この​記事で​分かる​こと

  • 保有期間利回り(HPR)の定義と、年率化前の実額ベース指標であること
  • 計算式と、単純年率化・幾何平均年率化の整数設例による違い
  • 保有期間の異なる案件を比較する際に陥りやすい落とし穴
  • 時間加重収益率との使い分けとExcelでの実装

30秒で​分かる​定義

保有期間利回り(Holding Period Return、略称HPR、読み方:ほゆうきかんりまわり)とは、投資対象を保有していた全期間を通じて得られた総リターン(値上がり益・配当・利息収入等の合計)を、投資を開始した時点の価額で割って求める利回りです。年率化する前の、実額ベースの「保有期間全体で何%儲かったか」を示す最も基礎的なリターン指標であり、1年未満でも複数年でも、期間の長さにかかわらず同じ考え方で計算できます。

なぜ実務で​重要なのか

資産運用・ポートフォリオ管理では、複数の投資期間・投資対象のリターンを比較する出発点としてHPRを算出し、その後で年率換算や時間加重収益率へと発展させます。プライベートエクイティ・不動産投資では、投資期間が数年に及ぶ案件が多いため、単純なIRR​(内部収益率)だけでなく、保有期間全体のトータルリターンをHPRベースで確認することがあります。個人向けの資産運用アドバイザリーでも、顧客に投資成果を説明する際、複雑な年率指標より先にHPRで「元本に対して何%増えたか」を示すことも珍しくありません。

計算式

HPR(%)=(期末価額 - 期首価額 + 保有期間中の収益)÷ 期首価額 × 100

「期末価額」は保有期間終了時点の評価額(売却していれば売却額)、「保有期間中の収益」には配当・利息・賃料収入等が含まれます。株式であればキャピタルゲイン利回りと配当利回りの合算がHPRに相当します。複数年にわたる投資でも、期間の長さで割り戻さない「実額ベース」の指標である点が、後述の年率化リターンとの違いです。

整数設例で​確認する

設例(架空数値)。投資額1,000百万円で不動産を購入し、3年間保有した後に1,300百万円で売却したとします。保有期間中に受け取った賃料収入(税・費用控除後)の累計は150百万円でした。

HPR=(1,300-1,000+150)÷1,000=45%。これは3年間という保有期間全体でのトータルリターンです。仮にこれを単純に3で割って年率換算すると45%÷3=15%となりますが、これは複利効果を無視した簡便な近似であり、正確な年率化には(1+HPR)の(1/年数)乗-1=(1.45)^(1/3)-1≒13.2%という幾何平均の計算が必要です。単純平均の15%と幾何平均の13.2%の差は、複利効果を反映しているかどうかの違いです。

項目計算式結果
3年保有HPR(1,300-1,000+150)÷1,00045%
単純年率化(近似)45%÷315.0%
幾何平均年率化(正確)(1.45)^(1/3)-113.2%

投資判断への​影響

HPRは、異なる保有期間の投資案件を単純比較する際の落とし穴にもなります。3年で45%のHPRを得た案件と、1年で20%のHPRを得た案件を単純にHPRの数字だけで比べると、前者の方が有利に見えますが、年率換算すれば後者(年率20%)の方が前者(年率約13.2%)より効率的にリターンを生んでいます。投資判断では、HPRそのものだけでなく、保有期間を揃えた年率ベースでの比較が必須です。

財務​モデル・​Excelでの​使い方

保有資産のリターン管理シートでは、次のように組みます。

  • =(期末価額-期首価額+保有期間中収益)/期首価額 でHPRを計算する行を作る
  • 保有年数のセルを別途置き、=(1+HPR)^(1/保有年数)-1 で幾何平均年率化リターンを算出する
  • 複数の投資案件を並べ、HPR・保有年数・年率化リターンの3列で一覧化し、保有期間の異なる案件同士を年率ベースで比較できるようにする

複数回にわたる追加投資・部分売却がある場合は、単純なHPRでは正確に捉えられないため、金額加重収益率と​時間加重収益率の考え方に切り替える必要があります。

この​用語を​Excelで​「組める」​状態に​する

保有期間の​異なる​投資案件の​リターンを、​HPRから​年率化​リターンへ​正しく​変換して​比較できるようになる。

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実務家が​確認する​ポイントと​よく​ある​誤解

誤解1:「HPRが高いほど良い投資」→ 正しくは、保有期間の長さを無視した単純比較は誤りです。年率換算しなければ、期間の長い案件が見かけ上有利になりやすくなります。

誤解2:「HPRを単純に年数で割れば年率になる」→ 正しくは、複利効果を反映するには幾何平均を使う必要があり、単純平均(HPR÷n)は近似値に過ぎず、リターンが大きいほど乖離が拡大します。

日本実務での​扱い​(2026年8月時点)

日本の投資信託の運用報告書や目論見書では、基準価額の騰落率という形でHPRに相当する情報が開示されますが、複数年のパフォーマンスは年率換算されたトータルリターンで示されるのが一般的です(2026年8月時点)。私募ファンド(PE・不動産ファンド等)の投資家(LP)向け報告では、案件単位の保有期間全体のリターン(HPRに相当するマルチプル等)とIRRの両方が示されることが多く、両者の性質の違いを理解しておく必要があります。

面接・​モデルテストで​問われる​ポイント

Q:3年で45%のリターンを出した投資案件と、1年で20%のリターンを出した投資案件、どちらが優れた投資と言えますか。
「単純なHPRの数字(45%対20%)だけで比較すると前者が有利に見えますが、保有期間が異なるため年率換算が必要です。3年45%を幾何平均で年率換算すると約13.2%となり、単年20%のリターンの方が資本効率としては優れています。投資判断では保有期間を揃えた年率ベースでの比較が原則です。」(30秒回答例)

深掘りでは「単純平均と幾何平均の使い分け」「時間加重収益率との違い」が問われます。

よく​ある​質問​(FAQ)

Q. HPRは負の値になりますか?
A. はい。期末価額と保有期間中の収益の合計が期首価額を下回れば、HPRはマイナスになります。

Q. HPRと配当・利息を含めたトータルリターンは同じ意味ですか?
A. ほぼ同じ意味で使われます。HPRは保有期間中に生じたキャピタルゲイン・インカムゲインの両方を含む「実額ベースの総合リターン」を指し、株式であれば配当利回りとキャピタルゲイン利回りの合算に相当します。

出典・参考​(2026-08確認)

※本記事は教育目的の一般的な解説であり、法務・税務・投資助言ではありません。設例は理解のための架空数値です。

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