この記事で分かること

  • 会社法の計算書類と金融商品取引法の財務諸表の目的・根拠法の違い
  • 両者の様式・開示先・監査主体の対比
  • 提出期限の整数設例で、開示スケジュールの違いを確認
  • 財務分析でどちらの書類をソースに使うべきか

30秒で分かる定義

会社法計算書類と金商法財務諸表(読み方:かいしゃほうけいさんしょるいときんしょうほうざいむしょひょう)とは、会社法に基づき株主総会向けに作成する計算書類と、金融商品取引法(金商法)に基づき投資家向けに開示する財務諸表という、根拠法・様式・監査主体が異なる別個の書類体系です。計算書類、金融商品取引法上の財務諸表、会社法決算と呼ばれることもあります。基本的な数値は整合するように作成されますが、目的も開示範囲も異なる2つの制度である点を理解する必要があります。

なぜ実務で重要なのか

経理・決算実務では、株主総会に向けた会社法決算と、有価証券報告書に向けた金商法開示という2つの決算プロセスを整合的に進める必要があり、上場企業の決算スケジュールの骨格を形成します。財務分析を行う際、上場会社であればより情報量の多い金商法の有価証券報告書(連結財務諸表)を使うのが基本です。M&Aの実務家は、非上場会社の対象会社では会社法の計算書類しか存在しないことが多く、金商法水準の詳細情報が得られない前提でDDを設計します。

計算式(または仕組み)

項目会社法計算書類金商法財務諸表
根拠法会社法金融商品取引法
主な開示先株主・債権者投資家(資本市場)
対象範囲個別(一定の大会社は連結計算書類も)連結が基本
開示システム招集通知(株主提供)EDINET

整数設例で確認する

開示スケジュールの違いを提出期限の日数で確認します(架空の決算日3月31日の会社を想定)。会社法上、計算書類は定時株主総会の日の2週間前までに株主へ招集通知とともに提供され、決算日からおおむね2〜3か月以内(多くの企業で6月下旬の総会開催が目安)に確定します。一方、金商法上の有価証券報告書は、事業年度終了後3か月以内(決算日が3月31日なら6月30日まで)にEDINETへ提出することが義務付けられています。両者はほぼ同時期に確定・開示されるため、実務では会社法の決算数値と金商法の連結財務諸表を並行して整合させる決算プロセスが組まれます。

投資判断への影響

投資家が企業を分析する際に利用するのは、原則として情報量の多い金商法の有価証券報告書(連結財務諸表とその注記)です。会社法の計算書類は個別財務諸表が中心で、注記の詳細度も金商法の開示より簡素な傾向があるため、投資判断の主たる情報源としては使われません。両者の数値に大きな乖離がある場合は、連結範囲の違いや表示方法の差が原因であることが多く、注記を確認する必要があります。有報の読み方全体は有価証券報告書の読み方で扱っています。

財務モデル・Excelでの使い方

  • 上場企業のバリュエーションモデルは、原則として金商法の連結財務諸表(有価証券報告書)をデータソースとして使う
  • 非上場会社が対象の場合は会社法の計算書類(個別ベース)が唯一の公式情報になることが多く、注記の情報量が限られる前提でモデルの前提を設計する

この用語をExcelで「組める」状態にする

会社法計算書類と金商法財務諸表のどちらをデータソースにすべきか判断し、DDのデータ収集計画を組めるようになる。

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実務家が確認するポイントとよくある誤解

誤解1:「会社法の計算書類と金商法の財務諸表は完全に同じ数字」→ 正しくは、基本的な数値は整合するよう作成されますが、様式・開示範囲(個別か連結か、注記の詳細度)が異なる別個の書類です。財務諸表の比較時にはどちらの書類を見ているかを常に意識する必要があります。

誤解2:「非上場会社にも金商法の財務諸表の作成義務がある」→ 正しくは、金商法の開示義務は原則として有価証券報告書提出会社(上場会社等)に限られ、多くの非上場会社は会社法の計算書類のみを作成しています。

日本実務での扱い(2026年7月時点)

会社法第435条以下が計算書類(貸借対照表・損益計算書・株主資本等変動計算書・個別注記表等)の作成・監査・株主への提供を定め、金融商品取引法第24条が有価証券報告書(財務諸表を含む)のEDINETへの提出を定めています。両制度は歴史的に別々に発展してきた経緯があり、記載事項の重複や様式の相違が実務上の負担になっているとの指摘から、両者の記載内容の共通化・効率化に向けた議論が継続的に行われています。

面接・モデルテストで問われるポイント

Q:会社法の計算書類と金商法の財務諸表がなぜ別々に存在するのか、その目的の違いを説明してください。
「会社法の計算書類は、株主や債権者に対して会社の財産状況を報告し、株主総会での剰余金の配当や役員選任等の意思決定の基礎とすることを主な目的としています。一方、金商法の財務諸表は、資本市場で株式や社債に投資しようとする幅広い投資家に対して、投資判断に必要な情報を開示することを目的としています。想定する利用者と目的が異なるため、開示範囲(個別か連結か)や注記の詳細度、監査の枠組みにも違いが生じています。」

深掘りでは「両制度の共通化に向けた議論の背景」「非上場会社のM&Aで会社法計算書類しかない場合のDDの進め方」が問われます。

よくある質問(FAQ)

Q. 中小企業は金商法の財務諸表を作成する必要がありますか?
A. 原則として不要です。金商法の開示義務は有価証券報告書の提出義務がある会社(上場会社等)に限られ、多くの中小企業・非上場会社は会社法の計算書類のみを作成しています。

Q. どちらの方がより詳細な情報を含みますか?
A. 一般的には金商法の有価証券報告書の方が、連結ベースの財務諸表に加え、セグメント情報や経営指標の推移など注記情報が充実しており、詳細です。

出典・参考(2026-07-21確認)

※本記事は教育目的の一般的な解説であり、法務・税務・投資助言ではありません。設例は理解のための架空数値です。