この記事で分かること
- 「S&Tインターンは複数デスクを回ってから配属先を選べる」という理解が、日本の公開情報の範囲でどこまで裏付けられるか
- 三菱UFJ銀行・大和証券・みずほ証券・野村證券などマーケット部門インターンの実際の期間・形式(公式サイト確認済み)
- 日系総合コースと外資系デスク別採用で、デスク配属の決まり方がどう違うか
- 説明会・OB訪問・面接で「配属の決まり方」を確認する際に聞くべき具体的な質問
結論:「複数デスクを回って希望を出す」型のインターンは、日本の公開情報からは確認できない
セールス&トレーディング(S&T)のキャリアを調べていると、「サマーインターンの期間中に株式・金利・為替・クレジットなど複数のデスクをローテーションで回り、そのうえで希望デスクを申告し、最終的な配属が決まる」という話を耳にすることがあります。米国の投資銀行のS&T部門で行われる長期のインターンシップ(いわゆる循環配属プログラム(ローテーションプログラム))を念頭に置いた理解として語られることが多い内容です。しかし、大手町プレップが2026年8月時点で確認できた日本国内の主要企業のマーケット部門インターンシップの公式ページを見る限り、「複数デスクを数週間ずつ回り、希望申告を経て配属が決まる」という形式を明記している例は見当たりませんでした。むしろ確認できたのは、多くの企業が3日〜5日程度の短期集中型プログラムを組んでおり、しかも大和証券のように応募段階で商品・機能別のコースがすでに分かれているケースがあるという実態です。つまり、「ローテーションしてから選ぶ」のではなく「応募する時点である程度の方向性を選ぶ」構造に近いというのが、公開情報から読み取れる結論です。以下では、各社の公式ページで確認できる具体的なプログラム形式を整理したうえで、日系総合コースと外資系デスク別採用でデスク配属がどう決まるかの違い、そして説明会や面接で確認すべき論点を解説します。
主要企業のマーケット部門インターンシップの実際の形式
まず、S&T・マーケット部門を対象とするインターンシップが、公式サイト上でどのような形式として案内されているかを確認します。下表は、2026年8月時点で各社の採用ページから確認できた内容の要約です。企業によって開催時期・期間は年度ごとに変わるため、参加を検討する場合は必ず最新の採用ページで確認してください。
| 企業・プログラム | 確認できた内容 |
|---|---|
| 三菱UFJ銀行 グローバル・マーケッツ インターンシップ | 4日間(8月31日〜9月3日、10:00〜17:15、全日程参加必須)。内容は「業務説明」「職場見学・社員交流(ディーリングルームの見学を含む)」「ワークショップ」の3構成。無給。選考は書類選考+Webテスト→面接 |
| 大和証券グループ グローバル・マーケッツ総合コース(ホールセールコースインターン内) | 5日間(11月30日〜12月4日)。「国内外の株式や債券、デリバティブなど幅広い商品を取り扱い」実務を体験する内容と案内。応募締切は9月30日10時 |
| 大和証券グループ デリバティブトレーディングコース(同上) | 5日間(12月7日〜12月11日)。デリバティブ・ポートフォリオのリスク計算・損益シミュレーションを通じて業務を体験する内容と案内。グローバル・マーケッツ総合コースとは別枠の応募 |
| みずほ証券 グローバルマーケッツ部門(部門紹介ページ) | インターン単体の詳細な公開ページは確認できなかったが、部門紹介として「配属された場合、若手社員であっても欧州・アジア・米国へトレーニーとして海外派遣の可能性がある」との記載を確認 |
| 野村證券 グローバル・マーケッツ(部門紹介ページ) | 取扱商品は「金利」「クレジット」「為替」「証券化商品」「株式」およびそれらを組み合わせた「ストラクチャード・プロダクト」。機能はトレーディング・セールス・マーケティング・ストラクチャリング・クオンツの5つに分かれると案内 |
この一覧から読み取れるのは、各社ともインターンシップの主眼を「マーケット業務全般の理解」「ディーリングルームの雰囲気を知ってもらうこと」に置いており、数週間かけて複数デスクを実地でローテーションさせるような長期プログラムとしては設計されていないという点です。大和証券のように商品・機能別に複数コースを並べている企業もありますが、これは「参加者がインターン中にコースを移動する」のではなく、「応募の時点でコースそのものを選ぶ」構造です。この違いは、インターンの準備の仕方(どのコースにエントリーするか)に直結するため、正しく理解しておく必要があります。
「デスクローテーション」という言葉が指しているものを区別する
「デスクローテーション」という言葉自体は、業界で実際に使われている概念です。ただし、どの局面を指しているかによって意味が大きく異なるため、混同しないよう整理しておきます。第一に、米国の投資銀行のS&T部門で行われる数週間から十週間規模のサマーインターン(いわゆる「job」)では、参加者が在籍期間中に複数のデスクを実際に体験し、その経験を踏まえて最終的な配属先の希望を伝えるという運用が一般的に知られています。第二に、入社後の一定期間(多くは数か月から1年程度)にわたり、新人が複数のデスクを見て回りながら適性を確認し、正式配属が決まるという、入社後研修としてのローテーションを指す場合もあります。第三に、監査法人など全く別の業界で、担当先企業を定期的に交代させる制度を指す「監査法人のローテーション制度」のように、同じ「ローテーション」という言葉でも意味が全く異なる制度も存在します。
この記事の主題である日本のS&Tインターンについて言えば、前段で確認した通り、公式サイト上で明記されているのは3日〜5日程度の短期プログラムであり、米国のjob型インターンのような複数デスクへの長期配属を伴うローテーションではありません。米国のS&T job programの構造をそのまま「日本のインターンでも同じことが行われている」と理解するのは誤りです。米国では〜、日本では〜という形で、制度の作られ方が異なる点を明確に区別しておく必要があります。なお、本選考とインターンの関係、および新卒採用スケジュール全体の政府指針との関係については投資銀行のサマーインターン・早期選考完全ガイド(日本版)で扱っているため、S&Tに限らない一般的な採用カレンダーを確認したい場合はそちらを参照してください。
日系総合コースと外資系デスク別採用で、デスク配属の決まり方はどう違うか
S&Tのキャリア完全ガイド(日本版)で扱った通り、日系証券会社の多くは総合職一括採用のうえで研修・OJTを経て配属を決める傾向があり、外資系証券会社は選考段階でデスク(部門)別に採用する傾向があります。ここでは、この違いが「具体的なデスク配属の決まり方」にどう表れるかを、公開情報の範囲で掘り下げます。
外資系証券会社の新卒採用では、募集の段階から「マーケット部門(トレーディング)」「マーケット部門(セールス)」のように、部門・機能単位で選考枠が分かれているケースが一般的です。この場合、応募者は選考時点で希望する機能を選び、内定もその機能単位で出るため、「S&T部門として採用されたあとに、株式・金利・為替のどのデスクに配属されるか」という、より細かい単位での決定プロセスが別途存在することになります。この細かい単位の決定がどのように行われるか(本人の希望をどの段階でどう聞くか、各デスクの採用枠がどう配分されるかなど)について、個社が公式サイト上で手順を詳細に開示している例は、本記事執筆時点では確認できませんでした。この部分は非公開の社内プロセスであることが多く、実際の運用は候補者説明会やOB・OG訪問を通じて確認するのが現実的な方法になります。
日系証券会社の場合は、大和証券の例のように、そもそもインターンシップの段階で「グローバル・マーケッツ総合コース」「デリバティブトレーディングコース」「GMリスク管理コース」のように商品・機能別のコースが分かれています。本選考でも同様に、コース別・部門別の募集枠が設けられる場合と、マーケット部門として一括で採用したうえで入社後の研修期間中に本人の希望・適性・各デスクの人員ニーズを踏まえて配属を決める場合の両方が業界内には存在すると考えられますが、どちらの運用を採るかは会社によって異なり、これも各社の採用ページや説明会で個別に確認すべき事項です。根拠のない一般化を避けるため、「日系だから必ずこう」「外資系だから必ずこう」という断定はできない点に注意してください。
| 確認できた事実 | 確認できなかった事項(要個別確認) |
|---|---|
| 大和証券のインターンは、応募段階で商品・機能別に複数コースへ分かれている | 本選考でも同様にコース別募集となるか、マーケット部門一括での募集になるかは年度・企業により異なるため個別確認が必要 |
| 三菱UFJ銀行のインターンは4日間の統一プログラムで、コース分けの記載はない | 本選考時点でのデスク別採用の有無・タイミング |
| 外資系は機能単位(トレーディング/セールス等)で募集枠が分かれる例がある | 機能内でのデスク(株式・金利・為替・クレジット等)の最終決定プロセス・タイミング |
自分がどのデスク・機能に関心があるかを整理したい方へ
配属の仕組みを調べるのと並行して、自分自身がどのデスク・機能に向いているかを客観的に把握しておくと、OB訪問や面接での質問の解像度が上がります。大手町プレップのキャリア適性診断で強み・志向を整理したうえで、各デスクの実務理解を深めておくことをおすすめします。
説明会・OB訪問・面接で「配属の決まり方」を確認する際の質問例
ここまで見た通り、デスク配属の具体的な決まり方は各社の非公開情報に属する部分が多く、インターネット上の公開情報だけで完結させることはできません。だからこそ、会社説明会・OB/OG訪問・面接という直接の接点を、この論点を確認する機会として意識的に使うことが重要です。外資系金融のネットワーキング戦略(日本版)で扱ったOB・OG訪問の基本的な進め方を踏まえたうえで、S&T・マーケット部門志望者が特に確認しておきたい質問には次のようなものがあります。
インターン参加者への質問:「インターン期間中に複数のデスクを見る機会はありましたか。あった場合、どのデスクを何日程度体験しましたか」「インターンでの経験や評価は、本選考でのデスク配属に影響しますか、それとも別プロセスですか」。若手社員(入社1〜3年目)への質問:「配属先のデスクはいつ、どのように決まりましたか。自分の希望はどの段階で聞かれましたか」「入社後の研修期間中に、複数のデスクを実際に経験する機会はありましたか」。人事・採用担当者への質問:「マーケット部門として採用された場合、デスクの配属はいつ、どのような基準で決まりますか」「本人の希望が通らない場合、どのような調整が行われますか」。これらはいずれも、公式サイトの記載だけでは分からない運用の実態を確認するための質問であり、複数の社員から聞いた内容を突き合わせることで、特定の1人の経験談だけに依存しない、より確からしい理解に近づけます。
面接の場面では、逆に「なぜS&Tを志望するのか」に加えて「なぜそのデスク・商品に関心があるのか」を、根拠を持って説明できるかが問われます。デスクごとの業務内容・扱う商品・リスクの単位の違いはS&Tのキャリア完全ガイド(日本版)で整理していますが、より具体的な各デスクの実務イメージを固めたい場合は、株式トレーディングデスクの実務、金利スワップ(IRS)トレーディングデスクの実務、クレジットトレーディングデスクの実務、FXトレーディングデスクの実務を先に読んでおくと、面接で「なぜこのデスクなのか」を語る材料が具体化しやすくなります。特定のデスクへの志望動機が明確でない段階であれば、無理に一つに絞り込まず、「複数のデスクに関心がある理由」と「それぞれの共通点」を整理しておく方が、面接での受け答えに一貫性を持たせやすくなります。
まず何を準備すればよいか
デスク配属の仕組みそのものは非公開情報が多い一方で、面接やケーススタディで問われる基礎知識・数的処理・マーケットへの関心度は、事前の学習量が結果に表れやすい領域です。デスクごとの業務内容と自分の適性の重なりを把握したら、次のステップとして、選考で問われやすい技術的な基礎(金利・為替・デリバティブの基本的な考え方や、マーケットメイクの収益構造の理解など)を固めておくと、どのデスクに配属されても土台がぶれにくくなります。モデリングラボでケーススタディ形式の演習に触れておくと、面接で求められる「短時間で考えを組み立てて説明する」力の練習にもなります。
よくある質問(FAQ)
Q. 日本のS&Tインターンでも、米国のように複数デスクを長期間ローテーションする制度はありますか。
A. 大手町プレップが2026年8月時点で確認した主要企業の公式ページの範囲では、そのような長期ローテーション型のインターンシップは確認できませんでした。多くは3〜5日程度の短期プログラムであり、複数デスクを数週間ずつ回るような形式は明記されていません。企業や年度によって運用が変わる可能性があるため、志望企業の最新の募集要項で確認してください。
Q. インターンでどのデスクを体験できるかは選べますか。
A. 大和証券のように、応募段階で商品・機能別のコース(グローバル・マーケッツ総合コース、デリバティブトレーディングコースなど)が分かれている企業では、応募の時点である程度の方向性を選ぶことになります。一方、三菱UFJ銀行のように単一の統一プログラムとして案内している企業もあり、コース選択の有無は企業によって異なります。
Q. インターンでの評価や経験は、最終的なデスク配属に影響しますか。
A. 各社が採点基準や配属決定プロセスを公開しているわけではないため、断定はできません。影響する可能性を示唆する情報がある一方、インターンと本選考の関係を公式には明言しない企業も多いという点は投資銀行のサマーインターン・早期選考完全ガイド(日本版)で扱った内容と同様です。確度の高い情報を得るには、OB・OG訪問や説明会で直接確認することをおすすめします。
Q. 日系と外資系で、デスク配属の決まり方は根本的に違いますか。
A. 傾向としては、外資系は選考段階で機能・部門単位の募集枠が分かれることが多く、日系は総合職一括採用のうえで研修を経て配属される傾向があります。ただし、この傾向は絶対的なものではなく、より細かいデスク単位の決定プロセスは会社ごとに異なるため、「日系だから」「外資系だから」と一律に理解するのは避けるべきです。
Q. 配属を有利に進めるために、学生のうちにできることはありますか。
A. 特定のデスクの業務内容を具体的に理解し、志望理由を自分の言葉で説明できるようにしておくことが基本になります。また、OB・OG訪問を通じて、そのデスクの若手社員から配属の実態を直接聞いておくと、面接での質問にも具体的に答えやすくなります。特定の情報源への依存を避け、複数人の話を突き合わせて理解を確かめる姿勢が結果的に近道になります。
まとめ
「S&Tインターンは複数デスクを回って希望を出してから配属が決まる」という理解は、米国のS&T job programの構造を念頭に置いたものと考えられますが、2026年8月時点で確認できた日本国内の主要企業の公式ページからは、そうした長期ローテーション型の仕組みは確認できませんでした。実際に確認できたのは、多くの企業が3〜5日程度の短期集中プログラムを組んでおり、大和証券のように応募段階で商品・機能別のコースが分かれている企業もあるという実態です。デスク配属の細かい決定プロセスは各社の非公開情報に属する部分が大きいため、公開情報だけで理解を完結させず、説明会・OB訪問・面接という直接の接点を通じて、志望企業ごとの実際の運用を確認することが、遠回りに見えて最も確実な進め方になります。
S&T志望の基礎固めを進めたい方へ
デスクごとの実務理解と、マーケットの基礎知識を並行して積み上げておくことが、面接での説得力につながります。まずは無料会員登録でS&T関連コンテンツへのアクセスを確保し、各デスクの実務記事を読み進めることから始めてみてください。
出典・参考(2026年8月確認)
- 三菱UFJ銀行 新卒採用サイト「グローバル・マーケッツ インターンシップ」https://www.saiyo.bk.mufg.jp/internship/globalmarkets/
- 大和証券グループ 新卒採用サイト「インターンシップ」https://www.daiwa-grp-recruit.jp/internship/
- みずほ証券 新卒採用サイト「グローバルマーケッツ部門」https://career.mizuho-sc.com/new_graduate/atfirst03/field03.html
- 野村證券 採用サイト「グローバル・マーケッツ|ホールセール部門」https://www.nomura-recruit.jp/business/wholesale/global-markets/
※本記事は教育目的の一般的な解説であり、法務・税務・投資助言ではありません。設例は理解のための仮設例です。年収・採用情報・各社のインターン実施時期・形式は執筆時点(2026年8月)に各社公式サイトで確認できた公開情報に基づく参考値であり、年度・企業により変更される可能性があります。最新の応募条件・スケジュール・配属プロセスは必ず各社の採用ページおよび説明会でご確認ください。