全性をDSCRやLLCRで見ます。官公庁のPFI事業の評価でも、内閣府の資料は、民間事業者の収益性指標としてPIRRとEIRRを、事業の安全性指標としてDSCRとLLCRを挙げています[1]。同じ事業でも借入の割合を変えるとEIRRは大きく変わるため、PIRRとEIRRを並べて見ることで、リターンの源泉が事業の力か、レバレッジかを分けられます。

計算式​(または仕組み)

PIRR:投資額 I = Σ[ Cn ÷ (1+PIRR)n ] (Cn:n年度の借入返済前の事業キャッシュフロー)
EIRR:出資額 E = Σ[ Cen ÷ (1+EIRR)n ] (Cen = Cn - n年度の元利返済額)

内閣府の資料は、PIRRの算式でCnを「出資者及び融資する金融機関等に帰属するキャッシュフローの合計額」とし、EIRRではCenを「出資者に帰属するキャッシュフロー」としています[1]。つまり、分子のキャッシュフローは次のように切り分けます。

項目PIRREIRR
最初の支出事業への投資額(建設費等)の全額出資額(投資額-借入実行額)
期中のキャッシュフロー借入の元利返済前の事業キャッシュフロー元利返済後に出資者へ残る(配当等の)キャッシュフロー
比較する基準資本コスト(借入と出資の加重平均)出資者が求める最低限のリターン(ハードルレート)

同資料は、PIRRが事業の資本コストより高くないと事業は成立しないこと、融資者への元利払いが出資者への配当に優先するため出資者のリスクが高く、通常はEIRR > PIRR > 借入金利の関係になることを説明しています[1]。後半の関係が成り立つのは、事業の収益率が借入コストを上回って、借入が出資者の取り分を増やす場合です。事業の収益率が借入金利を下回れば、借入は出資者のリターンを引き下げます。

整数設例で​確認する

設例(架空数値)。単位は百万円。年末にまとめて入出金があり、税・運転資本・準備口座は無視します。

① 事業への投資額 1,000(0年目)。借入 700(金利5%、元本は年140の均等返済・5年)、出資 300。
② 事業キャッシュフロー(借入返済前)は1〜5年目とも 260 とします。
③ PIRR:キャッシュフロー[-1,000, 260, 260, 260, 260, 260]のIRR。割引率 r で、260 × [1 - (1+r)-5] ÷ r = 1,000 となる r を探すと、約9.4%(Pythonで二分法により再計算)。
④ 利息は期首残高×5%:700×5%=35、560×5%=28、420×5%=21、280×5%=14、140×5%=7。元利返済は 175、168、161、154、147。

年事業CF(借入前)利息元本元利返済出資者CF(EIRR用)DSCR(=事業CF÷元利返済)
0-1,000-300(出資)
126035140175851.49倍
226028140168921.55倍
326021140161991.61倍
4260141401541061.69倍
526071401471131.77倍

⑤ EIRR:キャッシュフロー[-300, 85, 92, 99, 106, 113]のIRRは約18.3%。検算:85÷1.183+92÷1.1832+99÷1.1833+106÷1.1834+113÷1.1835≒ 300。
⑥ 結論:借入金利5% < PIRR 9.4% < EIRR 18.3%。事業の収益率が借入コストを上回るため、借入を使うほど出資者のリターンが高まります(レバレッジ効果)。一方、DSCRの最小値は1.49倍で、1.0倍を上回っています。

借入金利が上がる、または事業CFが下がるなどしてPIRRが借入金利に近づけば、EIRRの上乗せ分は小さくなります。この設例の数値は、均等返済・一定の事業CFという単純化した前提に依存します。

投資判断への​影響

投資判断では、PIRRで事業の収益性が資本コストを上回るかを確認し、EIRRで出資者のハードルレートを満たすかを見ます。同じPIRRでも、借入比率と返済スケジュールでEIRRは変わります。事業CFと借入金利・返済条件を一定とし、PIRRが借入金利を上回る(正のレバレッジが働く)場合は、借入を増やすとEIRRは上がる一方、DSCRが下がり、事業CFの下振れに弱くなります。借入の増額で金利・手数料や配当制限などの条件が変われば、EIRRが上がるとは限りません。内閣府の資料は、DSCRが1.0倍を超えることが元利返済の最低条件であり、通常はより高い水準が求められると説明しています[1]。借入可能額はDebt SizingでDSCR・LLCRから逆算するのが実務の流れです。

財務​モデル・​Excelでの​使い方

  • PIRR:0年目に =-投資額、1年目以降に借入前の事業FCF(金利支払前の利益に減価償却・設備投資などを調整した、資金調達と独立したCF)を並べ、=IRR(範囲)。日付が不規則な場合は =XIRR(CF, 日付)。税引前か税引後かを必ず明記します。融資契約上のCFADSは、税金や準備口座への積立などの扱いが契約で定められ、事業FCFと一致するとは限らないため、流用する前に項目を照合します。
  • EIRR:0年目に =-(投資額-借入実行額)、1年目以降に =事業CF-元利返済(実際に出資者へ配当・返済される額)を並べて =IRR(範囲)。
  • 整合チェック:=PIRR>借入金利 でレバレッジが正の効果かを判定。=事業CF/元利返済 でDSCRを並べます。

実際の出資者CFは、配当制限(ロックアップ)やDSRAなどの準備口座への積立で、事業CFから元利返済を引いた額と一致しないことがあります。EIRRは「出資者が実際に受け取る額」で組み、返済後の余剰を全額配当とみなす単純化は、その旨を明記します。構成はプロジェクト​ファイナンスモデルの​作り方が参考になります。

この​用語を​Excelで​「組める」​状態に​する

投資額・​借入・​返済から、​PIRR・​EIRR・​DSCRを​同じ​シートで​計算し、​借入比率を​変えた​感度を​見られるようになる。

プロジェクト​ファイナンス​教材で​PFモデルの​組み方を​見る →

実務家が​確認する​ポイントと​よく​ある​誤解

誤解1:「EIRRは常にPIRRより高い」→ 正しくは、事業の収益率が借入金利を上回るときです。PIRRが借入金利を下回れば、借入はEIRRを押し下げます。

誤解2:「PIRRは税引前でも税引後でも同じ」→ 正しくは、定義によって数値が変わります。比較する資本コストや他案件と、税の扱いを揃えます。

誤解3:「EIRRが高ければ安全」→ 正しくは、借入が多いほどEIRRは高くなる一方、返済の余裕(DSCR)は低くなります。必ずDSCRと一緒に見ます。

日本実務での​扱い

(2026年11月時点)日本では、PFI事業を担う内閣府の資料が、民間事業者の収益性・安全性の指標としてPIRR・EIRR・DSCR・LLCRを説明しています[1]。同資料のアンケート結果では、指標に求める水準の幅が広く、PIRRは1.0%以上から6.0%以上まで、EIRRは5.0%以上から10.0%以上まで事業ごとに分かれています[1]。これは古い調査で、現在の相場を示すものではありません。最新の制度や事業要求水準は、内閣府(PPP/PFI推進室)のガイドラインと各事業の募集要項で確認します[2]。民間の再生可能エネルギーや不動産のPFでは、事業ごとにスポンサーのハードルレートと金融機関のDSCR要件を個別に設定します。

面接・​モデルテストで​問われる​ポイント

Q:PIRRとEIRRの違いと、EIRRがPIRRより高くなる理由を説明してください。
「PIRRは借入前の事業キャッシュフローで測る事業そのものの収益率、EIRRは元利返済後に出資者へ残るキャッシュフローで測る出資者の収益率です。事業の収益率が借入金利より高ければ、その差を出資者が取れるため、EIRRはPIRRより高くなります。たとえば投資1,000に借入700(金利5%)でPIRRが9.4%なら、EIRRは約18%です。ただし借入が増えるほどDSCRは下がるので、返済の余裕とセットで判断します。」深掘りされるのは、PIRRが借入金利を下回る場合の逆転と、税の扱いです。

よく​ある​質問​(FAQ)

Q. PIRRとWACCはどう比べますか?
A. 内閣府の資料は、PIRRが資本コスト(借入金利と出資者要求リターンの加重平均)より高くないと事業は成立しないと説明しています[1]。PIRRが資本コストを上回れば、事業は借入と出資のコストをまかなえます。

Q. 設例のキャッシュフローは毎年一定ですが、現実はどうなりますか?
A. 実際には、稼働率や価格、費用で変動します。その場合はDSCRが年ごとに変わるため、最低DSCRとLLCRを見て借入額を決め、PIRR・EIRRはケースごとに再計算します。

出典・参考​(2026-11確認)

  1. 内閣府 民間資金等活用事業推進室(PPP/PFI推進室)公表資料「民間事業者の収益性評価指標(その1)PIRR」「同(その2)EIRR」「事業の安全性評価指標(その1)DSCR」(資料内の通し番号53〜56ページ、PDF). 定義・算式・EIRR>PIRR>借入金利・アンケート結果. https://www8.cao.go.jp/pfi/pfi_jouhou/archive/houkoku/nenji/18fy/pdf/anual1805.pdf(2026年11月参照)
  2. 内閣府 民間資金等活用事業推進室「ガイドライン」ページ(PFI事業実施プロセスに関するガイドライン等の掲載。最新版の確認先). https://www8.cao.go.jp/pfi/hourei/guideline/guideline.html(2026年11月参照)

※本記事は教育目的の一般的な解説であり、法務・税務・投資助言ではありません。設例は理解のための架空数値です。

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