この記事で分かること
- 単元株制度の定義と、2018年に単元株式数が100株へ統一された経緯
- 単元未満株の買取請求・買増請求という少数株主保護の仕組み
- 端株が生じる保有株数の整数設例による確認
- IPO準備や資本政策の実務で単元株数を確認する手順
30秒で分かる定義
単元株制度(たんげんかぶせいど、Share Trading Unit System)とは、株式会社が定款で定める一定数の株式(単元株式数)を1単元とし、株主総会での議決権や証券取引所での売買単位の基準とする制度です。1単元に満たない株式は「単元未満株」と呼ばれ、原則として議決権を持ちません。東京証券取引所は全上場会社の単元株式数を2018年10月までに100株へ統一しており、現在は「売買単位=100株」が事実上の標準です。
なぜ実務で重要なのか
IB・ECM・経営企画では、新規上場(IPOの仕組みと価格決定)の審査にあたり、単元株式数を100株に設定する定款変更が必須の実務です。証券会社・IRでは、株式分割や併合を行う際に単元未満株が新たに発生しないよう株数を設計する必要があります。M&A・資本政策の担当者にとっても、第三者割当増資や自己株式処分の株数設計で単元未満株の発生を避けることが基本動作です。
仕組み:単元株と単元未満株
| 項目 | 単元株(100株以上・100株単位) | 単元未満株(100株未満の端数) |
|---|---|---|
| 議決権 | あり(100株につき1個) | 原則なし |
| 取引所での売買 | 通常の市場で売買可能 | 通常市場では売買不可 |
| 会社への請求権 | - | 買取請求権・買増請求権を行使可能 |
| 配当 | あり | あり(保有株数に比例) |
単元未満株主は、会社に対して自己の保有株式を時価で買い取るよう求める買取請求権と、逆に不足分を買い増して1単元にするよう求める買増請求権を行使できます。証券会社の口座管理(振替決済制度)上でも単元未満株は区分して管理されます。
整数設例で確認する
設例(架空数値)。単元株式数100株の会社で、株主Aが250株を保有しているケースです。
- 保有株式数:250株
- 単元株式数:100株
250 ÷ 100 = 2単元 余り50株。したがって株主Aは2単元(200株)分の議決権2個を持ち、残る50株は単元未満株として議決権を持ちません。この会社の発行済株式総数が10,000,000株(うち自己株式200,000株)の場合、総議決権数は(10,000,000-200,000)÷100=98,000個と計算されます。検算:200,000+9,800,000=10,000,000で発行済株式総数と一致します。
市場・取引制度上の位置付け
単元株数を100株に統一する前は、上場会社ごとに1,000株・500株・50株など単元株式数が区々で、投資家が銘柄ごとの最低投資金額の桁を把握しにくいという問題がありました。東京証券取引所は「売買単位の集約に向けた行動計画」に沿って単元株式数を100株に統一し、2018年10月に全上場会社での移行を完了しています。第三者割当増資や公募増資(ECM入門)で新株を発行する場合も、既存株主に単元未満株が新たに生じないよう株数設計を行うのが実務です。単元未満株は通常の市場では売買できないため、証券会社が独自に提供する単元未満株専用の買付・売却サービスを利用するのが一般的です。
実務での調べ方・確認手順
- 対象会社の単元株式数は、有価証券報告書の「株式等の状況」欄、または証券会社の銘柄情報ページで確認できます。上場会社であれば現在はほぼ100株です。また実際の保有株数の確認には株主名簿管理人への照会が必要になる場合もあります。
- 資本政策のExcelモデルでは、増資・分割後の1株当たり保有数を
=MOD(保有株数,単元株式数)で計算し、単元未満株が発生する株主がいないかをチェック行として持たせるのが実務的です。 - 株式分割の比率を検討する際は、分割後に単元未満株を生じさせない比率(単元株式数の約数となる比率)を優先して設計します。
実務家が確認するポイントとよくある誤解
誤解1:「単元未満株は無価値になる」→ 正しくは、配当請求権は保有株数に比例して残ります。失うのは議決権と通常市場での売買可能性であり、経済的な権利がゼロになるわけではありません。
誤解2:「単元株式数は全社100株で固定」→ 正しくは、あくまで各社が定款で定める数値であり、100株が事実上の標準になっているに過ぎません。非上場会社では100株以外の単元株式数を採用している例もあります。
実務家は増資・分割・併合の設計時に、既存株主の保有株数と新しい単元株式数を突き合わせ、単元未満株が新たに発生する株主数を必ず事前に試算します。
日本実務での扱い
会社法は単元株制度の根拠規定を置いており、単元株式数の上限や単元未満株主の買取・買増請求権が定められています。東京証券取引所は上場規程の適用上も単元株式数を100株とすることを実務上の前提としており、新規上場(IPO)の審査プロセスでも上場日までに単元株式数を100株に設定する定款変更を完了しておくことが求められます(2026年8月時点)。単元未満株主への配慮として、多くの信託銀行・証券会社が単元未満株の買取・買増を取り次ぐサービスを提供しています。
実務での想定問答
Q:なぜ単元株式数は100株に統一されたのですか?
「銘柄ごとに最低投資金額の桁が大きく異なると個人投資家にとって分かりにくく、取引所システムの効率性も損なわれるためです。東京証券取引所は行動計画に沿って2018年10月までに全上場会社の単元株式数を100株に統一し、投資単位の見やすさと流動性の両立を図りました。」(30秒回答例)
深掘りでは「単元未満株主が持つ権利は何か」「株式分割時に単元未満株を発生させない設計上の工夫」が問われます。
よくある質問(FAQ)
Q. 単元未満株を売却することはできますか?
A. 証券取引所の通常市場では売買できませんが、発行会社への買取請求権を行使することで、時価相当額での売却が可能です。証券会社経由で買取請求の手続きを取り次いでもらうのが一般的です。
Q. 単元未満株にも配当は出ますか?
A. はい。配当請求権は議決権の有無にかかわらず保有株数に比例して発生するため、単元未満株主にも配当は支払われます。
出典・参考(2026-08確認)
- e-Gov法令検索「会社法」(単元株制度に関する規定) https://elaws.e-gov.go.jp/
- 日本取引所グループ「売買単位の集約に向けた行動計画」関連資料 https://www.jpx.co.jp/
※本記事は教育目的の一般的な解説であり、法務・税務・投資助言ではありません。設例は理解のための架空数値です。