この記事で分かること
- グロース株とバリュー株の定義と、PER・PBR・ROEの関係
- PVGOで成長期待が株価に占める割合を整数設例で確認
- 投資スタイルのグロース株と東証グロース市場の違い
- 指数・運用会社ごとに分類基準が異なる点の注意
30秒で分かる定義
本ページの「グロース株」「バリュー株」は株式の投資スタイル上の分類を指し、高い利益成長が期待されて高いPER・PBRで取引される株をグロース株、利益や純資産に比べて低い倍率で取引される株をバリュー株と呼びます。グロース株は成長株、バリュー株は割安株とも呼ばれます。分類は相対的で、基準は指数提供会社や運用会社ごとに異なります。なお、東証市場区分の「グロース市場」は上場する市場の名称で、投資スタイルのグロース株とは別の概念です。
なぜ実務で重要なのか
運用会社・年金基金は、ポートフォリオをグロースとバリューに分けて成績や偏りを管理し、スタイル別の指数と比較します。リサーチ部門は、PER・PBRなどの倍率を使って同業他社と比較する際(コンパラブル分析)に、高い倍率が成長期待によるのか、単なる割高なのかを見分ける必要があります。IBやFAは、上場企業の株価水準を説明する際に、市場が成長を織り込んでいるかを説明の軸に使います。VC・成長投資の担当者は、投資先の将来の上場時評価を考えるうえで、グロース株の評価の仕組みを理解しておく必要があります。
計算式(ま たは仕組み)
分類に使う代表的な指標は次のとおりです。どの指標を、どの閾値で使うかは指数・運用会社ごとに異なります。
| 観点 | グロース株の傾向 | バリュー株の傾向 |
|---|---|---|
| PER(株価÷EPS) | 高い | 低い |
| PBR(株価÷BPS) | 高い | 低い |
| 利益成長率(予想) | 高い | 低い〜中程度 |
| 配当利回り | 低い(利益を再投資) | 相対的に高い |
PER・PBR・ROEの間には次の関係があり、倍率の高さを成長とROEに分解できます。株価は「成長しない場合の価値」と「成長機会の現在価値(PVGO)」に分けて考えられます(PVGO)。
株価 = 無成長価値(EPS÷割引率)+ PVGO
ここでのROEは、EPSとBPSの株式数・自己資本の時点をそろえた簡便な比率です。通常のROE(当期純利益÷期首・期末平均の自己資本など)とは一致しないことがあり、有報のEPS・BPSから通常のROEをそのまま再現できるとは限りません。無成長価値は、EPSの全額が配当され、成長しない前提でEPSを割引率で割った値です(単純化した理論値)。
整数設例で確認する
設例(架空数値):3社の株価・EPS・BPSから、倍率とROEを求めます(単位:円)。無成長価値の割引率は8%とします。
| A社 | B社 | C社 | |
|---|---|---|---|
| 株価 | 3,000 | 1,200 | 1,200 |
| EPS | 50 | 120 | 60 |
| BPS | 600 | 1,500 | 1,000 |
| PER(株価÷EPS) | 60倍 | 10倍 | 20倍 |
| PBR(株価÷BPS) | 5.0倍 | 0.8倍 | 1.2倍 |
| ROE(EPS÷BPS) | 8.33% | 8.0% | 6.0% |
| 無成長価値(EPS÷8%) | 625 | 1,500 | 750 |
| PVGO(株価−無成長価値) | 2,375 | −300 | 450 |
確認:A社は PBR=PER×ROE=60×8.33%=5.0倍、B社は 10×8.0%=0.8倍、C社は 20×6.0%=1.2倍で、定義と一致します。
分類(仮のルール:PER15倍超かつPBR2倍超=グロース的、PER15倍以下かつPBR1.5倍以下=バリュー的、それ以外は中間)
- A社:PER60倍・PBR5.0倍でグロース的。株価の 2,375÷3,000=79.2%を成長機会(PVGO)が占め、ROEは8.33%と高くないため、利益の大幅な増加が株価に織り込まれていると読めます。
- B社:PER10倍・PBR0.8倍でバリュー的。PVGOは−300で、株価は無成長価値を下回ります。市場が収益の低下や高い資本コストを見ている可能性があり、単純に「割安」とは言い切れません。
- C社:PERは20倍で15倍を超えますがPBRは1.2倍で、どちらにも当てはまらない中間です。指標を1つに絞ると分類が割れる例です。
投資判断への影響
スタイル別の成績は金利や景気局面で入れ替わることがあります。一般に、将来の利益に評価の比重が大きいグロース株は、割引率(株主資本コスト)の上昇局面、たとえば長期金利の上昇で株主資本コストが上がる局面で評価が下がりやすいとされますが、実際の値動きはその時々の業績や需給にも左右されるため、常に成り立つわけではありません。ファクターとして整理する方法はファクター投資とマルチファクターモデルの実務で扱い、赤字の成長企業にPERが使えない理由は赤字の成長企業は本当に
財務モデル・Excelでの使い方
- 倍率の計算列:
=株価/EPS(PER)、=株価/BPS(PBR)、=EPS/BPS(ROE)。EPSが負のときPERは意味を持たないため=IF(EPS<=0,"n.m.",株価/EPS)とします。 - 分類:
=IF(AND(PER>15,PBR>2),"グロース的",IF(AND(PER<=15,PBR<=1.5),"バリュー的","中間"))。閾値は入力セルに置き、変更できるようにします。 - PVGO:
=株価-EPS/割引率。割引率を変えると結果が大きく変わるため、感応度表で確認します。
この用語をExcelで
PER・PBR・ROE・PVGOを計算し、銘柄をグロース的・バリュー的に分類する表をExcelで作れるようになる。
実務家が確認するポイントとよくある誤解
誤解1:「グロース株は東証グロース市場の銘柄」→投資スタイルのグロース株は倍率や成長率による分類で、東証グロース市場は市場区分です。設例の分類ルールにはどの市場に上場するかは含まれません。
誤解2:「PERが低ければ割安」→B社のようにPVGOが負なら、市場が将来の収益低下を織り込んでいる可能性があります。会計基準の違いでEPSの水準が変わる点にも注意します。
誤解3:「グロース株は常に割高」→高い倍率でも、実現する成長が織り込みを上回れば割高とは限りません。倍率だけでなく、成長の持続性とROEを見ます。
日本実務での扱い
(2026年11月時点)日本では、東証の市場区分(プライム・スタンダード・グロース)とは別に、指数提供会社や運用会社が独自のグロース/バリュー分類を用います。JPXは東証グロース市場250指数のように、市場区分に基づく指数を公表しており[1]、投資スタイルの指数とは名称が似ていても定義が異なる場合があります。ベンチマークがどの定義かを必ず確認します。倍率の読み方はPBRの解説も参考になります。有価証券報告書では、1株当たり当期純利益(EPS)と1株当たり純資産(BPS)が主要な経営指標等に掲載されるため、倍率の元データはそこから取得できます。
面接・モデルテストで問われるポイント
Q:グロース株とバリュー株の違いを説明し、PERが高い会社の評価をどう考えますか。
「グロース株は将来の利益成長を織り込んで高いPER・PBRで取引される株、バリュー株は利益や純資産に比べて低い倍率の株です。PERが高い会社は、成長が株価の何割を占めるかをPVGOで確認し、ROEや成長の持続性と合わせて、織り込みが妥当かを判断します。」
深掘りされる観点:PBR=PER×ROEの関係、PVGOの前提(割引率)への感応度、指数ごとの分類基準の違いです。
よくある質問(F AQ)
Q. グロース株とバリュー株の分類に決まった基準はありますか。
A. 統一された基準はなく、PER・PBR・配当利回り・利益成長率などを組み合わせた指数提供会社・運用会社ごとの定義があります。
Q. 東証グロース市場の銘柄はグロース株ですか。
A. 市場区分と投資スタイルは別です。東証グロース市場の銘柄でも、倍率がバリュー的な会社があり得ます。指標で分類を確認します。
出典・参考(2 026-11確認)
- 日本取引所グループ「指数ラインアップ」(東証グロース市場250指数、東証グロース市場Core指数などの掲載ページ). https://www.jpx.co.jp/markets/indices/line-up/index.html(2026年11月参照)
※本記事は教育目的の一般的な解説であり、法務・税務・投資助言ではありません。設例は理解のための架空数値です。