この​記事で​分かる​こと

  • 企業会計原則の成り立ち(1949年公表)と構成(一般原則・損益計算書原則・貸借対照表原則)
  • 一般原則7つの内容と、継続性の原則が利益に与える影響の設例
  • 現行の会計基準・会社法・財務諸表等規則との関係
  • 企業会計原則を実務でどこまで参照するか

30秒で​分かる​定義

企業会計原則(Business Accounting Principles)とは、1949年(昭和24年)7月9日に経済安定本部の企業会計制度対策調査会が中間報告として公表した、日本の企業会計の基本原則です。最終改正は昭和57年(1982年)4月20日です。一般原則、損益計算書原則、貸借対照表原則からなり、設定時には、企業会計の実務の中で慣習として発達した「一般に公正妥当と認められたところ」を要約したもので、法令で強制されなくても企業が従うべき基準とされました[1]。基準体系全体は日本基準​(J-GAAP)のページで扱います。

なぜ実務で​重要なのか

経理・経営企画の担当者は、会計処理の根拠を説明するとき、個別の会計基準の背後にある考え方として企業会計原則に戻ります。融資・M&AのDDを行う担当者は、決算書の継続性(会計方針が変わっていないか)や保守主義の効き方を、利益の質の判断に使います。公認会計士・FASは、監査や財務DDで、明瞭性・継続性の観点から注記の十分性を確認します。決算書を読む視点はBSの​読み方、利益とキャッシュのずれは発生主義と​現金主義の​実務で整理しています。

計算式​(または仕組み)

制度用語のため、数式ではなく、一般原則7つの要点を表で整理します。文言は企業会計原則の第一「一般原則」によります[1]。

番号原則求めていること
一真実性の原則財政状態と経営成績に関して、真実な報告を提供する
二正規の簿記の原則すべての取引につき、正確な会計帳簿を作成する(重要性の乏しいものは簡便な方法も認められる:注1)
三資本取引・損益取引区分の原則資本取引と損益取引を区別し、資本剰余金と利益剰余金を混同しない
四明瞭性の原則財務諸表で必要な会計事実を明瞭に表示し、利害関係者の判断を誤らせない
五継続性の原則処理の原則・手続を毎期継続して適用し、みだりに変更しない
六保守主義の原則財政に不利な影響を及ぼす可能性に備えて健全な会計処理をする。ただし過度に保守的な処理は真実な報告をゆがめる(注4)
七単一性の原則目的別に異なる形式の財務諸表を作る場合も、信頼しうる会計記録に基づき、事実の真実な表示をゆがめない

整数設例で​確認する

設例(架空数値)。単位は千円。継続性の原則が必要な理由を、棚卸資産の評価方法で確認します。期首在庫は100個(単価10)、当期仕入は100個(単価12)、当期売上は100個(単価15)、期末在庫は100個です。

評価方法売上原価期末棚卸資産売上総利益
先入先出法100×10 = 1,000100×12 = 1,2001,500 − 1,000 = 500
総平均法(単価 = (1,000+1,200)÷200 = 11)100×11 = 1,100100×11 = 1,1001,500 − 1,100 = 400

同じ取引でも評価方法の選択だけで売上総利益が 100(500 − 400)異なります。毎期継続して適用しなければ、期間比較が難しくなります。企業会計原則の注解も、継続性が問題となるのは二つ以上の処理方法の選択適用が認められている場合であり、正当な理由で変更したときは注記が必要としています[1]。

開示・​規制上の​位置付け

現在、有価証券報告書などの財務諸表では、財務諸表等規則が定めのない事項について「一般に公正妥当と認められる企業会計の基準」に従うとし、企業会計審議会が公表した基準はこれに該当すると定めています(第1条)[2]。会社法も、株式会社の会計は「一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行」に従うとしています(第431条)[3]。個別の会計基準が定める論点では、その基準に従います。例えば、繰延資産の具体的な項目については、実務対応報告第19号の取扱いが企業会計原則の定めに優先するとされています[4]。

財務​モデル・​Excelでの​使い方

制度用語のため、モデルではなく決算書を読むときの確認手順として使います。

  • 会計方針の注記:有価証券報告書の「重要な会計方針」で、評価方法・償却方法が前期と変わっていないかを確認します。
  • 変更があった場合:変更の理由と、変更前の方法で計算した場合の影響額を、モデルの調整行で並べます(設例のように利益が変わるため)。
  • 保守的な処理:引当金の積み増しなど、将来の費用を先に計上している項目を調整後利益で扱うかを決めます。

この​用語を​実務で​「使える」​状態に​する

決算書の​注記から、​会計方針の​変更と​継続性を​確認し、​利益の​比較​可能性を​判断できるようになる。

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実務家が​確認する​ポイントと​よく​ある​誤解

誤解1:「企業会計原則は法律だから、違反すると処罰される」→ 設定時の文書は、法令によって強制されなくても従うべき基準と位置づけています。法的な拘束は、会社法や財務諸表等規則が「一般に公正妥当と認められる企業会計の基準・慣行」に従うことを求める形で生じます[1][2]。

誤解2:「個別の会計基準が整備された今は、企業会計原則は使われない」→ 一般原則は引き続き土台です。2024年11月1日までの修正を反映した実務対応報告第19号も、繰延資産の考え方について企業会計原則注解(注15)の考え方を踏襲すると記載しています[4]。

日本実務での​扱い

(2026年11月時点)日本基準では、収益認識・金融商品・リースなどの個別基準を企業会計基準委員会(ASBJ)が設定し、企業会計原則は一般原則と、個別基準が定めていない論点の拠り所として参照されます。決算書の作成者は、財務諸表等規則・会社計算規則・個別基準に従い、これらが定めのない事項で一般原則を参照します。基準を公表してきた主体は企業会計審議会のページで整理しています。

面接・​モデルテストで​問われる​ポイント

Q:継続性の原則とは何で、なぜ重要ですか。
「一度採用した会計処理の原則・手続を、正当な理由がない限り毎期継続して適用する原則です。評価方法などを自由に変えると、同じ取引でも利益が変わり、期間比較ができなくなります。変更した場合は理由と影響を注記します。モデルでは、変更前後の利益差を調整項目として分けて見ます。」深掘りでは、保守主義との関係(過度な保守主義は真実性をゆがめる)が聞かれます。

よく​ある​質問​(FAQ)

Q. 企業会計原則の最終改正はいつですか。
A. ASBJの掲載資料には、企業会計原則・同注解とも最終改正は昭和57年(1982年)4月20日と記載されています[1]。個別の論点は、後に設定された基準が優先します。

Q. 一般原則の「単一性」は何を指しますか。
A. 株主総会、信用、租税など目的に応じて形式の異なる財務諸表を作る場合も、信頼しうる会計記録に基づく内容にし、政策的な考慮で事実の真実な表示をゆがめないという原則です。

出典・参考​(2026-11確認)

  1. 企業会計基準委員会(ASBJ)会計基準詳細「企業会計原則」「企業会計原則の設定について」(昭和24年7月9日、最終改正 昭和57年4月20日)第一 一般原則・注解〔注1〕〔注3〕〔注4〕. https://www.asb-j.jp/jp/accounting_standards_system/details.html?topics_id=81(2026年11月参照)
  2. e-Gov法令検索「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則」第1条第1項・第2項. https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=338M50000040059(2026年11月参照)
  3. e-Gov法令検索「会社法」第431条. https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=417AC0000000086(2026年11月参照)
  4. 企業会計基準委員会「実務対応報告第19号 繰延資産の会計処理に関する当面の取扱い」(2006年8月11日、2010年2月19日改正)第2項(1)・脚注2. https://www.asb-j.jp/jp/wp-content/uploads/sites/4/20200331_19_20241101.pdf(2026年11月参照)

※本記事は教育目的の一般的な解説であり、法務・税務・投資助言ではありません。設例は理解のための架空数値です。

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