この記事で分かること
- 設備投資(Capex)の定義と、CF計算書・貸借対照表・損益計算書への現れ方
- 資本的支出と修繕費の区分を、法人税法施行令・通達の考え方と整数設例で確認
- FCFの算定でCapexを控除する理由と、減価償却費と比べるときの見方
- Excelで固定資産スケジュールを組むときのセル設計と、Capexの定義を揃える注意点
30秒で分かる定義
設備投資(Capex、Capital Expenditure、せつびとうし)とは、有形固定資産や無形資産を取得・更新・改良するために支出する資金です。取得時に費用とせず資産として計上し、償却対象の資産は事業の用に供した後、減価償却を通じて複数年度に費用配分します(土地は償却せず、建設仮勘定も供用開始までは償却しません)。CF計算書では「投資活動によるキャッシュ・フロー」に、有形固定資産及び無形固定資産の取得による支出として記載されます[1]。
本ページは総論です。維持更新と成長投資の切り分けは維持更新投資と成長投資で扱い、ここではCapexの範囲、資本的支出と修繕費の区分、三表とFCFへのつながりを整理します。
なぜ実務で重要なのか
経営企画は予算で設備投資計画を立て、減価償却費と営業利益の見通しに反映します。IB・PE・FASはDCFやLBOでCapexの置き方がFCFと企業価値を左右するため、過去の実績から維持更新分を見積もります。融資の担当者は、Capex後に残るキャッシュが返済原資になるかを確認します。エクイティリサーチはFCFの水準を株価評価の論点にします。
計算式(ま たは仕組み)
CF計算書の分類では、次のように整理できます。同じ「投資」でも、Capexに含めるかどうかは定義次第です。
| 項目 | CF上の区分 | 一般にCapexに含めるか |
|---|---|---|
| 有形固定資産の取得による支出 | 投資活動 | 含める |
| 無形固定資産(ソフトウエア等)の取得による支出 | 投資活動 | 含める(会社・分析者の定義による) |
| 投資有価証券の取得による支出 | 投資活動 | 含めない |
| 連結範囲の変更を伴う子会社株式の取得 | 投資活動(独立項目)[1] | 含めない(M&Aの対価) |
| 修繕費 | 営業活動(費用) | 含めない |
整数設例で確認する
設例(架空数値)です。単位は百万円。
- 期首の固定資産(純額)10,000、当期のCapex 2,000、減価償却費1,500、売却・除却なし → 期末 = 10,000 + 2,000 − 1,500 = 10,500
- 売上高20,000 → Capex/売上高 = 2,000 ÷ 20,000 = 10.0%、Capex/減価償却費 = 2,000 ÷ 1,500 ≒ 1.33倍(売却・除却・減損等がなければ、償却を上回る投資で固定資産が増える)
- 営業CFが3,000の場合、FCF(営業CF−Capexと定義した場合)= 3,000 − 2,000 = 1,000
次に資本的支出と修繕費です。法人税法施行令第132条は、修理・改良等の支出のうち、資産の使用可能期間を延長させる部分と、資産の価額を増加させる部分(いずれにも該当するときは多い方)を損金に算入しないと定めています[2]。実務の判定には通達の形式基準が使われます。少額(20万円未満)または概ね3年以内の周期で行う修理等は修繕費にでき(7-8-3)、区分が明らかでない金額が60万円未満または前期末取得価額の概ね10%相当額以下なら修繕費にできます(7-8-4)。これらに当たらない場合、継続適用を条件に、金額の30%相当額と前期末取得価額の10%相当額のいずれか少ない金額を修繕費とする方法も認められます(7-8-5)[3]。
設例(架空数値・万円):区分が明らかでない支出700、対象資産の前期末取得価額5,000とします。7-8-4は、700は60未満でなく、5,000×10%=500以下でもないため使えません。7-8-5を継続適用している場合、30%×700=210、10%×5,000=500で、少ない210が修繕費、残り700−210=490が資本的支出になります。通達は税務上の取扱いで、会計上の区分とは別の判断ですが、実務では税務の区分に合わせる会社が多いとされます。
PL・BS・CFへの影響
取得時のPLへの影響はなく、BSで固定資産が増え現金が減ります。以後は減価償却費としてPLの費用になり、営業CFでは非資金費用として加算されます。区分の違いが利益指標に効く例を示します(架空数値・百万円)。同じ600の支出を修繕費にすると、営業利益は当期に600減り、営業CFも600減ります。資本的支出として耐用年数6年の定額法で期首から償却する場合、当期の営業利益の減少は600 ÷ 6=100にとどまり、600は投資CFに出ます。EBITDAは前者の方が小さく見えますが、税金の影響を除き同額を当期に支払う前提では、FCF(営業CF−Capex)はどちらも同じ水準です。税務でも同じ区分になる場合は当期の損金算入額が変わり(設例と同じ償却なら600と100で500の差)、法人税等の支払時期がずれるため、税引後のFCFは一致しないことがあります。AI投資を例にした波及経路はAI設備投資は財務諸表のどこに効くのかが参考になります。
財務モデル・Excelでの使い方
- スケジュールの行:期首固定資産、+Capex、−減価償却費、期末固定資産の4行を作り、期末を翌期の期首に連結します。Capexは「売上高×Capex比率」または維持更新分+成長分の合計で置きます。
- CFへの接続:投資CFのCapex行は
=-Capexとし、符号を逆にして現金に反映します。 - 支払ベースとのずれ:投資CFは支払額なので、設備関係の未払金が増減した年度は、取得額(BSの増加)と支払額が一致しません。
- 点検行:Capex/売上高とCapex/減価償却費を毎期並べて確認します。成長率との関係は業界ライフサイクルで成長率と設備投資を見積もるで扱っています。
この用語をExcelで
Capexと減価償却のスケジュールを組み、BS・CF・FCFへつなげて、前提を変えたときの影響を数式で追えるようになる。
実務家が確認するポイントとよくある誤解
誤解1:「Capexは減価償却費と同じ」→ 減価償却費は過去の投資の費用配分で、Capexは当期の支出です。成長局面ではCapexが償却を上回るのが通常です。
誤解2:「修理費は修繕費、設備の購入はCapex」と機械的に決まる → 修理・改良の支出は資産価値や耐用年数への影響で区分が分かれ、判断により営業利益とEBITDAが変わります。
誤解3:「買収の対価もCapexに含まれる」→ 子会社株式の取得は投資CFの独立項目で、通常はCapexに含めません。
確認ポイント:Capexの定義(取得か支払か、無形資産とリース資産を含むか、売却収入を控除するか)を、比較対象の会社間で揃えます。有価証券報告書の設備投資の記載額は、CF計算書の支出額と一致しないことが一般的にあります。
日本実務での扱い
(2026年11月時点)日本基準の個別・連結CF計算書は、企業会計審議会の「連結キャッシュ・フロー計算書等の作成基準」に沿って作成され、固定資産の取得による支出は投資活動に区分されます[1]。税務では、資本的支出と修繕費の区分が法人税法施行令第132条と法人税基本通達7-8で規律されます[2][3]。通達の金額基準(20万円・60万円など)は改正されることがあるため、実務では国税庁の最新の通達で確認します。日本企業全体の設備投資計画の動向は、日銀短観で事業計画の前提を更新するの手順で、業界の水準感を確かめられます。
面接・モデルテストで問われるポイント
Q:Capexが売上の10%、減価償却費が売上の6%の会社をどう評価しますか。
「Capex/減価償却費は約1.67倍で、売却・除却・減損等がなければ固定資産が増えている状態です。成長投資が含まれているのか、維持更新だけで償却を上回るのかを分けて確認します。成長投資を除くとFCFがどう見えるかを示し、将来のCapex比率が過去実績と整合するかも点検します。」
よくある質問(F AQ)
Q. CapexはPLに直接出ますか。
A. 直接は出ません。償却対象の資産であれば、供用開始後に減価償却費を通じて複数年度のPLに現れ(土地は償却しません)、CFでは投資活動の支出として一括で出ます。
Q. FCFのCapexは売却収入を差し引いた純額ですか。
A. 定義によります。CF作成基準の注4は、取得による支出と売却による収入を別の項目として例示しているため、純額にするかは会社・分析者の定義次第です。使う定義を明記して統一します。
出典・参考(2 026-11確認)
- 企業会計審議会「連結キャッシュ・フロー計算書等の作成基準」(1998年3月13日)第二 二 1(2)、同 4、注解(注4). https://www.fsa.go.jp/p_mof/singikai/kaikei/tosin/1a909b2.htm(2026年11月参照)
- e-Gov法令検索「法人税法施行令」第132条(資本的支出). https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=340CO0000000097(2026年11月参照)
- 国税庁「法人税基本通達」第7章第8節 資本的支出と修繕費(7-8-1〜7-8-5). https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/hojin/07/07_08.htm(2026年11月参照)
※本記事は教育目的の一般的な解説であり、法務・税務・投資助言ではありません。設例は理解のための架空数値です。