この記事で分かること
- 銀行法が定める免許・業務範囲・子会社の範囲・主要株主規制の全体像
- 銀行の「5%ルール」と銀行持株会社の「15%ルール」の条文上の仕組み
- 投資専門子会社(特定子会社)を通じたベンチャー出資が5%の合算から外れる場面を整数設例で確認
- 銀行系PE・VCファンドや金融機関M&Aで銀行法を確認する手順
30秒で分かる定義
銀行法(ぎんこうほう、Banking Act)とは、銀行業の免許、銀行が営める業務の範囲、子会社にできる会社の範囲、一般事業会社の議決権の保有制限、銀行の主要株主・銀行持株会社に対する認可などを定める法律です。銀行業は内閣総理大臣の免許を受けた者でなければ営めず、ここでいう銀行業は、預金の受入れと資金の貸付け(または手形の割引)を併せ行うこと、または為替取引を行うことを指します[1]。本ページは出資規制と投資の枠組みに焦点を当て、銀行業免許そのものの承継は銀行業免許の承継・認可
なぜ実務で重要なのか
銀行法は、銀行が「どこまで出資できるか」を決める法律です。PE・VCでは、銀行グループ系のファンドがどの会社に、どれだけの議決権比率で投資できるかを左右します。IB・FASでは、銀行や地銀グループが関わる再編で、子会社化や主要株主化に当局の認可が必要かを工程表に織り込みます(FIG
仕組み:出資と業務に関する主な規定
| 項目 | 内容(標準的な規定) | 条文 |
|---|---|---|
| 免許 | 銀行業は内閣総理大臣の免許が必要。財産的基礎・収支の見込み・人的構成等を審査 | 第4条 |
| 業務範囲 | 固有業務(預金・貸付け・為替)、付随業務(債務保証、私募の取扱い等)、法律で認められた業務以外は営めない(他業禁止) | 第10条・第12条 |
| 子会社の範囲 | 銀行・証券専門会社・保険会社・従属業務会社・新たな事業分野を開拓する会社など、列挙された会社以外は子会社にできない | 第16条の2 |
| 5%ルール | 銀行とその子会社は、国内の会社(子会社対象会社など除外あり)の議決権を合算で総株主等の議決権の5%を超えて取得・保有できない | 第16条の4 |
| 15%ルール | 銀行持株会社とその子会社は、同様に合算で15%を超えて取得・保有できない | 第52条の24 |
| 主要株主 | 銀行の議決権の20%(一定の要件に当たる場合は15%)以上を持とうとする者は事前に認可が必要。銀行を子会社とする持株会社になる場合も認可が必要 | 第2条第9項・第52条の9・第52条の17 |
5%ルールには例外があります。担保権の実行などで5%を超えた場合は、超えた部分を原則1年以内に処分する必要があり、当局の承認を受けて保有を続けるときも、総株主等の議決権の50%を超える部分は承認の対象になりません[1]。また、新たな事業分野を開拓する会社(第16条の2第1項第12号)、事業再生会社の一部、地域活性化事業会社(同第14号)の議決権については、銀行の子会社のうち内閣府令で定める「特定子会社」(実務では投資専門子会社と呼ばれることが多い)は、合算の対象となる子会社に当たらないものとみなされます(第16条の4第7項)[1]。銀行本体は有価証券関連業・投資運用業を原則として行えないため(金商法第33条)、証券業務は証券専門会社などの子会社で行う形になります[2]。
整数設例で確認する
設例(架空数値)。A銀行グループが、国内の会社X社(総株主等の議決権2,000,000個)の議決権を次のように保有しようとしています。A銀行本体60,000個、A銀行の証券子会社30,000個、A銀行の特定子会社(投資専門子会社)50,000個。
①基準議決権数:2,000,000 × 5% = 100,000個。合算でこれを超えて取得・保有できません。
②X社が一般の事業会社の場合:特定子会社も通常の子会社として合算されます。60,000 + 30,000 + 50,000 = 140,000個 > 100,000個 となり、40,000個(140,000 − 100,000)が上限を超えるため、この保有計画は組めません。
③X社が第16条の2第1項第12号の会社(内閣府令が定める新たな事業分野を開拓する会社)に当たる場合:特定子会社の保有分は合算から外れ、60,000 + 30,000 = 90,000個 ≦ 100,000個 で上限内です。ただし同号の会社と認められるのは、銀行本体と特定子会社以外の子会社の合算保有が基準議決権数を超えていない場合に限られ、対象となる会社の要件は内閣府令で決まります[1]。
④持株会社の場合:銀行持株会社グループでの上限は 2,000,000 × 15% = 300,000個 です。同じ140,000個でも、持株会社グループの合算上限(15%)の範囲内になります。ただし銀行とその子会社については、引き続き銀行単位の5%の制限がかかります。
開示・規制上の位置付け
銀行法は「銀行が何を所有し、誰に所有されるか」の両面を規律します。出資する側の規制が5%・15%ルールと子会社の範囲の規定で、所有される側の規制が主要株主・銀行持株会社の認可です。PEファンドが地銀などの銀行に出資する場合は、取得後の議決権比率が主要株主基準値(20%、一定の場合15%)に達するかで認可の要否が変わり、案件スケジュールに当局審査の期間を見込む必要があります[1]。銀行グループ系のファンドについては、運営会社が銀行の子会社に当たるか、ファンド経由の議決権が合算の対象になるかを内閣府令の細目まで確かめるのが通例です。銀行系と独立系のファンドの違いは銀行系PEファンドと独立系PEファンドの違いで扱います。
実務での調べ方・確認手順
- 出資する主体を特定する:銀行本体か、銀行の子会社か、銀行持株会社の子会社かで、5%と15%のどちらが適用されるかが変わります。
- 出資先の区分を確認する:出資先が子会社対象会社、第12号〜第14号の会社、特例対象会社のどれに当たるかを、銀行法と銀行法施行規則(内閣府令)で確認します。
- グループ全体を合算する:子会社の保有分を含めて議決権を合算し、基準議決権数との差を表にします。信託財産として持つ株式など、合算から除かれる議決権の扱いも確認します。
- 認可・届出の要否を工程表に入れる:子会社化の認可(第16条の2第4項)は、同条第1項第1号〜第11号・第15号〜第17号の会社を子会社とする場合が対象で、従属業務などを専ら営む会社や第12号〜第14号の会社は対象外です。担保権の実行など内閣府令で定める事由による子会社化には例外があります(同条第5項)。主要株主化(第52条の9)、持株会社化(第52条の17)の認可は事前に必要です。
この用語を実務で
銀行グループが関わる出資・買収で、議決権の合算と認可の要否を案件スケジュールに落とし込めるようになる。
実務家が確認するポイントとよくある誤解
誤解1:「5%ルールは銀行本体の保有だけを数える」→ 正しくは、銀行とその子会社の保有を合算します。証券子会社やファンド運営子会社の保有も原則として合算の対象です。特定子会社の保有が外れるのは、第12号の会社など条文が定める出資先に限られます。
誤解2:「5%を超えたら直ちに違法」→ 正しくは、担保権の実行など内閣府令で定める事由による超過には、原則1年の処分猶予と承認の仕組みがあります。ただし、承認の対象は50%を超えない部分に限られ、承認には超過部分を速やかに処分する条件が付きます。
誤解3:「銀行持株会社なら15%まで何でも持てる」→ 正しくは、持株会社グループ全体の上限が15%で、銀行単体には引き続き5%の制限がかかります。どの法人の名義で持つかの設計が重要になります。
日本実務での扱い
(2026年11月時点)銀行の出資規制は銀行法第16条の2(子会社の範囲)、第16条の4(5%ルール)、第52条の23・第52条の24(銀行持株会社の子会社の範囲と15%ルール)に定められ、対象となる会社や除外事由の細目は銀行法施行令・銀行法施行規則に委ねられています[1]。現行の子会社の範囲には、地域の活性化に資する事業活動を行う会社(第16条の2第1項第14号)や、銀行業の高度化・利用者の利便の向上・持続可能な社会の構築に資する業務を営む会社(同第15号)も含まれ、第15号の会社について基準議決権数を超えて取得・保有しようとするときは、内閣府令で定める会社を除き事前の認可が必要です[1]。海外の銀行グループにも出資制限はありますが、比率や例外の構造は国ごとに異なるため、クロスボーダー案件では日本の5%・15%の数字をそのまま当てはめず、各国の規制を別に確認します。
面接・モデルテストで問われるポイント
Q:銀行系VCがスタートアップに出資する際、銀行法上どの点を確認しますか。
「銀行と子会社の議決権を合算して、出資先の議決権の5%を超えないかを確認します。ただし、出資先が内閣府令で定める新たな事業分野を開拓する会社に当たり、投資専門子会社などの特定子会社を通じて出資する場合は、特定子会社の保有は合算から外れます。そのため、出資先がその要件を満たすか、どの法人を通じて出資するかを最初に確認します。」
深掘りでは、銀行持株会社の15%ルールとの違い、担保権の実行による超過の扱い、主要株主規制(出資される側の規制)との区別が問われます。
よくある質問(F AQ)
Q. 銀行が株式の売買仲介や引受けをできないのはなぜですか?
A. 金融商品取引法第33条が、銀行など金融機関による有価証券関連業・投資運用業を原則として禁止しているためです。書面取次ぎ行為や、国債・地方債など同条第2項各号に掲げる有価証券についての一定の行為は例外とされ、それ以外は証券子会社などで行います[2]。
Q. 事業会社が銀行株を大量に取得するときに必要な手続は?
A. 取得後に銀行の主要株主基準値(総株主の議決権の20%、一定の要件に当たる場合は15%)以上を持つことになる場合は、事前に内閣総理大臣の認可が必要です。銀行を子会社とする持株会社になる場合も別途認可が必要です[1]。
出典・参考(2 026-11確認)
- e-Gov法令検索「銀行法」(昭和五十六年法律第五十九号)第2条第2項・第8項・第9項、第4条、第10条、第12条、第16条の2、第16条の4、第52条の9、第52条の17、第52条の24. https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=356AC0000000059(2026年11月参照)
- e-Gov法令検索「金融商品取引法」(昭和二十三年法律第二十五号)第33条. https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=323AC0000000025(2026年11月参照)
※本記事は教育目的の一般的な解説であり、法務・税務・投資助言ではありません。設例は理解のための架空数値です。