この記事で分かること

  • 収益性指数(PI)=「投資の将来キャッシュフロー現在価値」を「初期投資額」で割った比率であること
  • PIとNPVの関係式、そしてなぜ両者で投資の優先順位が食い違うことがあるのか
  • 予算に上限がある「資本制約下」でPIランキングがNPV単独判断より合計価値を高める理由
  • 整数設例と、稟議・中期経営計画での投資配分への実務での使い方

30秒で分かる定義

収益性指数(Profitability Index、略称PI、読み方:ピーアイ)とは、投資が生み出す将来キャッシュフローの現在価値の合計を、初期投資額で割った比率です。投資効率指数・現在価値指数とも呼ばれます。NPV(正味現在価値)が「投資でいくら価値が増えるか」を金額で示すのに対し、PIは「投資額1円あたりどれだけの価値を生むか」を倍率で示します。PIが1を上回ればNPVはプラス、1を下回ればNPVはマイナスという対応関係にあります。

なぜ実務で重要なのか

経営企画・FP&Aでは、投資予算に上限がある年度で複数の投資案件を比較検討する際、単純なNPVの大小だけでなく、投資額あたりの効率であるPIを併用して優先順位をつけます。稟議で複数案件が同時に提出される場面では、決裁者が限られた予算枠内でどの組み合わせを承認すべきかを判断する材料になります。PEファンドでも、複数のバリューアップ施策に投資余力を配分する際に同様の考え方が使われます。

計算式(または仕組み)

PI = 将来キャッシュフローの現在価値合計 ÷ 初期投資額

これはNPVの定義式(現在価値合計-初期投資額)を変形すると、次の関係で結ばれます。

PI = 1 +(NPV ÷ 初期投資額)

NPVがプラスの案件はPIが必ず1を超え、NPVがマイナスの案件はPIが必ず1を下回ります。単独の投資案件の採否判断ではNPVとPIは同じ結論を出しますが、複数案件から予算内で組み合わせを選ぶ場面では、両者の順位が食い違うことがあります。これはPIが「規模」を無視し、投資額あたりの効率だけを見るためです。

整数設例で確認する

設例(架空数値、単位:百万円)。投資予算の上限が300百万円の年度に、次の3つの独立した投資案件があるとします。

案件初期投資額将来CFの現在価値NPVPI
A100130301.30
B300360601.20
C200250501.25

NPVだけで選ぶなら、予算300百万円をすべて使ってNPV最大のB(NPV60)を選びます。しかしPIの高い順に予算が尽きるまで採用すると、A(投資100・PI1.30)とC(投資200・PI1.25)を組み合わせて予算をちょうど使い切り(100+200=300)、NPVの合計は30+50=80百万円となります。同じ300百万円の予算で、Bを選ぶより20百万円多い価値を生み出せます。これがPIランキングが資本制約下でNPV単独判断に勝る理由です。

投資判断への影響

PIは単独の意思決定基準というより、限られた予算をどの組み合わせに配分するかという資本配分問題を解くための道具です。予算制約がなければNPV最大化が常に正しく、PIを使う必要はありません。予算制約がある場合、PIの高い順に案件を採用する方法(グリーディ法)は、案件が分割可能であれば理論上最適な組み合わせに近づきますが、大型の一体不可分な投資では最適解を保証できない点に注意が必要です。この点は資本制約下の投資優先順位付けで詳しく扱います。

財務モデル・Excelでの使い方

DCF形式のキャッシュフロー予測シートの延長で計算します。

  • 将来CFの現在価値合計:=NPV(割引率, 1年目以降のCF) で算出(ExcelのNPV関数は0年目を含まない点に注意)
  • PI:=将来CFの現在価値合計 ÷ 初期投資額(0年目のCFの絶対値)
  • 複数案件を並べたランキング表を作り、PIの高い順に並べ替えたうえで、累積投資額が予算上限を超えない範囲で上から採用する「グリーディ選択」の列を作ると、実務で使える配分ツールになります

NPVの計算自体は社内投資評価の作法で解説している稟議資料の作り方と共通です。

この用語をExcelで「組める」状態にする

複数の投資案件を並べたランキング表を作り、予算制約のもとでNPV合計を最大化する組み合わせを自動で選び出せるようになる。

コーポレートファイナンス教材で実装する →

実務家が確認するポイントとよくある誤解

誤解1:「PIが高いほど常に優先すべき」→ 予算制約がなければNPV最大化が正しく、PIは制約がある場合のランキング補助にすぎません。

誤解2:「PIランキングだけで最適な組み合わせが決まる」→ 案件が分割不可能な場合や相互依存関係がある場合は、PIの高い順に採用するだけでは最適な組み合わせにならず、複数パターンを比較する必要があります。

確認ポイント:PIの分子(現在価値合計)に使う割引率がプロジェクトのリスクに見合っているか、複数案件で割引率を揃えているかを必ず確認します。割引率が案件ごとにバラバラだとPIの比較自体が意味を失います。

日本実務での扱い(2026年7月時点)

日本企業の稟議書では「PI」という略称そのものが使われる場面は多くありませんが、投資額に対する回収効率を示す考え方は「投資効率」「投資対効果」といった表現で稟議フォーマットに組み込まれています。複数の設備投資案件を同時に投資委員会にかける製造業では、限られた年間投資枠を各事業部にどう配分するかという場面でPIと同種の発想が使われます。

公共部門ではこれと本質的に同じ考え方が制度化されています。国土交通省が所管する公共事業評価では、事業の便益の現在価値を費用の現在価値で割った「費用便益比(B/Cレシオ)」が用いられ、一般に1.0を上回ることが事業採択の目安とされます。

面接・モデルテストで問われるポイント

Q:投資予算に上限がある状況で、NPVが最大のプロジェクトを選ぶべきではない理由を説明してください。
「NPV最大化が正しいのは予算制約がない場合です。予算に上限があるときは、投資額あたりの効率を示すPIで順位付けし、予算内に収まるよう組み合わせて採用したほうが、案件群のNPV合計を大きくできることが多いからです。」

深掘りでは「PIとIRRはどう違うか」「案件間に相互依存がある場合はどう扱うか」が定番です。

よくある質問(FAQ)

Q. PIとNPVはどちらを優先すべきですか?
A. 予算制約がなければNPVを優先します。予算に上限がある場合は、PIで順位付けしたうえで予算内に収まる組み合わせのNPV合計を比較し、最も高い組み合わせを選びます。

Q. PIが1を下回るとはどういう意味ですか?
A. 将来キャッシュフローの現在価値合計が初期投資額を下回っている状態で、NPVがマイナスであることを意味します。この場合、その投資は原則として実行すべきではありません。

出典・参考(2026-07-25確認)

※本記事は教育目的の一般的な解説であり、法務・税務・投資助言ではありません。設例は理解のための架空数値です。

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