この​記事で​分かる​こと

  • 監査法人の根拠法・設立要件(5人以上の公認会計士を含む)・社員の責任(無限/有限)
  • 監査業務と非監査業務(FASなど)の範囲、会計士法上の業務制限
  • 社員構成と解散要件の判定を整数設例で確認
  • 独立性規制(大会社等への非監査業務の制限)がM&A・DD支援に与える影響と、日本実務での確認点

30秒で​分かる​定義

監査法人(かんさほうじん、Audit Firm)とは、公認会計士法に基づき、公認会計士が共同して設立する法人で、財務書類の監査または証明を組織的に行う法人です。公認会計士は、他人の求めに応じ報酬を得て財務書類の監査または証明をすることを業とします[1]。監査法人は、この業務を法人として行うために設立されます。設立にあたっては、社員になろうとする者のうちに5人以上の公認会計士を含めなければなりません[1]。

上場会社などの有価証券報告書に含まれる財務計算に関する書類は、会社と特別の利害関係のない公認会計士または監査法人の監査証明を受けなければなりません[2]。大手の監査法人は、同じネットワーク(グループ)の中にFAS(財務アドバイザリー)を担う別法人を持つことが一般的ですが、グループの構成は法人ごとに異なります。

なぜ実務で​重要なのか

IB・PE・FAS・経営企画は、監査法人(またはそのグループ法人)と、監査・財務DD・バリュエーションなど複数の接点があります。買収対象の監査人が誰か、監査意見が適正か、監査人の交代が最近あったかは、DDで確認する基本事項です。就職・転職を考える学生・若手にとって、監査法人は会計・財務の基礎を身につけるキャリアの出発点であり、FASを経てPEなどへ進む例もあります。データで見たキャリアは監査法人から​FAS、​そして​PEへやBig4 FASから​PE​ファンドへの​転職実態で確認できます。融資・クレジットは、借入先の財務諸表の信頼性を評価するとき、監査の有無と監査意見を見ます。

計算式​(または仕組み)

監査法人は計算式ではなく、設立・組織・業務範囲・責任の仕組みで理解します。公認会計士法の主な規定を整理します。

項目内容根拠
設立社員になろうとする者が共同して定款を定める。そのうちに5人以上の公認会計士を含める第34条の7第1項
社員の資格社員は公認会計士等。公認会計士である社員の割合は、50%を下らない内閣府令で定める割合以上第34条の4
業務の範囲監査・証明業務(第2条第1項)のほか、業務に支障がない範囲で、定款の定めにより、財務書類の調製・財務に関する調査・立案・相談(第2条第2項)などを行える第34条の5
業務の執行監査・証明業務は、公認会計士である社員のみが業務を執行する第34条の10の2第1項
社員の責任無限責任監査法人は、法人の財産で債務を完済できないとき各社員が連帯して責任を負う。有限責任監査法人の社員は、出資の価額を限度とする(指定社員等の特則あり)第34条の10の6
解散公認会計士である社員が4人以下になり、その日から引き続き6か月間5人以上にならなかったときは、6か月を経過した時に解散第34条の18第2項

これらの条文は、公認会計士法(第34条の2の2以下)に定められています[1]。独立性の確保のため、監査法人には次のような業務制限があります。

制限内容根拠
特定の事項の業務制限監査法人が株式を所有し、または出資している会社の財務書類、その他著しい利害関係を有する会社の財務書類については、監査・証明業務を行ってはならない第34条の11
大会社等への継続的な非監査業務監査法人または実質的に支配する法人等が、大会社等から財務書類の調製に関する業務その他の内閣府令で定める非監査業務により継続的な報酬を受けている場合、その大会社等の財務書類の監査・証明業務は行えない第34条の11の2
大規模監査法人の特例上場有価証券発行者等の監査で、筆頭業務執行社員等が一定の連続会計期間関与した場合、その後は一定期間、関与させてはならない(ローテーション)第34条の11の4

ローテーションの詳細は監査法人の​ローテーション​制度で扱っています。

整数設例で​確認する

設例(架空数値)。法人の組織要件を、人数で判定します。

  • 設立の場合:社員になろうとする者のうち、公認会計士が5人 → 要件(5人以上)を満たす。4人 → 満たさない。
  • 社員構成:社員8人のうち公認会計士が6人 → 公認会計士の割合は 6 ÷ 8 = 75%。法は「50%を下らない内閣府令で定める割合以上」を求めるため、最低線の50%は上回っています。実際の割合は内閣府令の定めを確認します。
  • 解散の場合:公認会計士である社員が6人から退職等で 6 − 2 = 4人 に減り、その日から引き続き6か月間、5人以上に戻らなかったときは、6か月を経過した時に解散します。

人数の条件は監査法人の存続に直結するため、監査法人は社員の構成を継続的に管理しています。

開示・​規制上の​位置付け

上場会社等の財務計算に関する書類は、会社と特別の利害関係のない公認会計士または監査法人の監査証明を受けなければなりません[2]。内部統制報告書も原則として同様に、特別の利害関係のない公認会計士または監査法人の監査証明が必要です。ただし、資本の額その他の経営の規模が内閣府令で定める基準に達しない上場会社等が、初めて上場会社等に該当することとなった日など政令で定める日以後3年を経過する日までの間に提出する内部統制報告書は、監査証明が不要です(内部統制報告書の提出義務自体は残ります)[2]。監査法人の独立性に関する脅威の整理は監査人の​独立性に​対する​脅威で扱っています。

M&A支援との関係では、公認会計士法第24条の2(公認会計士)と第34条の11の2(監査法人)が、大会社等から非監査業務(内閣府令で定めるもの)により継続的な報酬を受けている場合に、その大会社等の財務書類の監査を行えないと定めています[1]。どのアドバイザリー業務がこの制限の対象になるかは、内閣府令と日本公認会計士協会の倫理規則で個別に確認する必要があります。そのため、大手のグループでは、監査を行う法人とFAS・M&A助言を行う法人を分け、同じクライアントに対する業務の組み合わせを管理するのが一般的です。

実務での​調べ​方・​確認手順

  • 監査人の確認:有価証券報告書の「監査報告書」と、コーポレート・ガバナンスの状況(監査の状況)で、監査法人の名称、継続監査期間、業務執行社員を確認します。
  • 監査意見の確認:無限定適正意見か、除外事項付意見か、強調事項・その他の事項があるかを、監査報告書で確認します。意見の種類は監査意見の​種類を参照してください。
  • 独立性の確認:M&A案件で監査法人系アドバイザーを起用する場合、買収対象の監査人・買手の監査人との関係を、早い段階で確認します。
  • モデルでの扱い:監査報酬や監査人交代の履歴をDDチェックリストの項目として管理します(財務モデルの数式の対象ではありません)。

この​用語を​実務で​「使える」​状態に​する

監査法人の​役割と、​監査・​非監査業務の​線引きを​理解し、​財務DDや​M&A案件で​監査人の​確認​ポイントを​漏れなく​押さえられるようになる。

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実務家が​確認する​ポイントと​よく​ある​誤解

誤解1:「監査法人はM&Aのアドバイザーを一切できない」→ 監査法人は定款の定めにより非監査業務も行えますが、大会社等から内閣府令で定める非監査業務で継続的な報酬を受けている場合は、その大会社等の監査ができなくなります[1]。実務では、グループ内の別法人がFASを担うのが一般的です。

誤解2:「監査法人は監査した会社の財務諸表の正しさを保証する」→ 監査は、財務諸表に重要な虚偽表示がないかについて意見を表明するもので、財務諸表の作成責任は経営者にあります(一般的な説明)。

誤解3:「監査法人の社員はすべて公認会計士」→ 監査法人の社員は公認会計士等ですが、公認会計士である社員の割合には下限があり、公認会計士でない社員(特定社員など)を置く制度があります[1]。

確認ポイント:監査人の名称、継続監査期間、監査意見の種類、監査人の交代の有無を、有価証券報告書で確認します。

日本実務での​扱い

(2026年11月時点)監査法人は公認会計士法に基づき設立され、上場会社等の財務計算に関する書類の監査証明は金融商品取引法第193条の2が定めています[1][2]。監査法人には、社員の全員が無限責任社員である無限責任監査法人と、全員が有限責任社員である有限責任監査法人があります[1]。

日本の上場会社の監査は、いわゆるBig4系の監査法人が担う例が多い一方、中小規模の監査法人も多数あります(一般的な説明で、具体的な割合は本ページでは扱いません)。上場会社等のうち公認会計士法第34条の34の2に規定する上場会社等については、同条の登録を受けた公認会計士または監査法人に限って監査証明を行えます(金融商品取引法第193条の2第1項のかっこ書)[2]。M&A・DD実務では、買収対象の監査人が大手か中小かで、DDの重点(内部統制・財務報告の信頼性)が変わります。

面接・​モデルテストで​問われる​ポイント

Q:監査法人の役割と、M&A支援との関わりを説明してください。
「監査法人は、公認会計士が共同して設立し、上場会社などの財務諸表監査を行う法人です。財務DDなどの非監査業務も定款の定めにより行えますが、大会社等から、財務書類の調製に関する業務など内閣府令で定める非監査業務で継続的な報酬を受けている場合は、その会社の監査を同時には行えません。大手では、監査法人とFAS法人を分けて運営するのが一般的です。」

深掘りの観点:監査法人と会計事務所の違い、無限責任と有限責任、ローテーション制度、監査意見の種類、独立性の脅威、が聞かれます。

よく​ある​質問​(FAQ)

Q. 監査法人を設立するには何人の公認会計士が必要ですか。
A. 社員になろうとする者のうちに、5人以上の公認会計士を含める必要があります[1]。設立後、公認会計士である社員が4人以下になり6か月間5人以上に戻らなければ解散します。

Q. 監査法人とFASは同じ組織ですか。
A. 大手のグループでは、監査を行う監査法人と、FAS(財務アドバイザリー)を行う別の法人に分かれているのが一般的です。法人の構成は各グループで異なるため、公開情報で確認します。

出典・参考​(2026-11確認)

  1. e-Gov法令検索「公認会計士法」(昭和二十三年法律第百三号)第2条・第24条の2・第34条の2の2・第34条の4・第34条の5・第34条の7・第34条の10の2・第34条の10の6・第34条の11・第34条の11の2・第34条の11の4・第34条の18. https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=323AC0000000103(2026年11月参照)
  2. e-Gov法令検索「金融商品取引法」(昭和二十三年法律第二十五号)第193条の2. https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=323AC0000000025(2026年11月参照)

※本記事は教育目的の一般的な解説であり、法務・税務・投資助言ではありません。設例は理解のための架空数値です。

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