この記事で分かること
- 未払法人税等の定義(財規第49条第3項)と、どの税金が含まれるか
- 中間納付・確定申告の期限との関係を整数設例で計算
- 2026年7月改正の法人税等会計基準で表示が変わる税金(均等割・付加価値割・資本割)
- M&Aの価格調整で運転資本から除き、デットライク項目として扱う理由
30秒で分かる定義
未払法人税等(みばらいほうじんぜいとう、Income Taxes Payable)とは、決算日時点でまだ納付していない法人税・住民税・事業税などの額を示す、貸借対照表の流動負債の科目です。財務諸表等規則は、流動負債の区分に「未払法人税等」を掲げ、法人税、地方法人税、防衛特別法人税、住民税、事業税および特別法人事業税の未払額と定義しています(第49条第1項第7号・第3項)[1]。
当期の税額のうち、期中に中間申告で納めた分を差し引いた残りが、決算日後2か月以内の確定申告で納付されるまで、この科目に計上されます[2]。税制そのものは法人税で扱います。
なぜ実務で重要なのか
未払法人税等は、決算期末の直後に確実に現金が出ていく負債です。財務・経理は、確定申告時の納付を資金繰り表に織り込みます。アナリスト・融資担当は、流動比率や営業CFの分析で、期末の未払法人税等の増減が営業CFを一時的に押し上げていないかを確認します。M&AのFA・FAS・PEは、買収価格の調整で、未払法人税等を運転資本に含めるか、有利子負債に準じるデットライク項目として株式価値から差し引くかを交渉します(Debt-like Items完全ガイド)。
計算式(ま たは仕組み)
中間申告は、事業年度が6か月を超える普通法人が、6か月経過日から2か月以内に行います。前期実績による場合の税額は、前期の確定法人税額を前期の月数で割り、中間期間の月数を掛けた額で、この額が10万円以下なら中間申告は不要です(法人税法第71条第1項)。6か月を1事業年度とみなす仮決算による中間申告もできますが、仮決算による税額が前期実績による税額を超える場合や、中間申告を要しない場合(災害損失金額がある場合を除く)には使えません(第72条第1項ただし書)[2]。確定申告書は原則として事業年度終了の日の翌日から2か月以内に提出し、その期限までに納付します(第74条第1項・第77条)[2]。
企業会計基準第27号「法人税等に関する会計基準」は、課税対象利益を基礎とする税金のうち納付されていない税額で、1年以内に支払期限が到来するものを「未払法人税等」などの科目で流動負債に、1年を超えるものを「長期未払法人税等」などで固定負債に表示するとしています(第11項)[3]。
整数設例で確認する
設例(架空数値)。単位は百万円。3月決算の会社で、当期の課税所得を1,000、法人税等の実効税率を30%とすると、当期の法人税等は 1,000 × 30% = 300 です。前期の法人税等は240でした。説明を簡単にするため、地方税も含めた法人税等全体に前期実績による中間申告の計算をそのまま当てはめます。
- 中間納付額(11月末までに納付)= 240 ÷ 12か月 × 6か月 = 120
- 期末の未払法人税等 = 300 − 120 = 180(翌期5月末の確定申告期限までに納付)
- 株式価値の算定で、EVを10,000、ネットデット(有利子負債 − 現金)を2,000とし、未払法人税等180をデットライク項目として差し引くと、株式価値 = 10,000 − 2,000 − 180 = 7,820
未払法人税等を正常運転資本(NWC)の目標水準にも含めていると、同じ180を二重に差し引くことになります。どちらか一方で扱うことを契約で明確にします(正常運転資本
PL・BS・CFへの影響
PL:当期の課税所得に基づく税額は、税引前当期純利益の次に「法人税等」などの科目で表示されます(第9項)[3]。BS:そのうち未納付の額が未払法人税等になり、中間納付額が確定税額を上回れば、還付される額を「未収還付法人税等」として流動資産に表示します(第12項)[3]。CF:間接法の営業CFでは、税引前当期純利益から始めて小計の下で「法人税等の支払額」を差し引くのが一般的で、支払額は「期首の未払法人税等+当期の法人税等−期末の未払法人税等」で検算できます。増益の年は期末の未払が増え、支払が翌期にずれるため、当期の支払額はPLの税額より少なくなります(法人税等の支払額を三表で予測する)。
財務モデル・Excelでの使い方
- 税金の支払スケジュール:当期の法人税等の行、中間納付の行(前期実績の50%など前提を明示)、確定納付の行を分け、
=当期法人税等−中間納付で期末の未払法人税等を出します。 - 三表の連動:仮払税金・未収還付法人税等や源泉税、企業結合などによる非資金の増減がない単純なモデルでは、CF計算書の法人税等の支払額を
=期首未払+当期法人税等−期末未払で計算し、BSの未払法人税等と一致させます。中間納付が年税額を上回り還付が見込まれる場合などは、未収還付法人税等の増減も含めて計算します。 - 月次モデル:中間申告月(6か月経過日から2か月以内)と確定申告月(決算後2か月以内)に支払を置くと、資金繰りの山が再現できます。
この用語をExcelで
当期の税額・中間納付・確定納付を分けて未払法人税等と税金の支払額を予測し、三表を連動させられるようになる。
実務家が確認するポイントとよくある誤解
誤解1:「未払法人税等は運転資本の一部」→ 正しくは、M&Aの価格調整では運転資本から除き、デットライク項目として扱うことが多いとされます。営業取引から生じる買掛金と違い、過去の利益に対する確定した支払義務だからです。どう扱うかは最終的には契約の定義で決まります(デットライクアイテム)。
誤解2:「未払法人税等とPLの法人税等は同じ金額」→ 正しくは、中間納付を差し引いた残額です。設例ではPLの300に対し、BSの未払は180です。
誤解3:「未払法人税等には繰延税金も含まれる」→ 正しくは、繰延税金負債は別の科目です。未払法人税等は当期・過年度の確定税額のうち未納付の額で、一時差異に係る将来の税額は繰延税金資産・負債で扱います。
日本実務での扱い
(2026年11月時点)未払法人税等の定義は財務諸表等規則第49条第3項にあります[1]。企業会計基準委員会は2026年7月7日に企業会計基準第27号「法人税等に関する会計基準」を改正し、住民税(均等割)、事業税(付加価値割)および事業税(資本割)について、損益計算書では「法人税等」に含めず内容に応じた区分に表示し、未納付額も原則として「未払法人税等」以外の科目で表示する(重要性が乏しい場合は含めてよい)こととしました(第18-2項・第18-3項)。この改正は2028年4月1日以後開始する事業年度の期首から適用され、公表日以後開始する事業年度からの早期適用も認められています(第20-7項)[3]。適用前の会社の財務諸表では、未払法人税等にこれらの税金が含まれている場合があるため、注記や内訳で範囲を確かめてから比較します。決算日から2か月以内に定時総会が招集されない常況にある会社などでは、申請により確定申告書の提出期限の延長が認められる特例があります(法人税法第75条の2)[2]。
面接・モデルテストで問われるポイント
Q:買収のEVから株式価値を出すとき、未払法人税等はどう扱いますか。
「未払法人税等は、クロージング前の期間の利益に対する税金で、クロージング後に買い手側の会社から現金で出ていく確定した負債です。そのため一般に、正常運転資本から除いたうえでデットライク項目として株式価値から差し引きます。運転資本の目標水準に含めている場合は二重控除にならないよう一方だけで扱い、期中のクロージングなら期首からクロージング日までの未計上の税額も見積もって調整します。」
よくある質問(F AQ)
Q. 消費税の未払額も未払法人税等に入りますか?
A. 入りません。財規の定義は法人税・住民税・事業税などに限られており[1]、消費税等の未払額は一般に「未払消費税等」などの科目(または流動負債の「その他」)で表示されます。
Q. 赤字の会社でも未払法人税等が計上されますか?
A. 課税所得がなくても、住民税の均等割などの税額が生じるため、少額の計上があることがあります。2026年改正基準の適用後は、これらは原則として別の科目で表示されます[3]。
出典・参考(2 026-11確認)
- e-Gov法令検索「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則」(昭和三十八年大蔵省令第五十九号)第49条第1項第7号・第3項. https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=338M50000040059(2026年11月参照)
- e-Gov法令検索「法人税法」(昭和四十年法律第三十四号)第71条第1項、第72条第1項、第74条第1項、第75条の2第1項、第77条. https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=340AC0000000034(2026年11月参照)
- 企業会計基準委員会「企業会計基準第27号 法人税等に関する会計基準」(最終改正2026年7月7日)第9項・第11項・第12項・第18-2項・第18-3項・第20-7項. https://www.asb-j.jp/jp/wp-content/uploads/sites/4/ecl20261016_53.pdf(2026年11月参照)
※本記事は教育目的の一般的な解説であり、法務・税務・投資助言ではありません。設例は理解のための架空数値です。