この記事で分かること

  • PRICE・YIELD・DURATION・ACCRINTなどExcel債券関数群の役割分担
  • 整数設例:利率3%・利回り4%・残存5年の債券価格を手計算で検算する
  • 利率と利回りの大小関係が価格にどう効くか(ディスカウント・プレミアム)
  • 日本の債券実務での経過利子・基準(Basis)指定の注意点(2026年8月時点)

30秒で分かる定義

Excel債券関数群とは、債券の価格・利回り・デュレーション・経過利子などを算出するために用意された専用関数のファミリーです。読み方はえくせるさいけんかんすうぐん。代表的なものに、利回りから価格を求めるPRICE関数、逆に価格から利回りを求めるYIELD関数、金利変動に対する価格感応度を示すDURATION関数、経過利子を計算するACCRINT関数があります。いずれも受渡日・満期日・利率・頻度(年間の利払い回数)・基準(日数計算方式)を引数に取る点が共通しています。

なぜ実務で重要なのか

債券トレーディング・運用会社は、利回り水準から理論価格を素早く算出するためにPRICE関数を、逆に取引価格から利回りを逆算するためにYIELD関数を日常的に使います。PE・コーポレートファイナンスでは、劣後ローンや社債による資金調達の条件検討で、これらの関数を使い提示金利水準での発行価格・実質利回りを試算します。リスク管理部門は、DURATION関数で金利上昇時の債券ポートフォリオの価格下落リスクを事前に把握します。

計算式(または仕組み)

=PRICE(受渡日,満期日,利率,利回り,償還価格,頻度,[基準])
=YIELD(受渡日,満期日,利率,現在価格,償還価格,頻度,[基準])
=ACCRINT(発行日,最初の利払日,受渡日,利率,額面,頻度,[基準])

PRICE関数は、将来の利払い(クーポン)と満期時の償還価格を、指定した利回りで現在価値に割り引いて合計する考え方に基づいています。基準(Basis)引数は日数計算方式(30/360方式・実際/実際方式等)を指定するもので、市場慣行によって使い分けが必要です。DURATION関数は、この現在価値のキャッシュフローを加重平均した残存年数(マコーレー・デュレーション)を返し、金利変動1%あたりの価格変化の近似値(修正デュレーション)を導く土台になります。

整数設例で確認する

設例(架空数値)。額面(償還価格)100、年利率3%、利払い年2回(半年ごとに1.5)、残存期間5年(半年複利で10期)、利回り4%(年率、半年あたり2%)の債券を考えます。半年ごとの割引率を2%として、10期分のクーポンと満期償還額を現在価値に割り引きます。

割引係数 (1.02)^10 ≈ 1.21899 なので、1期分の割引係数は 1/1.21899 ≈ 0.82035 です。年金現価係数は (1−0.82035)÷0.02 = 0.17965÷0.02 = 8.9825。クーポンの現在価値は 1.5×8.9825 = 13.47、償還額の現在価値は 100×0.82035 = 82.04。両者を合計すると、価格 = 13.47+82.04 = 約95.51となります。利率3%が利回り4%を下回っているため、額面100を下回るディスカウント価格になるという理屈と整合しています。実務ではこの計算をPRICE関数が自動で行い、=PRICE(受渡日,満期日,0.03,0.04,100,2)のように入力するだけで同じ結果が得られます。

投資判断への影響

利率(クーポンレート)と利回り(要求利回り)の大小関係が価格の水準を決めます。利率<利回りならディスカウント価格(額面割れ)、利率>利回りならプレミアム価格(額面超え)、両者が一致すれば額面と同額(パー)になります。債券投資の意思決定では、市場で提示されている価格が自社の要求利回りに対して割高か割安かをYIELD関数で逆算し、DURATION関数で金利上昇時の価格下落リスクの大きさを把握したうえで投資判断を行います。

財務モデル・Excelでの使い方

  • 社債発行の条件検討シートでは、想定利率と目標調達額(現在価格×発行口数)の関係をPRICE関数で試算し、目標利回り水準に応じた発行条件を逆算する
  • 基準(Basis)引数を市場慣行に合わせて明示的に指定する。指定を誤ると、同じ利率・利回りでも計算される価格が微妙にずれる
  • YEARFRAC・DATEDIF関数と組み合わせ、受渡日から次回利払日までの経過日数を可視化し、ACCRINT関数の検算に使う

NPV・IRR関数など他の財務関数の実践的な使い方はNPV・IRR・XIRR関数の実践で、借入金利のスケジュール化はDebt Schedule(借入金スケジュール)の作り方で扱っています。

この用語をExcelで「組める」状態にする

PRICE・YIELD・DURATION関数を使い分け、利率と利回りの関係から債券価格を試算できる債券分析シートを組めるようになる。

財務モデリング教材で実装手順を見る →

実務家が確認するポイントとよくある誤解

誤解1:「利率が高い債券ほど価格も高い」→ 正しくは、価格を決めるのは利率と利回りの相対関係です。利率が高くても、市場の要求利回りがそれ以上に高ければ価格はディスカウントになります。

誤解2:「基準(Basis)引数はどれを選んでも大差ない」→ 正しくは、日数計算方式の違いは経過利子や価格の計算結果に実際に影響します。市場慣行と異なる基準を指定すると、取引相手先の計算値と食い違う原因になります。

確認ポイント:頻度(年間利払い回数)の指定を誤ると(例:年1回払いの債券に頻度2を指定)、結果が大きくずれるため、条件を必ず確認します。

日本実務での扱い

(2026年8月時点)日本国内の債券市場では、国債を含め独自の利回り計算・経過利子計算の実務慣行があり、日本証券業協会(JSDA)が発行・流通市場における計算方法や取引ルールに関する実務資料を公表しています。Excelの債券関数群を使う際は、基準(Basis)引数を国内の実務慣行に合わせて選択する必要があり、海外の教材で紹介される設定(米国の30/360方式)をそのまま流用すると、国内の実務計算と一致しない場合がある点に注意が必要です。

面接・モデルテストで問われるポイント

Q:利率3%、利回り4%の債券の価格は額面を上回りますか、下回りますか。理由も説明してください。
「利回り(市場が要求する利回り)が利率(クーポンレート)を上回っているため、価格は額面を下回るディスカウント価格になります。将来のクーポンと償還額を、利率より高い利回りで割り引くほど現在価値が小さくなるためです。Excelでは PRICE(受渡日,満期日,0.03,0.04,100,頻度) のように計算できます。」

深掘りでは「デュレーションが長い債券ほど金利変動リスクが大きい理由」が問われます。

よくある質問(FAQ)

Q. PRICE関数とYIELD関数はどう使い分けますか?
A. 利回りが分かっていて価格を知りたい場合はPRICE関数、逆に市場で観測された価格から利回りを逆算したい場合はYIELD関数を使います。両者は同じキャッシュフロー構造に基づく表裏の関係にあります。

Q. 額面100・利率と利回りが同じ債券の価格はいくらになりますか?
A. 額面と同額(パー、100)になります。利率と利回りが一致する場合、将来のクーポンと償還額を割り引いた現在価値の合計がちょうど額面と一致するためです。

出典・参考(2026-08確認)

※本記事は教育目的の一般的な解説であり、法務・税務・投資助言ではありません。設例は理解のための架空数値です。

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