この記事で分かること
- ブロックトレードの定義と、方式(買取引受型・ベストエフォート型・立会外取引)の違い
- ディスカウントの考え方と、売主の手取り・証券会社の損益を整数設例で確認
- ToSTNeT-1の価格制限と、大量保有報告制度(5%ルール)との関係
- PEのエグジットや政策保有株の売却での使い方
30秒で分かる定義
ブロックトレード(Block Trade、ブロック取引)とは、大量の株式を、通常の市場取引(立会市場の板)とは別に、機関投資家などへ一括で売買する取引です。証券会社が売主から一括で買い取って機関投資家へ再販する買取引受型(バウト・ディール)などの方式があり、大株主、PEファンド、政策保有株式の売却で使われます。取引所の立会外取引であるToSTNeT-1を使って執行されることもあります[1]。ECM業務の全体はECM、取引所の仕組みはToSTNeT市場のページで扱い、本ページは大口売却の方式選択と価格決定を扱います。
なぜ実務で重要なのか
PE・VCの担当者は、上場後の保有株の売却(エグジット)で、市場売却と比べた価格と速度を比較します。事業会社の経営企画は、政策保有株式の縮減で、株価への影響を抑える売却手段を選びます(政策保有株式の保有効果を検証する)。証券会社の市場部門・ECMは、買取引受のリスクを取り、需要を確認して価格を提示します。実務の流れはブロックトレードの実務で詳しく解説しています。
計算式(ま たは仕組み)
ディスカウント率は、直近の株価に対する値引き率で、案件ごとの交渉と需要で決まり、公的な標準はありません。方式の違いは次のとおりです(買取引受型・ベストエフォート型の説明は一般的な実務の整理です)。
| 方式 | 内容 | 価格リスクの負担 |
|---|---|---|
| 買取引受型 | 証券会社が売主から一括で買い取り、機関投資家へ再販する | 再販までの値下がりリスクは証券会社 |
| ベストエフォート型 | 需要を確認し、成立した範囲で売る | 売主(売れ残りや価格変動) |
| ToSTNeT-1(単一銘柄取引) | 相手方・銘柄・数量・決済日等を指定して取引する。価格は立会市場の直近値の上下7%以内(7%が5円未満なら上下5円以内) | 当事者間の合意による |
| 立会市場での売却 | 通常の板に出す | 市場へのインパクトを受ける |
ToSTNeT-1の説明は日本取引所グループの公表資料による。大口取引等の立会市場での円滑な執行が困難な取引をToSTNeT市場で行うことで、立会市場へのインパクトを抑えられます[1]。
整数設例で確認する
設例(架空数値)。直近の株価1,000円、売却株数20百万株、発行済株式数400百万株とします。
| 項目 | 計算 | 結果 |
|---|---|---|
| 市場価格ベースの売却額 | 1,000円 × 20百万株 | 20,000百万円 |
| ディスカウント3%の売出価格 | 1,000 ×(1 − 3%) | 970円 |
| 売主の手取り | 970円 × 20百万株 | 19,400百万円 |
| ディスカウント相当額 | 20,000 − 19,400 | 600百万円 |
| ToSTNeT-1の価格範囲(直近値±7%) | 1,000 × 93% 〜 1,000 × 107% | 930円〜1,070円(970円は範囲内) |
| 証券会社の利ざや(再販の平均が975円なら) | (975 − 970)× 20百万株 | 100百万円(費用・ヘッジ前) |
売主は600百万円の値引きと引換えに、20,000百万円規模の株式を短期間で確実に現金化します。市場で売る場合の値下がりや時間のコストと比較して選びます。
市場・取引制度上の位置付け
一般報告制度では、上場株式を5%超保有する者は、大量保有報告書を5日以内(日曜日等を除く)に提出し、その後、保有割合が1%以上増減したら変更報告書を5日以内に提出します(金融商品取引法第27条の23第1項、第27条の25第1項)。短期間に大量の株券等を譲渡した場合は、譲渡の相手方と対価も変更報告書に記載します(同条第2項)。重要提案行為等を保有目的としない金融商品取引業者・銀行等が保有する株券等には、基準日ごとの保有状況を報告する特例報告制度(第27条の26)があり、報告の期限の決まり方が異なります[2]。一般報告の場合、設例で保有割合が12%から7%に下がる売却(20 ÷ 400 = 5.0ポイント)は、変更報告書の提出対象です。売却前に未公表の重要事実がないかを確認することも欠かせません(インサイダー取引規制)。
財務モデル・Excelでの使い方
- 売却額の行:
=株数*直近株価*(1-ディスカウント率)。ディスカウント率を0〜5%で動かす感応度表を作ります。 - エグジットIRR:PEの保有株売却では、売却額と売却時期(段階売却か一括か)を変えたIRR・MOICを比較します。
- 残存持分:一部売却後の保有比率を計算し、ロックアップ(売却制限)や大量保有報告の基準と照合します。
この用語を実務で
エグジットでの一括売却と段階売却を比較し、ディスカウントを織り込んだIRR・MOICを計算できるようになる。
実務家が確認するポイントとよくある誤解
誤解1:「ブロックトレードとToSTNeT取引は同じもの」→ ToSTNeT-1は執行手段の一つで、ブロックトレードは大口売買の形態を指す一般的な呼び方です。買取引受の売買を、ToSTNeT-1で執行する例もあります[1]。
誤解2:「立会外で売れば開示は不要」→ 保有割合が基準を超えて変動すれば、取引の場所にかかわらず変更報告書の提出が必要です。売却の相手方や対価の記載が求められる場合もあります[2]。
日本実務での扱い
(2026年11月時点)日本では、ToSTNeT-1が大口の売買の受け皿として使われ、取引所の公表資料で価格範囲が定められています[1]。PEの保有株売却は、PE保有会社の上場時ロックアップ・売出しで扱う売出しの後に、ブロックトレードで行うことがあります。政策保有株式の解消は政策保有株式の解消と
面接・モデルテストで問われるポイント
Q:PEがIPO後の保有株を売るとき、ブロックトレードを使う理由は何ですか。
「大量の株式を市場で売ると株価が下がるためです。証券会社に一括で売る買取引受型なら、ディスカウントと引換えに価格と時期を確定できます。ディスカウント率とIRRへの影響を比較し、段階売却と比べて選びます。保有割合が動くので、大量保有報告の提出も必要です。」深掘りでは、ディスカウントを決める要因が聞かれます。
よくある質問(F AQ)
Q. ディスカウント率の目安はありますか。
A. 公的な標準はなく、株式の流動性、売却規模、市場環境、需要で案件ごとに決まります。具体的な水準は案件の事例や証券会社の提示で確認します。
Q. 売主は誰でもブロックトレードを使えますか。
A. 証券会社を通じて取引できます。ただし、未公表の重要事実を知っている場合の売却にはインサイダー取引規制があり、保有割合に応じた大量保有報告も必要です[2]。
出典・参考(2 026-11確認)
- 日本取引所グループ「ToSTNeT取引 取引の種類」(単一銘柄取引(ToSTNeT-1)、自己株式立会外買付取引(ToSTNeT-3)). https://www.jpx.co.jp/equities/trading/tostnet/01.html(2026年11月参照)
- e-Gov法令検索「金融商品取引法」第27条の23第1項、第27条の25第1項・第2項、第27条の26第1項・第2項. https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=323AC0000000025(2026年11月参照)
※本記事は教育目的の一般的な解説であり、法務・税務・投資助言ではありません。設例は理解のための架空数値です。