この記事で分かること
- ローン定数(K%)の定義と、元利均等・期限一括(利息のみ)での計算方法
- 取得時キャップレートとKの比較で、レバレッジの有利・不利を判断する考え方と限界
- 借入10,000の物件で、K・DSCR・自己資本利回りを整数設例で計算
- DSCR条件から借入可能額を逆算する方法と、Excel(PMT関数)での組み方
30秒で分かる定義
ローン定数(K%、Mortgage Constant/Loan Constant)とは、年間の元利返済額(元本返済+利息)を当初の借入元本で割った比率です。ローンコンスタント、モーゲージ・コンスタント、デットコンスタントとも呼びます。読み方は「ろーんていすう」です。
借入元本が100なら、年間の元利返済が4.8であればK=4.8%です。金利が同じでも、返済期間が短く元本を多く返すほどKは大きくなります。
なぜ実務で重要なのか
不動産ファイナンスの銀行・ノンバンクの融資担当、REPE(不動産プライベートエクイティ)や開発会社の投資担当が、借入条件を比べるときに使います。金利だけでは返済期間や元本返済の重さが分からないため、キャッシュフローに直結するKで比べます。物件の収益力を示すキャップレートとの大小は、借入によるレバレッジの効き方を見る目安です。
返済余力を測るDSCR
計算式(ま たは仕組み)
元利均等返済・月払いの場合、年利をr、返済年数をnとして次の式になります。
元利均等・月払い:K = 12 × (r/12) ÷ {1 − (1 + r/12)−12n}
利息のみ(元本返済なし):K = r(満期前の各年。満期年の元本一括返済は含めない)
期限一括ローンのK=rは満期前の通常の年について成り立つ式で、満期年の元本の一括返済(借換えを前提とすることが多い)は別に扱います。Kは期末の借入残高ではなく、当初の借入元本を分母にします。期限一括で元本の一部だけを約定返済する場合は、K = 金利 + 年間の約定元本返済率(簡便式)です。
取得時キャップレートは、NOI ÷ 物件価格です。自己資本=物件価格−借入とし、取得費用・税・資本的支出を考えない単純化のもとで、0<LTV<100%なら、自己資本利回り(元利返済後のCF ÷ 自己資本)=(キャップレート − LTV × K)÷(1 − LTV)となり、自己資本利回りとキャップレートの大小は、キャップレートとKの大小で決まります。
| 比較 | 自己資本の利回り(借入後キャッシュフロー÷自己資本) | 意味 |
|---|---|---|
| キャップレート > K | キャップレートより高い | ポジティブ・レバレッジ |
| キャップレート = K | キャップレートと同じ | 中立 |
| キャップレート < K | キャップレートより低い | ネガティブ・レバレッジ |
整数設例で確認する
設例(架空数値)。単位は百万円。物件価格10,000、NOI 450(取得時キャップレート4.5%)、LTV 60%(借入6,000、自己資本4,000)とします。返済は月払いで、元利均等は25年とします。
ケースA(金利1.5%・25年・元利均等):K = 4.799%(月払い12回分の合計)。年間元利返済 = 6,000 × 4.799% = 288。借入後CF = 450 − 288 = 162。自己資本利回り = 162 ÷ 4,000 = 4.05%。DSCR = 450 ÷ 288 = 1.56倍。K 4.799% > キャップレート 4.5% なので、自己資本利回りは4.05%とキャップレートを下回ります。
ケースB(金利1.5%・元本返済なし):K = 1.5%。返済 = 6,000 × 1.5% = 90。借入後CF = 450 − 90 = 360。自己資本利回り = 360 ÷ 4,000 = 9.00%。DSCR = 450 ÷ 90 = 5.00倍。
ケースC(金利2.5%・25年・元利均等):K = 5.383%、返済 = 323、借入後CF = 127、自己資本利回り = 3.17%(丸め前の返済額323.004で計算:126.996 ÷ 4,000 = 3.1749%)、DSCR = 450 ÷ 323 = 1.39倍。
| ケース | K | 年間返済 | 借入後CF | 自己資本利回り | DSCR |
|---|---|---|---|---|---|
| A 1.5%・25年均等 | 4.799% | 288 | 162 | 4.05% | 1.56倍 |
| B 1.5%・元本返済なし | 1.500% | 90 | 360 | 9.00% | 5.00倍 |
| C 2.5%・25年均等 | 5.383% | 323 | 127 | 3.17% | 1.39倍 |
注意点として、自己資本利回りはCFを分子としており、ケースA・Cでは返済元本の分だけ借入残高が減って自己資本が積み上がる効果を含みません。キャップレートとKの比較は、あくまで毎年のキャッシュ利回りの比較です。
融資審査への影響
融資審査では、最低DSCR(例えば1.40倍)を条件に借入可能額を逆算します。
設例では、NOI 450、最低DSCR 1.40倍、K 4.799%(ケースA)とすると、借入可能額 = 450 ÷ (1.40 × 4.799%) = 6,697(LTVで見ると6,697 ÷ 10,000 = 66.97%)です。検算:6,697 × 4.799% = 321.4、450 ÷ 321.4 = 1.40倍。LTV上限が60%(借入6,000)なら、この案件ではLTVが先に効きます。償却期間を長くするとKは下がり、DSCR条件での借入可能額は増えますが、元本の返済が遅くなる分、満期時の残高は大きくなります。
財務モデル・Excelでの使い方
- Kの計算:金利(年率)、返済年数、年間返済回数を入力セルに置き、
=-PMT(金利/12, 年数*12, 1)*12でKを出す。PMTの現在価値に1を入れると、元本1当たりの月次返済が得られ、12倍すると年間のKになる。 - 年間返済と判定:
=借入元本*K、=NOI/年間返済(DSCR)、=(NOI-年間返済)/自己資本(自己資本利回り)を並べ、=K-キャップレートの符号でレバレッジ判定を表示する。 - 感応度:金利1〜3%、返済年数20〜30年の二次元データテーブルでKを一覧にする(例:金利2%・20年はK=6.071%、30年は4.435%)。
- 変動金利・期限一括:変動金利の借入は、金利スワップでヘッジした部分(対象元本・期間)をスワップ後の固定相当金利に借入スプレッドを加えた金利で計算し、未ヘッジの部分は変動金利のシナリオ(金利上昇ケースを含む)で計算する。期限一括なら、約定元本の返済率を別セルで加える。
この用語をExcelで
金利と返済期間からローン定数を計算し、DSCR・借入可能額・自己資本利回りを同じシートで連動させられるようになる。
実務家が確認するポイントとよくある誤解
誤解1:「ローン定数は金利のことだ」→ 元本返済を含む比率です。同じ金利1.5%でも、元本返済なしならK=1.5%、25年の元利均等なら4.799%です。
誤解2:「K>キャップレートなら悪い投資だ」→ 単年度のキャッシュ利回りの比較です。元本返済は自己資本を積み上げるため、IRRの判断は売却価格や保有期間を含めて行います。
確認ポイント:KはDSCRと同じ元本を分母にしているか(当初元本か期末残高か)、返済が月払いか年払いか(同じ金利1.5%・25年で、年払いのKは4.826%、月払いは4.799%)を確認します。
日本実務での扱い
(2026年11月時点)日本の不動産ファイナンスでは、一般に、元利均等返済のほか、期限一括返済や元本の一部のみ約定返済する融資が使われます(J-REITや私募ファンドの借入では期限一括が多いとされます)。期限一括型でKを使うときは、約定返済率を加えて計算するか、返済額を直接入力して比べます。金利は変動・固定やスワップの有無で実質的な水準が変わるため、DSCRの審査では実際に支払う金利で計算します。
金利水準の市場全体の動きは、日本銀行が公表する貸出約定平均金利などの統計で確認できます[1]。金利が動けばKも動くため、融資条件の比較には基準日を揃えます。
面接・モデルテストで問われるポイント
Q:ローン定数とキャップレートを比べる意味を説明してください。
「ローン定数は元本1当たりの年間の元利返済額で、キャップレートは物件価格1当たりのNOIです。キャップレートがKを上回れば、借入をすると毎年のキャッシュ利回りが高まります。逆なら、借入でキャッシュ利回りが下がります。ただし元本返済による自己資本の積み上がりは含まないので、最終判断はIRRで行います。」
深掘りの観点:DSCR=キャップレート÷(LTV×K)の関係、償却期間とKの関係、金利上昇時の感応度。
よくある質問(F AQ)
Q. 元本返済のないローンのローン定数は?
A. 金利と同じです。借入6,000、金利1.5%なら年間返済は90で、K=1.5%です。
Q. ローン定数はいつの元本で計算しますか。
A. 当初の借入元本を分母にするのが一般的です。残高が減った後の返済額を残高で割ると、数値が変わります。
出典・参考(2 026-11確認)
- 日本銀行「貸出約定平均金利」(統計ページ). https://www.boj.or.jp/statistics/dl/loan/yaku/index.htm(2026年11月参照)
※本記事は教育目的の一般的な解説であり、法務・税務・投資助言ではありません。設例は理解のための架空数値です。