この記事で分かること

  • 内製・外注判断(メイク・オア・バイ)の定義と、損益分岐生産量の計算式
  • 整数設例による分岐点の検算
  • コストだけでは測れない戦略的判断要素
  • Excelでの損益分岐点分析・感応度分析の実装

30秒で分かる定義

内製・外注判断(メイク・オア・バイ、Make-or-Buy Decision、読み方:ないせいがいちゅうはんだん)とは、部品や機能を自社で製造・実施する(メイク)か、外部に委託する(バイ)かを、コストと戦略性の両面から比較評価する意思決定です。製造業の生産管理だけでなく、IT開発の内製・アウトソース判断や物流機能の自営・委託判断など、幅広い機能に応用される考え方です。定量的には、内製の固定費と外注の変動費構造の違いに着目した損益分岐点分析が基本フレームです。

なぜ実務で重要なのか

製造業の生産管理・調達部門は、専用設備投資が必要な部品について、内製化と外注化のコスト構造を比較して意思決定します。FP&A・経営企画は、この判断を社内投資評価の一環として、投資額と将来の生産数量見通しに基づいて評価します。PEは、投資先のバリューアップ策として、サプライチェーンの内製化・外注化の見直しによるコスト構造改革を検討します。近年は地政学リスクを踏まえたサプライチェーンの複線化・国内回帰の文脈でもこの判断が注目されています。

仕組み:損益分岐生産量

内製は初期投資による固定費が大きく変動費単価は低い、外注は固定費がほぼゼロで変動費(委託単価)が高い、という構造の違いがあります。両者の総コストが一致する生産数量が損益分岐点です。

損益分岐生産量(Q*) = 内製固定費 ÷(外注単価 − 内製変動費単価)

生産数量がQ*を上回れば内製が有利、下回れば外注が有利、という判定になります。

整数設例で確認する

設例(架空数値)。ある部品について、内製に必要な専用設備の年間償却費・専用人件費(固定費)が60百万円、内製時の変動費単価が800円/個、外部委託時の単価(外注単価)が1,200円/個だとします。

Q* = 60,000,000円 ÷(1,200円 − 800円)= 60,000,000 ÷ 400 = 150,000個

検算:Q*=150,000個の時点で、内製総コスト = 60,000,000+800×150,000 = 60,000,000+120,000,000 = 180,000,000円。外注総コスト = 1,200×150,000 = 180,000,000円。両者が一致することを確認できます。年間生産計画数量が150,000個を上回る見込みであれば内製が有利、下回る見込みであれば外注が有利という一次判断ができます。

投資判断への影響

内製化を選ぶ場合、損益分岐点を超える生産数量が継続的に見込めるかどうかが、専用設備投資のNPVを左右します。数量見通しが不確実な新製品では、初期段階は外注(変動費化)にリスクを寄せ、需要が定着してから内製に切り替えるという段階的なアプローチも実務では取られます。Price-Volume-Mix分析で数量の変動要因を分解しておくと、内製化判断の前提となる数量見通しの精度を高められます。

財務モデル・Excelでの使い方

損益分岐点分析は次のように実装します。

  • =固定費/(外注単価-内製変動費単価) で損益分岐生産量を自動計算する
  • 数量を横軸にした損益分岐点チャートを作成し、内製・外注それぞれの総コスト線が交わる点を視覚化する
  • データテーブル機能で、外注単価や内製変動費単価が変動した場合の分岐点の動きを感応度分析する

この用語をExcelで「組める」状態にする

損益分岐生産量を自動計算し、数量見通しの変化に応じた内製・外注判断の感応度分析ができるようになる。

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実務家が確認するポイントとよくある誤解

誤解1:「コストが安い方を選べばよい」→ 正しくは、技術・ノウハウの流出リスク、供給の安定性、品質管理の可否といった戦略的要素も同時に評価する必要があります。コスト最優先で外注化した結果、コア技術が競合に流出するリスクは定量化しにくいものの重大な論点です。

誤解2:「一度決めたら固定でよい」→ 正しくは、数量・為替・仕入価格の変動で損益分岐点は動くため、定期的な再評価が必要です。需要が想定より伸びれば内製化のメリットが増し、逆に縮小すれば外注化に切り替える判断もあり得ます。

日本実務での扱い

(2026年8月時点)日本の製造業では、地政学リスクや部品供給網の混乱を背景に、海外に外注していた工程の国内回帰や、調達先の複線化(一社依存からの脱却)を検討する動きが見られます。経済産業省はサプライチェーンの強靱化に関する施策を打ち出しており、内製化・国内生産回帰を後押しする補助制度が設けられることもあります。損益分岐点分析だけでなく、供給途絶リスクへの耐性という観点も、日本企業の実務では重視される傾向があります。

面接・モデルテストで問われるポイント

Q:損益分岐生産量の考え方を使って、内製と外注のどちらを推奨するか説明してください。
「内製の固定費を外注単価と内製変動費単価の差で割ることで、損益分岐生産量を算出できます。会社の年間生産計画数量がこの分岐点を上回る見込みであれば内製が有利、下回る見込みであれば外注が有利です。ただし、これは純粋なコスト比較であり、技術流出リスクや供給安定性といった定性的な要素も踏まえて最終判断すべきです。」

深掘りでは「数量見通しが不確実な場合にどう判断するか」が問われます。

よくある質問(FAQ)

Q. メイク・オア・バイは製造業限定の考え方ですか。
A. いいえ。IT開発の内製・アウトソース判断や物流機能の自営・委託判断など、固定費・変動費の構造が異なる選択肢を比較する場面であれば幅広く応用される考え方です。

Q. 損益分岐点だけで判断してよいのですか。
A. 定量分析はあくまで出発点です。技術・ノウハウの流出リスク、供給の安定性、品質管理の可否といった定性的な要素と合わせて総合的に判断するのが実務です。

出典・参考(2026-08確認)

※本記事は教育目的の一般的な解説であり、法務・税務・投資助言ではありません。設例は理解のための架空数値です。

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