この記事で分かること
- レーマン方式=金額区分ごとに逓減する料率を合算する算定方式であること
- 料率テーブルの代表例と、成功報酬の計算式
- 譲渡対価18億円を想定した整数設例(一律5%方式との比較つき)
- 算定基準額の定義次第で手数料が変わる実務上の注意点
30秒で分かる定義
レーマン方式とは、M&A仲介会社・FAが成功報酬を算定する際に、譲渡対価の金額を複数の区分(レンジ)に分け、区分ごとに逓減する料率を掛けて合算する算定方式です。読み方はそのまま「レーマン方式」、英語ではLehman Formulaと呼ばれます。名称は米国の投資銀行リーマン・ブラザーズが考案したとされる料率体系に由来するとされますが、現在の日本のM&A仲介業界で使われる料率テーブルは各社が独自に設定したものであり、当時の料率とは異なります。FA契約と成功報酬に明記される料率体系として、日本の中小企業M&A仲介では「5億円以下の部分に5%、5億円超10億円以下の部分に4%…」という階層構造が代表的です。
なぜ実務で重要なのか
M&A仲介・FA:契約書に料率テーブルを明記し、着手金・中間金・成功報酬の内訳を売り手・買い手に説明する基礎になります。経営者・売り手オーナー:譲渡対価が想定を上回るほど、追加で得られる手取り額から差し引かれる手数料の実額を事前に見積もる必要があります。財務モデル担当:M&A仲介・FAS・IBD・PEいずれの立場でも、M&Aモデルの取引コストの見積り行としてレーマン方式に基づく手数料額を計算します。
計算式
| 譲渡対価の区分 | 料率(代表例) |
|---|---|
| 5億円以下の部分 | 5% |
| 5億円超10億円以下の部分 | 4% |
| 10億円超50億円以下の部分 | 3% |
| 50億円超100億円以下の部分 | 2% |
| 100億円超の部分 | 1% |
所得税の累進課税と同様、各区分の金額に対して段階的に料率を乗じて合算する点がレーマン方式の特徴です。料率テーブルの区分幅・料率自体は法定されておらず、仲介会社ごとに異なります。
整数設例で確認する
設例(架空数値・単位:百万円)。譲渡対価(株式価値)が1,800(18億円)の案件を想定し、上記の料率テーブルを適用します。5億円以下の部分500×5%=25、5億円超10億円以下の部分500×4%=20、10億円超18億円以下の部分800×3%=24となり、合計成功報酬は25+20+24=69百万円です(500+500+800=1,800で区分の合計は対価と一致)。仮に一律5%を全額に適用する簡易方式で計算すると1,800×5%=90百万円となり、レーマン方式(69百万円)より21百万円(90−69)多く支払う計算になります。
案件プロセス上の位置付け
レーマン方式に基づく成功報酬は、通常M&Aプロセスのクロージング時に一括して(または着手金・中間金と合わせた形で)支払われます。契約締結の時点で料率テーブルと算定基準額(株式価値か、有利子負債を含む譲渡総額か)を明記しておかないと、クロージング直前に想定外の手数料額をめぐるトラブルになりやすいため、経営者は契約段階でこの2点を必ず確認すべきです。
財務モデル・Excelでの使い方
成功報酬シミュレーションは、IF関数の入れ子よりも区分ごとの按分計算で組むのが読みやすく検証もしやすい方法です。
- 各区分の上限額を別セルで管理:
=MIN(譲渡対価,区分上限)-区分下限で各区分に該当する金額を計算し、マイナスは0にクリップする - 各区分の金額×料率を合計:
=SUMPRODUCT(区分該当額,区分料率)で総額を一発計算する - 感応度分析:譲渡対価が想定レンジ(例:15〜20億円)で変動した場合の手数料総額をデータテーブルで一覧化し、経営者への説明資料にする
実務家が確認するポイントとよくある誤解
誤解1「レーマン方式は業界共通の統一料率だ」→ 正しくは、区分の金額幅・料率・最低手数料の有無は仲介会社ごとに異なり、法令で定められた統一料率はありません。契約前に必ず個別の料率テーブルを確認する必要があります。
誤解2「算定基準額は常に株式の譲渡対価そのものだ」→ 正しくは、一部の仲介会社は有利子負債を含めた「譲渡総額」や「移動総資産」を基準にレーマン方式を適用しており、この定義次第で手数料額は数割単位で変わります(設例参照)。
確認ポイント:算定基準額の定義、最低手数料(ミニマムフィー)の有無、着手金・中間金は成功報酬から控除されるか。
日本実務での扱い
(2026年8月時点)レーマン方式自体は法令で定義された算定方式ではなく、各M&A仲介会社・FAが契約で個別に定める民事上の合意です。中小企業庁は「中小M&Aガイドライン」等を通じて、手数料体系の説明責任や両手仲介モデルにおける利益相反に関する留意事項を示していますが、料率テーブル自体への規制はありません。中小企業のM&Aを促進する政策として事業承継・引継ぎ補助金があり、仲介手数料の一部が補助対象になる制度も存在するため、経営者は補助金の対象経費の範囲も併せて確認する実務が広がっています。
面接・モデルテストで問われるポイント
Q:レーマン方式による成功報酬の計算方法を説明してください。
「譲渡対価を複数の金額区分に分割し、区分ごとに逓減する料率(例:5億円以下5%、5億円超10億円以下4%…)を掛けて、各区分の金額を合算して算出します。所得税の累進課税と似た『段階的な料率適用』が特徴で、一律の料率を全額に掛ける方式より手数料が抑えられる傾向があります。」
深掘りでは「算定基準額が株式価値と譲渡総額でなぜ結果が変わるのか」「着手金・中間金と成功報酬の関係」が問われます。
よくある質問(FAQ)
Q. レーマン方式の最低手数料(ミニマムフィー)とは何ですか?
A. 譲渡対価が小さい案件でも仲介会社が採算を確保するために設定する下限額です。計算上のレーマン方式の金額がこの下限を下回る場合、下限額が適用されます。
Q. 買い手側にも成功報酬は発生しますか?
A. 仲介会社が売り手・買い手双方から手数料を受け取る両手仲介の場合は買い手側にも発生します。FA(片手取引)の場合は、依頼した側のみが手数料を負担するのが基本です。
出典・参考(2026-08-30確認)
- 中小企業庁「中小M&Aガイドライン」等関連公表資料 https://www.chusho.meti.go.jp/
- 経済産業省 https://www.meti.go.jp/
- 国税庁 https://www.nta.go.jp/
※本記事は教育目的の一般的な解説であり、法務・税務・投資助言ではありません。設例は理解のための架空数値です。