この記事で分かること

  • クリーンプライス(気配値)とダーティプライス(受渡代金)の違い
  • 経過利子の計算式とday count convention(日数計算方式)との関係
  • 整数設例で経過利子を計算し、クリーン・ダーティ両価格を検算
  • PL・BS・CFへの影響とExcel関数(PRICE・ACCRINT)での実装

30秒で分かる定義

クリーンプライス(Clean Price、裸値段)とは、経過利子を含まない債券の気配価格のことで、市場で日々提示・報道される債券価格はこのクリーンプライスです。これに対し、ダーティプライス(Dirty Price、インボイスプライス)とは、クリーンプライスに直前の利払日から決済日までの経過利子を加えた、実際に買い手が売り手に支払う決済金額のことです。両者の関係は「ダーティプライス=クリーンプライス+経過利子」というシンプルな式で表せます。

なぜ実務で重要なのか

債券の基礎で扱うセールス&トレーディング・DCMでは、日々の気配・約定はクリーンプライスで行われますが、決済金額の計算には必ず経過利子を加える必要があります。バックオフィス・決済担当は、経過利子の計算を誤ると決済金額そのものが誤ることになるため、day count convention(日数計算方式)の正確な適用が業務の基本です。クレジット投資家は、価格変動をクリーンプライスベースで評価することで、日々自然に増える経過利子分のノイズを除いた「実質的な価格変動」を把握します。

計算式(または仕組み)

経過利子 = 額面 × クーポン利率 ×(決済日までの経過日数 ÷ 年間日数)
ダーティプライス = クリーンプライス + 経過利子

「経過日数÷年間日数」の数え方(day count convention)は市場・銘柄によって異なります。日本国債では実際の経過日数を365日で割る方式(実日数/365)が用いられます。この方式の違いはデイカウント・コンベンションで扱っています。

整数設例で確認する

設例(架空数値)。額面100円、クーポン年2%(年1回払い)の債券で、直前の利払日から決済日までの経過日数が180日、day count conventionを実日数/365とします。クリーンプライス(気配値)は98.50円です。

経過利子 = 100 × 2% ×(180 ÷ 365)= 2 × 0.4932 = 0.9863 ≒ 0.99円です。ダーティプライス = 98.50 + 0.99 = 99.49円となり、これが実際の決済金額(額面100円あたり)です。

PL・BS・CFへの影響

債券を購入した際に支払う経過利子(購入時の未経過利子相当額)は、その債券自体の取得原価ではなく、次回利払時に受け取る利息の一部を前払いしたものとして区別して認識します。次回の利払日に受け取るクーポンのうち、購入時に支払った経過利子相当分は「利息収益の回収」ではなく「立て替えた経過利子の回収」であり、保有期間に対応する利息のみが当期の受取利息として損益に計上されます。トレーディングのP&L(損益)は、この経過利子の日々の増分を除いたクリーンプライスの変化分で評価するのが一般的です。決済のキャッシュフローは、数量×ダーティプライスで発生します。

財務モデル・Excelでの使い方

  • 関数の使い分け:ExcelのPRICE関数・YIELD関数(債券利回りの基礎とYTMで扱う最終利回りの算定にも使う関数)は慣習上クリーンプライスを扱います。経過利子はACCRINT関数で別途計算し、両者を足し合わせてダーティプライスを求めます。
  • basis引数の指定ACCRINT関数のbasis引数でday count conventionを指定できるため、対象銘柄の市場慣行に合わせて正しい方式を選ぶ必要があります。
  • 決済金額の算出:ポートフォリオ管理シートでは、数量×ダーティプライスで実際の決済金額を計算し、クリーンプライスは別途、時価評価・損益分析用に保持します。

この用語をExcelで「組める」状態にする

経過利子とday count conventionを踏まえ、クリーン・ダーティ両価格をExcel関数で正しく計算できるようになる。

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実務家が確認するポイントとよくある誤解

誤解1:「気配値がそのまま支払う金額」→ 正しくは、実際に支払う(受け取る)金額は経過利子を加えたダーティプライスです。気配値であるクリーンプライスだけを見て決済金額を見積もると、経過利子分のずれが生じます。

誤解2:「経過利子の計算方法はどの銘柄でも同じ」→ 正しくは、day count conventionは市場・銘柄ごとに異なるため、対象銘柄の慣行を個別に確認する必要があります。

日本実務での扱い(2026年8月時点)

日本国内の公社債の店頭売買は、日本証券業協会の自主規制ルールのもとで運用されており、気配・約定価格はクリーンプライス建てで表示するのが基本です。決済にあたっては、実際の経過日数を用いた経過利子を別途計算してダーティプライスとし、これに数量を乗じた金額を受け渡すのが実務慣行です。日本国債の経過利子は実日数/365で計算されるのが一般的で、社債など他の銘柄では発行時の条件により異なる場合があるため、契約書・発行要項での確認が必要です。

面接・モデルテストで問われるポイント

Q:なぜ債券価格の気配は経過利子を含まないクリーンプライスで表示されるのか説明してください。
「経過利子は日々一定の割合で機械的に増加していくものであり、これを含めた価格(ダーティプライス)で気配を出すと、金利や信用力の変化とは無関係な価格の上昇が毎日観測されてしまいます。クリーンプライスで表示することで、市場参加者は金利・信用力の変化による『実質的な価格変動』だけを見て取引の意思決定ができます。」(30秒回答例)

深掘りでは「利払日直後と直前でクリーンプライスとダーティプライスの関係がどう変わるか」が問われます。

よくある質問(FAQ)

Q. 利払日当日に取引した場合、経過利子はどうなりますか?
A. 利払日当日は直前の利払いから経過日数がゼロになるため、理論上は経過利子がゼロとなり、クリーンプライスとダーティプライスがほぼ一致します。

Q. クリーンプライスが下落しても、ダーティプライスは上昇することがありますか?
A. あり得ます。経過利子は利払日に向けて日々増加していくため、クリーンプライスの小幅な下落を経過利子の増加分が上回れば、ダーティプライス(実際の決済金額)は上昇します。

出典・参考(2026-08確認)

※本記事は教育目的の一般的な解説であり、法務・税務・投資助言ではありません。設例は理解のための架空数値です。

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