この記事で分かること
- CBDC(中央銀行デジタル通貨)の定義とホールセール・リテールの違い
- 中央銀行と銀行が役割分担する「二層構造」の仕組み
- 預金からCBDCへの資金シフトが銀行に与える影響を整数設例で試算
- 日本銀行の実証実験の進捗と2026年8月時点の状況
30秒で分かる定義
CBDC(中央銀行デジタル通貨、Central Bank Digital Currency)とは、中央銀行自らが発行するデジタル形式の法定通貨のことです。現金(銀行券)や中央銀行当座預金と並ぶ「中央銀行の負債」としての性格を持ちながら、決済のデジタル化・効率化を目的とした新しい形態として各国で検討・実証が進められています。企業間・金融機関間の大口決済を対象とする「ホールセールCBDC」と、個人・企業の日常決済を対象とする「リテールCBDC」に大別されます。
なぜ実務で重要なのか
金融政策と市場
仕組み(二 層構造モデル)
| 主体 | 役割 |
| 中央銀行 | CBDCを発行し、その負債(通貨としての信認)を担う |
| 仲介機関(銀行等) | 一般利用者へのCBDCの配布・口座管理・KYC等の実務を担う「二層構造」の窓口 |
| 一般利用者(個人・企業) | 仲介機関を通じてCBDCを保有・決済に利用 |
多くの国の検討では、中央銀行が個人と直接取引する「一層構造」ではなく、既存の銀行等が仲介する「二層構造」が有力とされています。これは、KYC・AMLの実務を中央銀行が肩代わりすることの現実的な難しさや、既存の金融仲介機能(信用創造)への影響を抑える狙いによります。
整数設例で確認する
設例(架空数値)。中央銀行Yがリテール型CBDCを発行し、個人の保有上限を50万円に設定したとします。A銀行の個人预金残高が1,000,000百万円で、そのうち预金者の判断で3%がCBDCへ振り替えられると仮定します。
CBDCへ流出する額 = 1,000,000百万円 × 3% = 30,000百万円
A銀行の残存個人預金 = 1,000,000 - 30,000 = 970,000百万円
この30,000百万円の資金純減は、A銀行にとって貸出原資の一部が失われることを意味し、その分を他の調達手段で補う必要が生じます。保有上限(本設例では50万円)は、まさにこの資金シフトの規模を制御するための政策手段として設計される、という点がポイントです。
リスク配分への影響
CBDCの導入は、銀行にとって預金という安定調達手段の一部が中央銀行負債(CBDC)に代替されるリスクを意味し、特に金融不安時に預金からCBDCへの資金シフトが加速するおそれが指摘されています。保有上限の設定や、無利息(または低利)設計とすることで、この代替が過度に進まないよう制度設計上の配慮がなされるのが一般的です。資金不足に陥った銀行は、コール市場と無担保コール翌日物金利を通じて他行から短期資金を調達する必要が生じます。
実務での調べ方・確認手順
CBDCの検討状況は、各国中央銀行が公表する実証実験(パイロット)のレポートで確認できます。銀行の資金繰り・ALM実務では、CBDC導入シナリオを「預金流出ストレステスト」の一種として組み込み、流出率の前提を設定した上で流動性カバレッジ比率・安定調達比率
この用語を実務で
CBDC導入が銀行の預金・資金調達構造に与える影響を、流出シナリオの数値試算として整理できるようになる。
実務家が確認するポイントとよくある誤解
誤解1:「CBDCは暗号資産の一種」→ 正しくは、中央銀行が発行する法定通貨であり、価格が変動する暗号資産や、民間発行のステーブルコインとは法的性格が異なります。
誤解2:「CBDCが導入されれば現金は即座に廃止される」→ 正しくは、多くの検討では現金と並存させる設計が前提とされています。
実務家はさらに、プライバシー(取引履歴を誰が把握するか)の設計を確認します。
日本実務での扱い
日本銀行は2021年度から2段階の実証実験(概念実証)を進め、2023年度からは民間事業者を交えたパイロットプログラムに移行しました。ただし2026年8月時点で、日本銀行はCBDCの発行を決定した段階にはなく、引き続き検討・実証を継続する方針としています。制度設計にあたっては、分散台帳技術
面接・モデルテストで問われるポイント
Q:CBDCが銀行の預金ビジネスに与える影響について説明してください。
「保有上限や付利設計次第で預金からの資金シフトの規模が変わり、銀行の資金調達コスト上昇や信用創造機能への影響が生じうるというリスクと、決済の効率化・金融包摂といったメリットの両面があります。」(30秒回答例)
深掘りでは「二層構造が採用される理由」が定番です。
よくある質問(F AQ)
Q. CBDCとステーブルコインの違いは何ですか?
A. CBDCは中央銀行の負債として発行される法定通貨そのものですが、ステーブルコインは民間事業者が発行し、法定通貨等を裏付けに価値を安定させようとする私的な決済手段である点が根本的に異なります。
Q. ホールセールCBDCとリテールCBDCはどちらの検討が進んでいますか?
A. 国・中央銀行により優先順位は異なり、日本を含む多くの中央銀行は大口決済向けのホールセールCBDCと、個人向けのリテールCBDCの双方を並行して検討しています(2026年8月時点)。
出典・参考(2 026-08確認)
- 日本銀行(CBDCに関する実証実験の公表資料) https://www.boj.or.jp/
- Bank for International Settlements(CBDCに関する国際的な調査資料) https://www.bis.org/
- IMF(CBDCの政策論点に関する資料) https://www.imf.org/
※本記事は教育目的の一般的な解説であり、法務・税務・投資助言ではありません。設例は理解のための架空数値です。