この記事で分かること
- 額面価額(Par Value)の定義と、債券・株式でそれぞれ異なる意味
- 債券価格が「額面100に対する%」で表示される理由と整数設例
- 日本の株式における額面制度の歴史と、現在は無額面株式であること
- 割引発行・プレミアム発行時の会計処理(PL・BSへの影響)
30秒で分かる定義
額面価額(Par Value、Face Value、Nominal Valueとも呼ばれる、読み方:がくめんかがく)とは、株式や債券の証券面に記載された名目上の価額のことです。債券では、満期時に償還される元本の基準額であり、クーポン(利息)も額面に利率を掛けて計算されます。株式においては、かつて日本にも額面株式制度がありましたが、現在の日本の会社法上、株式はすべて無額面株式であり、額面という概念は会計処理上の一部の場面を除いて実質的な意味を持ちません。
なぜ実務で重要なのか
債券トレーディング・DCMでは、債券価格は「額面100に対する価格(例:98.50)」という%表示が業界標準であり、額面の理解なしに価格を読むことができません。財務会計・経理では、社債を額面と異なる価格(割引・プレミアム)で発行した場合の差額処理(償却)が実務上の論点になります。M&A・資本政策の担当者にとっては、日本の株式に額面という概念が現在は存在しないことを正しく理解しておく必要があります(古い教科書的な誤解が残りやすい論点です)。
計算式(または仕組み)
債券は多くの場合「額面100に対する価格」という共通の物差しで取引されるため、額面が1,000,000円の債券でも、額面が1,000円の債券でも、価格が同じ「98.50」であれば、額面に対する割引率(1.50%引き)は同じだと分かります。この共通化によって、額面が異なる複数の債券の価格水準を横並びで比較できるのが、%表示を使う実務上の利点です。
整数設例で確認する
設例(架空数値)。額面総額500,000,000円(5億円)、額面100あたりの発行価格98.5、クーポン率年2%の社債を考えます。
払込金額 = 500,000,000 × 98.5 ÷ 100 = 492,500,000円
年間利払い額 = 500,000,000 × 2% = 10,000,000円
この社債は額面より7,500,000円(500,000,000−492,500,000)安く発行されており、この割引部分(発行差金)は満期までの期間で毎期均等またはルールに基づいて償却され、実質的な調達コストの一部としてPLの支払利息に上乗せされていきます。額面どおりの利払い額は変わらなくても、実質的な資金調達コストは額面利率より高くなることがこの設例から確認できます。
PL・BS・CFへの影響
債券を額面と異なる価格で発行した場合、BS上の社債残高は当初、実際の払込金額(発行価額)で計上され、満期に向けて額面へ近づくよう帳簿価額が調整されます(アモチゼーション)。この調整額は毎期、支払利息(PL費用)に加減算されます。割引発行なら支払利息が額面利率よりも実質的に大きく認識され、プレミアム発行なら小さく認識される仕組みです。満期時にはBS上の帳簿価額は額面と一致し、額面どおりの現金で償還されます。
財務モデル・Excelでの使い方
債券の発行・保有モデルでは、次の行を基本セットとして設計します。
- 発行価額行:
=額面×発行価格%/100で払込金額を算出 - 実効金利法による償却スケジュール:発行時の実効利回りを算出し、各期の帳簿価額×実効利回りを「実質的な支払利息」として計上、額面クーポンとの差額を帳簿価額に加減算
- 満期時チェック行:最終期の帳簿価額が額面と一致することを検算する行を必ず設ける
実務家が確認するポイントとよくある誤解
誤解1:「額面=時価」→ 正しくは、額面はあくまで名目上の基準額であり、市場価格(時価)は需給・金利水準に応じて額面から乖離します。債券価格が「98.50」であれば額面の98.5%相当という意味で、額面そのものが変動しているわけではありません。
誤解2:「日本の株式にも額面がある」→ 正しくは、日本の株式は会社法上すべて無額面株式であり、株式の額面制度は既に廃止されています。「額面◯円の株式」という表現は現在の実務上は使いません(過去の制度に関する歴史的文脈を除く)。
日本実務での扱い
かつて日本には「額面株式」と「無額面株式」が並存する制度がありましたが、商法改正により2001年10月から額面株式制度が廃止され、現在の会社法のもとでは株式はすべて無額面株式に統一されています。資本金の額は株式の額面ではなく、株主の払込金額(の一部、原則として2分の1以上)を基準に決定されます。一方、債券(社債)については現在も額面という概念が実務上重要であり、社債の発行価額と額面の差額(発行差金)の会計処理は企業会計基準に定められた実効金利法等によって行われます(2026年8月時点)。
面接・モデルテストで問われるポイント
Q:債券の額面と時価の違いを、なぜプライシングは額面100に対する%で表示されるのか説明してください。
「額面は満期時に償還される元本の基準額であり、クーポンもこれに利率を掛けて算出される名目上の価額です。市場価格(時価)は金利水準や信用状況に応じて額面から上下に乖離します。額面100に対する%表示にすることで、額面の大きさが異なる複数の債券を、共通の物差しで横並びに比較できるという実務上の利点があります。」
深掘りでは「割引発行された社債の実質的な調達コストの求め方」「日本の株式に額面が存在しない理由」が問われます。
よくある質問(FAQ)
Q. 現在の日本の株式に額面はありますか?
A. ありません。2001年の商法改正で額面株式制度が廃止され、現在の会社法のもとで日本の株式はすべて無額面株式に統一されています。
Q. 債券価格が額面(100)を上回って取引されることはありますか?
A. あります。市場金利がクーポン率を下回っている場合等、債券は額面を上回る価格(オーバーパー)で取引されます。逆に市場金利がクーポン率を上回っている場合は額面を下回る価格(アンダーパー)で取引されます。
出典・参考(2026-08確認)
- e-Gov法令検索「会社法」(株式・資本金に関する規定) https://elaws.e-gov.go.jp/
- 企業会計基準委員会(ASBJ)「金融商品に関する会計基準」(社債の発行差金の処理) https://www.asb-j.jp/
- 日本証券業協会(債券の店頭気配・価格表示慣行) https://www.jsda.or.jp/
※本記事は教育目的の一般的な解説であり、法務・税務・投資助言ではありません。設例は理解のための架空数値です。