この記事で分かること
- Bloomberg・S&P Capital IQ Pro・FactSet・LSEG Workspace(旧Refinitiv Eikon)という4大金融データ端末が、それぞれ何を強みとして作られたサービスなのか
- SPEEDA・QUICK FactSet Workstationなど、日本の実務で使われる補助的なデータサービスの位置づけ
- 投資銀行・PE/VC・資産運用・事業会社IR/経営企画など、職種によって「向く端末」がなぜ変わるのか
- 料金・シェアは各社とも公表していない範囲が大半であり、伝聞の数値に頼らず何を基準に比較検討すべきか
結論:端末は「どれが最強か」ではなく「何の一次データを内製したいか」で選ぶ
金融データ端末は機能の豊富さで優劣を比べるものではなく、各社が独自に収集・維持してきたデータ資産の性質で強みが決まります。Bloombergは債券・為替・デリバティブのリアルタイム市場データと取引執行を核に、S&P Capital IQ ProとFactSetは非公開企業データと財務モデリング連携を強みに投資銀行・PE実務へ食い込み、LSEG WorkspaceはReutersニュースと為替・金利データを土台に持ちます。日本企業を深く調べる場面では、SPEEDAやQUICK FactSet Workstationのような国内発のサービスに独自の強みがあります。
そのため最初の問いは「どれが最強か」ではなく「自分の業務で一次データとして何が欠かせないか」です。取引執行とリアルタイム市場データが要る仕事ならBloomberg、非公開企業を含む財務スクリーニングとモデル連携が中心ならCapital IQ ProかFactSet、国内企業の業界分析が中心ならSPEEDAやQUICKが出発点になります。本記事は各社の公式情報のみを根拠に機能・対象ユーザー・料金公開状況を整理します。料金・シェアは公式に数値が示されている場合のみ記載し、非公表のものは「非公表」と明記します。推定値・伝聞値は使いません。
なぜ複数の端末が並立しているのか
各社が持つデータの出所が異なるためです。取引所・ブローカー接続によるリアルタイム気配値、企業のIR資料・有価証券報告書を構造化した財務データ、独自の記者網によるニュースは収集ルートが異なり、他社が即座に複製できません。結果として「市場データはBloomberg、非公開企業の財務データはCapital IQ Pro、ニュースはLSEG Workspace」のように複数端末を併用する組織が多くなります。出自も、BloombergとFactSetは金融情報専業、Capital IQ ProはS&P Global(格付機関)の一部門、LSEG Workspaceはロンドン証券取引所グループの一部門と異なり、これが固有の強みにつながっています。
Bloomberg Terminal
Bloomberg Professional Services公式サイトによれば、主要機能は独自データとサードパーティ調査へのアクセス、金融ニュースと市場動向分析、Instant Bloombergによる専門家間コミュニケーション、Bloomberg Intelligenceによる業界別・地域別調査、統合された注文執行・注文管理ソリューションです(出典:Bloomberg Professional Services公式サイト、2026年8月確認)。対象ユーザーは資産運用会社、ヘッジファンド、保険会社、年金基金、銀行・証券会社、個別のアナリストと公式に挙げられています。
実務上の特徴はリアルタイムの市場データと取引執行を一画面で完結できる点です。株式・債券・為替・コモディティ・デリバティブの気配値を横断確認しながら発注・執行まで行える設計のため、トレーディングデスクや資産運用の利用が中心になりますが、投資銀行のM&A実務や株式リサーチでも市場系データの取得先として広く使われます。料金は公式サイトに金額の記載がなくデモ申請・個別見積りの形式のため「非公表」として扱います。
S&P Capital IQ Pro(旧S&P Capital IQ Platform)
S&P Global Market Intelligenceが2021年9月に発表したブランドで、従来のS&P Capital IQ PlatformとSNL Desktopという2製品を統合して生まれました(出典:S&P Global公式プレスリリース、2021年9月7日付、2026年8月確認)。古い資料や求人票の「Capital IQ」は現行のCapital IQ Proと同一系統です。
同プレスリリースでは、上場企業約6万2千社・非公開企業約1,800万社のデータカバレッジ、AIによる文書内検索、リアルタイム市場監視ダッシュボード、ESG・気候データ、Excel・PowerPoint連携が主要機能として挙げられ、非公開企業データの厚みが一貫した強みです。実務では類似会社比較・類似取引分析・財務スクリーニングをExcelアドインで組む用途が中心で、投資銀行のM&Aチーム、PEのソーシング・デューデリジェンス、株式リサーチのバリュエーションで使われます。料金は公式ページに記載がなく「非公表」です。
FactSet Workstation
FactSetは公式サイトで自社を「Financial Data, Market Analytics & AI Solutions」を提供する企業と位置づけ、「FactSet Workstation」を財務データ・分析・AI活用ワークフローを一体化したオールインワン型プラットフォームと説明しています(出典:FactSet公式サイト、2026年8月確認)。投資家向け情報サイトでは、投資プロフェッショナル向けに長年サービスを提供してきたことと、ニュース・リサーチサービス「StreetAccount」の運営が確認できます(出典:FactSet Insight公式サイト、2026年8月確認)。
実務での位置づけはCapital IQ Proと重なる部分が大きく、企業比較・M&Aスクリーニング・バリュエーションモデルとの連携で使われます。両社とも「非公開企業データ+Excel連携」を軸に投資銀行・PE向けのポジショニングをとっており、どちらを契約するかは会社ごとの導入実績や使い慣れに左右される面があるため、両方を併用する運用会社・投資銀行も珍しくありません。料金は公式サイトに記載がなく「非公表」です。
LSEG Workspace(旧Refinitiv Eikon/旧Thomson Reuters Eikon)
名称の変遷を正確に押さえます。LSEG公式サイトによれば、LSEGは2021年にRefinitivの買収を完了し、その後Refinitivというブランド名を段階的に廃止しました。旧Refinitivの製品は現在LSEG Data & Analytics、FTSE Russell、LSEG Risk Intelligenceのいずれかを通じて提供され、かつての看板端末「Eikon」はLSEGの製品ラインナップから退き、後継として「LSEG Workspace」に置き換わっています(出典:LSEG公式サイト、2026年8月確認)。Refinitiv Eikon(前身はThomson Reuters Eikon)=現在のLSEG Workspaceという対応関係を押さえておくと、求人票や旧教材の名称と混同しません。
製品ページでは、AIを活用した検索・レコメンデーション、デスクトップ・Web・モバイル間のシームレスな利用、Microsoft Teams・Officeとの統合、Python・Jupyter Notebook対応の開発環境「CodeBook」、Reutersニュースを含む包括的なデータカバレッジが主要機能として挙げられています(出典:LSEG公式サイト、2026年8月確認)。実務では為替・金利・債券市場データとReutersニュースの厚みを軸に、マクロ経済分析やクレジット・債券リサーチで強みを発揮します。料金は問い合わせフォームのみで「非公表」です。
日本発の補助的サービス:SPEEDAとQUICK FactSet Workstation
SPEEDA(株式会社ユーザベース)
SPEEDA公式サイトによれば、主要機能はAIエージェントによる情報収集の自動化、市場規模調査・業界別競合調査・財務分析、企業情報・人物情報・M&Aデータの分析、業界レポート生成、Salesforce・Agentforce連携です(出典:SPEEDA公式サイト、2026年8月確認)。想定利用部門は経営企画、事業開発、研究開発(R&D)、営業・マーケティング・インサイドセールスと公式に挙げられており、投資銀行やPEのような投資家サイドの実務よりも事業会社の戦略・企画部門を主な対象とするサービスです。導入実績2,500社超、時価総額上位100社の90%が採用と公式に記載がありますが、料金は要問い合わせで「非公表」です。
QUICK FactSet Workstation(株式会社QUICK)
日経グループのQUICKが持つ国内企業データと、FactSetのグローバルデータを統合して提供しています。日経メディアマーケティングの公式サービス説明によれば、企業財務・株主・M&A・サプライチェーンのデータに加え各種指数・商品市況・統計・ニュースを統合しており、世界850万社以上の企業データによるM&Aスクリーニングや実質株主情報の把握、Microsoft Office連携によるレポート作成効率化が主要機能です(出典:日経メディアマーケティング公式サイト、2026年8月確認)。想定利用部門は事業法人の経営企画・事業戦略部門、IR・SR部門と公式に明記されており、投資家側ではなく発行体側の実務を主な対象とするサービスです。料金は問い合わせ制で「非公表」です。
この2社に共通するのは、投資家(買い手)ではなく事業会社(発行体側)の実務部門を主な想定ユーザーとして公式に明記している点です。海外系4端末が投資家サイドを主に想定しているのとは想定読者が異なります。
6サービスの比較
| サービス | 運営会社 | 公式に強みとされる領域 | 料金公開状況 |
|---|---|---|---|
| Bloomberg Terminal | Bloomberg L.P. | リアルタイム市場データ・取引執行・Bloomberg Intelligence調査 | 非公表(個別見積り) |
| S&P Capital IQ Pro | S&P Global Market Intelligence | 非公開企業データ、コンプス・類似取引分析、ESG/気候データ | 非公表(個別見積り) |
| FactSet Workstation | FactSet Research Systems | 財務データとモデリング連携、AI活用ワークフロー | 非公表(個別見積り) |
| LSEG Workspace(旧Refinitiv Eikon) | London Stock Exchange Group | 為替・金利・債券データ、Reutersニュース、CodeBook(Python) | 非公表(個別見積り) |
| SPEEDA | 株式会社ユーザベース | 業界分析・市場調査・AIエージェントによる情報収集自動化 | 非公表(要問い合わせ) |
| QUICK FactSet Workstation | 株式会社QUICK | 国内企業データ×FactSetグローバルデータ、実質株主情報 | 非公表(要問い合わせ) |
6サービスとも料金は公表されていません。契約は法人・席数単位の個別見積りが基本で、ネット上で語られる金額は各社の公式発表ではなく伝聞・推定です。金額感を知りたい場合は、自社の利用規模・必要データ範囲を明確にしたうえで各社に直接見積りを依頼するのが確実な方法です。
職種別の適合表
下表は各社が公式サイトで明示している対象ユーザー・強み領域をもとに整理したものです。実際の契約状況は会社ごとの慣行・予算によって異なります。
| 職種 | 主に使われる場面 | 出発点になりやすいサービス |
|---|---|---|
| 投資銀行・M&Aアドバイザリー | コンプス・類似取引分析、非公開企業のスクリーニング、ピッチブック作成 | S&P Capital IQ Pro/FactSet |
| PE・VC(投資実行) | ソーシング、財務スクリーニング、デューデリジェンス | S&P Capital IQ Pro/FactSet |
| 資産運用・株式リサーチ | リアルタイム株価・出来高、決算モニタリング、業界調査 | Bloomberg Terminal |
| クレジット・債券・マクロ運用 | 金利・為替データ、格付・信用スプレッド、ニュース | Bloomberg/LSEG Workspace |
| トレーディングデスク(執行) | 取引執行・注文管理、リアルタイム気配値 | Bloomberg Terminal |
| 事業会社(経営企画・事業開発) | 業界動向調査、競合分析、M&A候補の初期スクリーニング | SPEEDA/QUICK FactSet Workstation |
| 事業会社(IR・SR) | 実質株主情報の把握、株主構成の分析、開示対応 | QUICK FactSet Workstation |
読み取れる分岐点は2つです。第一に「投資家サイドか、発行体サイドか」で出発点が変わること。投資銀行・PE・運用会社なら海外系4端末、事業会社の経営企画・IRならSPEEDAやQUICK FactSet Workstationが起点になりやすい傾向が読み取れます。第二に「執行・市場データが要るか、企業分析・モデリングが要るか」で海外系4端末内の優先順位が変わること。トレーディング業務ならBloomberg、コンプスとモデル連携が中心ならCapital IQ ProかFactSetです。
比較検討を進める実務手順
機能一覧を眺めるだけでは決められません。次の手順で稟議に必要な材料が揃います。
- 自部門が「毎日確認する数値」を書き出す。リアルタイム株価か、非公開企業の財務数値か、為替・金利か、国内企業の株主構成か。ここが出発点です。
- 社内に既にある契約を確認する。同じ会社の別部門が契約していれば、席の追加のほうが新規契約より早く安く済むことがあります。
- Excel・PowerPointとの連携要件を確認する。財務モデルへのライブリンクや自動更新が必要かで、必要なアドイン機能が変わります。
- トライアル・デモを依頼し、実業務データに近い条件で操作性を確認する。各社ともデモ申請窓口を公式サイトに用意しています。
- 料金は個別見積りで確認する。契約席数・期間・データ範囲で金額が変わるため、ネット上の伝聞価格を稟議資料に使わないでください。
- 解約・移行のしやすさを確認する。最低契約期間とデータのエクスポート形式は契約前に確認しておくべき事項です。
これらの端末は一次情報そのものを作り出すのではなく、EDINETやTDnetといった公的開示システムの情報を検索・横断分析しやすい形に整形して提供するという性格が強いです。端末を持たない場合でも、EDINET・TDnetを直接あたれば同じ一次情報にアクセスできます。有料端末の価値は、その情報を横断的に検索し、過去データと突き合わせ、Excelへ直接引き込める効率性にあります。投資銀行アナリストがこうした情報源をどう組み合わせるかは、投資銀行アナリストの情報収集術で扱っています。
よくある質問(FAQ)
Q. Bloomberg・Capital IQ Pro・FactSetのどれか1つだけを選ぶとしたら、何を基準に決めればよいですか。
A. 本記事は特定製品を推奨しません。基準は、自部門が日常的に必要とするデータが市場データ(株価・為替・金利・取引執行)か、企業財務データ(非公開企業を含むコンプス・モデリング連携)かです。前者ならBloomberg、後者ならCapital IQ ProかFactSetが検討の起点になりますが、料金は個別見積りのため複数社のデモとトライアルを経て決めてください。
Q. Refinitiv EikonとLSEG Workspaceは別のサービスですか。
A. 同一系統です。LSEG公式サイトによれば、LSEGは2021年にRefinitivの買収を完了した後、Refinitivというブランド名を段階的に廃止し、旧Eikonの機能は現在の「LSEG Workspace」に統合されています。求人票や教材で「Eikon」を見た場合は、現行のLSEG Workspaceを指していると理解して差し支えありません。
Q. 端末の料金相場をネットで見かけましたが、参考にしてよいですか。
A. おすすめしません。いずれの端末も公式サイトに金額の記載がなく、ネット上で流通する金額は個人の経験談や推定に基づく伝聞情報です。契約席数・地域・契約期間によって条件は変わるため、稟議や予算計画に使う数字は各社への個別見積りで確認したものを使ってください。
まとめ
金融データ端末は、各社が長年築いた独自データ資産の性質によって強みが分かれます。Bloombergはリアルタイム市場データと取引執行、S&P Capital IQ ProとFactSetは非公開企業データとモデリング連携、LSEG Workspaceは為替・金利データとReutersニュース、SPEEDAとQUICK FactSet Workstationは国内企業分析と事業会社側の実務が軸です。比較検討では「自部門が日常的に必要とするデータは何か」を先に定義し、複数社のデモを経て、料金は必ず個別見積りで確認する順序が実務的です。ネット上の伝聞数値は稟議資料に使わず、公式に確認できた事実だけを判断材料にしてください。
端末が出す数値を、自分で読み解ける力に変える
端末はデータを集める道具にすぎません。集めたコンプスや財務データをどう評価に落とし込むかは別のスキルです。大手町プレップでは、こうした実務スキルを体系的に学べる無料の学習コンテンツを提供しています。
出典・参考(2026年8月確認)
- Bloomberg Professional Services公式サイト「Bloomberg Terminal」 https://professional.bloomberg.com/products/bloomberg-terminal/ (主要機能・対象ユーザー・料金非公開の確認)
- S&P Global公式プレスリリース「S&P Global Market Intelligence launches S&P Capital IQ Pro」(2021年9月7日付) https://press.spglobal.com/2021-09-07-S-P-Global-Market-Intelligence-launches-S-P-Capital-IQ-Pro,-a-new-brand-for-its-most-comprehensive-desktop-solution (ブランド刷新の経緯・機能・データカバレッジ)
- FactSet公式サイト https://www.factset.com/ (事業ポジショニングの確認)
- FactSet公式サイト「FactSet Workstation」製品ページ https://www.factset.com/marketplace/catalog/product/factset-workstation (製品名称・位置づけの確認)
- FactSet Insight公式サイト https://insight.factset.com/ (投資プロフェッショナル向けサービス・StreetAccountの確認)
- LSEG公式サイト「Refinitiv has now changed to LSEG」 https://www.lseg.com/en/data-analytics/refinitiv (Refinitivブランド廃止・Eikon退役とLSEG Workspaceへの統合の確認)
- LSEG公式サイト「Workspace」製品ページ https://www.lseg.com/en/data-analytics/products/workspace (主要機能・料金非公開の確認)
- SPEEDA公式サイト(株式会社ユーザベース) https://jp.ub-speeda.com/ (主要機能・対象部門・料金非公開の確認)
- 日経メディアマーケティング公式サイト「QUICK FactSet Workstation」サービス紹介 https://www.nikkeimm.co.jp/service/detail/id=1291 (データ統合内容・対象部門・料金非公開の確認)
- EDINET(金融庁 電子開示システム) https://disclosure2.edinet-fsa.go.jp/ (公的開示情報の一次情報としての位置づけ)
※本記事は教育目的の一般的な解説であり、法務・税務・投資助言ではありません。設例は理解のための仮設例です。製品の機能・料金は変更されることがあるため、導入検討の際は必ず各社の最新の公式情報をご確認ください。本記事は特定の製品を推奨するものではありません。