この記事で分かること

  • MIRR(修正内部収益率)=IRRの「非現実的な再投資仮定」を修正した収益率指標であること
  • IRRが複数解を持ちうる問題も、MIRRなら単一の解になる理由
  • 整数設例でIRRとMIRRを両方計算し、なぜMIRRの方が保守的な数値になるかを確認する
  • Excelでの実装方法と、PE・モデルテストでの問われ方

30秒で分かる定義

MIRR(修正内部収益率、Modified Internal Rate of Return、読み方:エムアイアールアール)とは、IRRの計算に組み込まれている「途中で得たキャッシュフローをIRRと同じ利回りで再投資できる」という仮定を、資本コストなど実務的な再投資利回りに置き換えて計算し直した収益率です。修正IRRとも呼ばれます。IRRが高い案件ほど非現実的な再投資の前提を含むため、MIRRはより保守的で現実に即した収益率を示します。また、キャッシュフローの符号が複数回入れ替わりIRRが複数解を持つ問題も、MIRRでは必ず単一の解になります。

なぜ実務で重要なのか

PEファンド・投資銀行のモデルテストや投資委員会では、IRRが極端に高い案件(短期間で大きく資金を回収する案件など)について、その高いIRRをそのまま鵜呑みにせず、MIRRで再計算した数値と比較検討することがあります。経営企画・FP&Aの稟議では、IRRの落とし穴(IRRの落とし穴で詳述)を補正する指標として、社内の資本コストを再投資利回りに使ったMIRRを併記する運用が推奨される場合があります。

計算式(または仕組み)

MIRR =(将来キャッシュフローを再投資利回りで複利運用した終価 ÷ 初期投資額の現在価値)^(1/n) - 1

IRRは「NPV=0となる割引率」として、途中のキャッシュフローがIRRそのもので再投資されると暗黙に仮定します。MIRRはこれを次の2つの利回りに分離します。

  • 再投資利回り:将来のプラスのキャッシュフローを最終年度まで複利運用する際に使う利回り(通常は資本コストやWACC)
  • ファイナンス利回り:マイナスのキャッシュフローを現在価値に割り引く際に使う利回り(通常は借入コスト)

初期投資のみがマイナスで残りがすべてプラスの単純なケースでは、ファイナンス利回りは使わず、終価を初期投資額で割ってn乗根を取るだけで計算できます。

整数設例で確認する

設例(架空数値、単位:百万円)。初期投資100、1年目に40、2年目に100のキャッシュフローを生む2年間のプロジェクトを考えます。

まずIRRを試算値で求めます。r=22%で計算すると、40÷1.22=32.79、100÷1.22²=100÷1.4884=67.19、合計99.98≈100となり、IRR≈22%です(ExcelではIRR関数で正確に算出)。

次にMIRRを、再投資利回り10%(自社の資本コストを想定)で計算します。1年目の40は2年目まで10%で1期分再投資されるので 40×1.10=44、これに2年目の100を足すと、2年目末の終価は 44+100=144です。MIRR=(144÷100)^(1/2)-1=1.2-1=20%

指標前提利回り結果
IRR再投資=22%(自己参照)約22%
MIRR再投資=10%(資本コスト)20%

IRR(約22%)は「1年目に得た40を22%で再投資できる」という前提を含みますが、実際に会社が使える再投資先の利回りは資本コスト(10%)程度であることが普通です。より現実的な前提に置き換えたMIRR(20%)の方が、この案件の「本当の年率リターン」に近いと解釈できます。

投資判断への影響

MIRRはIRRを置き換えるというより、前提の妥当性を点検する補完指標として使うのが実務的です。IRRだけで判定すると楽観バイアスにより採択されやすい案件でも、MIRRで計算し直すとハードルレートを下回ることがあります。稟議書にIRRとMIRRを併記すれば、決裁者がより正確にリスクを把握できます。

財務モデル・Excelでの使い方

ExcelにはIRR用とMIRR用でそれぞれ専用の関数があります。

  • =IRR(キャッシュフロー範囲) でIRRを算出
  • =MIRR(キャッシュフロー範囲, ファイナンス利回り, 再投資利回り) でMIRRを直接算出できる(手計算のように終価を別途計算する必要がない)
  • 再投資利回りにはWACCや社内ハードルレートを、ファイナンス利回りには借入金利や短期資金調達コストを入力するのが一般的

符号が複数回入れ替わる案件でもMIRR関数は常に単一の解を返します。

この用語をExcelで「組める」状態にする

IRR関数とMIRR関数を併記した投資評価シートを作り、再投資利回りの前提を変えたときのリターンの感応度を確認できるようになる。

コーポレートファイナンス教材で実装する →

実務家が確認するポイントとよくある誤解

誤解1:「MIRRの方が常に正確な数値」→ MIRRの精度は再投資利回りの前提次第です。前提が実態とかけ離れていれば、MIRRもIRRと同じく誤った結論を導きます。

誤解2:「MIRRはIRRより必ず低い数値になる」→ 再投資利回りがIRRより低ければMIRRは低くなりますが、逆に高く設定すればMIRRの方が高くなります。大小関係は前提次第です。

確認ポイント:再投資利回りとファイナンス利回りが、モデル全体の割引率(WACC等)の前提と整合しているかを確認します。

日本実務での扱い(2026年7月時点)

日本企業の稟議書や中期経営計画の投資評価では、依然としてIRRとNPVが主流であり、MIRRを正式な決裁指標として要求する会社は多くありません。一方で、PEファンドの投資委員会やクロスボーダー案件のモデルテストでは、IRRの再投資仮定の妥当性を問う場面でMIRRの理解が前提になっていることが増えています。

面接・モデルテストで問われるポイント

Q:IRRとMIRRの違いを、再投資の仮定に触れて説明してください。
「IRRはNPVをゼロにする割引率であり、途中で得たキャッシュフローをIRRと同じ高い利回りで再投資できると暗黙に仮定します。この仮定はIRRが高いほど非現実的になります。MIRRは再投資利回りを資本コストなど現実的な水準に置き換えるため、より保守的でハードルレートとの比較に適した数値になります。」

深掘りでは「再投資利回りの選び方」「複数解になるIRRの具体例」が定番です。

よくある質問(FAQ)

Q. MIRRの再投資利回りには何を使えばよいですか?
A. 一般には自社のWACCや、現実的に達成可能な余剰資金の運用利回りを使います。プロジェクトのハードルレートと同じ値を使う実務も見られます。

Q. IRRとMIRRが大きく乖離する場合、何を疑うべきですか?
A. IRR自体が非常に高い水準になっていることが多く、キャッシュフロー予測が過度に楽観的でないかを点検します。

出典・参考(2026-07-25確認)

※本記事は教育目的の一般的な解説であり、法務・税務・投資助言ではありません。設例は理解のための架空数値です。