この記事で分かること
- メッコチャート(マリメッコチャート)が縦・横の両軸に比率を持たせる図であること
- 通常の100%積み上げ棒グラフとの違い(列の幅が市場規模を表す点)
- 3市場×3社の整数設例と、プレイヤー別シェアの検算
- Excelでの作図の考え方と、M&A・戦略資料での使いどころ
30秒で分かる定義
メッコチャート(Mekko Chart、マリメッコチャートとも呼ばれる、読み方:メッコチャート)とは、横軸の列の幅で市場規模やセグメントの大きさを、縦軸の積み上げでその中の構成比(プレイヤー別シェア等)を同時に表す2次元の積み上げチャートです。英語ではMarimekko Chartとも表記され、色鮮やかな幾何学模様で知られるフィンランドのテキスタイルブランド「マリメッコ」の柄に見た目が似ていることが名前の由来とされます。通常の棒グラフが1軸(高さ)だけで大きさを表すのに対し、メッコチャートは幅と高さの両方に意味を持たせる点が最大の特徴です。
なぜ実務で重要なのか
M&Aアドバイザリー・戦略コンサルでは、業界の全体構造(各セグメントの市場規模とプレイヤー構成)を1枚のスライドで説明する際の定番表現として使われます。PEファンドが投資テーマを検討する場面では、市場規模が大きく特定プレイヤーのシェアが低いセグメント(いわゆるホワイトスペース)を視覚的に特定する目的で用いられます。IBのインダストリーグループは、CIM(案件概要書)の業界動向セクションでこの図を使い、対象会社が属する市場の魅力度と競争環境を同時に示します。単純な円グラフや棒グラフでは表現できない「市場規模×シェア」の2次元情報を1枚で伝えられることが、実務での価値です。
仕組み:幅と高さの2軸構成
作図の考え方は次の2段階です。
②各列の高さ(積み上げ) = その市場内でのプレイヤー別構成比(合計100%)
通常の100%積み上げ棒グラフは、すべての列の幅が均等(カテゴリ数で等分)です。メッコチャートは列の幅も情報として使うため、市場規模が小さいセグメントは細い列に、大きいセグメントは太い列になります。したがって、ある列の面積(幅×その中の1社の高さ)は、その市場におけるその社の売上規模にほぼ比例した意味を持ちます。
整数設例で確認する
設例(架空数値、単位:億円)。3つの市場セグメントと3社のプレイヤーX・Y・Zを考えます。市場規模はA:500、B:300、C:200(合計1,000)で、各市場内のシェアは次のとおりです。
この図から、業界全体でのプレイヤー別シェアを金額ベースで検算できます。Xの合計売上=500×40%+300×20%+200×60%=200+60+120=380億円。Yの合計売上=500×35%+300×50%+200×10%=175+150+20=345億円。Zの合計売上=500×25%+300×30%+200×30%=125+90+60=275億円。検算:380+345+275=1,000億円で市場合計と一致します。市場Cは規模が最も小さい(200億円)ものの、Xがそこで60%と圧倒的シェアを持つことが列の幅と高さの両方から一目で読み取れます。単純な円グラフを3枚並べただけでは、この「小さいが集中している市場」という情報は伝わりません。
投資判断への影響
PEファンドや事業会社が新規参入・M&Aのテーマを検討する際、メッコチャートは「規模は大きいがシェアが分散している市場」(買収による統合の余地)と「規模は小さいが特定企業が支配的な市場」(参入障壁が高い可能性)を視覚的に切り分ける材料になります。設例で言えば、市場Aは3社のシェアが40/35/25%と分散しており統合の余地を示唆する一方、市場CはXが60%を握っており単独での新規参入は難易度が高いと推測されます。ただし、この図はあくまで過去または現在時点の静的なスナップショットであり、成長率や収益性の違いは表現していません。投資判断には、成長率や利益率のデータを別途重ね合わせて解釈する必要があります。
財務モデル・Excelでの使い方
Excelには専用のメッコチャート機能がないため、積み上げ棒グラフを応用して作るのが基本です。
- 横軸を通常のカテゴリ軸ではなく数値軸(散布図・面グラフ)として扱い、各列の開始位置(累積市場規模)と幅(当該市場の規模)をあらかじめ計算しておく
- ヘルパー表で「累積開始位置」「幅」「各社の積み上げ高さ」を計算し、これを面グラフや積み上げ棒グラフの系列に流し込む
- 厳密な可変幅の棒グラフはExcelの標準機能だけでは作図が煩雑になるため、実務ではプレゼン資料作成に特化した専用アドインを使う、あるいは図形(四角形)を数値に基づいて手動配置する方法も併用される
- いずれの方法でも、幅の合計と高さの合計(100%)が検算どおりになっているかを必ず確認する
似た2軸表現としてトルネードチャートがありますが、トルネードは感応度の順位付け、メッコチャートは市場構造の一覧という異なる目的で使われます。
この用語をExcelで
市場規模とシェアのデータからヘルパー表を作り、幅可変の積み上げ棒グラフで業界構造を1枚に可視化できるようになる。
実務家が確認するポイントとよくある誤解
誤解1:「メッコチャートはただの積み上げ棒グラフの飾り」→ 正しくは、列の幅そのものが規模を表す固有の情報を持ちます。幅を無視して高さだけを見ると、小さい市場のシェア変化を過大評価してしまいます。
誤解2:「セグメント数が多いほど情報量が増えて良い」→ 正しくは、列が7〜8を超えると細い列の中の文字が読めなくなり、かえって伝わりません。実務では主要セグメントに絞り、残りは「その他」としてまとめます。仕上げの品質についてはIB流チャート作成の10の手順も参考になります。
確認ポイント:受け取る側は、①幅の基準(売上高か、出荷台数か、市場規模の推定値か)が脚注に明記されているか、②推定値であれば「推定」と明記されているか、を確認します。基準が不明なメッコチャートは比較の意味を持ちません。
日本実務での扱い(2 026年8月時点)
日本のM&A・戦略コンサルティングの現場でも、業界再編のテーマ資料や統合報告書の事業ポートフォリオ説明においてメッコチャート的な表現が使われることがありますが、英語圏のコンサルティング業界ほど定型化はされておらず、代わりに単純な棒グラフやバブルチャートで代替されることも多いのが実態です。市場規模の推定に業界団体や官公庁統計(例えば総務省統計局の産業統計)を用いる場合は、集計対象年度・分類基準の違いによって数値が変わり得るため、資料には出典と推定方法を必ず併記することが望まれます。上場企業の有価証券報告書「事業の状況」における市場環境の説明でも、このような構造化された図の活用は記述情報の充実に資するとされています。
面接・モデルテストで問われるポイント
Q:メッコチャートと通常の100%積み上げ棒グラフの違いを説明してください。
「100%積み上げ棒グラフは各カテゴリの列幅が均等で、高さ(構成比)だけが情報を持ちます。メッコチャートは列の幅にも市場規模などの情報を持たせ、幅と高さの掛け算(面積)がおおよその金額規模を表す点が異なります。市場規模が大きく異なる複数のセグメントを比較する際、単純な積み上げ棒グラフでは規模の差が見えませんが、メッコチャートなら幅の違いとして一目で伝わります。」
深掘りでは「セグメント数が多い場合の対処」「幅の基準に推定値を使う場合の注意点」が問われます。
よくある質問(F AQ)
Q. マリメッコチャートとメッコチャートは同じものですか?
A. 実務上は同じ図を指す同義語として扱われます。マリメッコ社の柄との見た目の類似から呼ばれるようになった通称で、統計学上の正式名称というより業界での通称です。
Q. 市場規模の代わりに何を幅に使えますか?
A. 売上高・出荷台数・従業員数・投資額など、比較したい「規模」を表す指標であれば幅の基準として使えます。ただし高さ(構成比)の基準と幅の基準が異なる単位・年度にならないよう揃える必要があります。
出典・参考(2 026-08確認)
- 総務省統計局(産業統計・市場規模関連の統計データ) https://www.stat.go.jp/
- 金融庁「記述情報の開示に関する原則」(市場環境の説明に関する記載の考え方) https://www.fsa.go.jp/
※本記事は教育目的の一般的な解説であり、法務・税務・投資助言ではありません。設例は理解のための架空数値です。