この記事で分かること
- 減損会計における「グルーピング」の定義と決め方の原則
- 兆候の把握・認識の判定・測定という3ステップの整数設例
- IFRSのCGU(資金生成単位)との発想の共通点と違い
- 共用資産・のれんが絡む場合のより大きな単位での検討(2026年8月時点)
30秒で分かる定義
減損会計におけるグルーピングとは、固定資産の減損の兆候把握・認識の判定・測定という一連の手続きを行う単位として、他の資産または資産グループのキャッシュ・フローから概ね独立したキャッシュ・フローを生み出す最小の単位で複数の資産を束ねる、日本基準特有の実務手続です。読み方は「げんそんかいけいにおけるしさんのぐるーぴんぐ」。実務では、店舗単位や工場単位など、管理会計上の区分を出発点にグルーピングの単位を決めることが一般的です。
なぜ実務で重要なのか
グルーピングの単位次第で、減損損失が出るかどうか、出るとしていくらになるかが大きく変わります。経理・財務では、決算のたびにグルーピングの単位を見直す必要がないか、事業構造の変化(店舗閉鎖、セグメント情報の見直し)と整合しているかを確認します。監査では、グルーピングの単位が恣意的に大きく設定され、不採算資産の損失が優良資産の収益力で相殺されて隠れていないかが重要な論点になります。FAS・PEでは、買収対象の資産グループごとの収益力を精査する際の基本単位として使います。
仕組み:減損判定の3ステップ
①兆候の把握:継続的な営業損益のマイナス、資産の市場価格の著しい下落、使用範囲・方法の変化などの兆候があるかを確認します。②認識の判定:兆候があるグループについて、資産の残存耐用年数にわたる割引前将来キャッシュ・フローの合計額と帳簿価額を比較し、帳簿価額の方が大きければ減損損失の認識に進みます。③測定:帳簿価額と回収可能価額(正味売却価額と使用価値のいずれか高い方)との差額を減損損失として計上します。
整数設例で確認する
設例(架空数値、単位:千円)。ある小売チェーンで、店舗ごとをグルーピングの単位(資産グループ)としているとします。店舗Aの資産の帳簿価額は300,000で、直近2期連続で営業損失が発生している(兆候あり)とします。
認識の判定:店舗Aの残存期間の割引前将来キャッシュ・フローの見積り合計が250,000で、帳簿価額300,000を下回るため、減損損失の認識が必要と判定されます。
測定:正味売却価額(不動産業者の査定額から売却費用を控除)180,000、使用価値(将来キャッシュ・フローの割引現在価値)200,000のいずれか高い方=回収可能価額200,000。減損損失=帳簿価額300,000-回収可能価額200,000=100,000を特別損失として計上します。
PL・BS・CFへの影響
減損損失は原則としてPLの特別損失に計上され、当期純利益を押し下げます。BS上は該当資産の帳簿価額が回収可能価額まで切り下げられ、その後の減価償却費はこの切り下げ後の帳簿価額を基礎に計算されるため、翌期以降の減価償却費は減少します。キャッシュ・フロー計算書(間接法)では、減損損失は非現金支出項目として営業活動によるキャッシュ・フローの調整項目(税引前当期純利益への加算)になります。
財務モデル・Excelでの使い方
資産グループごとの減損テストは次の構成でモデル化します。
- 資産グループ(店舗・工場等)を行に、帳簿価額・割引前将来CF・正味売却価額・使用価値を列に並べる
=IF(割引前将来CF<帳簿価額,"認識","認識不要")で判定フラグを立てる- 認識対象のグループのみ
=帳簿価額-MAX(正味売却価額,使用価値)で減損損失額を計算する - 割引率(使用価値の算定に使う加重平均資本コスト等)の前提を変えた感応度分析を用意する
実務家が確認するポイントとよくある誤解
誤解1:「グルーピングの単位は必ず事業セグメントと一致する」→ 正しくは、キャッシュ・フローの独立性で判断される最小の単位であり、セグメントより細かい店舗・工場単位になることが一般的です。管理会計上の区分を出発点にしつつ、実態に即して見直します。
誤解2:「グルーピングを大きく取れば減損を避けられる」→ 正しくは、独立したキャッシュ・フローを生まない資産をまとめて恣意的にグルーピングを拡大することは認められません。監査で最も精査される論点の一つです。
確認ポイントとして、本社建物など複数の資産グループに共通する共用資産や、のれんについては、より大きな単位での追加の判定が必要になる点も見ます。
日本実務での扱い
固定資産の減損に係る会計基準(ASBJ)は、グルーピングの単位を「他の資産又は資産グループのキャッシュ・フローから概ね独立したキャッシュ・フローを生み出す最小の単位」と定めています。日本基準とIFRSの実務差分として、IFRSのCGU(資金生成単位)も同様の発想ですが、IFRSはのれん・耐用年数を確定できない無形資産について兆候の有無にかかわらず毎期の減損テストを義務付ける点、また日本基準では一度計上した減損損失の戻し入れを認めない点が異なります(2026年8月時点)。
面接・モデルテストで問われるポイント
Q:資産のグルーピングの単位はどのように決めますか。管理会計上のセグメントと必ず一致しますか。
「他の資産グループのキャッシュ・フローから概ね独立してキャッシュ・フローを生み出す最小の単位で決めます。実務では管理会計上の区分(店舗・工場単位等)を出発点にすることが多いですが、必ずしもセグメントと一致するとは限らず、より細かい単位になるのが一般的です。」
深掘りでは「本社建物などの共用資産はどう扱うか」(より大きな単位でグルーピングして追加の判定を行う点)が問われます。
よくある質問(FAQ)
Q. 共用資産(本社建物など)はどう減損テストに組み込みますか?
A. 共用資産に減損の兆候がある場合、関連する資産グループを含むより大きな単位でグルーピングし、共用資産を含めた帳簿価額と回収可能価額を比較します。
Q. のれんはどのように扱いますか?
A. のれんが認識された取得に関連する事業のグルーピングの単位(またはより大きな単位)にのれんを含め、減損の兆候がある場合にグループ全体で判定・測定を行います。
出典・参考(2026-08確認)
- 企業会計基準委員会(ASBJ、固定資産の減損に係る会計基準・適用指針) https://www.asb-j.jp/
- IFRS Foundation(IAS第36号 資産の減損) https://www.ifrs.org/
- 金融庁(開示制度関連情報) https://www.fsa.go.jp/
※本記事は教育目的の一般的な解説であり、法務・税務・投資助言ではありません。設例は理解のための架空数値です。