この記事で分かること
- 等価年価(EAA)の定義と、更新を繰り返す前提ではNPVの単純比較では足りない理由
- 年金現価係数を使った換算式と、費用のみの案を比べる「年間等価コスト」
- 3年案と6年案を比較する整数設例(NPVとEAAで順位が逆転する例)
- Excelでの求め方(PMT関数)と、反復投資の前提・限界
30秒で分かる定義
等価年価(とうかねんか、Equivalent Annual Annuity、EAA)とは、投資案の正味現在価値
耐用年数が異なる、同時には選べない(相互排他的な)投資案を比べるときに使います。年あたりの価値に直して並べるため、期間の違いを調整できます。
なぜ実務で重要なのか
経営企画・設備投資の稟議では、耐用年数が3年の機械と6年の機械のように、期間の違う更新案を比べる場面があります。FAS・財務部門は、リースか購入か、更新時期をいつにするかの検討で使います。融資・不動産の実務でも、改修投資の比較に応用できます。NPVが大きい案が、必ずしも優れた案とは限らない点が実務上の落とし穴です。
計算式(ま たは仕組み)
年金現価係数 = {1 -(1+r)^(-n)} ÷ r
収益のある案はEAAが大きいほど有利です。収益を比べず費用だけを比較する案(機械の更新など)は、現在価値で見た総費用を年金現価係数で割った年間等価コスト(EAC)を使い、小さいほど有利と判断します。
整数設例で確認する
設例(架空数値)。単位は百万円、割引率は10%、税金・残存価値は考えません。年金現価係数は 3年=2.4869、5年=3.7908、6年=4.3553(小数第5位を四捨五入)です。
設例1:収益のある2案
- 案A(耐用3年):初期投資1,000、毎年のキャッシュフロー500。NPV=500×2.4869-1,000=243.4、EAA=243.4÷2.4869=97.9
- 案B(耐用6年):初期投資2,000、毎年のキャッシュフロー520。NPV=520×4.3553-2,000=264.7、EAA=264.7÷4.3553=60.8
NPVだけを見るとBが大きい(264.7>243.4)のに、EAAはAが大きい(97.9>60.8)ため、順位が逆転します。確認のため案Aを6年間に2回続けた場合を考えると、NPVは 243.4+243.4÷1.1³=243.4+182.9=426.3(1.1³=1.331)で、Bの264.7を上回ります。反復を前提にすると、EAAの示す結論と一致します。
設例2:費用のみの2案(年間等価コスト)
- 機械X(耐用3年):初期費用900、毎年の維持費100。現在価値の総費用=900+100×2.4869=1,148.7、EAC=1,148.7÷2.4869=461.9
- 機械Y(耐用5年):初期費用1,300、毎年の維持費60。現在価値の総費用=1,300+60×3.7908=1,527.4、EAC=1,527.4÷3.7908=402.9
総費用の現在価値はYの方が大きい(1,527.4>1,148.7)ものの、年あたりでみるとYの方が安い(402.9<461.9)ため、費用面ではYが有利と判断できます。
投資判断への影響
EAAは、各案を同じ条件で繰り返し更新できると仮定しています。実際には、数年後の機械の価格や性能は変わり、割引率やキャッシュフローも同じとは限りません。技術進歩が速い設備、インフレ率が高い局面、更新自体が不確実な案では、この前提が崩れます。最小公倍数の期間まで各案を繰り返して比べる方法でも同じ前提を置いています。なお、複数案を同時に選べる場合や、投資額に制約がある場合は、収益性指数などの別の指標を併用します。
財務モデル・Excelでの使い方
- NPVの計算:
=NPV(割引率, 1年目:n年目のCF) + 初期投資(負の値)で案ごとのNPVを求めます。 - EAAの計算:
=-PMT(割引率, 耐用年数, NPV)。PMT関数は支払額を負の値で返すため、符号を反転します。設例1の案Aなら=-PMT(10%,3,243.4)が約97.9になります。 - EACの計算:
=PMT(割引率, 耐用年数, -現在価値の総費用)で年間等価コストを正の値で得られます。 - 前提の明示:反復投資・同一の割引率・税引前などの前提をセルの注記に残し、設備投資の判断モデル(設備投資意思決定モデル)の中の比較ブロックとして置きます。
この用語をExcelで
耐用年数の異なる投資案のNPVを年あたりの価値へ換算し、PMT関数で比較表を作れる。
実務家が確認するポイントとよくある誤解
誤解1:NPVが最大の案を選べばよい → 同じ条件で更新を繰り返す前提なら、NPVの単純比較では期間の違いを無視してしまいます。設例のように、NPVとEAAで順位が逆転することがあります。一方、更新しない1回限りの相互排他案なら、各案の全キャッシュフローを同じ時点に割り引いたNPVで比べられます。
誤解2:EAAは常に使える → 反復投資の前提が成り立つかを確認します。更新が1回限りの案、技術が急速に変わる案には当てはまりません。
誤解3:耐用年数は税法上の年数でよい → 比較には経済的な使用期間を使います。減価償却の年数とは別に、実際に使える期間を見積もる必要があります。
日本実務での扱い
(2026年11月時点)日本では、減価償却資産の法定耐用年数は財務省令の別表(耐用年数表)で定められています[1]。税務上の償却年数と、投資案の経済的な使用期間は一致するとは限りません。EAAで比べる際は、経済的な使用期間を耐用年数として使い、税金の影響を入れる場合は、法定の償却方法による減価償却費の節税効果を別途キャッシュフローに含めます。稟議書では、割引率の根拠と反復の前提を併記すると説明しやすくなります。
面接・モデルテストで問われるポイント
Q:耐用年数が3年と6年の2つの設備案があります。どう比較しますか。
「NPVをそれぞれの年金現価係数で割り、年あたりの価値(EAA)に直して比べます。NPVだけでは期間の長い案が有利に見えやすいためです。ただし、同じ条件で更新を繰り返せるという前提が置けるかは確認します。」
深掘りの観点:費用のみの案の比較(年間等価コスト)、PMT関数の符号、割引率を変えたときの順位の変化。
よくある質問(F AQ)
Q. 等価年価法と最小公倍数法はどちらを使うべきですか。
A. 反復の前提を置く点は同じで、結論も一致します。計算が簡単なのは等価年価法で、期間が多い場合に特に使いやすい方法です。
Q. EAAがプラスなら投資してよいのですか。
A. EAAがプラスであることはNPVがプラスであることと同じで、割引率を上回るリターンが見込める案です。各年のキャッシュフローや損益が毎年プラスであることまでは意味しません。ただし、リスクや投資額の制約、戦略上の位置付けを別に確認します。
出典・参考(2 026-11確認)
- 国税庁「No.2100 減価償却のあらまし」(タックスアンサー). 耐用年数は財務省令の別表による旨の記載を確認. https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2100.htm(2026年11月参照)
※本記事は教育目的の一般的な解説であり、法務・税務・投資助言ではありません。設例は理解のための架空数値です。