この記事で分かること
- 複合グラフ(第2軸グラフ)の定義と、IB資料での定番の使われ方
- 作成手順と、整数設例による軸データの検算
- 軸のスケール操作が読み手の印象を歪める仕組みと注意点
- Excel・PowerPoint連携での実装上のポイント
30秒で分かる定義
複合グラフ・第2軸グラフ(Combo Chart / Dual-Axis Chart、ふくごうぐらふ)とは、棒グラフと折れ線グラフのように種類や単位が異なる複数のデータ系列を1つのグラフ領域に重ねて表示し、片方の系列に第2軸(右側の縦軸)を設定するExcelのグラフ機能です。「2軸グラフ」「第2軸」とも呼ばれます。水準(レベル)を示す系列と、比率(率)を示す系列を同時に見せたいときに使われます。
なぜ実務で重要なのか
投資銀行のピッチブックでは、「売上高(棒・左軸、億円)」と「成長率(線・右軸、%)」のように、水準と比率を同時に見せる表現が定番です。PEの投資委員会資料やIM(Information Memorandum)でも、EBITDAマージンの推移や利回りスプレッドの説明に頻出します。経営企画の決算説明資料でも、業績と収益性指標を1枚のグラフで直感的に伝える手段として広く使われます。
計算式(ま たは仕組み)
| 手順 | 操作内容 |
|---|---|
| ① | 元データを列ごとに用意する(年度・売上高・成長率) |
| ② | 集合縦棒グラフを挿入する |
| ③ | 成長率の系列を選択し「系列の書式設定」→「使用する軸」を第2軸に変更する |
| ④ | 成長率系列のグラフの種類を折れ線に変更する(「組み合わせ」グラフ機能でも可) |
| ⑤ | 左右2つの軸の最大・最小値を調整し、ゼロ点の位置を意識的に揃える |
整数設例で確認する
設例(架空数値)。単位は億円です。FY24の売上高800、FY25の売上高880、FY26(予)の売上高950とします。FY25の成長率は(880-800)÷800=80÷800=10.0%、FY26の成長率は(950-880)÷880=70÷880=7.95…%≒8.0%と計算できます。この売上高(棒・左軸)と成長率(線・右軸)を同じグラフに重ねると、「水準は伸びているが伸び率は鈍化している」という2つの情報を1枚で伝えられます。
ここで注意が必要なのは軸の取り方です。もし右軸(成長率)の最大値を意図的に小さく(例えば12%ではなく9%に)設定すると、7.95%という値がグラフ上ではほぼ天井に張り付いて見え、実際以上に成長が力強い印象を与えてしまいます。逆に右軸の最大値を極端に大きく取れば、成長率の折れ線はほぼ横ばいに見えます。軸のスケール操作は同じ数値でも見え方を大きく変えるため、慎重な設計が必要です。
案件プロセス上の位置付け
複合グラフは、ピッチブックやIMの「市場・業績ハイライト」セクションで頻出する要素です。モデルから初稿データを抽出し、社内テンプレートに沿ってフォーマットを整え、シニアによるレビュー(マークアップ)を経て、印刷・PDF化前の最終チェックで軸のスケールや単位表記に誤りがないかを確認する、という一連の資料作成プロセスの中に位置付けられます。
財務モデル・Excelでの使い方
グラフの元データはモデルの指標シートから直接参照し、グラフ側に数値をハードコードしないのが原則です(モデルの書式規約を参照)。第2軸のスケールは自動設定に任せず、最小値をゼロに固定するなど手動で管理し、印象操作にならないようにします。凡例・軸ラベルには単位(億円・%)を明記し、IB流チャート作成のスタイルガイドに沿ったフォント・色数(原則1〜2色)を守ります。
この用語をExcelで
モデルの指標シートから複合グラフを直接生成し、軸のスケールを意図的にコントロールできるようになる。
実務家が確認するポイントとよくある誤解
誤解1:「第2軸を使えば何でも比較できる」→ 正しくは、軸のスケールの取り方次第で誤解を招く表現になりうるため、必ずゼロ基準を意識して設計します。
誤解2:「グラフの見た目さえ良ければよい」→ 正しくは、グラフに焼き付いた数値がソースシートの数値と一致しているかを必ず検算します。
誤解3:「棒と線の組み合わせしかできない」→ 正しくは面グラフ・散布図等とも組み合わせ可能で、Excelには「組み合わせ」というグラフの種類が標準搭載されています。
日本実務での扱い
有価証券報告書の補足資料や決算説明資料、統合報告書などで、売上高・利益と成長率やマージンを併記する複合グラフは一般的な開示表現です。金融庁が公表する「記述情報の開示の好事例集」では、財務・非財務情報をわかりやすく伝える図表の工夫が優良事例として取り上げられており、複合グラフのような視認性の高い表現は投資家との対話の質を高める手段として位置づけられています(2026年8月時点)。
面接・モデルテストで問われるポイント
Q:複合グラフを使う場面と、使う際に注意すべき点を説明してください。
「単位や性質が異なる2つの系列(水準と比率など)を同時に見せたいときに使います。注意点は、第2軸のスケールの取り方によって同じ数値でも印象が大きく変わることです。ゼロ基準を揃える、軸の最大値を恣意的に操作しないなど、誤解を招かない設計を徹底します。」
深掘りでは「単位が同じ系列を第2軸に分けるべきでない理由」が問われます。
よくある質問(F AQ)
Q. 第2軸のグラフはいつ使うべきではありませんか?
A. 単位が同じ系列同士を第2軸に分けると、スケールの違いを不必要に強調し誤解を招くため、単位・性質が異なる系列に限定して使うべきです。
Q. PowerPointに貼る際の注意点は何ですか?
A. Excelの元データとリンク貼り付け(形式を選択して貼り付け)にしておくと、モデル更新時にスライド側も自動更新でき、手作業での転記ミスを防げます。
出典・参考(2 026-08確認)
- 金融庁「記述情報の開示の好事例集」 https://www.fsa.go.jp/
- 日本取引所グループ(決算説明資料・適時開示の実務) https://www.jpx.co.jp/
※本記事は教育目的の一般的な解説であり、法務・税務・投資助言ではありません。設例は理解のための架空数値です。