この記事で分かること

  • PMT・IPMT・PPMT関数が元利均等返済のどの数値を計算するかの違い
  • 整数設例でIPMT+PPMT=PMTになることを検算する方法
  • デットスケジュールでの実際のセル設計と符号の付け方
  • 元金均等返済との違いと、面接で問われる『元本返済額が増えていく理由』

30秒で分かる定義

PMT・IPMT・PPMT関数は、元利均等返済(毎回の返済総額が一定になる返済方式)において、返済総額(PMT)・利息部分(IPMT)・元本部分(PPMT)をそれぞれ計算するExcelの財務関数です。PMT(読み方:ピーエムティー)は1回あたりの返済総額、IPMT(アイピーエムティー)は特定の回における利息、PPMT(ピーピーエムティー)は特定の回における元本返済額を返します。同じ回について計算すれば、常にIPMT+PPMT=PMTという関係が成り立ちます。デットスケジュール(借入金スケジュール)を組む際の中核となる関数群です。

なぜ実務で重要なのか

IB・PE(LBOモデル)では、買収に用いるシニアローン・タームローンの返済スケジュールを組む際、毎期の利息費用(PLに影響)と元本返済額(BS・CFに影響)を分離して把握する必要があります。FAS・経営企画では、複数の借入契約が並存する会社の資金繰り予測でこの3関数を組み合わせて使います。融資審査・銀行では、返済表(償還表)のひな形として同じ考え方が使われます。不動産のノンリコースローンやプロジェクトファイナンスでも、元利均等・元金均等いずれの返済方式かによってキャッシュフローの形が大きく変わるため、使い分けの理解が前提になります。

計算式(または仕組み)

PMT(返済総額)= PMT(rate, nper, pv, [fv], [type])
IPMT(利息部分)= IPMT(rate, per, nper, pv, [fv], [type])
PPMT(元本部分)= PPMT(rate, per, nper, pv, [fv], [type])

rateは1期あたりの利率、nperは返済回数、pvは借入元本(現在価値)、perは利息・元本を求めたい回(1から始まる整数)、typeは支払時点(0=期末払い、1=期首払い、省略時0)です。IPMTは「その回の期首残高×利率」で機械的に決まり、PPMTは「PMT-その回のIPMT」で決まります。返済が進むほど元本残高が減るためIPMTは徐々に減少し、PMTが一定である以上、その分だけPPMTは徐々に増加します。これが元利均等返済の本質的な仕組みです。

整数設例で確認する

設例(架空数値)。借入元本1,000,000円、年利率10%、返済期間2年(年1回払い)の元利均等返済を考えます。

PMT = 1,000,000 × 0.10 × 1.1² ÷(1.1²-1)= 121,000 ÷ 0.21 = 576,190円(円未満四捨五入)

1回目:期首残高1,000,000円に利率10%を掛けたIPMT①=100,000円。PPMT①=PMT-IPMT①=576,190-100,000=476,190円。返済後の残高=1,000,000-476,190=523,810円。

2回目:期首残高523,810円に利率10%を掛けたIPMT②=52,381円。PPMT②=576,190-52,381=523,809円。返済後の残高=523,810-523,809=1円(PMTを円未満四捨五入したことによる残差)。

項目1回目2回目合計
IPMT(利息)100,00052,381152,381
PPMT(元本)476,190523,809999,999
PMT(合計)576,190576,1901,152,380

合計行を見ると、IPMT合計152,381円+PPMT合計999,999円=1,152,380円で、PMT合計(576,190円×2回=1,152,380円)と完全に一致します。PPMT合計は元本1,000,000円に対して1円不足していますが、これはPMTを円単位に丸めたことによる残差で、実務では最終回の返済額を数円調整して残高をちょうどゼロにする処理を行います。

PL・BS・CFへの影響

IPMT(利息)はPLの支払利息として費用計上され、営業外費用に影響します。PPMT(元本)はBSの借入金残高を直接減額し、間接法キャッシュフロー計算書では財務活動によるキャッシュフローのマイナスとして表示されます。PMT(返済総額)自体はPL・BSどちらにもそのままの形では現れず、IPMTとPPMTに分解して初めて三表のそれぞれ正しい場所に反映される点が実務上の注意点です。

財務モデル・Excelでの使い方

  • 符号の統一:pvを正の値(借入元本)で入力すると、PMT・IPMT・PPMTの結果はキャッシュ流出を示す負の値で返ります。モデル内では表示上マイナスをつけたまま使うか、先頭にマイナスを付けて符号反転するか、シート全体でルールを統一します
  • 行の構成:期首残高行→IPMT行(=IPMT(利率,行番号,総回数,元本))→PPMT行→期末残高行(期首-PPMT)の順に並べ、次の行の期首残高が前の行の期末残高を参照する形にする
  • 検算チェック:各回のIPMT+PPMTがPMTと一致するかを別行でチェックし、最終回の期末残高が0(または端数調整後0)になっているかを検算する

この3関数の実装はDebt Scheduleの作り方の土台であり、複数トランシェがある場合の優先順位の考え方はトランシェ別返済優先順位で扱っています。

この用語をExcelで「組める」状態にする

借入元本・利率・返済回数からPMT・IPMT・PPMTでデットスケジュールを自動生成し、利息費用と元本返済を三表へ正しく接続できるようになる。

Excel実務シリーズの教材で実装する →

実務家が確認するポイントとよくある誤解

誤解1:「PMTだけ分かれば利息と元本の内訳も分かる」→ 正しくは、PMTは合計額しか返さず、内訳にはIPMT・PPMTが別途必要です。PLに費用計上すべき利息とBSの元本返済を混同すると、三表の連動が崩れます。

誤解2:「元利均等返済では毎回の元本返済額も一定」→ 正しくは、一定なのは返済総額(PMT)であり、元本部分(PPMT)は回を追うごとに増加します。毎回の元本返済額が一定になるのは元金均等返済という別方式です。

誤解3:「IPMT・PPMTのper引数は0から始まる」→ 正しくは1から始まります。0を入れると#NUM!エラーになります。

確認ポイント:pvの符号(正で入力しているか)とtype引数(期首払いか期末払いか)が契約条件と一致しているかを必ず確認します。

日本実務での扱い

日本の住宅ローン・事業性ローンの多くは元利均等返済(毎月の返済額が一定)を採用しており、フラット35など代表的な商品もこの方式が基本です。銀行融資契約の返済スケジュール(償還表)は、実質的にPMT・IPMT・PPMTと同じロジックで作成されています。なお、借入金利には財務レバレッジを通じてROEにも影響する利息制限法(元本額に応じた上限金利を定める法令)が適用される場面があり、モデル化にあたっては契約金利がこの水準を逸脱していないかも実務上の確認事項です(2026年8月時点)。

面接・モデルテストで問われるポイント

Q:元利均等返済でPMTが毎回一定なのに、なぜ元本返済額(PPMT)は回を追うごとに増えていくのか説明してください。
「IPMT(利息)はその回の期首借入残高に利率を掛けて計算されるため、返済が進み残高が減るほどIPMTは小さくなります。PMTの合計額が一定である以上、PPMT=PMT-IPMTという関係から、IPMTが減った分だけPPMTが自動的に増加します。つまり元本返済の加速は、残高減少に伴う利息負担の減少の裏返しです。」

深掘りでは「元金均等返済との総支払利息の違い」「返済回数の途中で金利が変わった場合の再計算方法」が問われます。

よくある質問(FAQ)

Q. PMT関数の結果がマイナスで表示されるのはなぜですか?
A. Excelはキャッシュの流出をマイナスで表すのが標準的な符号規則のためです。pvを正の値で入力した場合、PMT・IPMT・PPMTはいずれも負の値(支払い=キャッシュアウト)を返します。モデル全体で符号のルールを統一しておくことが重要です。

Q. 返済期間の途中で借入残高を一括繰上返済したい場合はどう組みますか?
A. PMT・IPMT・PPMTはあくまで当初契約どおりの一定スケジュールを前提とする関数のため、繰上返済を織り込む場合は、繰上返済額を期末残高から別途控除し、その後の期についてPMTを再計算(またはCash Sweepのロジックに切り替え)する必要があります。

出典・参考(2026-08-25確認)

※本記事は教育目的の一般的な解説であり、法務・税務・投資助言ではありません。設例は理解のための架空数値です。

共有: