この記事で分かること

  • ロックアップ条項の定義と、契約上・取引所ルール上の位置付け
  • 創業者・VCそれぞれのロックアップ期間の相場
  • 早期解除条件(株価条項付ロックアップ)の整数設例
  • VCのExitタイミングにロックアップが与える影響

30秒で分かる定義

ロックアップ条項(Lock-Up Agreement)とは、新規株式公開(IPO)に際して、創業者・役員・VC等の既存株主が上場後一定期間、保有する株式を市場で売却しないことを主幹事証券会社との間で約束する契約上の制限です。「上場後の売却制限」とも呼ばれ、上場直後に大量の株式が市場に放出されて株価が急落することを防ぐ、投資家保護・株価安定化のための仕組みです。

なぜ実務で重要なのか

VCにとっては、ロックアップ期間中はExit(保有株式の現金化)ができないため、ファンドの分配(DPI)計画上、いつロックアップが解除されるかが重要な前提になります。創業者・経営陣は、上場によって帳簿上の資産価値は増えても、ロックアップ期間中は実際に売却して現金化できない点を理解しておく必要があります。主幹事証券会社は、上場後の株価の需給を安定させるためにロックアップの対象者・期間・解除条件を設計し、目論見書に開示します。

仕組み:株主区分ごとのロックアップ相場

株主区分ロックアップ期間の相場備考
創業者・役員上場後180日間最も長く、かつ厳格に運用される傾向
VC等の既存株主上場後90〜180日間保有比率・取得時期に応じて個別交渉されることがある
一般の少数株主対象外が多い保有比率が小さい株主はロックアップの対象外とされることが多い

ロックアップ契約には、株価が公開価格の一定倍率を一定期間上回った場合に期間満了前でも解除を認める「早期解除条項(プライスクローズ条項)」が付されることがあります。

整数設例で確認する

設例(架空数値・単位:円、株)。公開価格が1,000円、ロックアップ契約に「公開価格の1.5倍以上の株価が一定期間継続した場合、期間満了前でもロックアップを解除できる」との条項が付されているとします。

早期解除トリガー株価 = 1,000円 × 1.5 = 1,500円。上場後に株価が1,500円以上で推移した場合、通常のロックアップ期間(例えば180日)の満了を待たずに売却が可能になります。VCの保有株式数を500,000株とすると、このVCが早期解除により1,500円で全株売却できた場合の想定売却額は500,000株 × 1,500円 = 750,000,000円(7.5億円)となり、公開価格ベースの想定額500,000株 × 1,000円 = 500,000,000円(5億円)と比べて250,000,000円(2.5億円)多い水準です。

ファンドキャッシュフローへの影響

VCファンドにとって、投資先のIPOはExitルートの1つですが、ロックアップにより実際の現金回収(DPI算入)は上場日から数ヶ月遅れるのが通常です。ファンドの分配計画やLP向け報告では、「上場済みだが未Exit(ロックアップ中)」の保有株式を市場価格で評価しつつ、実現していないという注記を付けるのが実務です。ロックアップ解除後も、保有株式数が大きい場合は市場への影響を考慮し、一度に売却せず複数回に分けて売却するのが一般的です。

実務での調べ方・確認手順

  • ロックアップの対象者・期間・解除条件は、有価証券届出書・目論見書の「引受け等の概要」に記載されます。
  • 早期解除条項の有無・トリガー水準(公開価格の何倍か)も同様に開示資料で確認できます。
  • モデル上は、ロックアップ解除日を明示的にタイムラインに置き、解除後の想定売却スケジュール(一括か分割か)ごとにファンドの分配額シナリオを試算します。

この用語を実務で「使える」状態にする

ロックアップ解除日を起点に、VCファンドの分配シナリオを株価水準別に試算できるようになる。

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実務家が確認するポイントとよくある誤解

誤解1:「上場すればすぐに株式を現金化できる」→ 正しくは、ロックアップにより一定期間(90〜180日が目安)は売却できません。この間は帳簿上の含み益であって実現損益ではありません。

誤解2:「ロックアップ期間はすべての株主で同じ」→ 正しくは、創業者・VC・少数株主で期間や対象範囲が異なるのが通常です。契約ごとに個別確認が必要です。

実務家はさらに、早期解除条項のトリガー水準が「終値ベースか」「何営業日連続で上回る必要があるか」まで細かく確認します。

日本実務での扱い(2026年8月時点)

日本のIPOでは、主幹事証券会社との間でロックアップ契約(90日または180日が一般的)を締結する実務が定着しており、有価証券届出書・目論見書に開示されます(2026年8月時点)。取引所の規則そのものがロックアップ期間を一律に義務付けているわけではなく、あくまで主幹事証券との契約に基づく制限である点は、米国のIPO実務(NASDAQ・NYSE上場時の180日ロックアップが業界慣行として広く用いられる点)と共通しています。日本の新規上場審査では、特別利害関係者等の株式異動についても、上場申請前一定期間の異動状況が審査対象となるため、ロックアップの設計は株式異動規制ともあわせて検討されます。

面接・モデルテストで問われるポイント

Q:ロックアップ条項が設けられる目的を説明してください。
「上場直後に既存株主が保有株式を一斉に売却すると、需給バランスが崩れて株価が急落しかねません。ロックアップは、創業者・VC等の主要株主に一定期間の継続保有を約束させることで、上場後の株価の安定と投資家保護を図る仕組みです。」(30秒回答例)

深掘りでは「早期解除条項が付されることの是非」「VCがロックアップ解除後にどう売却戦略を立てるか」が問われます。

よくある質問(FAQ)

Q. ロックアップ期間中に相対で株式を譲渡することはできますか?
A. 契約の文言次第ですが、多くのロックアップ契約は市場での売却だけでなく相対譲渡も含めて制限の対象としています。個別の契約内容の確認が必要です。

Q. ロックアップが解除された直後に株価が下落することはありますか?
A. あり得ます。解除により売却可能な株式数が増えるとの見方から、解除日前後に株価が軟化する傾向が指摘されることがありますが、実際の値動きは個別銘柄の需給・業績動向によります。

出典・参考(2026-08確認)

※本記事は教育目的の一般的な解説であり、法務・税務・投資助言ではありません。設例は理解のための架空数値です。

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