この記事で分かること
- 指名委員会等設置会社の定義と、3委員会(指名・監査・報酬)の役割
- 監査役会設置会社・監査等委員会設置会社との違い(3類型の比較)
- 委員会の構成(社外取締役の過半数)と執行役制度の整数設例
- 東証上場会社での採用状況と、確認する資料
30秒で分かる定義
指名委員会等設置会社(しめいいいんかいとうせっちがいしゃ、Company with Nominating Committee, etc.)とは、取締役会の中に指名委員会・監査委員会・報酬委員会の3つの委員会を置き、業務執行を取締役ではなく執行役に委ねる株式会社の機関設計です。会社法は、これを「指名委員会、監査委員会及び報酬委員会(指名委員会等)を置く株式会社」と定義します[1]。株式会社は定款の定めによって、監査役会、監査等委員会、指名委員会等などを置くことができます[1]。
各委員会は3人以上の取締役で組織し、その過半数は社外取締役でなければなりません[2]。業務の監督(取締役会・委員会)と執行(執行役)を制度上で分けることが特徴です。監査委員会の職務は監査委員会で扱い、本ページは機関設計全体と執行役制度を扱います。
なぜ実務で重要なのか
IB・M&Aは、買収対象や統合後の会社の機関設計を検討する際、意思決定の速さと取締役会の構成に関わる論点として確認します。PE・アクティビストは、取締役の指名や報酬の決定権が誰にあるかを、投資先の経営への関与の方法として見ます。経営企画・法務・IRは、機関設計の選択(監査役会設置会社・監査等委員会設置会社・指名委員会等設置会社)を検討します。機関投資家は、取締役会の独立性の評価に使います。社外取締役候補者は、委員会での役割を理解します(PE・投資銀行出身者のための社外取締役キャリア入門で、指名委員会等の観点も解説しています)。
計算式(ま たは仕組み)
日本の上場会社が選べる主な機関設計(取締役会設置会社)は3類型です。
| 項目 | 監査役会設置会社 | 監査等委員会設置会社 | 指名委員会等設置会社 |
|---|---|---|---|
| 監査・監督を担う機関 | 監査役会(監査役3人以上、半数以上は社外監査役) | 監査等委員会(全ての監査等委員で組織。監査等委員は取締役) | 監査委員会(委員は取締役。過半数は社外取締役) |
| 取締役の指名・報酬 | 法律上、委員会の設置は求められない(任意に設置する会社もある) | 監査等委員会が選任・報酬について株主総会での意見を決定 | 指名委員会が取締役の選解任議案の内容を、報酬委員会が執行役等の個人別の報酬等を決定 |
| 業務執行 | 取締役(代表取締役等) | 取締役 | 執行役(取締役は原則として業務を執行できない) |
指名委員会等設置会社の主な規定は次のとおりです[2][3]。
- 機関設計:取締役会と会計監査人を置かなければならず、監査役・監査等委員会を置くことはできません(第327条第1項第4号・第4項〜第6項)。
- 委員会:各委員会は取締役3人以上で組織し、取締役会が取締役の中から選定します。各委員会の委員の過半数は社外取締役でなければなりません(第400条)。監査委員は、会社・子会社の執行役、業務執行取締役などを兼ねることができません。
- 委員会の権限:指名委員会は株主総会に提出する取締役の選任・解任議案の内容を、報酬委員会は執行役等の個人別の報酬等の内容を決定します。監査委員会は執行役等の職務執行の監査と監査報告の作成、会計監査人の選任・解任等の議案の内容の決定を行います(第404条)。
- 執行役:1人以上を置き、取締役会の決議で選任します。任期は、選任後1年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結後最初の取締役会の終結の時まで(定款で短縮可)です。取締役との兼務はできます(第402条)。取締役会は、執行役の中から代表執行役を選定します(第420条)。
- 取締役会の権限:経営の基本方針などの決定と、執行役等の職務執行の監督を行います。業務執行の決定は、一定の事項を除き、取締役会の決議で執行役に委任できます(第416条)。取締役は、法令に別段の定めがある場合を除き、会社の業務を執行できません(第415条)。
整数設例で確認する
設例(架空数値)。取締役9名のうち、社外取締役5名、社内の取締役のうち執行役を兼ねる者3名、執行役を兼ねない社内取締役1名の会社を考えます。
①委員会の構成:監査委員会を3名とし、社外取締役2名+執行役を兼ねない社内取締役1名で構成します。社外取締役の割合は 2 ÷ 3 = 66.7%で、委員の過半数(3名中2名)が社外取締役のため要件を満たします。監査委員は執行役・業務執行取締役を兼ねられないため、執行役を兼ねる取締役3名は監査委員になれません。
指名委員会を5名とする場合は、過半数は3名以上です(5 ÷ 2 = 2.5を超える最小の整数は3)。社外取締役3名と社内取締役2名で構成すれば要件を満たします。
②取締役会の構成:取締役9名のうち社外取締役が5名、社内取締役が 9 − 5 = 4名です。執行役を兼ねる取締役3名は、取締役会では業務の監督の側に立ち、執行役としての業務執行も担うため、取締役会の独立性を保つには社外取締役の比率が重要になります。
開示・規制上の位置付け
東証が公表した2025年版のコーポレート・ガバナンス白書(2024年7月時点のデータ)によると、東証上場会社全体では、監査役会設置会社が55.2%(2,115社)、監査等委員会設置会社が42.3%(1,621社)、指名委員会等設置会社が2.5%(95社)です。名称は、2014年の会社法改正で現在の「指名委員会等設置会社」に変更されました。指名委員会等設置会社では、「監視」又は「監督」に言及する会社の割合が63.2%と、全体(36.6%)より高いとされています。JPX日経400構成銘柄では、指名委員会等設置会社の比率が9.8%を占めると記載されています[4]。
機関設計は定款の定めによる選択であり、どの類型が優れているかを一律には言えません。会社の規模、株主構成、経営方針に応じて選ばれます。
実務での調べ方・確認手順
機関設計は数値モデルの対象ではなく、実務では次の手順で確認します。
- 機関設計の確認:有価証券報告書の「コーポレート・ガバナンスの状況」、コーポレート・ガバナンス報告書、定款(機関に関する定め)、登記事項証明書で確認します。
- 委員会の構成:各委員会の委員数・社外取締役の人数・委員長の属性を確認します。
- 執行役の権限:取締役会規程・執行役規程で、執行役に委任された業務執行の決定の範囲を確認します。
- M&A実務:対象会社の機関設計に応じて、取引の承認機関(取締役会・執行役への委任)と、必要な社内手続を確認します。
この用語を実務で
機関設計ごとの意思決定の権限と委員会の構成を整理し、対象会社の承認手続を実務で確認できるようになる。
実務家が確認するポイントとよくある誤解
誤解1:「指名委員会等設置会社では、取締役会が経営しない」→ 取締役会は経営の基本方針の決定と執行役等の職務執行の監督を担い、業務執行の決定は一定の事項を除いて執行役に委任できます。
誤解2:「指名委員会が執行役を選ぶ」→ 指名委員会が決めるのは、株主総会に提出する取締役の選任・解任議案の内容です。執行役は取締役会の決議で選任します。
誤解3:「監査委員会は監査役会と同じ」→ 監査委員会の委員は取締役で、取締役会の内部の機関です。監査役会は取締役会とは別の機関である監査役で構成します。
誤解4:「3つの委員会をすべて独立した社外取締役だけで構成する」→ 法定の要件は各委員会の過半数が社外取締役であることです。社内取締役を含む構成も認められます。
確認ポイント:各委員会の委員構成、代表執行役と取締役会議長の兼任の有無、社外取締役の報酬(社外取締役の報酬は誰がどう決めるべきか)、後継者計画(後継者計画
日本実務での扱い
(2026年11月時点)日本の会社法は、定款の定めによって監査役会、監査等委員会、指名委員会等などを置くことができるとしています[1]。上場会社では、3つの類型から選択します。ほかの2類型は監査等委員会設置会社と監査役会で扱っています。
指名委員会等設置会社を選択した会社は、定款にその旨を定め、取締役会の決議で委員・執行役・代表執行役を選定します[2][3]。社外取締役の要件(親会社の関係者でないこと、過去10年間の業務執行の有無など)は会社法第2条第15号に定められています[1]。
面接・モデルテストで問われるポイント
Q:指名委員会等設置会社と監査等委員会設置会社の違いは何ですか。
「指名委員会等設置会社は、指名・監査・報酬の3委員会を置き、業務執行を執行役に委ねます。取締役会は監督に専念し、取締役は原則として業務を執行しません。監査等委員会設置会社は、監査等委員会を置きますが、指名・報酬の法定委員会は置かず、業務執行は取締役が担います。」
深掘りの観点:業務執行の決定の委任の範囲、委員の過半数が社外取締役という要件、採用社数の傾向、アクティビストや社外取締役の視点。
よくある質問(F AQ)
Q. 指名委員会等設置会社は、取締役会の人数が少なくて済みますか。
A. 一概には言えません。各委員会は3人以上の取締役で組織し、過半数が社外取締役という要件があるため、一定数の社外取締役が必要です。同じ取締役が複数の委員会の委員を兼ねることもあります(監査委員の兼務制限を除く)。
Q. 代表執行役は代表取締役と同じですか。
A. 指名委員会等設置会社では、代表取締役を置かず、取締役会が執行役の中から代表執行役を選定します。代表執行役は、会社を代表する執行役です。
出典・参考(2 026-11確認)
- e-Gov法令検索「会社法」第2条第12号(指名委員会等設置会社)・第15号(社外取締役)・第326条第2項(株主総会以外の機関の設置). https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=417AC0000000086(2026年11月参照)
- e-Gov法令検索「会社法」第327条(取締役会等の設置義務等)・第400条(委員の選定等)・第404条(指名委員会等の権限等)・第415条(取締役の権限). https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=417AC0000000086(2026年11月参照)
- e-Gov法令検索「会社法」第402条(執行役の選任等)・第416条(取締役会の権限)・第420条(代表執行役). https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=417AC0000000086(2026年11月参照)
- 東京証券取引所「東証上場会社 コーポレート・ガバナンス白書 2025」(2025年4月)組織形態(図表15). https://www.jpx.co.jp/equities/listing/cg/tvdivq0000008jb0-att/um3qrc000001isbf.pdf(2026年11月参照)
※本記事は教育目的の一般的な解説であり、法務・税務・投資助言ではありません。設例は理解のための架空数値です。