想定読者:運用会社のポートフォリオマネジャー・トレーダー・クオンツ、運用委託先を評価する年金・金融法人の担当、自社株買いの執行を設計する事業会社の財務担当
前提知識:シャープ比と決定係数の意味(コストの式は本文で説明します)

売買高を予測する機械学習モデルの導入を検討しているとする。説明資料には、5日移動平均より決定係数が大きく改善したと書いてある。この数字だけで導入を決めてよいだろうか。予測が当たれば執行は良くなるはずだという見通しは自然だが、「当たる」の測り方と「儲かる」の測り方は同じではない。売買高を過大に見積もって買い進めた日の損は、過小に見積もって買い残した日の損と釣り合わないからだ。

この点を正面から扱った研究が、米国株の日次データで売買高の予測を取引コストに翻訳し、予測の価値を運用成績で測った論文である。結論は読みやすいが、数字の前提は読み飛ばせない。本稿では結果と前提を分けて整理し、予測モデルをコストで検収する手順に落とす。

この記事が主に参照する研究

Goyenko, R., B. Kelly, T. Moskowitz, Y. Su and C. Zhang「Trading Volume Alpha」NBER Working Paper No. 33037

  • 公表:著者 CV 上の最初の報告は2023年3月(City University of Hong Kong 等)。SSRN 4802345 の DOI 登録は2024年4月22日(公開日は未確認)。NBER WP は2024年10月。参照した版:2025年6月12日版。査読:著者のウェブサイトと CV は Journal of Financial Economics で改訂再投稿(R&R)中と記すが、採択・掲載は確認できず、未査読の WP として扱う1
  • データ:米国株の日次の売買代金と175の説明変数。2018〜2022年、1,258営業日、約4,700銘柄、約440万観測2
  • 方法:3年で学習し、残る2年で予測と模擬売買を評価する。因果の識別ではなく予測の研究で、取引コストは仮定の式で計算する
  • 位置づけ:既存のコスト理論を使い、機械学習の損失関数に運用の目的を組み込む手法の提案と検証

売買高の​予測が​取引コストの​予測に​なる​理由

まず言葉をそろえる。論文の「trading volume」は株数ではなく金額で、日本でいう売買代金にあたる。予測の対象は、その自然対数である。本稿も、見出しの「売買高」は金額の意味で使う。

大口の売買が市場価格を動かす度合いは、マーケットインパクトと呼ばれ、アルゴリズム​執行の​実務でも中心の論点になる。論文はこれを、その日の売買代金に対する自分の売買額の比率(参加率)の一次式で置く。係数は0.1で、1日の売買代金の10%を買うと価格が1%動く計算になる。コストは価格の変化に売買額を掛けた額で、売買額の2乗に比例し、売買代金に反比例する3。分母の売買代金は当日が終わるまで分からないから、予測するしかない。これが、売買高の予測がそのままコストの予測になる理由である。

コストだけ見れば売らない・買わないのが最善になるため、反対側にトラッキングエラーの罰則を置く。目標の持ち高からの乖離の2乗に係数 μ を掛けたもので、μ は運用規模が大きいほど小さい4。目標までの売買のうち今日こなす割合を売買率 z とすると、損失は「λz²+μ(1−z)²」となり、これを最小にする z は μ÷(μ+λ) である。λ は 0.2÷売買代金なので、売買代金が細ると予想すれば z は下がる5。論文の枠組みは、この z を銘柄ごと日ごとに決める問題に尽きる。リターンの予測は外から与えられたものとして扱い、売買高だけの価値を切り出している。

研究が​示した​結果:予測は​できる、​だが​正確さは​成績と​一致しない

対数売買代金の水準は予測が簡単で、過去5日の移動平均だけで、検証期間の全変動(全観測の平均からのばらつき)の93.68%を説明する6。対数で測った値であり、売買代金の金額そのものの変動を説明した割合ではない。そこで論文は、対数売買代金から過去5日の平均を引いた値(ショック)を当てにいく。全変数を使った再帰型ニューラルネットワーク(RNN)のショックに対する決定係数(R²)は19.86%、同じ変数の線形回帰は15.99%、テクニカル変数8個の線形回帰でも12.09%だった7。この19.86%は5日平均の誤差のうち減らせた割合で、93.68%とは分母が違う。全変動を分母にそろえると、5日平均の93.68%に対してRNNは94.93%である8。日次のリターンの R² がわずかにプラスにとどまることと比べ、著者らは売買高の予測しやすさを強調する9。伸びへの寄与で目を引くのは、取引所の早期終了日、オプションの満期日、指数の入替日といったカレンダー情報と、決算発表の予定である10。規模別には大型株の方が当たりやすく、最大の区分の R² は32.02%、最小の区分は16.63%だった11。

本題はここからである。同じ予測を、先ほどの損失で測り直す。5日平均を0%、売買代金を完全に見通せる場合(完全予見)を100%として損失の削減率を測ると、10億ドル相当の条件で、統計的に学習したRNNは29.5%にとどまる。ところが、そのRNNを損失の式で微調整すると68.8%まで上がり、R² は19.9%から−0.6%に落ちる12。微調整とは、まず通常の最小二乗で学習したモデルを出発点に、運用の損失を目的関数にして追加の学習をかける手続きである13。

図1図1 予測の正確さと経済的損失は同じ順に並ばない10億ドル相当の条件・検証期間決定係数 R²(%)5日移動平均0.0%RNN・統計的学習19.9%RNN・経済的損失で調整−0.6%NN・経済的損失で調整−26.8%経済的損失の削減率(%)5日移動平均0.0%RNN・統計的学習29.5%RNN・経済的損失で調整68.8%NN・経済的損失で調整69.2%
注:R² は​売買代金の​ショック​(5日平均からの乖離)に​対する​値で、​5日平均を​0%と​する。​削減率は​5日平均を​0%、​完全予見を​100%とした​正規化。​赤は​マイナス。​全変数​(175個)の​モデル。​出所:R1(p.32 表2 A′・B′)の​数値を​基に​大手町​プレップ​作成。

図1の読みどころは、R² が最も高いモデルが損失で最良ではなかったことだ。テクニカル変数のモデルでは、ニューラルネットの方が線形回帰より R² が高いのに損失は大きいという順位の逆転も起きている14。売買を積極的に行う1,000万ドル相当の条件では、統計的に学習したモデルは削減率が−0.3〜−32.1%で、5日平均より悪かった15。理論面でも、著者らは最小二乗の解がこの損失を最小にしないことを命題として示している16。

運用成績への翻訳には模擬売買を使う。1%の確率で5日先の上下を完全に当てる架空のシグナルで、等ウェイトのロングショートを組み、運用規模を変えて実行する。コスト前のシャープ比は約7という非現実的な水準で、コストで大きく削られることを見るための設定である17。結果が表1である18。

表1 運用規模別の模擬売買の結果(年率、コスト控除後、検証期間)

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運用規模5日平均機械学習完全予見改善幅到達率シャープ比
100億ドル3.88%4.68%6.47%0.80pt31%2.00→2.50
10億ドル6.47%8.95%9.89%2.48pt73%2.21→4.53
1億ドル11.19%11.77%12.54%0.58pt43%5.47→5.85
1,000万ドル13.20%13.30%13.56%0.10pt28%6.55→6.68
注:機械学習は​全変数の​RNNを​経済的損失で​微調整した​モデル​(rnn.econ)。​改善幅と​到達率は​編集部の​計算​(到達率=改善幅÷完全予見までの差)。​pt=%ポイント。​シャープ比は​5日平均→機械学習。​平均​リターンと​シャープ比は​それぞれの​指標を​最大に​する​μで​測る。​出所:R1(p.38 表3)の​数値を​基に​大手町​プレップ​作成。

10億ドルでは年率6.47%が8.95%へ上がり、シャープ比は2.21から4.53と2倍を超えた。一方、改善幅は規模に比例せず、1億ドルでは0.58%ポイント、1,000万ドルでは0.10%ポイントに縮む。小さな運用では、どの手法も積極的に売買するので差が出にくいと著者らは説明する。また、平均リターンで見ると100億ドルと1,000万ドルでは統計的に学習した6モデルはいずれも5日平均を下回っており、この2つの規模で平均リターンが5日平均を上回ったのは、経済的損失で微調整した4モデルだった19。この模擬売買のうち100億ドルの結果を銘柄の規模別に分解すると、改善は小型株に偏らず、完全予見への到達率はむしろ大型株ほど高い20。

より現実に近い実験として、153の特性で作ったファクターを月次で組み替える試算もある。運用100億ドルで、改善は平均で年0.44%、金額で年4,400万ドル相当だった。回転率の高い短期リバーサル系で年0.5〜1.0%、低回転の系統でも年0.2〜0.6%である21。

なぜ過大予想が​高く​つくのか:設例で​確かめる

著者らの説明の核は非対称性にある。売買高が細い日に多いと見誤ると、高いコストで買い進めてしまう。逆に、厚い日に少ないと見誤っても、失うのは目標に近づけなかった分だけで、その損失は μ で頭打ちになる22。式の性質を自分の手で確かめるため、次の設例を置く。

学習用の設例(架空)

  • ある銘柄で今日5億円を買い増したい。コストの式は論文のものをそのまま借りる
  • μ は、売買代金50億円のときに売買率がちょうど50%になる値に置く
  • 実際の売買代金は10億円の日と250億円の日の2通り。予想は当日の実績の5倍か5分の1に外れる

実際の売買代金が10億円の日を考える。正しく予想できれば売買率は17%で、買うのは約0.83億円、参加率は8.3%である。コストは69万円、買い残しの罰則が347万円で、損失は計417万円になる。これを50億円と見誤ると売買率は50%に上がり、2.50億円を買うことになる。参加率は25%、価格インパクトは2.5%で、コストは625万円に跳ね、損失は計750万円である。追加の損失は333万円だった。

図2図2 同じ5倍の誤りでも追加損失は向きで違う学習用の設例(架空)・単位:万円実際の売買代金 10億円5倍に過大に予想333万円5分の1に過小に予想49万円実際の売買代金 250億円5倍に過大に予想10万円5分の1に過小に予想67万円
注:目標売買5億円の​設例で、​実際の​売買代金を​知っていた​場合と​比べた​損失の​増分。​赤は​過大、​青は​過小。​損失の​式は R1 の​式を​借り、​数値は​架空。​出所:学習用の​仮定に​基づき大手町​プレップ​作成。

図2のとおり、10億円の日に5分の1へ過小に見積もった場合の追加損失は49万円で、過大の約6.8分の1にとどまる。250億円の日は向きが逆転し、過小の方が大きいが、67万円の水準である。売買率が左右対称になる10億円の日の過大と250億円の日の過小を比べると、差は5.0倍だった。誤りの大きさを変えたのが表2である。

表2 誤りの大きさ別の追加損失(学習用の設例・架空)

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誤りの倍率10億円 過大10億円 過小250億円 過大250億円 過小
1.5倍12万円7万円1万円2万円
2倍43万円17万円3万円9万円
3倍130万円33万円7万円26万円
5倍333万円49万円10万円67万円
10倍750万円65万円13万円150万円
注:列の​「10億円」​「250億円」は​実際の​売買代金。​過大は​その​倍率で​予想、​過小は​その​逆数で​予想した​場合。​目標売買5億円、​μは​売買代金50億円で​売買率50%と​なる値。​出所:学習用の​仮定に​基づき大手町​プレップ​作成。

どの倍率でも、10億円の日の過大予想が突出している。つまり、平均的に当てるより、細い日に強気にならないことの方が損失を左右する。最小二乗の目的関数は上下の誤りを同じ重みで数えるので、この非対称な損失を直接には評価しない。経済的損失で微調整したモデルが R² を犠牲にしたのは、過大予想を避ける方向へ予測を寄せたためだと著者らは説明している23。

研究の​対象・方法・​限界

数字を社内に持ち込む前に、次の前提を押さえたい。第一に、コストは実測ではない。論文の取引コストは式で計算した値で、スプレッドは含まれない24。係数0.1は著者らが先行研究に依拠して置いた仮定であり、著者らも最良のコストモデルを示すことが目的ではないと明言する25。第二に、運用成績の数字は模擬売買の結果で、とくにコスト前シャープ比約7の実験の「2倍」を実際の運用の見込みとして読むことはできない。第三に、標本は2018〜2022年の米国株で、3年で1回だけ学習し、残る2年で評価している26。検証は2年分で、期間を動かした結果は示されていない。第四に、表の運用成績には標準誤差が付いていない27。「リターン予測に匹敵する」という著者らの総括28も、両者を同じ基準で検定した結果ではない。著者のうち2名は運用会社 AQR の所属を開示している29。著者らは、動的な効果や売買タスクの違いを扱っていないことも限界に挙げる30。

関連研究との関係も整理する。Jensen らの研究は、機械学習でポートフォリオを直接学習する点で発想が近いが、取引コストを既知として扱う31。本研究はコスト自体を不確かな予測として扱う点に違いがある。コスト式の系譜にある Frazzini らの2012年の稿は、約1兆ドルの実取引データから、実際のコストが先行研究の推計の10分の1未満だと報告した32。

大手町​プレップの​考察

ここからは編集部の見方であり、研究が検証した内容ではない。

第一に、この種の予測の価値を決める尺度は運用資産額そのものより参加率ではないか。表1の改善幅は10億ドルで最大になり、両側で縮む。大きすぎれば目標に近づけず、小さければ予測しなくても売買できる。効くのは、売買額が売買代金に対して無視できず、かつ売買を諦めるほどでもない領域だと考えられる(仮説)。したがって自社の運用が「10億ドルに近いか」を問うのではなく、平常の参加率の分布を見るべきだろう。

第二に、導入の順序である。10億ドルの実験では、テクニカル変数だけの線形回帰で7.60%、シャープ比3.32に届き、最良モデルまでの改善幅の約46%を占める。ただし100億ドルでは平均リターンが5日平均を下回っており、安定はしていない。それでも、線形の基準線から始めて、経済的損失で測りながら複雑さを足す順序の方が、初めからRNNを組むより検収しやすいはずだ。

第三に、社内の報告の型である。平均の誤差を1つ示すのでなく、売買代金の低い帯での過大予想の頻度と金額を別に報告すれば、モデルの弱点は早く見つかる。予測モデルのバックテストの​設計と同じく、結果の前に疑い方を決めておくことが大切になる。

日本の​実務への​応用:置き​換える​情報と​制度の​違い

論文のカレンダー情報は米国の制度に結びついており、日本では別のものに置き換わる。先物・オプションの清算に使う SQ 値は、日経225関連では限月の第2金曜日の始値で算出される33。TOPIX の定期入替は年1回、10月最終営業日に行われる(初回は2026年、2回目は2028年)34。決算発表の予定は JPX が掲載している35。これらが日本株の売買代金をどの程度説明するかは本研究の範囲外で、自社のデータで確かめる必要がある。

学習データの区切りにも注意がいる。東証は2024年11月5日に取引時間を30分延ばし、クロージング・オークションを導入した。2027年10月12日にはランダムクローズの導入も予定されている36。編集部の見方では、これらは売買の時間配分を変えうるので、制度の前後のデータを無条件に混ぜない方がよい。なお、係数0.1は米国の文献に基づく仮定であり、日本株にそのまま使える根拠はこの研究にない。社内の約定データ(取引コスト分析、TCA)で校正するのが筋である。最良執行の検証で集めた記録があれば、その流用から始められる。

運用会社以外にも応用の余地がある。自社株買いを市場で行う場合、発行者の1日の注文数量は、原則として買付日の属する週の前4週間の1日平均売買単位数などを超えないことが内閣府令の要件になっている37。上限が過去の平均で決まる以上、当日の売買代金が細ると参加率は跳ね上がる。予測は上限を超えるためではなく、上限の内側で買付けの配分を調整する材料になるだろう(編集部の推論)。政策保有株の​売却で市場内の売却計画を組む際も、発想は同じである。

明日から​使える​検収の​手順

次の手順は編集部の提案で、研究が検証したものではない。数値の目安はいずれも編集部の仮の目安である。

  1. 基準線を5日平均に固定する。対数売買代金の過去5日の平均を予測とし、コスト込みの経済的損失でこれに勝てないモデルは検討しない。
  2. 自社の約定データで係数を校正する。論文の0.1をそのまま使わず、参加率と実現コストの関係を推定する。データが無いうちは0.05・0.1・0.2の3通りで結果の符号が変わらないかを見る。
  3. 売買率と損失を日次で計算する。Excel なら、対数の予測値を指数変換して予想売買代金に戻し、「売買率=μ÷(μ+係数×2÷予想売買代金)」と「正規化損失=係数×2÷実績売買代金×売買率²+μ×(1−売買率)²」の2列を作る。正規化損失は目標売買額の大きさを除いた値で、金額にするには0.5×目標売買額²を掛ける。目標売買額が日や銘柄で異なるなら、金額に換算してから平均する。R² の表の隣に、この損失の平均を5日平均対比で並べる。
  4. 誤りを向きと帯で分解する。売買代金の5分位ごとに過大・過小の頻度と追加損失を出す。最下位の分位で過大予想の追加損失が全体の半分を超えるなら、導入前に見直す(仮の目安)。
  5. 期間と銘柄で分けて確かめる。単一の検証期間で判断せず、期間を分け、制度変更の前後と大型株・小型株で別に測る。小型株で線形モデルに負けるなら、適用範囲を大型株に絞る。
  6. 本番は影の運用から始める。1四半期程度、予測による売買率を記録だけして実際の執行と比べ、スプレッドや手数料を含む実現コストで採否を判断する。

運用委託先を評価する立場なら、問いは3つに絞れる。「売買高の予測は何を基準線に評価したか」「評価はコスト込みの損失か、R² か」「売買代金の細い日に過大予想でどれだけ損をしたか」。

よく​ある​質問

売買高の​予測は​リターンの​予測と​同じ​くらい​価値が​あるのですか。

著者らは​そう​総括していますが、​架空の​高収益​シグナルを​使う​模擬売買と​仮定の​コスト式に​基づく​結果です。​実際の​運用で​同じ​大きさの​効果が​出るとは​言えません。

中​小規模の​運用にも​意味が​ありますか。

論文の​実験では​1,000万​ドルの​改善は​ごく​小さい​ものでした。​ただし​小型株中心の​運用では​参加率が​高くなりやすいため、​運用資産額だけで​判断せず、​参加率で​確かめる​ことを​おすすめします​(編集部の見方です)。

VWAP 執行を​使っていれば​不要ですか。

VWAP は​1日の​中での​配分を​決める​手法で、​本研究の​主題は​日々どれだけ​売買するかの​判断です。​問いの​階層が​異なる​ため、​併用を​考える​ことになります​(編集部の整理です)。

まとめ

米国株の研究は、対数売買代金の5日平均からの乖離も一部は予測でき、その価値はコストで測ると R² の順位と一致しないことを示した。背景にあるのは、細い日の過大予想が高くつくという損失の非対称である。一方、運用成績の大きな数字は、模擬売買と仮定のコスト式に基づく、査読の済んでいない結果として読む必要がある。実務で持ち帰るべきは「2倍」という数字より、予測モデルを5日平均を基準線に、実現コストと誤りの向きで検収するという手順の方だろう。

脚注

  1. R1 の版:著者 Su の CV(2026年10月30日取得)の発表欄で最も早い報告は2023年3月(City University of Hong Kong、Renmin University of China)。月までの自己申告で、当時の稿は公開されておらず、内容や題名が同じかは確認できない。SSRN 4802345 の DOI 登録は2024年4月22日である。登録日は公開日を示すものではなく、SSRN の掲載ページも取得できなかったため、公開日と最初の稿は未確認。NBER WP 33037 は2024年10月。本稿は2025年6月12日版を読み、ページは PDF のページで示す。表1〜3の数値は NBER 版と同じであることを確かめた。著者のウェブサイトと CV は Journal of Financial Economics で改訂再投稿(R&R)中と記すが、採択・掲載は確認できず、未査読の WP として扱う。同じ理由で、2025年6月12日版より後の版の有無も未確認であり、本稿の数値はすべて同版による。↩
  2. R1(2025年6月12日版) p.12(2.3節)。売買高は株数ではなく金額(dollar trading volume)の対数。↩
  3. R1(2025年6月12日版) p.21〜22(式5)。λ=0.2÷売買代金、価格インパクト=0.1×売買額÷売買代金。著者の仮定で、Kyle(1985)と Frazzini, Israel and Moskowitz(2018)に依拠すると説明している。↩
  4. R1(2025年6月12日版) p.21(式4)。μ は規模が大きいほど小さいが、実証ではリスク回避度から計算せず、調整するパラメータとして扱う。↩
  5. R1(2025年6月12日版) p.22〜23(式7〜10)。x は売買後の持ち高、x* は目標の持ち高、x0 は開始時の持ち高で、実際の売買額は x−x0、z=(x−x0)÷(x*−x0)。↩
  6. R1(2025年6月12日版) p.13(2.4節)・p.50 表B.2 パネルA′。検証期間の対数売買代金の全変動に対する値で、分母は検証期間の全観測の平均からの乖離の2乗平均(p.50 の注)。p.13 は1日前92.53%、22日平均92.60%、252日平均86.12%も示す。↩
  7. R1(2025年6月12日版) p.17 表1 パネルA。R² は5日平均を基準にショックを説明した割合で、評価は検証期間。5回の乱数の平均。↩
  8. R1(2025年6月12日版) p.50 表B.2 パネルA・A′(RNN・全変数)。予測値と MSE は同じで、R² の分母だけが違う(p.50)。↩
  9. R1(2025年6月12日版) p.17〜18(3.2節)。Gu, Kelly and Xiu(2020)を引いた著者の比較。↩
  10. R1(2025年6月12日版) p.14〜15(2.5節)と p.17 表1。RNN の R² は、残り147の企業特性を足すと16.25%から15.47%へ下がり(著者は過学習の可能性を挙げる、p.18)、カレンダーで18.12%、決算で19.86%へ上がった。↩
  11. R1(2025年6月12日版) p.53 表B.4 パネルA(RNN・全変数)。規模区分は NYSE の時価総額分位による(p.52 脚注35)。↩
  12. R1(2025年6月12日版) p.32 表2 パネルA′・B′(第2列)。第2列の μ は10億ドルの運用に相当する値(p.32 注、p.37 脚注32)。↩
  13. R1(2025年6月12日版) p.29(5.2節)。↩
  14. R1(2025年6月12日版) p.31(5.3節)と p.32 表2 パネルA。↩
  15. R1(2025年6月12日版) p.32 表2 パネルA′(第4列)。5日平均より悪い値は −0.3〜−32.1%、経済的損失で微調整したモデルは50.2〜59.6%。↩
  16. R1(2025年6月12日版) p.26(命題1)・p.60〜62(命題4)。↩
  17. R1(2025年6月12日版) p.35(6.2節)。著者自身がコスト前の値を非現実的に高いと書いている。↩
  18. R1(2025年6月12日版) p.38 表3。平均リターンとシャープ比は、それぞれ学習期間で指標を最大にする μ を選んで検証期間に適用した値(p.37〜38)。本文(p.38)は10億ドルの到達点を8.98%と書くが、表3は8.95%で、NBER 版も同じ食い違いがある。本稿は表の値を使う。↩
  19. R1(2025年6月12日版) p.38 表3 パネルA。統計的学習の6モデルは100億ドルで3.74〜3.86%、1,000万ドルで13.09〜13.14%。シャープ比では100億ドルで2.14〜2.19と5日平均の2.00を上回る。読み取りは編集部による。↩
  20. R1(2025年6月12日版) p.55 表B.5。6.2節の架空シグナルによる模擬売買(運用100億ドル)を、再学習せず銘柄の規模別に分けた値。平均リターンの到達率は mega 75%、nano 13%。↩
  21. R1(2025年6月12日版) p.39〜40(6.3節・図7)。153の特性で月次リバランスのロングショート、運用100億ドル、μ は全ファクター共通。↩
  22. R1(2025年6月12日版) p.27(図3の説明)。↩
  23. R1(2025年6月12日版) p.33(5.3節)。↩
  24. R1(2025年6月12日版) p.21〜22 の式で計算した値で、実際の約定データではない。スプレッドなど単位当たりのコストは入っていない(p.38)。↩
  25. R1(2025年6月12日版) p.3(1節)・p.41(7節)。↩
  26. R1(2025年6月12日版) p.12。学習は1回だけで、交差検証や期間を動かした再推定はしない。↩
  27. R1(2025年6月12日版) p.38 表3 に標準誤差や検定の記載は無い。↩
  28. R1(2025年6月12日版) p.1(要旨)・p.7。↩
  29. R1(2025年6月12日版) p.1。著者のうち2名の所属に AQR が記載され、謝辞は AQR の見解ではないと述べる。↩
  30. R1(2025年6月12日版) p.41〜42(7節)。↩
  31. R2(2023年2月版)p.1。R1 は p.11 で、この研究は取引コストを既知として扱うのに対し、自らは推定誤差のある予測として扱うと説明している。掲載情報は R2 の参考文献欄を参照。↩
  32. R3(2012年12月版)p.1。R1 が式の根拠に引くのは2018年の改訂稿(SSRN 3229719)で、そちらの本文は読めていない。↩
  33. JPX 用語集「特別清算数値(SQ値)」。↩
  34. JPX 総研「東証指数算出要領(TOPIX編)」2026年10月1日版、3(1)。↩
  35. JPX「決算発表予定日」。↩
  36. JPX「現物市場の機能強化に向けた取組み(取引時間の延伸等)」(2026年8月6日更新)。↩
  37. 有価証券の取引等の規制に関する内閣府令 第17条第3号(e-Gov 法令検索)。売買数量からは立会外売買を除く。ここでは制度の概要だけを示し、個別の買付けの適否は判断しない。↩

参考文献​(2026年10月確認)

※本記事は教育目的の一般的な解説であり、投資助言・法務・税務の助言ではありません。研究結果は各論文の対象・期間・方法の範囲で得られたもので、日本の個別企業・案件にそのまま当てはまるとは限りません。設例は学習用の架空の数値です。アイキャッチ画像は生成AIによるイメージです。