この記事で分かること
- ドイツの家計約4,000世帯に株式市場の情報を無作為に示した実験では、直近12か月の株価指数のリターン(配当込み)や利益の情報に期待リターンが過去のデータの予測力以上に反応し、PER が思っていたより高いという情報では、平均して期待がわずかに上がった
- 情報で動いた期待だけを使うと、期待が1%ポイント上がったときの仮想の株式比率の上昇は2.70%ポイントで、単純な回帰の約2.2倍だった。仮想の配分であることなど、結果の読み方の限界
- 日本のウェルスマネジメント・投資助言の面談で、顧客の事前の見方を先に確かめ、示す情報の順序と配分変更の手順を見直すための確認項目と設例
想定読者:銀行・証券会社・IFA・プライベートバンクで資産配分を提案する担当者、投資助言業者、資産運用会社の販売企画・顧客向け資料の作成担当
前提知識:株式の期待リターン、PER、資産配分の基本(用語は本文で説明します)
架空の面談の場面で考える。冒頭で「この1年で株価指数は2割上がりました」と伝えると、顧客の期待が上がり、株式を増やす話に進みやすくなるかもしれない。逆に、市場全体の PER が過去の平均を大きく上回っていると説明しても、顧客が慎重になるとは限らない。どの情報がどれだけ期待を動かし、その期待がどれだけ配分を動かすのかは、観察データだけでは確かめにくい。楽観的な人ほど株式を多く持つという相関があっても、株式で運用がうまくいった人が楽観的になっただけかもしれない。
ドイツ連邦銀行の研究者と米パデュー大学の研究者による論文は、この順序の問題を無作為化した実験で切り分けた。2020年秋の調査で、回答者ごとに異なる市場の情報を無作為に示し、期待の変化と仮想の株式比率の変化を測っている。2021年11月の学会で発表され、2026年に査読誌 Review of Financial Studies に掲載された1。本稿は掲載誌版の本文を確認できていないため、2025年11月の作業論文の数値で整理する。
この記事が主に参照する研究
Johannes Beutel, Michael Weber(2026)「信念とポートフォリオ:因果的な証拠(Beliefs and Portfolios: Causal Evidence)」Review of Financial Studies 39巻10号
- 公表:初出 2021年11月(学会発表)、論文の初版 2022年2月(SSRN)。参照した版:2025年11月の作業論文(NBER Working Paper 34489 と同時期の著者公開版)。査読:2026年に査読誌に掲載(掲載版の本文は未確認)
- データ:ドイツ連邦銀行の消費者期待調査に組み込んだ実験。家計の代表標本、2020年9月(回答4,054人)と12月(4,036人)の2回
- 方法:情報の種類を無作為に割り付けた実験(RCT)。情報で動いた期待を操作変数にして、期待が株式比率に与える効果を推定。株式比率は仮想の配分の質問で測る
- 位置づけ:期待形成の代表的な理論(合理的期待、情報の粘着性・ノイズ、過剰反応)を同じ実験で比べる検証。観察データで示されてきた「期待と配分の関係」に因果の推定を加える
押さえておく基礎:知覚ギャップ、更新率、期待と株式比率の関係
実験の中心にある考え方は単純である。ある情報(たとえば過去12か月の株価指数の上昇率)を示す前に、回答者がその値をいくつだと思っているかを聞く。示した値と事前の思い込みの差を「知覚ギャップ」と呼ぶ。もともと正しく知っていた人は情報を見ても驚かず、大きく外していた人ほど期待を改めるはずだ。そこで、知覚ギャップ1単位あたり期待リターンが何%ポイント動いたかを「更新率」として推定する2。回帰分析の傾きにあたる量で、情報を受けて期待をどれだけ素直に、あるいは過剰に書き換えるかを表す。
更新率が「大きすぎる」か「小さすぎる」かを判断するには物差しがいる。著者らは、1973年以降のドイツの株価指数(DAX)のデータで、その情報が翌年のリターンをどれだけ予測してきたかを回帰で推定し、これを客観的な基準とした。たとえば過去12か月のリターンが翌年のリターンをほとんど予測しないなら、その情報で期待を大きく変えるのは過剰反応になる。PER
期待と配分を結ぶ物差しとして、論文は Merton のポートフォリオ選択の式を使う。株式の比率は、期待超過リターン(期待リターン−安全資産の利回り)を、リスク回避度と株式リターンの分散の積で割った値になる。期待超過リターンが1%ポイント上がったときに株式比率が何%ポイント上がるか(感応度)を推定すれば、そこから回答者の相対的リスク回避度γを逆算でき、γが常識的な範囲に収まるかで結果の妥当性を点検できる4。現代ポートフォリオ理論の考え方を、1つの危険資産と1つの安全資産に絞った形である。
実験の設計:6つの情報と、1万ユーロの仮想の配分
2020年9月の調査では、回答者を6つの群に無作為に分けた。示した情報は、1973年以降の DAX の長期平均(年約9%)、過去12か月の DAX のリターン(約9%)、過去12か月の構成企業の利益の減少(約20%)、現在の PER(約23倍、長期平均約15倍)、専門家予測(今後12か月で約9%の上昇)の5つと、株式と無関係な数字(菜種の収量が約10%増えた)を示す対照群である。専門家予測は、配当利回りを使ったリターン予測の回帰から著者らが作った値だった。DAX は配当込みのリターン指数で、回答者にもそう伝えている。すべて事実に基づく情報で、文の長さもそろえてある5。
情報の前に12か月先の DAX の変化率を点で予想してもらい、情報の後には確率の分布で答えてもらう。最後に、1万ユーロを12か月、DAX に連動する資産と利回り1%の安全資産に分ける仮想の質問に答える。この配分には報酬による動機づけがなく、実際の売買でもない6。
研究が示した結果①:直近のリターンと利益には反応しすぎ、PER には逆向き
まず、事前の知覚は大きく外れていた。過去12か月の DAX のリターン(実際は約9%)を平均4.76%と思い、利益の変化(実際は約−20%)を平均3.95%の増加と思っていた。PER の平均は9.93倍で、実際の約23倍を大きく下回る。長期平均リターンだけは平均8.37%と実際に近く、専門家予測は60%が「知らない」と答えた7。
表1 示した情報、事前の知覚、更新率、客観的基準
表は横にスクロールできます →
| 情報 | 示した値 | 事前の知覚(平均) | 更新率 | 客観的基準 |
|---|---|---|---|---|
| 長期平均リターン(1973年以降) | 年9% | 8.37% | 0.51 | — |
| 過去12か月の DAX リターン(配当込み) | +9% | 4.76% | 0.39 | −0.073 |
| 過去12か月の構成企業の利益 | −20% | 3.95% | 0.30 | 0.004 |
| 現在のPER(長期平均) | 23倍(15倍) | 9.93倍 | 0.10 | −0.862 |
| 専門家予測(今後12か月) | +9% | 知らない 60% | 0.86 | — |
表1のとおり、5つの情報すべてで更新率はゼロと統計的に有意に異なった。公表されている情報で期待が動くこと自体が、すべての情報を織り込んでいるという完全情報の合理的期待とは合わない。過去12か月のリターンの更新率0.39に対し、過去のデータでの予測力は−0.073とほぼゼロ(わずかに負)だった。利益成長では0.30に対し0.004(有意でない)。PER では、過去のデータが−0.862と強い負の関係を示すのに、回答者の更新率は0.10と正だった。3つとも、更新率が基準と等しいという仮説は棄却された8。
大きさを比べるため、編集部が平均的な知覚ギャップに係数を掛けたのが図1である。論文が報告した処置効果そのものではない試算だが、向きと大きさの違いは読み取れる。
著者らは、直近のリターンと利益の情報への反応を過剰反応(外挿)と解釈し、PER への反応は単に過剰なのではなく向きが逆だと述べる。情報の不完全さや雑音だけを考える理論では、予測力のない情報への強い反応も、PER への逆向きの反応も説明しにくい。そこで著者らは、回答者が頭の中に持つ「市場の仕組みの見方(主観モデル)」が客観的な関係とずれていると考える。裏づけとして、情報を示す前の知覚と期待の関係を回帰すると、傾きは過去リターン0.42、利益成長0.39、PER 0.10で、更新率とよく似ていた。一方、性別・年齢・学歴・所得などの属性で事前の期待を説明しようとしても、決定係数は1%未満だった9。
研究が示した結果②:何を重視するかで、同じ情報への反応が変わる
2020年12月の2回目の調査では、情報を示す前に「株式リターンを予想するのに最も役立つ情報は何か」を5つの候補から順位づけしてもらった。最も多く1位に選ばれたのは専門家予測だったが、どの情報にも1位に選ぶ人がまとまった割合でおり、ばらつきが大きかった10。
そのうえで、利益が約45%減ったという情報を示すと、利益成長を1位に選んだ人は、それ以外の受け手より12か月先の期待リターンを3.36%ポイント(5%水準)、5年先を3.87%ポイント(10%水準)大きく下げた。PER が平均を大きく上回るという定性的な情報では、PER を1位に選んだ人が12か月先を2.81%ポイント、5年先を4.86%ポイント(ともに5%水準)大きく下げている。著者らは、PER を重視し、割高という情報に期待を下げる方向で反応する層が回答者の20%弱いると述べる。ただし順位づけ自体は無作為に割り付けたものではなく、この差は属性を統制した推定で、因果とは限らないと論文は明記している11。
情報の入手のしやすさも聞いている。回答者は過去のリターンを最も手に入りやすい情報と感じ、PER を最も手に入りにくいと感じていた。著者らは、専門家予測を提供すれば過度な楽観・悲観を和らげうる一方、PER の情報を増やすとかえって期待の振れを強めうるとして、情報を増やすことが常に望ましいとは限らないと示唆する(いずれも可能性としての記述)12。
研究が示した結果③:動いた期待は、仮想の株式比率を大きく動かした
最後の段階で、著者らは期待と株式比率の関係を2通りに推定した。単純な回帰(OLS)では、期待超過リターンが1%ポイント上がると株式比率は1.21%ポイント上がる。これに対し、無作為に割り付けた情報を操作変数にして、情報で動いた期待の部分だけを使う推定(2SLS)では2.70%ポイントだった。前者からはγ=18.71、後者からはγ=8.41が導かれ、著者らが先行研究に基づき妥当とする3〜10に収まるのは後者だけである13。
同じ回答者・同じ質問で推定方法だけを変えて差が出たことに、著者らは意味を見いだす。米国の運用会社の顧客の口座データを使った先行研究では、感応度は0.69にとどまり、γは36.23と非現実的に大きかった。期待は配分に反映されるが反応が小さすぎる、という長年の謎である14。著者らは、通常の推定で感応度が小さく出る要因になりうるものとして、調査で測った期待に含まれる測定誤差と、期待と配分が互いに影響し合う内生性を挙げる。内生性による偏りの向きは上下どちらもありうる、とも説明している。仮想の配分には売買の手間も税もないので、本研究の2つの推定の差は取引の摩擦では説明できない。
研究の対象・方法と限界:仮想の配分、2020年のドイツ
第一に、株式比率は1万ユーロの仮想の配分で、報酬による動機づけもない。著者ら自身、実際の口座データでも同じ感応度になるかは今後の課題としている。2SLS の定数項は正で、期待超過リターンがゼロでも一定の株式を持つ計算になるが、著者らはその説明を試みていない15。第二に、実験は2020年秋のドイツで1回ずつ行われたもので、更新率が時期や相場の局面で変わるかは扱えない。第三に、知覚ギャップの測定誤差のために更新率は小さめに出ている可能性がある、と著者らは注記している。回答者が実験者の意図を忖度した可能性(実験者需要効果)では結果を説明しにくい、とも論じている16。
標本は株式を持たない人を含む家計の代表標本で、2回目の調査で株式市場に投資していたのは47%だった。金融資産に占める株式等(個別株・投資信託・ETF)の比率は、資産分布の最下位五分位で約10%、最上位五分位で約35%と差がある。株式を持つ人も、平均的には市場の数字をよく知っていたわけではない17。富裕層の顧客にそのまま当てはまるとは限らない。
実際の売買で確かめた研究としては、ドイツのネット証券の顧客約2,000人に「年次の株式リターンの自己相関はほぼゼロ」という情報を無作為に示した実験がある。情報で市場の見方が持続的に変わり、もともと平均回帰を信じていた人のうち情報を受けた群は、4〜5か月後のコロナ禍の急落局面で株式の買い増しが小さかった18。仮想の配分という限界を補う結果である。
大手町プレップの考察:「何 を伝えたか」より「顧 客が何を思っていたか」
以下は研究結果を踏まえた編集部の見方で、研究が直接検証したものではない。
第一に、同じ資料を見せても、顧客の期待がどれだけ動くかは、事前にどう思っていたか(知覚ギャップ)と、何を重視しているか(主観モデル)で大きく変わる。研究では属性が期待をほとんど説明しなかった。年齢や資産額で顧客を分けるだけでは、情報への反応は読めない可能性がある。
第二に、回答者が最も手に入りやすいと感じていた直近の成績は、研究が用いた過去のデータでは翌年のリターンをほとんど予測しないのに、期待をはっきり動かした。面談資料の1ページ目に直近1年の騰落率を置く慣行は、意図せず期待を押し上げ、配分の議論の出発点を変えているかもしれない。逆に、割高さを示すつもりで PER の数字だけを示しても、平均的な顧客には「警告」として伝わらない可能性がある。PER を重視する一部の層は下方に反応しており、数字の意味(過去の平均との比較が将来のリターンについて何を示してきたか)まで説明するかどうかで、受け止め方が分かれると考えられる(仮説)。
第三に、期待が動いたときの配分の動きは、観察データが示すより大きいかもしれない。期待が大きく動いた直後に株式比率を変えると、過剰反応を配分に移すことになりうる。
日本の実務への応用:情報提供と資産配分の手順を点検する
日本では、金融庁の「顧客本位の業務運営に関する原則」(2024年9月改訂)が、重要な情報を顧客の取引経験や金融知識を考慮して明確・平易に、誤解を招かない内容で提供し、重要性に応じて区別して強調するよう求めている19。同じ原則は、顧客の意向を確認したうえで、ライフプランなどを踏まえた目標資産額と、安全資産と投資性資産の適切な割合を検討してから具体的な商品を提案するよう求める20。研究を重ねると、分かりやすい情報が期待を過剰に動かしうること、資産の割合を決める段階で直前の情報に引きずられた期待が使われうることが論点になる。
日本の家計に同じ更新率や感応度が当てはまるかは分からない。投資の経験、主な情報源、販売チャネルがドイツの調査とは異なるうえ、研究は株価指数への期待を聞いたもので、投資信託の個別の商品選択や担当者経由の判断を扱っていない。日本で使うときは、数値ではなく「事前の見方を測ってから情報を出す」という手順を借りるのが現実的だと考える。ウェルスマネジメントの適合性原則の実務で求められる顧客の把握に、「市場について今どう思っているか」を加える発想である。
運用方針を文書で定める顧客なら、投資方針書
学習用の設例:直近の上昇を伝えたとき、配分はどれだけ動きうるか
学習用の設例(架空)
- 顧客の金融資産は3,000万円、現在の株式比率は40%
- 顧客は「直近1年の株価指数の上昇率は5%くらい」と思っていたが、実際は20%だった(知覚ギャップ15%ポイント)
- 期待の改訂には研究の平均的な更新率0.39を、配分の変化には研究の感応度(OLS 1.21、2SLS 2.70)を機械的に当てはめる。個々の顧客の反応を予測するものではない
- 税・手数料・売買の手間、株式比率の上限は考えない
知覚ギャップ15%ポイントに更新率0.39を掛けると、期待リターンは5.85%ポイント上がる。2SLS の感応度2.70を当てはめると、株式比率は15.8%ポイント上がり、40%から55.8%になる。金額では約474万円が株式に移る計算である。OLS の感応度なら約212万円にとどまる。一方、過去のデータでの予測力(−0.073)で期待を改めるなら、期待はむしろ−1.10%ポイント下がり、株式比率は−3.0%ポイントの変化になる。
表2 設例:直近の上昇を伝えたとき、株式比率はどれだけ動きうるか
表は横にスクロールできます →
| 知覚ギャップ | 期待の改訂 | 株式比率 OLS | 株式比率 2SLS | 基準で改めた場合 |
|---|---|---|---|---|
| 5%ポイント | +1.95 | +2.4(71万円) | +5.3(158万円) | −1.0 |
| 10%ポイント | +3.90 | +4.7(142万円) | +10.5(316万円) | −2.0 |
| 15%ポイント | +5.85 | +7.1(212万円) | +15.8(474万円) | −3.0 |
| 20%ポイント | +7.80 | +9.4(283万円) | +21.1(632万円) | −3.9 |
表2で読み取るべきは数字の精度ではなく、情報1つで動きうる配分の幅である。同じ「+20%」でも、事前にほぼ正しく知っていた顧客と大きく外していた顧客では、動く金額が数倍違う。
明日から使える確認項目
- 面談で市場の数字を示す前に、顧客に「直近1年の株価指数の騰落率はどのくらいだと思うか」「今後1年の株式のリターンはどのくらいと見るか」を聞き、記録する。示した後の見方の変化と合わせて残す
- 資料の最初のページが直近の騰落率になっていないかを確かめる。直近の成績を示す場合は、同じページに長期平均と、直近1年のリターンだけでは翌年のリターンを予測しにくいこと(研究が用いた1973年以降のドイツのデータでは予測力がほぼゼロ)を並べる(編集部の仮の提案。研究で検証されていない)
- PER など割高さの指標を示すときは、数字だけでなく「過去、割高な時期のその後のリターンはどうだったか」という意味まで説明したかを確認する
- 面談の中で期待が大きく動いた顧客には、その場で株式比率を変えず、目標配分と見直しの条件(IPS や提案書の資産配分)に照らしてから判断する手順にする。たとえば「目標比率から一定幅以上動かす提案は、次回の面談で再確認する」といった社内の目安を決める(目安の幅は編集部の仮の例で、研究で検証されていない)
- 顧客が何を重視して市場を見ているか(直近の成績、企業の利益、割高さ、専門家の見通し)を聞き、同じ情報への反応が顧客ごとに違いうる前提で説明の順序を変える
よくある質問
専門家の予測を見せれば、顧客の期待は正しくなるのですか。
研究では専門家予測の更新率の推定値が5つの情報の中で最も大きく
まとめ
ドイツの家計を対象にした無作為化実験は、直近のリターンや利益の情報に期待が過去のデータの予測力以上に反応し、PER の高さは平均的には警告として働かなかったことを示した。情報で動いた期待だけを使うと、仮想の株式比率は期待の変化に標準的な理論と整合する大きさで反応した。仮想の配分、2020年のドイツという条件があり、日本の顧客に数値を当てはめることはできない。それでも、顧客の事前の見方を測ってから情報を出し、期待が動いた直後の配分変更に手順を設けるという点検は、日本の資産配分の提案にも持ち込める。
脚注
- R1(著者公開版、2025年11月20日付)PDF p.1(表紙の日付・所属・謝辞。謝辞に ECB-FRBNY Conference on Survey Expectations 2021 等)。初出は ECB の会議資料(発表スライドの日付 2021年11月12日)、論文の初版は SSRN 4029090(Chicago Booth Research Paper No. 22-08、Date Written 2022年2月7日。Internet Archive の 2022年3月7日の保存版で確認)。NBER Working Paper 34489 は2025年11月発行(NBER の書誌ページ)。R2(Review of Financial Studies 39巻10号 pp.3240-3275)は Crossref の書誌記録(2026年10月25日取得)で掲載を確認。掲載誌版の本文は購読制のため確認していない。実験の実施は2020年9〜12月(R6。登録は2022年6月の事後登録)。↩
- R1 PDF p.10〜11(情報の前に知覚と期待を聞く設計)、p.14〜15(式6。処置×知覚ギャップの係数を「更新率」と定義。ギャップは示した値−事前の知覚)。↩
- R1 PDF p.5〜6(PER とその後のリターンの負の関係を実証研究・資産価格モデルの通説とする記述)、p.19(1973年以降の DAX のリターン予測回帰を客観的基準とする)。↩
- R1 PDF p.35〜36(Merton モデル:株式比率=(期待リターン−無リスク金利)÷(γ×分散)。感応度は 1/(γ×分散) に当たり、γを逆算できる)。↩
- R1 PDF p.9〜10(第1波の6つの処置の文言。すべて事実に基づく情報で長さをそろえた。専門家予測は配当利回りによる予測回帰〔1973年1月〜2020年8月〕から作成)。↩
- R1 PDF p.10〜12(事前は点予測、事後は10区間の確率分布。ポートフォリオは1万ユーロを12か月、DAX と固定1%の無リスク資産に配分する仮想の質問で、報酬による動機づけはない)。p.11(DAX はリターン指数で、変化率は値上がりと配当を含むトータルリターンを表し、回答者にもそれを伝えた)。↩
- R1 PDF p.49 表A.1(2020年9月の調査。事前の知覚の平均。専門家予測は「知らない」0.60)。↩
- R1 PDF p.18 表1 列4(社会属性と処置固定効果を統制。N=3,275)、p.17(すべての更新率がゼロと有意に異なり、完全情報の合理的期待と合わないとの記述)、p.20 表2(客観的基準と検定。t 値は6.19・3.83・4.99。表2 は更新率を3桁で0.392・0.100・0.305と示す。本稿は表1 の2桁の値を使った)。系列相関を考慮したブロック・ブートストラップの p 値は0.000・0.046・0.004(p.20)。↩
- R1 PDF p.20〜21(過剰反応と逆向きの反応の解釈、粘着情報・ノイズ情報・客観モデルでの説明の難しさ)、p.22〜23 表3(事前の知覚と事前の期待の傾き)、p.50 A.4(属性による回帰の決定係数は1%未満。有意なのは大卒以上のみで、期待が約1%ポイント低い)。↩
- R1 PDF p.27〜28(2020年12月の調査。5つの情報の順位づけ。図3)。第2波の情報は過去5年の DAX 約+16%、過去12か月の利益 約−45%、PER が平均を大きく上回るという定性的な情報(p.84)。↩
- R1 PDF p.32 表4(係数は12か月先の期待リターン−3.36・5年先−3.87、配当成長12か月−5.22・5年−6.17〔1%水準〕。PER は12か月−2.81・5年−4.86、配当成長は有意でない。過去5年リターンは有意な差なし)、p.29〜30(本文は丸めた値)、p.29 注19(属性を統制した推定で因果とは限らない)、p.6(PER を重視する層は20%弱)。↩
- R1 PDF p.33〜34(入手コストの知覚と図4。専門家予測の提供・PER 情報の提供についての著者の示唆は “could potentially” の留保付き)。↩
- R1 PDF p.37 表5(列3 の OLS と列6 の 2SLS。社会属性・リスク許容度・主観的な分散を統制。列6 の第1段階の F 値は20、N=3,390)、p.36〜38(γの計算。ドイツの1年リターンの標準偏差0.21)。丸めた係数から編集部が再計算するとγは18.74・8.40で、論文の値との差は丸めによると考えられる。妥当なγの範囲3〜10は R1 p.37 が R3 を引いて示すもの。↩
- R1 PDF p.36〜37(R3 の感応度0.69とγ36.23の引用)、p.38〜39(測定誤差と内生性を感応度が小さく出る潜在的な要因とする記述。内生性による偏りは上下どちらの向きもありうる(p.38)。摩擦がないことの論法)。R3 の2019年3月の作業論文の要旨(信念は配分に反映されるが、感応度は平均で小さい)も確認した。↩
- R1 PDF p.12(報酬による動機づけなし)、p.39(実際の口座データでの再現は今後の課題。定数項の説明は試みない)、p.37 表5 列6(定数0.30)。↩
- R1 PDF p.20 注14(測定誤差による下方の偏り)、p.67〜68 付録A.10(時期・場所の限定、更新率の時間変化は扱えない)、p.68〜69(実験者需要効果についての議論)。↩
- R1 PDF p.85 付録B.5.2(2020年12月の調査で株式市場に投資していたのは47%。個別株・投資信託・ETF の比率は、金融資産に占める割合で資産分布の最下位五分位が約10%、最上位五分位が約35%)、p.86 B.5.4(株式保有者も平均的にはよく知らない)。↩
- R4(ECONtribute Discussion Paper No. 128、2021年11月)PDF p.2(要旨)、p.4〜6(序論。約2,000人のネット証券顧客、情報提供の4〜5か月後のコロナ禍の急落時の購入、対照群で見た反応の差の60〜100%を埋めたとの記述)。掲載誌版(Review of Financial Studies 39巻6号、2024年オンライン)の本文は確認していない。↩
- R5(金融庁「顧客本位の業務運営に関する原則」2024年9月26日改訂)p.6 原則5(注3)・(注5)。↩
- R5 p.7 原則6(注1)。↩
- R1 PDF p.10(専門家予測の作り方)、p.18 表1 列4(専門家予測の更新率)、p.21(専門家予測は回答者の主観的な分布の不確実性を下げる傾向。利益の悪化情報は散らばりを広げる)、p.34(提供の効果は可能性としての記述)。↩
参考文献(2 026年10月確認)
- R1 Beutel, J. and M. Weber (2025), “Beliefs and Portfolios: Causal Evidence,” NBER Working Paper No. 34489. DOI: 10.3386/w34489. 参照した版:著者公開版(2025年11月20日付、Johannes Beutel の研究ページで公開)。初版は SSRN 4029090(2022年2月)。査読:未査読(WP)。後に R2 として掲載。 sites.google.com (参照箇所:PDF p.1〜41(本文)、p.47〜50・p.67〜69・p.84〜87(付録)。ページは PDF の物理ページ。脚注1〜17・21の根拠。閲覧日:2026年10月)
- R2 Beutel, J. and M. Weber (2026), “Beliefs and Portfolios: Causal Evidence,” Review of Financial Studies 39(10), pp.3240-3275. DOI: 10.1093/rfs/hhag011. 参照した版:書誌(Crossref 登録)。本文は未確認。査読:済。 doi.org (参照箇所:掲載誌・巻号・ページ。脚注1の根拠。閲覧日:2026年10月)
- R3 Giglio, S., M. Maggiori, J. Stroebel and S. Utkus (2021), “Five Facts about Beliefs and Portfolios,” American Economic Review 111(5), pp.1481-1522. DOI: 10.1257/aer.20200243. 参照した版:2019年3月の作業論文(要旨)と、R1 による引用。査読:済。 doi.org (参照箇所:2019年3月版 p.1(要旨)、R1 p.36〜37 の引用。脚注13・14の根拠。閲覧日:2026年10月)
- R4 Laudenbach, C., A. Weber and J. Wohlfart (2021), “Beliefs About the Stock Market and Investment Choices: Evidence from a Field Experiment,” ECONtribute Discussion Paper No. 128. 掲載誌版:Laudenbach, C., A. Weber, R. Weber and J. Wohlfart, Review of Financial Studies 39(6), pp.1654-1699, DOI: 10.1093/rfs/hhae063(題名に Survey and a Field Experiment を含む)。参照した版:ECONtribute DP(2021年11月)。査読:掲載誌版は済(本文未確認)。 epflicht.ulb.uni-bonn.de (参照箇所:PDF p.2(要旨)、p.4〜6(序論)。脚注18の根拠。閲覧日:2026年10月)
- R5 金融庁(2024)「顧客本位の業務運営に関する原則」(2017年3月30日策定、2021年1月15日・2024年9月26日改訂)。 fsa.go.jp (参照箇所:p.6 原則5、p.7 原則6。脚注19・20の根拠。閲覧日:2026年10月)
- R6 Beutel, J. and M. Weber, “Beliefs and Portfolios: Causal Evidence,” AEA RCT Registry, AEARCTR-0009576. DOI: 10.1257/rct.9576-1.0. 参照した版:登録ページ(初回登録 2022年6月12日)。 socialscienceregistry.org (参照箇所:実施期間(2020年9月1日〜12月31日)・登録日。脚注1の根拠。閲覧日:2026年10月)
※本記事は教育目的の一般的な解説であり、投資助言・法務・税務の助言ではありません。研究結果は各論文の対象・期間・方法の範囲で得られたもので、日本の個別企業・案件にそのまま当てはまるとは限りません。設例は学習用の架空の数値です。アイキャッチ画像は生成AIによるイメージです。