この記事で分かること
- フレンズ&ファミリーラウンド(F&F)とは何か、エンジェル・シードとの違い
- 資金調達ステージの中での位置付け(図解)
- 放出比率の整数設例と検算
- 私募規制・みなし贈与課税など日本実務での注意点(2026年8月時点)
30秒で分かる定義
フレンズ&ファミリーラウンド(Friends and Family Round、略称F&F、読み方:ふれんずあんどふぁみりーらうんど)とは、エンジェル投資家やVCに先立ち、創業者の家族・友人・知人から集める、シード期以前の非公式かつ小規模な資金調達を指します。創業直後、事業実績がほとんどない段階で、創業者個人への信頼を主な根拠に出資してもらう資金調達であり、ブートストラップ経営(自己資金のみでの成長)と、外部の専門投資家(エンジェル・VC)からの調達との中間に位置します。
なぜ実務で重要なのか
創業者本人にとっては、事業計画・プロダクトがまだ検証段階にある時期に、最初の外部資金(自己資金以外)を得る手段です。その後のVC投資家にとっては、F&Fラウンドの株主構成・出資条件が、後続ラウンドのキャップテーブルの出発点になるため、DDの過程で確認する対象になります。株式ではなく借入形式(親族からの貸付)で調達したケースが混在していると、後のラウンドで負債・資本の整理が必要になることもあります。会社法務・税務の専門家にとっては、少人数かつ親族・知人間の取引であるがゆえに、契約書を作成せず口頭で済ませてしまうケースが多く、後々のトラブルの火種になりやすい点が実務上の注意点です。
資金調達ステージの中での位置付け
| 段階 | 主な出し手 | 金額規模の目安 |
|---|---|---|
| 自己資金 | 創業者本人 | 数十万〜数百万円 |
| F&Fラウンド | 家族・友人・知人 | 数百万〜2,000万円程度(推定) |
| エンジェルラウンド | 個人投資家(事業経験者等) | 数百万〜数千万円 |
| シードVCラウンド | シード特化型VC | 数千万〜1億円程度 |
金額規模はあくまで実務上の目安であり、公式な統計基準があるわけではありません。スタートアップのバリュエーションの考え方が本格的に適用され始めるのは、多くの場合エンジェル・シードVCラウンド以降です。
整数設例で確認する
設例(架空数値)。創業者が家族5名から各200万円、友人3名から各100万円の出資を受けるケースを考えます。
この会社のポストマネー評価額を5,000万円とした場合、F&F投資家全体への放出比率は次のとおりです。
検算:1,000+300=1,300(万円)、1,300÷5,000=0.26。8名の少人数から26%という大きな比率を放出する結果になっており、少人数からの調達であっても持分の希薄化は無視できない水準になり得ることが分かります。事業が本格的に立ち上がる前の段階でどこまで放出するかは、後続ラウンドでの創業者の持分維持を見据えて慎重に検討する必要があります。
案件プロセス上の位置付け
F&Fラウンドは、その後の資金調達ラウンドの起点として、キャップテーブルの最初の外部株主として記録されます。株式ではなくJ-KISS・SAFEのようなコンバーティブル証券を使う選択肢もありますが、F&Fラウンドでは評価額交渉の手間を避け、普通株式または少額の種類株式でシンプルに実行するケースも実務上多く見られます。
実務での調べ方・確認手順
後続ラウンドのDDでF&Fラウンドの内容を確認する際は、次の点を精査します。
- 出資が株式(エクイティ)か貸付(デット)かを区別し、貸付であれば返済条件・利率の有無を確認する
- 株式である場合、株式譲渡契約書・投資契約書が作成されているか、口頭合意にとどまっていないかを確認する
- 出資額・評価額・発行株式数が整合しているか、キャップテーブルの初期エントリと照合する
この用語を実務で
実務家が確認するポイントとよくある誤解
誤解1:「F&Fは口約束でよい」→ 正しくは、少額でも株式譲渡契約書・投資契約書を作成すべきです。後続ラウンドでのキャップテーブル整理や、税務上の説明のために書面化が必要になります。
誤解2:「家族・友人からなら誰でも自由に募集してよい」→ 正しくは、金融商品取引法上の私募規制に注意が必要です。勧誘の相手方の人数・属性によっては、想定していない募集(公募)規制に抵触するリスクがあります。
誤解3:「評価額は身内向けだから適当でよい」→ 正しくは、極端に低い評価額での株式発行は、後続ラウンドでの説明が困難になるほか、親族間取引ではみなし贈与課税のリスクも生じ得ます。
日本実務での扱い
金融商品取引法上、株式(有価証券)の取得勧誘が「募集」に該当するかどうかは、勧誘の相手方の人数・属性によって区分されます。少人数私募(勧誘対象者が一定数未満であること等の要件を満たす私募)に該当すれば開示規制の適用が除外されますが、F&Fラウンドであっても株式の勧誘である以上、この区分を意識した設計が必要です。また、親族間で時価より著しく低い価額で株式を発行した場合、差額について贈与とみなされ贈与税の課税対象となるリスク(みなし贈与課税の考え方)があるため、評価額の設定根拠を記録しておくことが望ましい対応です(2026年8月時点)。
面接・モデルテストで問われるポイント
Q:F&Fラウンドで気をつけるべき法務・税務上のポイントを3つ挙げてください。
「第一に、少額でも投資契約書・株式譲渡契約書を作成し口頭合意にとどめないこと。第二に、金融商品取引法上の私募規制(勧誘の人数・方法)に抵触しないよう設計すること。第三に、親族間での著しく低い評価額での発行はみなし贈与課税のリスクがあるため、評価額の設定根拠を記録しておくことです。」
深掘りでは「F&Fラウンドと後続のシードラウンドとの評価額の連続性をどう説明するか」が問われます。
よくある質問(F AQ)
Q. F&Fラウンドはいくらくらいが一般的ですか?
A. 目安として数百万円〜2,000万円程度の規模が多いとされますが、公式な統計があるわけではなく、案件により幅があります(推定)。
Q. F&Fラウンドでも株式ではなく借入にすべきですか?
A. 評価額の交渉を先送りできる点でコンバーティブルノートやJ-KISSが使われることもありますが、F&Fラウンドでは簡便性を優先し、普通株式や少額の出資契約でシンプルに実行するケースも多く見られます。返済義務の有無・利率など貸付とエクイティの性質の違いを理解した上で選択することが重要です。
出典・参考(2 026-08確認)
- e-Gov法令検索「金融商品取引法」(第2条第3項:有価証券の募集・私募の定義) https://elaws.e-gov.go.jp/
- 国税庁(みなし贈与課税に関する取扱い) https://www.nta.go.jp/
- 金融庁(有価証券の私募・勧誘規制に関する情報) https://www.fsa.go.jp/
※本記事は教育目的の一般的な解説であり、法務・税務・投資助言ではありません。設例は理解のための架空数値です。