この記事で分かること
- 投資活動によるキャッシュフローと財務活動によるキャッシュフローに含まれる項目
- 営業CFと組み合わせて現金及び現金同等物の増減額を求める整数設例
- 投資CF・財務CFがプラスかマイナスかだけで良し悪しを判断してはいけない理由
- 日本基準とIFRSで利息・配当の表示区分が異なりうる点(2026年8月時点)
30秒で分かる定義
投資活動・財務活動によるキャッシュフロー(Cash Flow from Investing and Financing Activities、読み方:とうしかつどう・ざいむかつどうによるきゃっしゅふろー)とは、キャッシュフロー計算書のうち、設備投資・M&A・有価証券の売買を表す投資活動区分と、借入・社債・増資・自己株式取得・配当を表す財務活動区分のことです。営業活動によるキャッシュフローが「本業でいくら稼いだか」を示すのに対し、この2区分は「稼いだ(あるいは調達した)資金をどこに使ったか」を示します。
なぜ実務で重要なのか
投資銀行・PEでは、投資CFの内訳から会社の成長投資(設備投資・M&A)の規模とペースを読み取り、フリーキャッシュフローの計算に用います。融資審査では、財務CFの借入・返済の純増減から、既存の有利子負債がどのペースで返済されているか、追加借入への依存度が高まっていないかを確認します。経営企画・IRでは、財務CFの配当・自己株式取得の金額から、株主還元の実績と方針の整合性を説明する材料になります。
仕組み:投資CFと財務CFの内訳
投資CFと財務CFは、それぞれ次のような項目の合計として構成されます。
| 区分 | 主な項目 | 符号の目安 |
|---|---|---|
| 投資活動 | 設備投資(Capex)、M&Aによる支出、固定資産の売却収入、有価証券の取得・売却 | 成長投資が多いほどマイナス |
| 財務活動 | 借入・社債の発行と返済、株式発行、自己株式の取得、配当金の支払い | 資金調達が多ければプラス、返済・還元が多ければマイナス |
整数設例で確認する
設例(架空数値・単位:百万円)。営業活動によるキャッシュフローは10,000とします。
投資活動によるキャッシュフロー:設備投資 -6,000、M&Aによる支出 -3,000、固定資産売却収入 +500 = -6,000-3,000+500 = -8,500
財務活動によるキャッシュフロー:借入による収入 +4,000、借入金の返済 -1,500、配当金の支払い -1,000、自己株式の取得 -800 = 4,000-1,500-1,000-800 = +700
現金及び現金同等物の増減額 = 営業CF10,000 + 投資CF(-8,500)+ 財務CF700 = 2,200となります。またこの会社のフリーキャッシュフローを「営業CF-設備投資」で簡便的に求めると、10,000-6,000=4,000です。M&A支出3,000と株主還元1,800(配当1,000+自己株買い800)の合計4,800は、フリーキャッシュフロー4,000と借入純増2,500(4,000-1,500)の合計6,500の範囲内に収まっており、資金使途と調達のバランスを検算できます。
融資審査への影響
融資審査では、財務CFの内訳を「返済能力に見合った借入か」という観点で見ます。借入による収入が返済額を上回り続けている場合、既存の借入を新規借入で回している可能性があり、フリーキャッシュフローだけで返済を賄えているかを確認します。投資CFのマイナス幅が営業CFを大きく超えている場合は、その投資が将来のキャッシュ創出につながる見込みかを見極めます。
財務モデル・Excelでの使い方
3表連動モデルでは、投資CF・財務CFはそれぞれ関連スケジュールから自動的に紐づける形で組み立てます。
- 投資CFは、固定資産スケジュールの設備投資額・売却額、M&A想定シートの買収対価をそのまま参照する
- 財務CFは、借入金スケジュールの新規借入・約定返済、配当方針シートの配当性向、自己株式取得のシナリオ入力から計算する
- 現金及び現金同等物の期末残高は、BSの現金残高と一致することを検算行でチェックし、3表の連動崩れを早期に発見する
この用語をExcelで「組める」状態にする
固定資産・借入金の各スケジュールから投資CF・財務CFを自動計算し、BSの現金残高と一致させる3表連動モデルを組めるようになる。
実務家が確認するポイントとよくある誤解
誤解1:「投資CFがマイナスなのは財務状態が悪い証拠」→ 正しくは、成長投資に積極的な健全な会社ほど投資CFは大きくマイナスになりやすく、営業CFとのバランスで判断すべきです。営業CFが投資CFのマイナスを上回っていれば、自己資金の範囲内で成長投資ができていると評価できます。
誤解2:「財務CFがプラスなら財務体質が良い」→ 正しくは、財務CFのプラスは単に借入や増資で資金調達しているだけの場合もあり、それ自体は良し悪しの判断材料にはなりません。有利子負債の純増減や、調達した資金の使途(投資CFとの対応関係)を合わせて確認する必要があります。
実務家はさらに、減価償却とCapexの関係から、投資CFの設備投資額が減価償却費を上回っているか下回っているかを見て、資産の更新投資が十分かを判断します。
日本実務での扱い(2026年8月時点)
日本基準とIFRSは、営業・投資・財務の3区分という大枠は共通ですが、利息・配当金の受取といった項目をどの区分に表示するかについて選択の余地がある点で異なります。日本基準では受取利息・受取配当金・支払利息を営業活動区分に含める実務が広く見られる一方、IFRSでは投資活動・財務活動区分に計上する選択も認められています。キャッシュフロー計算書(間接法)を確認する際は、この表示区分の違いが会社間比較に影響しうる点に注意が必要です。
面接・モデルテストで問われるポイント
Q:投資CFが大きくマイナス、財務CFが大きくプラスの会社をどう評価しますか。
「投資CFのマイナスが成長投資(設備投資・M&A)によるものであれば、将来の収益拡大につながる可能性があります。財務CFのプラスがその投資資金を賄うための借入・増資であれば、資金使途と調達の対応関係は自然です。ただし営業CFが投資CFを大きく下回っている場合、外部資金への依存度が高まっている可能性があるため、有利子負債の増加ペースと返済計画を確認します。」
深掘りでは「フリーキャッシュフローと投資CFの関係」「配当と自社株買いはどちらも財務CFに含まれる理由」が定番の観点です。
よくある質問(FAQ)
Q. 自己株式の取得はどちらの区分に計上されますか?
A. 財務活動によるキャッシュフローに計上されます。株主への資金還元という点で配当金の支払いと同じ区分に含まれます。
Q. 受取利息・受取配当金はどの区分に計上されますか?
A. 日本基準では営業活動区分に含める実務が広く見られますが、IFRSでは投資活動区分に計上する会計方針を選択することも認められています。会社ごとの会計方針を確認することが比較の前提になります。
出典・参考(2026-08確認)
- 企業会計基準委員会(ASBJ) https://www.asb-j.jp/
- IFRS Foundation https://www.ifrs.org/
※本記事は教育目的の一般的な解説であり、法務・税務・投資助言ではありません。設例は理解のための架空数値です。