この記事で分かること
- 勘定科目の意味と、資産・負債・純資産・収益・費用の5つの要素
- 主な勘定科目の分類と、借方・貸方のどちらで増えるか
- 5つの取引を仕訳し、試算表と貸借対照表が一致することを整数設例で検算
- 会社ごとに科目体系が違う理由と、財務モデルで他社比較をするときの注意点
30秒で分かる定義
勘定科目(かんじょうかもく、Account Title)とは、取引を記録・集計するために、資産・負債・純資産・収益・費用を内容別に区分して付けた名称です。現金預金、売掛金、買掛金、借入金、資本金、売上高、給料といった名称が勘定科目で、仕訳の借方・貸方にはこの名称を書きます。勘定科目ごとに金額を集計したものが試算表で、そこから貸借対照表と損益計算書がつくられます。
勘定科目は、記録のための社内の区分です。有価証券報告書などの財務諸表に表示する科目(表示科目)は法令で区分が定められ、複数の勘定科目をまとめて表示します。モデルへの取り込み手続は勘定科目マッピングに譲り、ここでは5要素の分類と、会社ごとの科目体系の違いを基礎として扱います。
なぜ実務で重要なのか
経理・経営企画は、月次の試算表から予算実績管理や財務モデルを組むときに、勘定科目の分類を前提にします。FAS・IB・PEは、買収対象の試算表や総勘定元帳を受け取り、自社のモデルの科目に振り替える作業(マッピング)を行います。会社ごとに科目の切り方が異なるため、同じ名称でも中身が違う場合があります。融資担当は、借入金・未払金・預り金などの科目から、有利子負債の範囲を判断します。月次試算表からモデルの実績欄を作る手順は月次試算表から財務モデルのHistoricalsを作る方法で確認できます。
計算式(ま たは仕組み)
勘定科目は、まず5つの要素に分けます。要素ごとに、増えるときに借方・貸方のどちらに記入するかが決まっています。
| 要素 | 代表的な勘定科目 | 増加するとき | 表示する財務諸表 |
|---|---|---|---|
| 資産 | 現金預金、売掛金、商品、建物 | 借方 | 貸借対照表 |
| 負債 | 買掛金、借入金、未払金 | 貸方 | 貸借対照表 |
| 純資産 | 資本金、利益剰余金 | 貸方 | 貸借対照表 |
| 収益 | 売上高、受取利息 | 貸方 | 損益計算書 |
| 費用 | 売上原価、給料、支払利息 | 借方 | 損益計算書 |
財務諸表等規則は、資産・負債・純資産をそれぞれ資産の部・負債の部・純資産の部に分類して記載することを定めています[1]。資産は流動資産・固定資産・繰延資産に、固定資産は有形固定資産・無形固定資産・投資その他の資産に分類されます[1]。負債は流動負債と固定負債に、純資産は株主資本、評価・換算差額等、株式引受権および新株予約権に分類されます[1]。損益計算書の収益・費用は、売上高、売上原価、販売費及び一般管理費、営業外収益、営業外費用、特別利益、特別損失の項目に分類して記載します[1]。会社法に基づく計算書類は、会社計算規則に従って作成されます[2]。
整数設例で確認する
設例(架空数値)。単位は百万円。開業した会社の5つの取引を、勘定科目を使って仕訳します。法人税等と利息は考慮しません(このため税引前利益と当期純利益は同額になります)。
| 取引 | 借方 | 貸方 |
|---|---|---|
| ① 出資を受けて現金で受け入れた | 現金預金 1,000 | 資本金 1,000 |
| ② 銀行から借入れた | 現金預金 600 | 借入金 600 |
| ③ 商品を掛けで仕入れた | 商品 400 | 買掛金 400 |
| ④ 商品を掛けで700で販売し、原価400を振り替えた | 売掛金 700/売上原価 400 | 売上高 700/商品 400 |
| ⑤ 給料を現金で支払った | 給料 100 | 現金預金 100 |
- 現金預金 = 1,000 + 600 − 100 = 1,500、売掛金 = 700、商品 = 400 − 400 = 0
- 総資産 = 1,500 + 700 + 0 = 2,200
- 負債 = 借入金 600 + 買掛金 400 = 1,000
- 当期純利益 = 売上高 700 − 売上原価 400 − 給料 100 = 200
- 純資産 = 資本金 1,000 + 当期純利益 200 = 1,200
- 検算:資産 2,200 = 負債 1,000 + 純資産 1,200
- 試算表の借方合計 = 1,500 + 700 + 400(売上原価)+ 100(給料)= 2,700、貸方合計 = 600 + 400 + 1,000 + 700 = 2,700 で一致
PL・BS・CFへの影響
勘定科目は、損益計算書と貸借対照表の各行を決めます。資産・負債・純資産の科目は貸借対照表に、収益・費用の科目は損益計算書に集計されます。設例では、売上高・売上原価・給料が損益計算書、現金預金・売掛金・借入金・買掛金・資本金が貸借対照表に載ります。
キャッシュ・フロー計算書は、貸借対照表の科目の増減から組み立てます。設例では現金預金が1,500増えた要因を、営業・投資・財務に分けて説明できます。科目の区分(たとえば前払金か仮払金か)によって、運転資本に含めるか否かが変わる点に注意します。
財務モデル・Excelでの使い方
- 科目マスター:自社の勘定科目コード、科目名、5要素、財務諸表の表示科目、モデル科目の対応表を1枚のシートに置きます。
- 集計:試算表から
=SUMIFS(金額, 科目コード, 対象コード)でモデルの行に集計します。SUMIFSの使い方はSUMIFS関数の使い方が詳しく扱っています。 - 検算:借方合計と貸方合計の差、資産と負債+純資産の差がゼロになるかをチェック行に置きます。
- 未分類の検出:試算表にあってマスターに無い科目コードを
=COUNTIF(マスター範囲, コード)=0で洗い出します。 - 他社比較:他社の科目をモデル科目に寄せる前に、「その他」「諸口」などの中身を確認します。
この用語をExcelで
試算表の勘定科目をモデルの科目に集計し、貸借が一致する財務三表を組める状態にする。
実務家が確認するポイントとよくある誤解
誤解1:「勘定科目は法律で全社共通に決まっている」→ 法令が定めているのは財務諸表に表示する区分と科目です[1]。社内の勘定科目の体系は会社が設計するため、会社ごとに異なります。
誤解2:「同じ名前の科目なら中身も同じ」→ 「未払金」「前払費用」「仮払金」などは、会社によって含める取引が異なります。比較の前に内容を確認します。
誤解3:「借方は左で『増える』、貸方は右で『減る』」→ 借方・貸方は左右の位置であり、増減ではありません。資産と費用は借方で増え、負債・純資産・収益は貸方で増えます。
確認ポイント:科目の5要素、表示科目との対応、「その他」に含まれる取引の内容をセットで確認します。
日本実務での扱い
(2026年11月時点)有価証券報告書などに表示する科目は、財務諸表等規則(連結財務諸表では連結財務諸表規則)に従い、様式に沿って記載します[1]。会社法の計算書類は会社計算規則に従います[2]。用途ごとに表示のルールが異なるため、同じ取引でも科目の集計の仕方が少しずつ変わります。
勘定科目の体系は、ERPや会計ソフトの設定として会社ごとに作られます。システムとデータの流れは会計情報システムとERPの基礎で扱っています。複式簿記の考え方は複式簿記を参照してください。
面接・モデルテストで問われるポイント
Q:試算表から財務モデルを作るとき、勘定科目で何に注意しますか。
「まず試算表の科目を5要素に分け、貸借が一致することを確認します。次に自社のモデル科目へマッピングし、未分類の科目と『その他』の中身を洗い出します。他社比較では、同じ名称でも含まれる取引が違わないかを確認します。」
深掘りの観点:資産・費用は借方で増えること、売上原価を商品勘定から振り替える仕訳、試算表が一致しても誤りがあり得る理由(科目の誤りは貸借が一致しても検出できない)、などが聞かれます。
よくある質問(F AQ)
Q. 勘定科目と表示科目はどう違いますか。
A. 勘定科目は仕訳・元帳で使う社内の区分で、表示科目は財務諸表に表示する区分です。複数の勘定科目が1つの表示科目にまとめられることがあります。
Q. 勘定科目を自社で自由に増やしてもよいですか。
A. 社内管理のために科目を設けることはできます。ただし、財務諸表の表示は法令・基準が定める区分に合わせる必要があるため、表示科目との対応関係を維持します。
出典・参考(2 026-11確認)
- e-Gov法令検索「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則」(昭和三十八年大蔵省令第五十九号)第12条・第14条・第45条・第59条・第70条. https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=338M50000040059(2026年11月参照)
- e-Gov法令検索「会社計算規則」(平成十八年法務省令第十三号). https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=418M60000010013(2026年11月参照)
※本記事は教育目的の一般的な解説であり、法務・税務・投資助言ではありません。設例は理解のための架空数値です。