この記事で分かること
- 親引けの定義(発行者が指定する販売先への売付け・実質的に類似する行為を含む)
- 日本証券業協会の規則が定める原則禁止と、例外として認められる3つの要件
- 親引け予定先が負う180日の継続保有の確約と、発行者が公表する事項
- 並行第三者割当との関係と、IPO・公募増資の実務での確認手順
30秒で分かる定義
親引け(おやびけ、Directed Share Allocation)とは、株式などの募集・売出しの引受けで、発行者が指定する販売先へ引受証券会社が売り付けることで、販売先を示唆するなど実質的に類似する行為も含みます。[1]日本証券業協会の「株券等の募集等の引受け等に係る顧客への配分等に関する規則」は、引受会員が親引けを行うことを原則として禁止し、定められた要件をすべて満たす場合に限り認めています[1]。取引先、役員、従業員持株会などが販売先として想定されることが多いとされます。機関投資家への配分全般はIPO配分方針で扱い、本ページは発行者が販売先を指定する場合の規制を扱います。
なぜ実務で重要なのか
公募・売出しの配分は、需要に応じて公正に行うのが原則です。発行者が自ら販売先を決められると、特定の者に有利な価格で株式が渡る、需要の実態が見えにくくなる、といった問題が生じ得るため、規則で厳しく制限されています。ECM・引受部門は親引けの可否を判断し、親引け予定先から継続保有の確約書を取り付けます。IPO準備企業・VCは、取引先との関係強化や従業員持株会への株式の配分を親引けで行えるかを、上場スケジュールと開示の準備に組み込みます。投資家は、公表された親引けの数と保有方針から、上場後に市場に出る株式の量を見積もります。
仕組み:原則禁止と例外の要件
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| ①配分の公正 | 親引けを行っても、公正を旨とし合理的な理由なく特定の投資家に偏らないという配分の原則に反しないと引受会員が判断したこと |
| ②発行者による公表 | 親引け予定先の状況(概要、発行者との関係、選定理由、株式数、保有方針、払込資金等の状況、実態)、譲渡制限、発行条件、親引け後の大株主の状況、株式併合等の予定などを適切に公表すること |
| ③継続保有の確約 | 募集の払込期日(払込期間の最終日)または売出しの受渡期日から180日を経過する日まで継続して所有する旨の確約を、主幹事会員が親引け予定先から書面で取り付けること |
3つの要件は「すべて」満たす必要があります[1]。また、引受けを行う募集・売出しと並行して発行者が第三者割当(並行第三者割当)を行う場合、引受会員は発行者に対し、親引けの規定(公表の要件を除く)の趣旨を尊重して行うよう要請しなければなりません[1]。第三者割当の範囲は企業内容等の開示に関する内閣府令の定義を用いています[2]。
整数設例で確認する
設例(架空数値)。IPOで公募1,000,000株を公開価格2,000円で行い、発行者が従業員持株会を親引け予定先に指定して30,000株を配分します。
- 親引けの比率:30,000 ÷ 1,000,000 = 3.0%
- 親引けの金額:30,000 × 2,000円 = 60,000,000円(60百万円)
- 市場で配分される株式:1,000,000 − 30,000 = 970,000株
- 継続保有:持株会は払込期日から180日を経過する日まで30,000株を継続して所有する確約を主幹事に書面で差し入れる
上場後の需給を見る投資家は、ロックアップ対象の既存株主の株式と同様に、この30,000株が180日間は売却されない前提で流通株式を見積もります。
市場・取引制度上の位置付け
親引けは金融商品取引法ではなく、日本証券業協会の自主規制規則で規律されます。第2条第2項の本文と要件は、令和5年2月14日付の改正(2023年10月1日施行)で改められています[1]。親引けの公表事項には、親引け予定先の選定理由や払込資金の状況が含まれ、第三者割当の開示に近い情報が求められます。継続保有の180日は、既存株主のロックアップと並んで上場直後の売り圧力を抑える仕組みとして働きます(ロックアップ条項)。公募増資(PO)でも同じ規則が適用され、親引けを行うと市場への配分が減る分、価格決定の需要の積み上げとのバランスが問われます(PO
実務での調べ方・確認手順
- 発行者の開示を読む:有価証券届出書や公表資料に記載された親引け予定先の概要、選定理由、株式数、保有方針を確認します。
- 継続保有の期間を確認する:払込期日(売出しは受渡期日)から180日を経過する日までが確約の期間です。
- 流通株式への影響を計算する:親引け株式数を既存株主のロックアップ株式と合わせ、上場後に売却可能な株式数をスプレッドシートで集計します。
- 並行第三者割当の有無を確認する:募集と並行して第三者割当がある場合、その割当先と条件も確認します。
この用語を実務で
IPO・公募増資の開示から親引けと継続保有の対象株式を拾い、上場後の流通株式と需給を見積もれるようになる。
実務家が確認するポイントとよくある誤解
誤解1:「発行者が望めば、取引先に自由に株式を配分できる」→ 正しくは、親引けは原則禁止で、配分の公正・公表・180日の継続保有の確約をすべて満たす場合に限り認められます。[1]
誤解2:「販売先を名指ししなければ親引けに当たらない」→ 正しくは、販売先を示唆するなど実質的に類似する行為も親引けに含まれます。[1]
誤解3:「継続保有の確約は発行者に対して行う」→ 正しくは、主幹事会員が親引け予定先から書面で取り付けます。[1]
日本実務での扱い
(2026年11月時点)親引けの定義は日本証券業協会「株券等の募集等の引受け等に係る顧客への配分等に関する規則」第1条の2第14号、原則禁止と例外要件は第2条第2項、並行第三者割当についての要請は同条第3項に定められています(令和7年7月15日施行の改正版で確認)[1]。対象は引受会員が行う株券等の募集または売出しの引受けで、募集だけでなく売出しにも適用されます。上場準備の実務では、従業員持株会や事業上の提携先への配分を親引けで行う場合、主幹事証券会社と早い段階で可否と公表内容を協議するのが一般的です。従業員持株会の仕組みは従業員持株会を参照してください。
面接・モデルテストで問われるポイント
Q:IPOで発行会社が取引先に株式を持ってもらいたい場合、どのような方法がありますか。
「公募・売出しの中で行うなら親引けです。日本証券業協会の規則で原則禁止されているため、配分が公正であるとの引受会員の判断、親引け予定先の状況などの公表、180日間の継続保有の確約という要件をすべて満たす必要があります。上場前の第三者割当で取引先に割り当てる方法もありますが、その場合は上場前の割当てに関する取引所の規則も確認します。」
深掘りでは、親引けが需要の積み上げや公開価格に与える影響を問われます。
よくある質問(F AQ)
Q. 親引けは売出しでも認められますか?
A. 規則は株券等の募集または売出しの引受けを対象としており、継続保有の期間も売出しの場合は受渡期日から起算すると定めています[1]。
Q. 180日経過前に親引け予定先が売却する必要が生じたら?
A. 規則(第2条第2項第3号)は、払込期日(売出しは受渡期日)から180日を経過する日まで継続して所有することの確約を主幹事会員が書面で取り付けることを親引けの要件としており、早期売却を認める一般的な例外は定めていません[1]。確約書の文言だけで規則の要件を緩められるとは限らないため、売却の必要が生じ得る場合は、例外の根拠の有無を主幹事会員と個別に確認します。
出典・参考(2 026-11確認)
- 日本証券業協会「株券等の募集等の引受け等に係る顧客への配分等に関する規則」(平成9年8月8日、令和7年7月15日施行の改正まで反映)第1条の2第14号、第2条第1項〜第3項、付則(令和5年2月14日). https://www.jsda.or.jp/about/kisoku/files/20250715_haibun.pdf(2026年11月参照)
- e-Gov法令検索「企業内容等の開示に関する内閣府令」(昭和四十八年大蔵省令第五号)第19条第2項第1号ヲ. https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=348M50000040005(2026年11月参照)
※本記事は教育目的の一般的な解説であり、法務・税務・投資助言ではありません。設例は理解のための架空数値です。