この記事で分かること

  • 定款の定義と、絶対的・相対的・任意的記載事項の3分類
  • 発行可能株式総数と設立時発行株式数の「4分の1ルール」を整数設例で確認
  • 定款変更に必要な株主総会特別決議の手続き
  • 登記事項証明書との違いと、DD・調査での確認方法

30秒で分かる定義

定款(Articles of Incorporation、読み方:ていかん)とは、商号・事業目的・本店所在地・機関設計・発行可能株式総数など、会社の基本的事項を定める、会社法上作成が義務づけられた根本規則です。会社の「憲法」に相当し、設立時に発起人が作成して公証人の認証(株式会社の原始定款)を受け、その後は株主総会の決議によってのみ変更できます。登記事項証明書に記載される内容の多くは定款に由来しますが、両者は同一の文書ではありません。

なぜ実務で重要なのか

経営企画・法務にとっては、増資・種類株式の発行・機関設計の変更(監査役会設置会社への移行等)を検討する際、まず定款の規定を確認し、変更の要否と手続きを設計する出発点になります。M&A・PEの財務DD/法務DDでは、事業目的の範囲、株式の譲渡制限の有無、種類株式の内容を定款で確認し、対象会社のガバナンス構造やM&Aスキームへの影響を評価します。IPO準備企業は、IPOの仕組みと価格決定で説明されるプロセスの前提として、上場時に単元株制度の導入や機関設計の見直しに伴う定款変更が必要になるため、証券会社・主幹事とすり合わせながら準備を進めます。

仕組み:記載事項の3分類

分類性質代表例
絶対的記載事項必ず記載しなければ定款自体が無効商号、事業目的、本店所在地、設立に際して出資される財産の価額(またはその最低額)、発起人の氏名・住所、発行可能株式総数
相対的記載事項記載しなければ効力が生じないが、定款自体は有効取締役会・監査役会の設置、種類株式の内容、株式の譲渡制限
任意的記載事項記載しなくても効力は生じるが、明確化のため記載株主総会の招集時期、事業年度、取締役の員数

整数設例で確認する

設例(架空数値)。公開会社(株式の譲渡制限のない会社)を新たに設立する場合を考えます。会社法上、公開会社では設立時に発行する株式数は、定款で定めた発行可能株式総数の4分の1を下回ることができません(会社法37条3項ただし書・98条)。

  • 定款で定める発行可能株式総数:40,000株
  • 設立時発行株式数の下限:40,000 × 1/4 = 10,000株

この会社が設立時に10,000株ちょうどを発行した場合、将来の増資に使える授権枠(定款変更なしに取締役会決議等で発行できる株式数)は 40,000-10,000=30,000株となります。発行可能株式総数を引き上げたい場合は、株主総会の特別決議による定款変更が必要です。

開示・規制上の位置付け

定款そのものは金融商品取引法上の法定開示書類ではありませんが、上場会社は有価証券報告書の「コーポレート・ガバナンスの状況」等において、機関設計や株式に関する定款の定めを要約して開示します。登記事項証明書には商号・本店・目的・発行可能株式総数・取締役会や監査役会の設置の有無などの絶対的・相対的記載事項の一部が反映されますが、株主総会の招集通知期間の短縮といった任意的記載事項は登記されないため、正確な確認には定款原本の閲覧が必要です。

実務での調べ方・確認手順

  • 登記事項証明書との照合:法務局で取得できる登記事項証明書と定款を突き合わせ、機関設計・発行可能株式総数の整合性を確認します。
  • DDチェックリスト:株式の譲渡制限の有無、種類株式の内容、事業目的が実際の事業内容をカバーしているか(目的外行為のリスク)を確認項目として整理します。
  • 変更履歴の把握:増資や機関設計変更のたびに定款変更議事録が残っているはずであり、履歴に欠落がないかを取締役会・株主総会議事録と照合します。

この用語を実務で「使える」状態にする

発行可能株式総数と授権枠の関係を整理し、増資・機関設計変更の際に定款変更の要否を判断できるようになる。

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実務家が確認するポイントとよくある誤解

誤解1:「登記事項証明書を見れば定款の内容は全て分かる」→ 正しくは、任意的記載事項など登記されない事項もあり、正確な確認には定款原本が必要です。DDでは必ず定款原本の提出を求めます。

誤解2:「定款変更は取締役会の決議で足りる」→ 正しくは、原則として株主総会の特別決議(会社法466条・309条2項)が必要です。取締役会だけで変更できるのは、定款の授権に基づく一部の株式発行など限定的な場面に限られます。

日本実務での扱い(2026年8月時点)

会社法上、株式会社の設立には定款の作成と公証人の認証(発起設立・募集設立とも)が必要です(会社法26条〜30条)。定款変更は株主総会の特別決議(議決権の過半数を有する株主が出席し、出席株主の議決権の3分の2以上の賛成)によることが原則です(会社法466条・309条2項11号)。近年は電子定款(電磁的記録による定款)が普及し、公証人役場でのオンライン認証により印紙税(紙の定款で必要な4万円の収入印紙)が不要になる点も実務上のポイントです(2026年8月時点)。

面接・モデルテストで問われるポイント

Q:定款変更の手続きを説明してください。
「原則として株主総会の特別決議が必要です。定足数は議決権を行使できる株主の議決権の過半数(定款でこれを下回る割合に緩和することも可能)、決議要件は出席株主の議決権の3分の2以上の賛成です。決議後、変更内容によっては法務局への変更登記が必要になります。発行可能株式総数の増加など登記事項に該当する変更は、決議から2週間以内に登記申請を行うのが実務上の目安です。」(30秒回答例)

深掘りでは、種類株式発行のための定款変更に必要な追加手続き(種類株主総会の要否)が問われます。

よくある質問(FAQ)

Q. 定款に必ず定めなければならない事項(絶対的記載事項)は何ですか?
A. 商号、事業目的、本店所在地、設立に際して出資される財産の価額(またはその最低額)、発起人の氏名・住所、発行可能株式総数の6項目が代表的です。一つでも欠ければ定款自体が無効になります。

Q. 種類株式を発行するには必ず定款変更が必要ですか?
A. 発行する種類株式の内容(優先配当・議決権制限等)を定款に定める必要があるため、既存の定款にその定めがなければ株主総会の特別決議による定款変更が必要です。

出典・参考(2026-08確認)

※本記事は教育目的の一般的な解説であり、法務・税務・投資助言ではありません。設例は理解のための架空数値です。

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